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103 名前:名無しさん[sage] 投稿日:2016/03/27(日) 21:43:27 ID:SoEOAtLY0
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(´・_ゝ・`) 「生きてるか、おい」
(´・ω・`) 「……残念だったな」
簡易ベッドの上に寝かされた諸本は、全身の至る所に包帯を巻かれていた。
そのせいで軽い寝返りすら打てずに舌打ちをする。
ヤニで汚れた見慣れた天井おかげで、諸本は現在地を確認できた。
時計は昼を回っており、諸本は半日以上意識を失っていたのだと気付く。
(´・_ゝ・`) 「悪いな、病院に入れてやれなくて」
(´・ω・`) 「俺は別に大丈夫です。武雲さんは……」
( ・∀・) 「武雲さんは、まだ見つかってません」
(´・_ゝ・`) 「焼けた家の中はまだ調べてない。危険物が残ってるかもしれないからな……」
(´・ω・`) 「そうですか」
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104 名前:名無しさん[sage] 投稿日:2016/03/27(日) 21:44:11 ID:SoEOAtLY0
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(´・_ゝ・`) 「医者に診てもらったが、お前どういう体の構造してんだ。
あれだけの事故の後、ぼっこぼこにされても打ち身と擦り傷、打撲……全治一週間だとよ」
信頼のできる医者を呼び、寝ている諸本の診療をしてもらっていた。
(´・ω・`) 「そうか……」
(´・_ゝ・`) 「妻子のことだが……すまない、俺がもう少し早く気付いていれば……」
(´-ω-`) 「気にするな。俺が必ず助け出す。必ず」
静かな室内でパソコンのメール受信音が鳴った。
出実は送り先が本部になっていることだけを確認してすぐに開く。
(;´・_ゝ・`) 「なっ……なんだこれ……」
突如として画面が真っ暗に染まり、無数の英単語が下から上に流れていく。
その内容がすぐに判断できたのは出実の能力があったからこそ。
(#´・_ゝ・`) 「くそがっ!」
キーボードをたたき壊すような勢いで打ち始める。
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105 名前:名無しさん[sage] 投稿日:2016/03/27(日) 21:45:03 ID:SoEOAtLY0
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('A`) 「どうしたんですか」
(;´・_ゝ・`) 「くっ……話しかけるな、気が散る」
出実の後ろに回って画面を見ても、茂羅と毒男には何が起きているのかわからない。
ベッドに寝ていた諸本には尚更であった。
(´・ω・`) 「おい、何が起きてる」
(; ・∀・) 「わかんないっす……」
長々と打ち込んではエラー音が響く。
それを何度も繰り返し、出実はパソコンの回線を引き抜いた。
(´・_ゝ・`) 「舐めた真似しやがって……」
(´・ω・`) 「どういうことだ」
(#´・_ゝ・`) 「お前は寝てろっ……あーくそっ……」
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106 名前:名無しさん[sage] 投稿日:2016/03/27(日) 21:46:16 ID:SoEOAtLY0
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絶え間なく指を動かしながら、起き上がろうとした諸本を制して、戸棚の中から幾つかのUSBメモリを取り出した。
全てのUSBポートに差し込み、中に保存してあるプログラムを起動する。
画面上を文字が踊り続けた後、うるさい位に鳴り続けるエラー音の大合唱。
それに対して何もできなかった結果、出実のパソコンは完全にその機能を失った。
(#´・_ゝ・`) 「……本部のメールを偽装したトラップだ。こんな簡単なもの踏むとはな」
状況が分からない三人に出実は説明した。
自身の失策と、想定を上回る相手の存在を。
(´・_ゝ・`) 「メールを開いたせいで添付ファイルに偽装されていたウィルスが俺のパソコンにダウンロードされた。
常設してある特別製のファイヤーウォールは全く役立たず。
取り敢えず線をぶち抜いたが、パソコンをオーバーワークで破壊しようとする動きに対応できなかった」
出実の机の上から発せられている焦げた臭い。
それが天才の敗北を決定的なものにしていた。
( ・∀・) 「つまり、ゲ=ハにはデミさんよりも優秀な人間がいるってことっすか」
(´・_ゝ・`) 「わからん。これだけのウィルスを一人で組んでるなら、そうかもしれん。
特別製で予算五十万もかかったんだがな……」
