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191 名前:名無しさん[sage] 投稿日:2016/03/29(火) 22:53:17 ID:J.heRfoA0
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(#´・_ゝ・`) 「おい! 突入班の様子はどうなってる! 安全確保が出来てない?
そんなんなら突入班やめてしまえ」
从#゚∀从 「だーから、さっさと一般市民を非難させろ。時間が無い!
あ? ゲ=ハが国を滅ぼすって言ってんだろうが! 今すぐやりやがれ!」
諸本からの通信が途絶えて三十分ほど経った頃、特対課の室内は異様な熱気に包まれていた。
その場にいた誰も状況が分からず、方々に電話をかけている。
ただ一人、若田だけがゆっくりとお茶を飲んでいた。
( <●><●>) 「この騒がしさ、懐かしいですね……」
( ´_ゝ`) 「若田さん、流石に不謹慎ですよ」
( <●><●>) 「そうでしたね。それよりもあなた方は何もしなくていいんですか?」
(´<_` ) 「俺らの任務は、爆弾の在処を特定することでしたから」
( <●><●>) 「成程。ただし、私の経験から物を言わせてもらうならば、事はそう単純ではないと思いますよ」
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192 名前:名無しさん[sage] 投稿日:2016/03/29(火) 22:54:59 ID:J.heRfoA0
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飲みかけの湯呑を机の上に戻し、若田は地図を見つめる。
大きく×印がかかれた場所が諸本の向かった複合情報施設、アーカーシャ。
空調用のダクトが付近の地上に何地点も存在していることから、ガスの拡散には最も効率が良い。
出実と高岡が話し合って出た結論だった。
兄者と弟者はそれに反対するだけの意見も考えもなく、手放しで賛成した。
後は諸本が敵を鎮圧すればすぐに爆弾処理班を投入することができる状況。
今日が終わるまで後三時間もあり、諸本に全幅の信頼を置いている出実は、
特対課内で後処理の話をする余裕すらあった。
( <●><●>) 「諸本は優秀です。特にこと戦闘においては他の追随を許しません。
地下の複合情報施設の方は恐らく解決するでしょうね」
(´<_` ) 「じゃあ何が」
( <●><●>) 「ゲ=ハの何者が今回の騒動の原因かわかりませんが、
その者がロマネスクの教えを忠実に実行しているとするならば、この程度では済まない筈です」
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193 名前:名無しさん[sage] 投稿日:2016/03/29(火) 22:55:49 ID:J.heRfoA0
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( ´_ゝ`) 「俺らはどうするべきでしょうか」
( <●><●>) 「私にはそれが分かりません。
国一つ滅ぼすほどの爆弾が仕掛けられる場所など限られているはずです。
貴重な毒ガスを複数施設に分散して用いるほど愚かなことはしません。
逆にその効果が薄まってしまいますから。火薬以外で国を破壊することは果たして可能でしょうか」
(´・_ゝ・`) 「若田さん、その話ちょっといいですか」
いつの間にか電話を終えた出実と高岡が机に戻ってきていた。
( <●><●>) 「はい、様子はどうですか」
(´・_ゝ・`) 「いまいちですね。こっちは命を懸けてるのにどうも後に着いて来ないです」
( <●><●>) 「そう言ってあげないでください。向こうの感覚が普通ですから」
从 ゚∀从 「そういえば、連絡来てたの忘れてました。
高層ビルの方は収穫無しです。残りのフォーエバースタイル事務所も同じでしたね。
ただ、大きな何かを移動させた後はあると」
高岡は特対課のパソコンのメールを開き、写真を広げる。
地面に残っている日焼けの痕が、かなり重く大きなものだということを窺わせた。
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194 名前:名無しさん[sage] 投稿日:2016/03/29(火) 22:57:11 ID:J.heRfoA0
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(´・_ゝ・`) 「それで、さっきの話ですけど。ゲ=ハがまだ奥の手を隠してると?」
( <●><●>) 「実際はわかりません。ただ、ロマネスクなら確実にもう一手打っているでしょう。
