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24 名前:名無しさん[sage] 投稿日:2016/03/27(日) 18:39:03 ID:SoEOAtLY0
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ホテルの一室、重なり合う一組の男女がいた。
ときに激しく、ときに艶めかしく、柔らかなベッドの上で。
o川* ー )o 「茂羅さん……んっ……!」
( ・∀・) 「そろそろイキそうなのかな?」
女性を持ち上げるように腰を打ち付ける。
その度に身体がぶつかり合う音と嬌声が混じった。
o川* ー )o 「あっ……っ……!! 〜〜っ!」
( -∀-) 「俺も……もう……」
次第に早くなる上下の動き。
お互いが両の手を握り合い、完全に一つになろうとした時、
無情に甲高い機械の音による妨害が入った。
頬を紅く染めた女性の顔が一瞬で不機嫌なものへと変わる。
つい先程までとは全く別人のようであった。
男はそれに気づかないふりをしながら電話を取る。
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25 名前:名無しさん[sage] 投稿日:2016/03/27(日) 18:40:47 ID:SoEOAtLY0
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( ・∀・) 「もしもし」
(´・_ゝ・`) 「茂羅、俺だ」
( -∀-) 「知ってます。こんなにタイミングが悪いのデミさんくらいっすよ……」
(´・_ゝ・`) 「んーははぁ、さてはそういうことだな」
特対に所属してからまだ五年。
課の中では断トツの若手である茂羅は、課長の出実達に揶揄われるのが苦手だった。
過去にも何度か事の最中に電話があり、その度に女には振られていたせいでもある。
それでも仕事である以上はどんな時も電話を取る茂羅は、その苦手感情とは逆に出実には評価されていた。
( ・∀・) 「で、今度は何ですか」
(´・_ゝ・`) 「化学薬品工場で立てこもり犯だ」
( ・∀・) 「それ、俺よりもショボンさんの方がよく無いっすか?」
(´・_ゝ・`) 「あぁ、ちょっと待ってくれ。あいつに代わる」
(; ・∀・) 「え!?」
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26 名前:名無しさん[sage] 投稿日:2016/03/27(日) 18:41:42 ID:SoEOAtLY0
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(´・ω・`) 「俺だ、茂羅」
声を聞いて機嫌が悪そうだ、とすぐに茂羅は気づく。
思い当たるフシを詮索するが、答えは出てこない。
( ・∀・) 「お疲れさまっす」
(´・ω・`) 「茂羅お前、この前覆面に捕まっただろ」
(; ・∀・) 「えっ!?」
確かに諸本の言う通りだった。
二週間ほど前、口説いた女を車に乗せ環状線を飛ばしていた茂羅は覆面警察に呼び止められた。
特対の襟章を見せ、実は任務の最中なんだと説明しなんとか罰金と減点を逃れたのだ。
翌日もその次の日も誰も言ってこなかったため、茂羅はもう終わった話だと片付けていた。
(´・ω・`) 「あれな、俺のところに相談があった」
(; ・∀・) 「え……」
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27 名前:名無しさん[sage] 投稿日:2016/03/27(日) 18:42:51 ID:SoEOAtLY0
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(´・ω・`) 「警察学校時代の同期でな、今でもたまに飲みに行く仲なんだが。
まぁ出実さんには黙っておいてやるから、な?」
隣にいるんじゃ、という突っ込みは出来なかった。
(´・_ゝ・`) 「で、どうする?」
携帯を取り返したらしい出実が再び問う。
( -∀-) 「行きますよ……」
しぶしぶ了承し、場所や状況を詳しく聞いた後に通話を終わらせる茂羅。
自慢の息子も今の気分を表すかのような姿になっており、
取り敢えず服を着ようかと部屋を見回した時に、女がいないことに気付いた。
書き置き一つなく、電話をかけてみてもサービスセンターに繋がるだけ。
大きな溜息をつきながらホテルを出た。
昼の明るい陽射しに目を細めながら、呼び出しておいたタクシーに乗り込む。
行き先を告げ、軽い睡眠をとるために目を瞑った。
