ハゲタカのようです

84 名前:名無しさん[sage] 投稿日:2016/03/27(日) 20:14:16 ID:SoEOAtLY0



武雲は高層マンションの犯行現場に来ていた。
鑑識官が少しだけ調べて特におかしいところが無いと判断したノートパソコンの電源を入れ、
適当なフォルダを開いて中を見ていた。
入っていたのは亡くなった女性の写真や、書きかけのレポート、事務資料など、当たり障りのないものばかり。

少し場所を移動しようと動かした瞬間に画面が切れた。
パソコンにさして詳しくない武雲は、焦って何度か電源ボタンを押す。
画面は暗くなったままで、何の変化もない。

( ^ω^) 「っち……」

舌打ちをしながらひっくり返してバッテリーの蓋を開けた時、一枚の紙きれが落ちてきた。

( ^ω^) 「なんだこれ……」

書いてあったのは読める単語が一つもないホームページアドレス。
そしてアルファベットと数字がランダムに組み合わされた八桁の文字の羅列。
武雲はそれがIDとパスワードだとしばらくして気づく。

抜けていた電源コードをノートパソコンに挿し直し、
両手の人差し指でゆっくりと確実に打つ。
エンターキーを押すとヤフーのトップページから切り替わった。

85 名前:名無しさん[] 投稿日:2016/03/27(日) 20:14:48 ID:SoEOAtLY0

(; ^ω^) 「……おいおい」

ヴィップに存在する主要な建築物が書き込まれたテキスト。
その横には日付が書いてあった。
すぐさま写真を撮り、それを課のパソコンに送る。

電話を掛けようと思って携帯の画面を見ると、毒男からの着信が何度もかかってきていた。
履歴から毒男へとかけなおす武雲。

( ^ω^) 「俺だ。いや見てない。だがそれよりも、送ったメールをすぐ確認してくれ。
        ……俺は少し家に寄ったらすぐに戻る」

必要なことだけを告げ、電話を切った。

( ^ω^) 「これが本当だとすれば……次に狙われるのはヴィップ国立シンフォニーホールか……」

裁判所と同じ日付が記入されていた国立の施設。
電話案内にかけ、ホールの番号を調べてすぐに電話をかける。
携帯を押し付けた耳に休館日のメッセージが流れた。

( ^ω^) 「何が狙いだ……」

86 名前:名無しさん[sage] 投稿日:2016/03/27(日) 20:15:37 ID:SoEOAtLY0

ノートパソコンを持って部屋を飛び出し、鍵をかけてエレベーターに飛び乗った武雲。
一階まで降りると近くのバス停へと全速力で走った。
息を切らしながら時刻表を指でたどり、つい今しがたバスが出発していたことを知る。

(; ^ω^) 「……ふぅ」

ライターを取り出し煙草に火をつけた。
冬の曇り空に立ち上る煙が消えていく。
それを眺めながら武雲は考え込んでいた。

( ^ω^) (今朝のテロがなぜあのOLの部屋にあったサイトに書かれていた。
       危険な組織とつながりはなかったし、履歴にも怪しいものはなかったはずだ。
       いや、それが思い込みか。デミほどパソコンを使いこなせていればそのくらいの偽装ができるのか。
       なんにせよ聞いてみないといけないか)

両手をポケットに入れながら待っていると、時間通りにバスが来た。
三駅先、シンフォニーホール前のバス停で降りる武雲。
彼の知っているホールはそのままの姿でその場所にあった。

( ^ω^) 「まだ大丈夫だったか」

87 名前:名無しさん[sage] 投稿日:2016/03/27(日) 20:18:07 ID:SoEOAtLY0

休刊日の為か、付近に人の姿はない。
ホールの正面入り口が見える場所で立つ武雲。
怪しい人影が出入りすることもなく、一時間ほどが経過した。

身も骨も凍るような寒さの中、暖の代わりに吸っていた煙草も切らして手がかじかんでくる。
缶コーヒーでも買いに行こうと背を向けた瞬間、爆音と共に、シンフォニーホールが倒壊した。