それも、此方が気づいた時には手遅れのような重い一手を、です」
从 ゚∀从 「火薬を使わない爆弾か……プラスチック爆弾とかっすね」
( ´_ゝ`) 「葉音、お前黙ってたほうが良いぞ」
从 ゚∀从 「あぁ?」
(´・_ゝ・`) 「プラスチック爆弾は火薬を使っている。プラスチックとは可塑性、と言う意味だ。
粘土みたいに変形できるってことな」
从 ゚∀从 「……マジかよ」
(´<_` ) 「ひとつ勉強になったな。まぁそれで、どうだろうな出実さん」
(´・_ゝ・`) 「化学薬品だったら茂羅の知識が必要になる。あいつは今連絡が取れないが……」
昨日、特対課の事務所を出て行ってから、誰も茂羅がどこにいるのか知らなかった。
朝から定期的に出実が電話していたが、携帯は圏外でつながらない。
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195 名前:名無しさん[sage] 投稿日:2016/03/29(火) 22:58:33 ID:J.heRfoA0
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( <●><●>) 「すいません、どうも混乱させてしまっているみたいですね」
(´・_ゝ・`) 「いえ、そんなことは」
出実自身も感じていた言葉にできない違和感。
それは若田の言う通りであった。
かつてチャンネル全域を恐怖のどん底に落としたゲ=ハが、こんなにも単純な仕掛けで済ませるだろうか。
その疑問に答えることのできる人間はいない。
(´・_ゝ・`) 「流石兄弟、もう一回事件簿を見せてくれ」
( ´_ゝ`) 「ほらよ。ただ、それはこの前までのデータだ」
投げられた資料の束を掴み、乱雑にページをめくっていく。
一つずつの事件の概要を無言で読む。
最後の事件の日付は、一週間前。特対課とは何の関係もないもの。
(´<_` ) 「それに足して、ゲ=ハの活動が表立ってきた時の事件が……」
(;´・_ゝ・`) 「……っ! そうか!」
弟者の補足で気づきを得る。
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196 名前:名無しさん[sage] 投稿日:2016/03/29(火) 23:00:30 ID:J.heRfoA0
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从 ゚∀从 「何か気づいたんですか?」
(´・_ゝ・`) 「ゲ=ハが起こした最近の事件に二つ。
俺のパソコンを破壊したウィルスと、毒男の命を奪った爆弾。
どっちもこちらが不利な状況だったことは否めないが、
特対課を上回るほどの人材がいる可能性があるってことだ。
たった一人で、この二つの事件が可能だと思うか?」
(´<_` ) 「……! 爆弾を作ったやつがアーカーシャを狙っているとすれば」
( ´_ゝ`) 「ウィルスを作ったやつがどこかを狙っているはずだ」
( <●><●>) 「コンピューターウィルスなら、ヴィップを一瞬で滅ぼすこともが可能ですか?」
(´・_ゝ・`) 「一瞬には語弊がありますが。破壊するのは一瞬、その結果が影響するのはその後です。
あらゆる国家、民間のデータバンクに対してウィルスをばら撒けば……」
( ´_ゝ`) 「大混乱だろうな。戸籍も銀行口座も、全てランダムに変更されてしまえば」
(´<_` ) 「となると移動されたのはパソコンか。それも、かなりのスペックの」
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197 名前:名無しさん[sage] 投稿日:2016/03/29(火) 23:01:25 ID:J.heRfoA0
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俄かに騒がしくなった特対課室。
流石兄弟が移動予測地点をいくつもピックアップしていく。
葉音はそれぞれの地点に警官を走らせるように電話で指示する。
(;´・_ゝ・`) 「何処だ……」
( <●><●>) 「少し落ち着きましょう、出実君」
(;´・_ゝ・`) 「若田さん、しかし時間がないんです」
ゲ=ハが宣言した時間まで残り四時間。
もし電子爆弾が存在した時、それを解除できるまでの時間を逆算する出実。
( <●><●>) 「そういう時だからです。何の手助けもできない私から言われるのは腹が立つでしょうが。
相手のペースに乗っては駄目です」
(´-_ゝ-`) 「……」
出実は大きく深呼吸をした。
閉ざされた会議室の中に充満した煙草の臭いで肺を満たす。
その行為を二、三度繰り返して思考を明快にする。