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28 名前:名無しさん[sage] 投稿日:2016/03/27(日) 18:45:32 ID:SoEOAtLY0
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現場は溢れる人の声で騒がしかった。
怪我人を手当てするための救急隊。
火災や爆発等の重大事故に備える消防隊。
そして、犯人を取り押さえるための警官隊が十重二十重にもなって現場を埋め尽くしていた。
( ・∀・) 「あーすいません、ちょっと」
手近な人間に声をかけ、司令部の場所を聞く。
二、三人に邪険にあしらわれた後、やっとのことで対策本部のテントへとたどり着いた。
( ・∀・) 「特対課の茂羅っす。どうも」
爪'ー`)y‐ 「……そこに座っていなさい」
( ・∀・) 「え、でも」
爪'ー`)y‐ 「いいから、もうすぐこの事件は解決する。残念だったが無駄足だったな」
( ・∀・) 「あーそういうことなら」
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29 名前:名無しさん[sage] 投稿日:2016/03/27(日) 18:46:38 ID:SoEOAtLY0
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パイプ椅子の一つに腰を下ろす。
無線から聞こえてくるやり取りは、特殊部隊のものだろう。
化学薬品工場を乗っ取った犯人の目的は不明だが、
無差別テロを起こすのにこれほど適した施設は他にない。
≪こちらデルタチーム。コンピュータールームに着きました。
誰もいません!≫
爪;'ー`)y‐ 「どういうことだ! 施設のコントロールはその場所が一手に担っているはずだ。
犯人が単独である以上、そこからは動けない!」
≪ちょっと待ってください、置手紙が……なっ……煙が! 退避します!…………≫
大きな物音が重なり、無線の受信機は一言も発しなくなった。
( ・∀・) 「一人で工場を制圧するような犯人が、心臓部に素直にいるわけないでしょ。
どうします? 防毒マスクはしてるでしょうけど、摂取量が多ければ命にかかわりますよ」
爪;'ー`)y‐ 「ぐっ……君なら……解決できるというのかね」
( ・∀・) 「工場の図面を見せてください」
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30 名前:名無しさん[sage] 投稿日:2016/03/27(日) 18:48:41 ID:SoEOAtLY0
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机の上に広げられた平面図だけで十数枚、立面図と配管・電気の系統図を合わせれば百枚以上。
それを一枚一枚めくりながら、茂羅は頭の中に工場全体図をくみ上げていく。
時折手を止めて何枚か前まで戻り、より確実なものにした。
( ・∀・) 「指示をください」
この間僅か十五分。
指揮官に言葉を求める。本来は必要のないことである。
特対課に出動要請された案件は、すべて派遣された特対課の人間が指揮することに決まっていた。
茂羅はあえてそうすることで指揮官のプライドを護ったのだ。
爪;'ー`)y‐ 「……頼む」
( ・∀・) 「了解!」
防毒マスクを受け取った後、テントから足早に工場へと向かう。
茂羅は今回の犯人が優秀な人間であると確信していた。
工場を襲撃した時の手際の良さ、特殊部隊を迎撃した方法。
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31 名前:名無しさん[sage] 投稿日:2016/03/27(日) 18:49:24 ID:SoEOAtLY0
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( ・∀・) (単純な無線妨害電波だろうけど……単純だからこそ、よく効く)
ただの警察官のフリをしながら建物の周りを歩く茂羅。
彼にとって侵入自体は容易であるが、問題はどの入り口にも設置されている監視カメラにあった。
( ・∀・) (恐らくは外の状況を確認しているはずだ)
だとすれば監視カメラ以外にそんなことが出来るものはない。
壊さずに侵入するか、それとも壊して侵入するか迷っていた。
想像よりも厄介そうな相手に対して、特対課のメンバーを思い出す。
特対課ではあらゆる状況を想定した訓練が行われているが、他人は参考にならない。
諸本は強行突破一筋。毒男は一撃離脱一筋
模擬戦ではその二人に対して一勝も上げたことがなかった。
建物の側面に回り込んだ頃、茂羅は前者をとることに決めた。
