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9 名前:名無しさん[sage] 投稿日:2016/03/27(日) 18:13:28 ID:SoEOAtLY0
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それはただの喧嘩だった。
特対課の出番なんてあるはずもない。
ごくありきたりな河川敷で、たった二人の人間が始めた喧嘩。
ただし喧嘩で済むのは、それはそのどちらも堅気だった場合だ。
チャンネル国有数の極道一家、歌舞伎組の若頭と、
チャンネル国発の巨大企業、シベリアにスポーツ枠で在籍する社員。
プロスポーツ選手の不祥事によるイメージダウンを恐れたシベリアが、
全ての責任を歌舞伎組へと押し付けた。
金と権力を利用した常識外れの力技に、歌舞伎組は黙っていなかった。
シベリアの重役三名を拉致し、真実を告白するように脅しをかけたのだ。
当初は会社が独力で解決しようとするも失敗、複数の怪我人が出てしまった。
そのために警察の出番となったわけである。
警察を介しての連日の要求にシベリアは全て否定で返す。
話し合いは一向に進展せず、あわや三人が犠牲になるかと思われた時、
警察は奥の手を投入することを決定した。
特対課の電話が鳴ったのは、事件発生から三日後のことである。
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10 名前:名無しさん[sage] 投稿日:2016/03/27(日) 18:15:38 ID:SoEOAtLY0
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(´・_ゝ・`) 「はい、こちら特定犯罪激化対策課……、ああ……それならすぐに行かせる。
おい、諸本!」
(´・ω・`) 「何ですか」
(´・_ゝ・`) 「出番だ、行って来い」
(´・ω・`) 「デミさん、たまには自分で行ってくださいよ」
携帯ラジオから流れてくる競馬の実況。
十番人気ハナノミヤビが一番人気のキンイロオウカンに並んだことを興奮しながら叫ぶ実況。
それに聞き入りながら、諸本は携帯を強く握りしめる。
(´・_ゝ・`) 「こっちはドンパチでかい花火が上がるかどうかってとこだ。すぐに人が欲しいとさ。
それに、荒事はお前の方が得意だろうが。俺はインテリ系なんだよ」
(´-ω-`) 「っち……」
(´・_ゝ・`) 「聞こえてんぞ」
(´・ω・`) 「はいはい、行ってきますよ」
現場が近場であったこともあり、諸本はものの二時間で警察に包囲された廃ビルについた。
タクシー運転手に礼を言い、指揮官らしき男に歩き寄って声をかける。
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11 名前:名無しさん[sage] 投稿日:2016/03/27(日) 18:17:05 ID:SoEOAtLY0
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(´・ω・`) 「状況はどうなってるんです?」
( ^Д^) 「あなたは……? マスコミなら下がってください」
(´・ω・`) 「いえ、特定犯罪激化対策課の、神内諸本です」
諸本は特対課員にのみ配られる襟章が見える様にコートを脱いだ。
膝下まであるカシミヤ素材の黒ステンカラーコート。
カラーを揃えて数種類も持っている彼のお気に入りの一着を右手にかける。
(; ^Д^) 「っ! ではあなたが……特対課の暴風雨!諸本警視ですか」
(´・ω・`) 「その呼び名は恥ずかしいんでやめてほしいんですけどね」
(; ^Д^) 「あ、すいません。協力ありがとうございます。
現状は人質が三名、うち一人が怪我人です……犯人グループは恐らく五名。
全員、歌舞伎組の人間だと裏が取れています」
(´・ω・`) 「そうですか、それなら後は任せてください」
( ^Д^) 「はっ! 我々はどうすればいいでしょうか」
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12 名前:名無しさん[sage] 投稿日:2016/03/27(日) 18:18:08 ID:SoEOAtLY0
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現場を囲む若い警察官たちに緊張が走る。
特対課の凄さと恐ろしさを、嫌と言うほど諸先輩から聞かされているのだから当然だ。
(´・ω・`) 「では、皆さんこちらに待機で」
(; ^Д^) 「は? ……失礼、今なんとおっしゃいました?」
予想外の指示に困惑し、指揮官の男が聞き返す。
(´・ω・`) 「こちらに待機で、と言いました。私が武器を持たずに話し合いに言っていきますので」
(; ^Д^) 「いくらなんでも危険すぎます」
(´・ω・`) 「お気になさらず。こういう時のための特対ですから」
諸本は一人、両手をあげて廃ビルへと進む。
何の警告もなく、一発の弾丸が撃ちだされた。
顔からほんの数センチ横を通り過ぎたにもかかわらず、諸本は顔色一つ変えない。
「止まれ!!」
「てめぇ!人質がどうなってもいいのか!!」
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13 名前:名無しさん[sage] 投稿日:2016/03/27(日) 18:19:21 ID:SoEOAtLY0
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(´・ω・`) 「話し合いに来ただけです。武器は何一つ持っていません」
「ジャケットを脱げ!」
(´・ω・`) 「わかりました」
諸本は上着を脱ぎ棄てまた一歩進む。晴れとは言え凍えるような寒さの中、指示通りにシャツ一枚になる。
廃ビルの窓からは、人間程度なら一撃で殺せるような銃口がぴったりと彼に合わされていた。
息をのんで見守るのは後方で待機を命ぜられた警察官達。
「変な動きしたらわかってんだろうな!」
(´・ω・`) 「人質を傷つけないでください」
「そのままゆっくり来い!」
廃ビルの入り口をくぐり諸本の姿は見えなくなった。
物音ひとつ聞こえず、付近が静寂に包まれる。
外を囲む警察官達はただ静かに見守っていた。
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14 名前:名無しさん[sage] 投稿日:2016/03/27(日) 18:20:22 ID:SoEOAtLY0
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激しい音と共に、突如として窓ガラスが内側から吹き飛んだ。
原因は、首筋に花柄の刺青が入っている男。歌舞伎組の一員で間違いがない。
間髪おかず、四人の気絶した男達が窓から降ってきた。
最後に諸本が窓から飛び降りて来る。
シャツには汚れ一つなく、ズボンに皺一つない。ただ頭髪だけが、風圧で激しく靡いていた。
頭頂部はまるで日の出のように完全に失われており、両サイドだけが妙に長い。
そのため、動くたびにトリートメントをかけすぎた柔らかな髪がふわりと舞う。
(; ^Д^) 「っ……!」
(´・ω・`) 「解決しました」
( ^Д^) 「ご、御協力感謝します!」
待機していた警官隊が一斉に中に突入し、シベリアの人質は無事保護された。
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15 名前:名無しさん[sage] 投稿日:2016/03/27(日) 18:22:30 ID:SoEOAtLY0
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【番号】 015
【姓名】 神内 諸本
【読み】 ジンナイ ショボン
【年齢】 42
【役職】 警視
【専門】 格闘術
【解決事件】
・首都高速暴走トラック事件
・シベリア通り大規模暴動事件
他
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