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107 名前:名無しさん[sage] 投稿日:2016/03/27(日) 21:47:30 ID:SoEOAtLY0
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('A`) 「デミさん……今度は俺のパソコンにメールが来ました」
(´・_ゝ・`) 「……見せろ」
毒男の机の前に行き、そのメールを開いた。
(;'A`) 「え?」
(´・_ゝ・`) 「俺のパソコンを破壊した以上、敵の目的は攻撃じゃない。
ここまで出来る奴にとっては、特対課のネットワークはザルだからな」
('A`) 「えっと……これは、ゲ=ハからの……挑戦状?」
(´・_ゝ・`) 「諸本、良い知らせと悪い知らせ、どっちから聞きたい」
(´・ω・`) 「いい知らせから」
(´・_ゝ・`) 「奥さんと娘さんは生きてる。怪我もなさそうだ」
メールに添付されたアドレスに飛ぶと、動画のストリーミングが開始された。
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108 名前:名無しさん[sage] 投稿日:2016/03/27(日) 21:49:28 ID:SoEOAtLY0
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最初に映ったのは俯きながらも、真っ直ぐ歩く女性と少女。
諸本の妻である空と璃々に間違いがなかった。
窓の外に映る景色は三階ほどの高さ。
事務所のようなただっぴろい空間の中心に二人は座らされていた。
覆面をした数人の男達が仕掛けを組み上げていく。
(´・ω・`) 「悪い知らせは」
(#´・_ゝ・`) 「じきに聞こえるはずだ」
( ) 『待たせたね、特対課の皆さん。この通信はリアルタイムで行われているよ。
さっきのプレゼントは楽しんでもらえたかな、出実警視長?』
露骨な煽り文句に苛立ち、出実は机の上を殴りつけた。
振動で書類の山が崩れ、床に散らばる。
(#´・_ゝ・`) 「糞が、舐めた真似しやがって」
( ) 『さて、本題に入ろう。今ここに、諸本警視の奥さんと娘さんがいる。
あぁ、大丈夫。何もしていないさ。悪戯好きな部下は多いが、我々はきちんと統制されている。
この建物、見覚えは無いかな』
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109 名前:名無しさん[sage] 投稿日:2016/03/27(日) 21:52:39 ID:SoEOAtLY0
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男が立っている位置を外れ、カメラのピントが後ろの窓に合う。
その先に見えるのは、巨大な駅。
丁度新幹線がホームに入ってきているところであった。
( ・∀・) 「ゼンレス駅っすね……」
ヴィップの交通機関の中心。
バス、新幹線、在来線などの路線が集中している国内でも相当な大きさを誇るターミナル駅。
( ) 『ゼンレス駅の近くにある事務所の三階に彼女たちはいる。
今から三時間後、仕掛けられた爆弾が爆発し、現状のままでは確実に死に至るだろう』
(;´・ω・`) 「すぐに……っ」
(´・_ゝ・`) 「座ってろ」
( ) 『これは挑戦状だ。我々から、特対課の諸君への。
ゲ=ハの誰も事務所にはいない。爆弾を無事解除できれば人質はただで救出できる。
悪い話ではないだろう……?』
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110 名前:名無しさん[sage] 投稿日:2016/03/27(日) 21:55:01 ID:SoEOAtLY0
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('A`) 「行ってくる」
(´・_ゝ・`) 「待て、まだ終わってない」
('A`) 「時間が無いだろ」
(´-ω・`) 「お前が行く必要はない……俺が……」
ベッドから起き上がった諸本は、苦痛に顔を歪めながら立ちあがる。
( ) 『挑戦するもしないも自由だ。いずれこの国は我々によって破壊される。
今死ぬのも後で死ぬのも同じことだ。さて、それでは特対課の諸君。また会おう』
(´・_ゝ・`) 「……」
警察庁から駅までは二十分もあればたどり着ける。
出実は課内にいる人間を見回す。
('A`) 「行かせてください。建物内で人質の救出。俺向きなはずです」
(´・ω・`) 「お前に迷惑をかけるわけにはいかない」
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111 名前:名無しさん[sage] 投稿日:2016/03/27(日) 21:58:41 ID:SoEOAtLY0
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(#´・_ゝ・`) 「お前ら行くつもりかもしれんが、俺が許可を出さなきゃいけるわけねぇだろ。
