ハゲタカのようです

49 名前:名無しさん[sage] 投稿日:2016/03/27(日) 19:17:02 ID:SoEOAtLY0



特定犯罪激化対策課の部屋は、いつにもまして曇っていた。
書類を持ってきた事務の女性が、扉を開けた瞬間にそれを中に放り投げて出ていくほどに。

狭い室内に五人も喫煙者がいる時点で、
部屋の中の匂いは地獄の釜よりもひどい。

(´・_ゝ・`) 「おいおい、今の態度おかしいだろ」

( ・∀・) 「そうっすね」

(´・_ゝ・`) 「おい茂羅。お前ちょっと文句言って来い」

( ・∀・) 「え、嫌っすよ」

(´・ω・`) 「行かなくていいぞ茂羅」

( ・∀・) 「ですよね」

(´・ω・`) 「ただその代わりに俺の煙草買ってきてくれ。金は後で払う」

50 名前:名無しさん[sage] 投稿日:2016/03/27(日) 19:18:33 ID:SoEOAtLY0

特対課の中で最も若い茂羅は、肩身の狭い思いをしながら日々を過ごしていた。
普段は若造扱いされるのを嫌って課内にはめったに寄り付かない。
今日五人揃っているのは、一月に一回の定例会議のためだ。

だが会議はあってない様なもので、こうして煙草を吸いながら近況報告をするだけであった。
そのため、月一で茂羅は煙草を買いに行かされている。
庁舎内を三から四種類の煙草のカートンを持って歩く中年男を想像してもらいたい。
どのような扱いを受けるかすぐにわかるだろう。

( ・∀・) 「たまには自分で行ってくださいよ」

(#´・ω・`) 「あぁ?」

チャンネル国民にしてはかなり珍しい百九十センチを超える大柄な体格に、
逞しい筋肉と相まってその睨みは人を殺せそうなほどの迫力があった。

( ^ω^) 「諸本、茂羅の言う通りたまには自分で行け、後俺の煙草も頼む」

(;´・ω・`) 「えっ……羽毛田さん」

( ^ω^) 「俺をその名前で呼ぶな」

51 名前:名無しさん[sage] 投稿日:2016/03/27(日) 19:20:54 ID:SoEOAtLY0

(;´・ω・`) 「あ、すいません。武雲さん。俺ですか」

( ^ω^) 「後輩ばっかり使ってやるなよ」

(´・ω・`) 「あなたには言われたくないですよ」

(´・_ゝ・`) 「落ち着けよ……っと電話だ」

課内に緊張が走った。
特対課の電話が鳴るというこは、基本的に仕事の話である。

(´・_ゝ・`) 「あぁ? 俺か? 流石兄弟がいるだろうが! あぁ! くっそ……。っち……了解」

電話を置いた出実。
暫く何もしゃべらずに煙草を吸っていた。
残りの四人が話題を振れと目くばせをする中、内藤が火ぶたを切った。

( ^ω^) 「どんな案件だった」

(´・_ゝ・`) 「警視庁のサーバーが何者かにクラックらされてるそうだ。
       愉快犯らしくてな、とにかく各自パソコンで確認してみろ」

52 名前:名無しさん[sage] 投稿日:2016/03/27(日) 19:22:01 ID:SoEOAtLY0

先程まで好きなように過ごしてた課内の全員がすぐに警視庁のホームページにアクセスする。
普段のトップページに上書きされるように存在するドット絵で描かれた爆弾。
それはGIF画像のように爆発を繰り返していた。

(´・_ゝ・`) 「で、警視庁サイバー犯罪対策課がいろいろやったらしいんだが、結局消せなかった」

('A`) 「流石兄弟は?」

(´・_ゝ・`) 「休暇だと、ふざけた連中だ」

他の課の人間に聞かれていたら皆が口をそろえて、お前に言われたくない、と言うだろう。
特定犯罪激化対策課よりも休暇が多い部署なんてないのだから。

( ・∀・) 「そう言えばデミさんの仕事見るの初めてっすね」

(#´・_ゝ・`) 「あ? 俺が仕事してないって言いてぇのか」

(; ・∀・) 「ち、違いますよ。俺らへの仕事はデミさん経由できますけど、
       デミさんの仕事ってそうじゃないじゃないですか」

( ^ω^) 「デミの場合、大抵はこの事務所で仕事ができるからな」

53 名前:名無しさん[sage] 投稿日:2016/03/27(日) 19:23:35 ID:SoEOAtLY0

(´・_ゝ・`) 「っつーよりは、そうできるようにしてるんだよ。わざわざな」

('A`) 「俺も興味がありますね。デミさんの仕事」

(´・ω・`) 「大した仕事してないから見せたことないんだろ」

(´・_ゝ・`) 「おい、諸本。お前今回の人事考課覚えておけよ」

(#´・ω・`) 「糞っ……」

( ^ω^) 「今のは諸本が悪い」

(´・_ゝ・`) 「仕方ねぇから見せてやるよ」

出実は背中側にある棚を開け、中にある無数のUSBメモリのうちの一つを取り出した。
通し番号が降られているだけの何の変哲もないもの。
記憶容量は市販されているものよりもかなり大きいことだけが表示からわかる。

( ^ω^) 「特注のUSBメモリだ。お前ら、パソコンの画面見てろ。ぼーっとしてると見逃しちまうぞ」

54 名前:名無しさん[sage] 投稿日:2016/03/27(日) 19:24:06 ID:SoEOAtLY0

( ・∀・) 「え……?」

出実が行ったのは、USBメモリを自分のパソコンに差し込み、アプリケーションを起動するだけ。
事前に作成された通りに、プログラムが勝手に仕事をこなす。
暫く接続不能になり、更新すると元通りの警視庁のホームページになっていた。
爆弾のドット絵はどこにもない。

(´・_ゝ・`) 「予めプログラムを組んでおけばこの程度なら解決できる。すぐにな」

( ・∀・) 「……すげーっすね」

(´・_ゝ・`) 「ふん、何のために毎日毎日事務所にいると思ってるんだ。
        クロスワードやナンプレ解くだけが仕事じゃないんだよ、諸本」

(;´・ω・`) 「ぐっ………………すいませんでした」

(´^_ゝ^`) 「分かればいいんだよ、分かれば」

一仕事終えたデミタスは大欠伸をしながら背伸びした。
髪の毛一本すら生えていない立派な禿頭を窓の外に晒しながら。

55 名前:名無しさん[sage] 投稿日:2016/03/27(日) 19:27:16 ID:SoEOAtLY0


>>


【番号】 012

【姓名】 兀山 出実

【読み】 コツザン デミ

【年齢】 45

【役職】 警視長/課長

【専門】 情報工学

【解決事件】

・大手通信事業者乗っ取り事件
・官公庁情報漏えい事件



>>

inserted by FC2 system