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198 名前:名無しさん[sage] 投稿日:2016/03/29(火) 23:02:02 ID:J.heRfoA0
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(´・_ゝ・`) 「こっちから仕掛ける」
( ´_ゝ`) 「は?」
(´・_ゝ・`) 「向こうは俺を倒して油断しきってるはずだ。
自分で言うのもなんだが、このチャンネルで俺よりも詳しい奴はいない」
(´<_` ) 「……傲慢だが、その通りだろうな」
(´・_ゝ・`) 「恐らく、時間通りにネットにばら撒くためにスタンドアロンにしてるなんてことはない……はずだ」
(´<_` ) 「だがどうやって探す。圧倒的に情報が足りない」
( ´_ゝ`) 「手当たり次第に調べる人手も時間もない」
出実は一瞬考え、自らの納得できる答えを導き出す。
苦いインスタントのブラックコーヒーを自前のコップに注いで、諸本の席に座った。。
(´・_ゝ・`) 「情報量だ。国家も民間も関係なく荒し尽すほどのウィルスの容量が小さいわけがない。
どんなに拡張子やファイル名を偽装しても、容量は誤魔化せない。
高性能なパソコンがあったとしても、回線が細ければウィルスは有効にネット上に放出されない」
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199 名前:名無しさん[sage] 投稿日:2016/03/29(火) 23:03:06 ID:J.heRfoA0
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( ´_ゝ`) 「……テストをしてるってことか」
(´<_` ) 「しかし、各プロバイダの上から順にみていくだけでも……いや、そうか。誘拐事件!」
(´・_ゝ・`) 「ナンジェイネットワーク」
流石兄弟が調べ上げたゲ=ハ関連予想事件簿。
その中の一つに少し変わった誘拐事件があった。
通報から数時間後、犯人からの電話を取った父親は、幾つかの条件をのんだらしい。
その内容は警察側には教えてもらえなかったが、娘はさほど時間を置かず無事に帰ってきた。
犯人は未だに捕まっていない。
被害者の父親が務めていた会社がナンジイェネットワーク。ヴィップ国の大手回線接続事業者である。
( ´_ゝ`) 「少し待て、俺と弟者ですぐに洗い出す」
(´<_` ) 「緊急事態だ、少々手荒な手段をとっても許されるだろうな」
( <●><●>) 「さて、調査はお二人の得意分野ですからね」
从 ゚∀从 「どうやら俺は全く役に立ちそうにないな」
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200 名前:名無しさん[sage] 投稿日:2016/03/29(火) 23:04:03 ID:J.heRfoA0
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( <●><●>) 「そうでしょうか。あなたにもできることがあると私は思いますが」
从 ゚∀从 「……思いつきません」
( <●><●>) 「もう少し待って居ればわかりますよ」
立ち上がっていた高岡は、若田の言葉を聞いて再び椅子についた。
ただ座っていることが気に食わず、手元に転がっている資料の一つ一つをじっくり読み始める。
孫を見守る好々爺のように、その姿を見て微笑む若田。
(´・_ゝ・`) 「ったく……つまらねぇ時間だ」
新たな煙草を取り出して火をつける出実。
静かな呼吸で火種をゆったりと燃やしていた。
ただただ、流石兄弟の仕事が終わるのを待つ。言葉とは裏腹に静かな闘志を滾らせながら。
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201 名前:名無しさん[sage] 投稿日:2016/03/29(火) 23:05:17 ID:J.heRfoA0
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【姓名】 若田 桝
【読み】 ワカタ マス
【年齢】 60
【役職】 警視正
【専門】 暗記
【付記】 特対課の暴れ龍と呼ばれていた荒巻龍をしても頭が上がらない警察庁の重鎮。
役職は止まっているものの、多くの警察官から慕われている。
特技の暗記はもはや神域に達しており、数日前程度の会話ならほぼすべて暗唱できる。
格闘や交渉など何でもこなす元特対課の中でも絶対的エース。
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