付近に見える幾つかの監視カメラを的確に破壊していく。
そうすることで侵入区域の特定を避ける狙いがあった。
( ・∀・) (毒物撒かれたら終わりだからなぁ)
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32 名前:名無しさん[sage] 投稿日:2016/03/27(日) 18:51:00 ID:SoEOAtLY0
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適当な扉の錠を破壊して侵入した茂羅は、足音を気にせずひたすら走っていた。
緊急停止した工場を犯人は再稼働させたらしく、スチームで動くアームや歯車の音が侵入痕跡を隠す。
巨大なタンクがいくつも見える区間を突破し、腰よりも太り立下り配管をつたって工場の天井付近にある足場に立った。
配管が固定されているアングルは茂羅が乗った程度ではびくともしない。
コントロールルームに無線接続が届く範囲から逆算し、犯人のポイントを絞り込む。
落ちたら確実に死ぬ高さの足場で絶えず動き続けながら。
(; ・∀・) (っ! これは諸本さんじゃないと無理だな)
近道しようと向かった先には、靴の幅すらない配管が伸びていた。
寸切りで吊り下げられており、上を歩くこともままならない。
孤を描くようにぐるりと大きく回り、その下にある部屋を覗き込むと、
眼鏡をかけた男が一台のラップトップをもって座っていた。
( ・∀・) (殺しちゃ駄目なんだろうな……)
銃犯罪で毎年何人もの死傷者を出しているとはいえ、ヴィップは法治国家。
撃ち殺して終わりではない。
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33 名前:名無しさん[sage] 投稿日:2016/03/27(日) 18:52:32 ID:SoEOAtLY0
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( ・∀・) 「よっと」
(;-@∀@) 「なぁっ!?」
飛び降りた勢いで手に持っていたラップトップを叩き潰し、
驚きの声を上げた所で首筋に手刀を、続けざまに腹部に打撃を打ちこんだ。
男は泡を吹いて気絶し、事件は解決したかに思えた。
茂羅が安心して息をついた直後に警報が鳴り響き、ランプが点滅を始めて機械音声が避難経路を誘導し始めた。
(; ・∀・) 「え……」
警告内容はガス漏れ。種類は、可燃性のガス。
もし機械のショートや工場の高温部に流れ込んでしまえば、工場どころか周辺一帯が吹き飛び、
有毒ガスが散布されてしまう。
すぐに天井配管まで戻り、コントロールルームへと走る茂羅。
幾つかの動作を行い、ガスの流出は無事に止めることができた。
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34 名前:名無しさん[sage] 投稿日:2016/03/27(日) 18:53:53 ID:SoEOAtLY0
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( ・∀・) 「あー……疲れた……」
正面入り口まで最短経路を走り抜け、鼻が曲がる様なガス臭から逃げ出すために玄関を開いた。
完全装備をした機動隊が数百メートルほど先で待機しており、
その後ろにはヴィップ中の消防車が集まっているのじゃないかと思えるほど真っ赤になっている。
外の光を浴びて茂羅はやっと任務から解放された。
尻ポケットから煙草を取り出し、誰かが止める間もなく火をつける。
爪#'ー`)y‐ 「何やっているんだ! 早く消せ! 死にたいのか!!!」
機動隊の後ろに隠れながら叫んでいたのは元指揮官。
ガス臭のせいでお世辞にもうまいとは言えない煙草を口から離した。
( ・∀・) 「この程度じゃ爆発しないよ。一仕事終えたんだからゆっくり吸わせてほしいね」
眼よりも低い前髪をかき上げながら白い煙を吐き出した。
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35 名前:名無しさん[sage] 投稿日:2016/03/27(日) 18:57:48 ID:SoEOAtLY0
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【番号】 020
【姓名】 桂 茂羅
【読み】 カツラ モラ
【年齢】 35
【役職】 警部
【専門】 危険物
【解決事件】
・ヴィップ銀行爆破未遂事件
・危険化学薬品散布事件
他
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