-
16 名前:名無しさん[sage] 投稿日:2016/03/27(日) 18:23:53 ID:SoEOAtLY0
-
3
('A`) 「……電話」
男は鳴りやまないベルの音で目を覚まし、ようやく布団から起き上がった。
昨晩食べたカップヌードルの容器を灰皿代わりにしながら、目覚めの一本を吸う。
枕の横で未だなり続ける携帯をとる気配はない。
最初の一回目から既に三十分が経過していた。
一本目をゆっくりと吸い終えて、ようやく携帯へと手を伸ばす。
二つ折りのそれを開くと、異常な数の着信履歴が入っていた。
('A`) 「…………デミさんからか」
たっぷり十秒以上かけて、上司から連絡があった事実を理解する。
数十件の録音メッセージを一つも聞かずに、上司へと電話を掛けた。
(#´・_ゝ・`) 『おい毒男! お前何回電話させるつもりだ?』
('A`) 「はぁ……」
どうやら電話先の相手は怒っているようだった。
毒男と呼ばれた男は、眼を擦りながら次の煙草に手を伸ばす。
-
17 名前:名無しさん[sage] 投稿日:2016/03/27(日) 18:25:01 ID:SoEOAtLY0
-
(#´・_ゝ・`) 『ったくよぉ、家にいるんならいるで電話ぐらい出やがれ!』
('A`) 「すいません……」
(#´・_ゝ・`) 『俺は今回関係ないのに、お前に連絡が取れないと起こされてるんだ。
毎回毎回手間かけさせんな』
どうやら上司の機嫌を損ねてしまったらしい、ということ程度しか毒男の頭には入っていなかった。
朝ご飯用に買ってきていた菓子パンを頬張りながら、適当に相槌を打つ。
(#´・_ゝ・`) 『聞いてんのか!』
('A`) 「はい……」
(´・_ゝ・`) 『だからな、今お前迎えに行かせてるから。もうすぐ着くと思う。
旅行だと思って楽しんで来い』
('A`) 「了解です……」
電話が切れた五分後、玄関のチャイムが鳴った。
鍵を開けて入ってきたのは、こういう時いつも決まって迎えに来る男。
手に持っているコンビニの袋にはブラックコーヒーが三本入っていた。
それらを手渡され、そのうちの一つを毒男は一息に飲み干す。
-
18 名前:名無しさん[] 投稿日:2016/03/27(日) 18:29:36 ID:SoEOAtLY0
-
大量投与されたカフェインによって次第に思考がクリアになっていく。
いつものスーツに着替え、アタッシュケースに手当たり次第必要なものを投げ込んでいく。
最後に先日の誕生日に母親から貰ったタイピンをつけて準備完了。
久しぶりの仕事は海外出張であった。
('A`) 「どうやって……行けばいい」
「飛行機です。チケットはここに」
手渡された紙きれにはカクニ行と書かれている。
最も危険な地域のトップテンには必ずその名前が挙がる内紛中の国。
数日前に大統領が就任演説中に射殺された事件があり、多数の国から注目を浴びている。
毒男は国際情勢にさほど詳しくはなかったが、カクニの危険度は承知していた。
仕事を断ることができない特対課の性質上、訪問先地域や仕事内容は彼の頭の中にはない。
長い移動時間の間中ずっと、カクニの特産物や出張中の食事のことばかり気にしていた。
「現場上空に着きました」
大好きな映画を楽しんでいる時に、無情にも仕事の時間を告げる無線。
これから主人公が敵地にたった一人で潜入するシーンであったが、
毒男は重い腰を上げた。
-
19 名前:名無しさん[sage] 投稿日:2016/03/27(日) 18:31:06 ID:SoEOAtLY0
-
「毒男さん。いつでもどうぞ」
飛行機の機長からさらに無線が飛ぶ。
毒男は返事もせずにハッチから飛び降りた。
激しい風圧を全身で受け止めながら、高度を落としていく。
目的地は反政府ゲリラのアジト。
地上にはあらゆる防衛網が張り詰められているが、
比較的費用がかかる対空装備の性能は格段に低い。
それを見越して空から潜入、ゲリラを一人残らず始末するというのが彼に与えられた任務。
