ハゲタカのようです

139 名前:名無しさん[sage] 投稿日:2016/03/27(日) 22:39:12 ID:SoEOAtLY0
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(  ∀ ) 「……」

(´・_ゝ・`) 「少し休んで来い」

(#・∀・) 「休めるわけがないでしょう! 今すぐゲ=ハを皆殺しに……っ!」

頬に強い衝撃を受け、茂羅は課内の壁に叩き付けられた。
出実に殴られたということに気付くのには時間がかかった。

(´ _ゝ `) 「いいから、休んで来い」

起き上がることすらできず、壁にもたれていた茂羅を出実は引っ張り起こす。
その背を押された茂羅は何も言わずに仮眠室へと歩いていった。

(´-_ゝ-`) 「はぁ…………」

特対課から犠牲者が出た事実が重く出実の肩にのしかかる。
毒男と茂羅が現場に出ることを判断したのは出実だった。その責を負わないわけにはいかない。
諸本は保護された妻とは合わないままに、無言で横になっていた。

140 名前:名無しさん[sage] 投稿日:2016/03/27(日) 22:40:08 ID:SoEOAtLY0

(´・_ゝ・`) 「武雲、俺はどうすればいい……」

呟きは煙草の煙と混じり合う。
武雲の家では断続的爆発が繰り返しており、未だに消防が立ち入りできていない。
流しっぱなしのテレビで、新たな犯行声明が流れていたが、出実の頭には入ってこなかった。

≪我々は大いに喜んでいる。これで二人目の特対課を処分できたことを。
 そろそろ国も重い腰を上げてロマネスクを解放せざるをえまい。
 起源は明日までだ。もしも明日までに解放されなければ、国中が火の海になるであろう≫

国立の建物へのテロは止まらず、武雲が送ってきた情報通りに爆破が起きていた。
ほとんど怪我人が出ていないのは、ゲ=ハの気分に過ぎない。
死者がいつ出てもおかしくない状況に、警察は相当な圧力を受けていた。

(´・_ゝ・`) 「……」

/ ,' 3 「入るぞ。お前、何腑抜けた顔してやがる。ちょっと顔洗って来い」

ノックと同時に部屋に入ってきたのは、特対課の創設者である荒巻龍その人。
荷物を抱えたままの二人の若手を連れて、出実の前に立つ。

141 名前:名無しさん[sage] 投稿日:2016/03/27(日) 22:40:47 ID:SoEOAtLY0

(´・_ゝ・`) 「……龍じいか」

/ ,' 3 「聞こえんかったのか、ドアホ。顔を洗って来いと言ったんだ」

椅子に座ったままの出実の首元を掴み、課内の給湯スペースまで投げ飛ばした。
机の上の資料、花瓶、全てをひっくり返して、出実の身体は流し台にぶつかった。

(#´・_ゝ・`) 「ってぇな」

/# ,゚ 3 「おい、三度目はねぇ」

恐ろしい剣幕で睨みつけられ、出実は渋々顔を洗った。
湯沸かし器から吐き出された水が湯気を立ち昇らせる。
いつ変えたのかもわからないようなよれよれのタオルで顔を拭く出実。

/ ,' 3 「少しは目が覚めたか」

(´・_ゝ・`) 「何の用ですか」

/ ,' 3 「はん、顔を拝みに来てやったのよ。いいか、良く聞け」

142 名前:名無しさん[sage] 投稿日:2016/03/27(日) 22:41:38 ID:SoEOAtLY0

荒巻は年老いて皺が刻まれてもなお力強い拳を出実の胸元に突き付ける。

/# ,' 3 「部下を殺すような上司はクソッタレだが、自分が殺した部下の気持ちがわからない奴はもっとクソだ。
     お前は、意思疎通もできてない奴を死地に送り込んだのか? 違うだろうが!」

(#´・_ゝ・`) 「部下の気持ちが分かったところでなんだ! 俺が殺したことには違いない!」

/ ,' 3 「なんだてめぇ、死んだ部下に謝りたいのか。だったらとっとと死ね。あの世で会えるもんなら会ってこい」

(´・_ゝ・`) 「は……?」

/ ,' 3 「毒男は、何を思って死んだ。それを知ってやれ。できるなら、かなえてやれ。
     それが部下を殺した上司のとる責任だ」

(´ _ゝ `) 「俺の……責任」

/ ,' 3 「一つだけ教えてやる。国はロマネスクを解放するつもりはない。
     上の能無し共はゲ=ハがどれほど強力だとしても、国を破壊することなんでできないと考えている。
     儂はそうは思わねぇ。あいつらを止められるのは特対課しかない。……わかってんだろ。
     気持ちが戻ってきたら連絡してこい」

荒巻は固く握った拳を崩し、手のひらを出実の肩の上に置く。
二、三度柔らかく叩いて荒巻は特対課を後にした。

143 名前:名無しさん[sage] 投稿日:2016/03/27(日) 22:42:26 ID:SoEOAtLY0

(´-_ゝ-`) 「毒男が……何を思ったか……」

無口で人づきあいが苦手な男だった。
飲み会でも端の席に座り、一人で延々と飲んでいるような。
本心を口にしない、冷めた男だと最初に会った時に出実は思っていた。

数年後、ようやく会話に入ってくるようになった。
共に過ごした任務は少なかったが、少しずつ、考えていることが分かり始める。

酒を一人で飲むのは、大騒ぎをする人間が苦手だから。
話をしないのは、口下手だから。

仕事には手を抜かなかった。
銃の整備は欠かさず、課内の机の上はいつも油がこびりついてた。
朝が弱くとも、任務は必ず行い、そして必ず達成すること。

茂羅が入ってきて、少しは先輩らしく飯に連れて行っていたことも、
二人で酒を飲みに行っていたことも知っていた。
母親思いで、母の日には課の人間に内緒で花を買って帰っていた姿を諸本に見つかり、
次の日散々からかわれて一ヶ月も姿を見せなかったこともあった。

144 名前:名無しさん[sage] 投稿日:2016/03/27(日) 22:43:16 ID:SoEOAtLY0

最後の決断をした時の毒男のことを出実は考える。

自分よりも若い茂羅を生かしたいと。
出来るならば、仇を取ってもらおうと。
そして、母親への謝罪と。

出実の考えが合っているどうかはもはやで確かめようのないことである。

それでも、止まってしまった足を再び前に出すためには必要なことであった。
独り善がりな理由づけだったとしても。
出実は深く息を吸って課の電話を取る。
かける先は決まっていた。

どんな逆境でも諦めることを知らない鋼の男。
出実を特対課に引き抜いた頼れる警察庁の親父。

/ ,' 3 「俺だ。随分と気持ちが変わるのが早いじゃねぇか」

(´・_ゝ・`) 「あんたのおかげですよ」

/ ,' 3 「生意気言いやがって。とりあえず今日は休め。明日の朝一に儂の用意できるだけの人材を送り込む。
     解決しろよ」

(´・_ゝ・`) 「勿論だ」

145 名前:名無しさん[sage] 投稿日:2016/03/27(日) 22:45:24 ID:SoEOAtLY0


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【ゲ=ハ】

チャンネル国内で最も大きな事件を起こした信仰宗教。
組織内にさらに二つの派閥が存在し、お互いにいがみ合っている。
国家の完全なる支配を目的とし、二十年ほど前に結成された。
十三年前に指導者が捕まったせいで、それ以降目立った活動はなされていない。
会員の規模は数万人以上ともみられ、海外にも多数の信仰者がいる。


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