(; ^ω^) 「なっ……!」

沈黙した瓦礫の中を駆け抜け、見渡しのよくなった広場を見回す。
逃げ去る怪しい者の姿はない。
音を聞きつけた野次馬が一人また一人と集まってくる。

(; ^ω^) 「くそっ……」

あらかじめ仕掛けていた爆弾による犯行の可能性も考え、武雲は早々に引き上げた。
そこからバスと電車を利用して自分の家に帰り、テレビをつける。
案の定、野球中継や他の番組が軒並み中止や延期になっており、
どのテレビ局も夕方のシンフォニーホール爆発事件の話題で持ちきりであった。

88 名前:名無しさん[sage] 投稿日:2016/03/27(日) 20:18:42 ID:SoEOAtLY0

帰ってきて落ち着かないうちに、インターフォンが二度鳴らされる。
シャワーを浴びようと服を脱ぎかけていた武雲は、シャツのボタンだけ適当に閉めて玄関に向かった。

「宅配便です」

( ^ω^) 「あぁ、どうも」

荷物を送ってくれるような親戚もおらず、特に何か注文をした覚えがない武雲は宛先を確かめた。
それは間違いなく武雲の住所と名前であったが、送り主の欄に書いてあるのは見知らぬ企業名。
断るわけにもいかず、受け取ってサインをした。

「ありがとうございました」

( ^ω^) 「ご苦労様」

運送車に乗って去っていく青年。
取り敢えず荷物を玄関先の靴箱の上に置き、武雲はシャワーを浴びに向かった。

たっぷり三十分以上湯船につかり、テレビの電源を入れる武雲。
相変わらず同じような討論番組や、代わり映えのしないニュース番組で、
もう何回目かもわからない犯行声明文が流されていた。

89 名前:名無しさん[sage] 投稿日:2016/03/27(日) 20:20:59 ID:SoEOAtLY0

( ^ω^) 「ゲ=ハ……」

かつてヴィップ国を恐怖に叩き落とした伝説的テロリスト集団。
荒巻龍によって頭を取られ壊滅したかに思われていたゲ=ハは、
丁度その時に二つ目の犯行声明文を各放送局に送ってきた。

「番組の途中ですが、ゲ=ハから再びメッセージが届きました。
 再生します」

スタジオ内に緊張がはしる。
武雲も張り付くようにテレビを見つめていた。

( ^ω^) 「……」


≪我々は本気だということが分かってもらえたと思う。
  繰り返す。期限は三日間。もし三日以内にロマネスクが解放されなかった場合、
  チャンネル国に甚大な被害を与える爆弾を起動せざるを得ない。
  それともう一つ。シンフォニーホールにどうやら鼠が紛れ込んでいたようだ。
  我々としては非常にありがたいことに、目的のうちの一つを今夜達成するであろう。さようならだ、特対課、武雲≫


(; ^ω^) 「なっ!!」

90 名前:名無しさん[sage] 投稿日:2016/03/27(日) 20:22:00 ID:SoEOAtLY0

夜中、食事を終えた家族が寛いでいるような時間に、郊外にある一軒家が巨大な炎に包まれた。
轟音が平和な団欒を破壊し、男達は様子を見に家の外に向かう。
突如巻き起こった爆風で付近の外灯が砕けた区画で、たった一つの明かりとなった武雲の家。
異変に気付いた近所の住民達はすぐに消防署へ連絡し、紅く弾ける家を呆然と眺めていた。

91 名前:名無しさん[sage] 投稿日:2016/03/27(日) 20:29:32 ID:SoEOAtLY0


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【国立ヴィップ裁判所】

歴史のある最高裁判所。
チャンネル国に最初に建てられた裁判所であるが、現在は老朽化のため使用されていない。
切り出した石を組み合わせて作った構造であり、観光スポットとして利用されている。
建設費用・維持費用で国内最大の税金がかけられていた。

【国立シンフォニーホール】

最大収容人数 8000人。 特Sクラスの席からCクラスの席まであり、価格差は何と数百倍。
講演内容は雑多であり、オペラ・オーケストラが主な利用目的であるが、
劇・サーカスなどのあらゆる用途で用いられる複合施設。


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