人間が最も深い睡眠に陥ってる早朝。
暗視ゴーグルをつけ、パラシュートを開いた毒男はアジトの屋上に着地した。
武器はサプレッサー付きのベレッタ一丁と幾つかの爆発物。
彼が最も好んで使うその拳銃は、長年の戦いを経て細かい傷だらけである。
ただし、整備は完璧になされているため万が一はありえない。
屋上の扉を破り、階段を下りていく。
まだ侵入には気づかれていない様で、砦の中は静まり返っていた
-
20 名前:名無しさん[sage] 投稿日:2016/03/27(日) 18:33:54 ID:SoEOAtLY0
-
「がっ……!」
巡回していた男を出会い頭に一発。
心臓を撃ち抜き絶命させた。
叫ぶ暇も与えない程の速度と、正確性。
咄嗟の判断力も一級品である。
廊下の部屋を一つずつ確認していく。
反政府ゲリラはおよそ三十人程度との情報を得ていた毒男は、
狭い部屋で眠っていた男達の息の根も容赦なく止めた。
半数ほどに減らした頃、砦内の明かりつき、警報が弾ける様になり渡った。
現地言語を理解している毒男にとって、同時に聞こえてきた音声はただの道案内でしかない。
複数人の乱雑な足音が正面から聞こえてきた時、息を殺し近くの部屋の中に隠れた。
集団が通り過ぎた直後にピンを抜いて廊下に投げ込む。
音と衝撃による振動を壁越しに感じながら、毒男は窓から壁伝いに隣の部屋と飛び移った。
扉から廊下に戻り、辛うじて生き残っていた数人を背後から打ち抜く。
特対課の中で最も潜入に適した技能を持っている男は、夜明けまでの数時間で砦一つを完全に攻略した。
-
21 名前:名無しさん[sage] 投稿日:2016/03/27(日) 18:34:57 ID:SoEOAtLY0
-
入って来た時とは異なり、玄関から堂々と外に出る毒男。
警報が夜の砂漠に響くが、それに反応する人間の声は無かった。
「なっ……」
ただ一人、門番を除いては。
監視役としてずっと外を見ていた男は、最初に音で異常に気付いた。
騒がしくなった砦内は暫くすると静かになったため、鼠が駆除されたのだと勘違いしていたのだろう。
振り返ってみれば、見たこともないコートの男がたった一人で立っていた。
再度鳴り響く警報が、本来の目的とは別の焦りを男に与えていた。
手にしている自動小銃は、圧倒的優位を与えているはずだと自らに言い聞かせる。
それでも照準の震えは収まらず、堂々と歩くドクオの接近を許していた。
「いったい、どうやって……」
('A`) 「……知る必要があるか?」
流暢な現地語で答える毒男。
両手には何も持っていない。
-
22 名前:名無しさん[sage] 投稿日:2016/03/27(日) 18:36:17 ID:SoEOAtLY0
-
「っくそがあああああああああああああああああああああ……」
門番の叫びに重なるはずだった数十の弾丸は、大気を砕くことを許されなかった。
それまで歩いていた毒男が、一秒にも満たない刹那にその眉間を撃ち抜いたせいだ。
何が起きたのか理解することもなく、門番は倒れた。
('A`) 「銃は玩具じゃない。来世があったらもっとそれをよく理解しておくんだな」
任務を達成した毒男は、ゆっくりと胸ポケットの煙草を取り出した。
幾つかのポケットをまさぐったが、ライターはどこかに落としてしまったのだと気付く。
ゆっくりと昇り始めた太陽に向けて発砲し、火をつけた。
('A`) 「忌々しい……」
産毛一本すらない自分の後頭部を触りながらぼやいた。
陽が昇れば明るみに出てしまう、自身の太陽を嘆く。
回収班が来るまでまだ時間があるため、それまでどう過ごそうか考えながら煙を吐き出した。
-
23 名前:名無しさん[sage] 投稿日:2016/03/27(日) 18:37:16 ID:SoEOAtLY0
-
>>
【番号】 017
【姓名】 臼井 毒男
【読み】 ウスイ ドクオ
【年齢】 39
【役職】 警部
【専門】 銃火器
【解決事件】
・幼稚園立てこもり事件
・ふたばヤクザ抗争
他
>>