待ってない……って言うから行く? のこのこと馬鹿か。
特殊部隊で人数かけた方が安全に決まってんだろうが」
(#´-ω・`) 「あんたは妻と娘の命を他の人間に預けろと? ふざけるな……っっつつ……」
(´・_ゝ・`) 「てめぇの怪我を治してからにしろ。良いか、俺がこの課の頭だ。
お前ら全員の命を預かってるのも俺だ。わかってんのか」
(#´・ω・`) 「わかってねぇのはてめぇだ! 俺の命で家族が助かるんなら喜んで払うってんだよ!」
(#´・_ゝ・`) 「ガキみたいに駄々こねんじゃねぇ!」
今にも殴り合いを始めそうなほどの剣幕で睨み合う二人。
それを相手にもせず戦闘の準備をしている者も二人。
(´・_ゝ・`) 「おい、お前らも何してんだ」
('A`) 「……デミさん、手」
(´・_ゝ・`) 「…………」
あまりに強く握りしめられた出実の手は真っ白になっていた。
毒男に指摘されて僅かばかり緩む。
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112 名前:名無しさん[sage] 投稿日:2016/03/27(日) 22:02:11 ID:SoEOAtLY0
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('A`) 「おい茂羅」
( ・∀・) 「え、なんすか?」
('A`) 「なに準備してんだ。お前が来ても邪魔だ」
( ・∀・) 「いやいやいや、爆弾ですよ? 俺の出番じゃないっすか」
('A`) 「爆発物解体くらいなら俺一人でできる」
( ・∀・) 「ガスだったら?
映像だけじゃよくわからないですけど、火薬以外でも人は殺せますよ」
('A`) 「っち……」
(´・_ゝ・`) 「待てって……言ってるだろ。命令違反で懲戒免職にするぞ」
出実は扉を塞ぐように立つ。
その手に構えているのは黒く光る拳銃。
決して仲間に向ける様なものではないはずのそれが、毒男を真っ直ぐに捉えていた。
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113 名前:名無しさん[sage] 投稿日:2016/03/27(日) 22:03:27 ID:SoEOAtLY0
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( ・∀・) 「助けたい人を助けることができないなら、警察官である必要はないです」
警察手帳を胸ポケットから取り出して後ろに放り投げた。
綺麗な弧を描いて出実の机の上に着地する。
('A`) 「デミさん」
(´-_ゝ-`) 「っはぁー……」
頭を抑えながら深いため息をついた。
長い沈黙を埋めようとはせず、煙草を取り出そうと持ち上げた手を元の位置に戻す。
一つずつ聞く、と前置きをする出実。
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114 名前:名無しさん[sage] 投稿日:2016/03/27(日) 22:07:02 ID:SoEOAtLY0
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(´・_ゝ・`) 「……諸本、お前は仲間が信頼できるのか」
(´・ω・`) 「当たり前だ」
(´・_ゝ・`) 「……毒男、茂羅、お前ら他人のために命かけられるのか」
('A`) 「当たり前です」
( ・∀・) 「当たり前っす」
銀のアタッシュケースと、黒のリュックサック。
毒男と茂羅はそれぞれの荷物を持った。
それらには爆弾解体のために必要な専門の道具が詰まっている。
(´・_ゝ・`) 「・…………毒男、茂羅、諸本の妻子を救いに行け。
タイムリミットは残り二時間五十分。頼んだぞ」
('A`)( ・∀・) 「了解!」
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115 名前:名無しさん[sage] 投稿日:2016/03/27(日) 22:08:14 ID:SoEOAtLY0
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【銀のアタッシュケース】
毒男の仕事道具。主に爆弾解体用の道具が入っている。
たまに現金を入れて運ぶ仕事をするためにも用いられる。
現金主義である毒男らしい鞄であるが、平時から盗難被害によく合う。
車の中に置いてあったのを盗まれたとき、毒男は犯人が泣いて許しを乞うまで追い詰めた。
余談だがその時中に入っていたのは、母の日のためにブローチである。
【黒のナップサック】
お洒落は欠かさない茂羅ではあるが、仕事においては効率を最重要視する。
背負って移動できるため重量物を入れても運びやすい。
スーツ姿で背負うとちぐはぐになってしまうことを本人も気にしている。
茂羅は道具を購入するのに金に糸目はつけず、登山用品の最高級ブランド。
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