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71 名前:名無しさん[sage] 投稿日:2016/03/27(日) 19:56:07 ID:SoEOAtLY0
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('A`) 「すいません、遅くなりました」
(´・ω・`) 「ったく、連絡してから一時間は経ってるぞ」
('A`) 「朝はどうも弱くて……」
(´・ω・`) 「普通の会社ならクビだ」
(´・_ゝ・`) 「もういいだろ。……取り敢えず、今回の対ゲ=ハでプランがあるやつはいるか」
出実は課内を見回すが、誰も答えなかった。
それも当然だろう。たった一時間そこらで、危険な組織に対する手段を考えつけるはずもない。
(´・ω・`) 「とは言っても、相手方の動きが分からないとどうもできない」
( ・∀・) 「次の爆破予告とかはなかったんですよね?」
(´・ω・`) 「聞いてない。メディアも同じだろう」
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72 名前:名無しさん[sage] 投稿日:2016/03/27(日) 19:59:04 ID:SoEOAtLY0
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リモコン片手にチャンネルを何度も変える諸本。
臨時ニュースで流される映像はどれも一時間前と同じであった。
(´・_ゝ・`) 「インターネットでも同じだ。しょうもない憶測ばっかり飛び交ってやがる」
('A`) 「正直対策しようが……ふぁ……無いですね」
大きな欠伸をして目元に涙を浮かべる毒男。
手元では瞬く間に拳銃がばらされて組み上げられていく。
銃火器の扱いに長けた毒男ならではの技能だ。
(´・_ゝ・`) 「龍じいは他に何も言ってなかったのか?」
(´・ω・`) 「……」
諸本は少しの間逡巡し、伝えることを決めた。
(´・ω・`) 「警察庁内に……裏切り者がいるかもしれないと」
(´・_ゝ・`) 「……頭が痛い話だな」
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73 名前:名無しさん[sage] 投稿日:2016/03/27(日) 19:59:46 ID:SoEOAtLY0
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風邪による頭痛に加え、他所の課を誰も信用が出来ない状態であることを知り、出実はぼやいた。
四種類の煙が課内の天井付近で混じり合う。
誰もが無言のまま、ひたすらに煙を吐き出す。
( ´_ゝ`) 「やぁやぁハゲタカの皆さんお揃いで」
(´<_` ) 「いや待てアニジャ。ハゲタカのナンバーツーが見当たらない」
ノックもなしに特対課の部屋に入ってきたのは、先程会議室で諸本と争っていた双子。
(´・_ゝ・`) 「てめぇらか……今は邪魔すんな……」
( ´_ゝ`) 「おっと、特別な情報を持ってきたんだがな」
(´<_` ) 「優秀なハゲヤマさんはご自分で調べるそうだ」
(#´-_ゝ-`) 「……っふー……俺はコツザンだ」
('A`) 「殺りますか?」
毒男が手元の拳銃の安全装置を外す。
普段使いには邪魔になるためサプレッサーはついていない。
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74 名前:名無しさん[sage] 投稿日:2016/03/27(日) 20:02:17 ID:SoEOAtLY0
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(´-_ゝ-`) 「やめろ、銃声で頭痛がひどくなる」
( ・∀・) 「致死性の猛毒なら用意できますよ」
(´・ω・`) 「密室で使ったら俺らも御陀仏だろうが。何の用だ流石兄弟。場合によっちゃ生かして返さねぇぞ」
並みの人間であれば腰が抜けて動けなる様な諸本の睨みにも全く動じず、
双子の兄が投げたのは何の変哲もないSDカード。
( ´_ゝ`) 「最近の事件で関係がありそうなものをピックアップしてみた」
(´<_` ) 「優秀なハゲタカの皆さんなら、それで次の襲撃地点くらい予測できるだろ?」
来た時と同じように双子は帰って行った。
嵐が過ぎ去ったかのような課内で、諸本は渡された記録媒体をパソコンに取り込み、
入っていたデータを全員分の共有フォルダーへとコピーした。
(´・_ゝ・`) 「随分丁寧に纏めてあるじゃないか」
('A`) 「オフカイ市で放火……? これがゲ=ハに関係あるのか?」
( ・∀・) 「あ、これ武雲さんが追いかけている事件っすね」
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75 名前:名無しさん[sage] 投稿日:2016/03/27(日) 20:04:53 ID:SoEOAtLY0
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(´・ω・`) 「ええと……全部で十五件か。全部この一年以内の事件だな」
(´・_ゝ・`) 「うちが直接関わったのは……三件か」
( ・∀・) 「デミさんがこの前解決した警察庁ホームページ乗っ取り事件と、俺が解決した化学薬品工場占拠事件。
それに、武雲さんの高層マンション密室殺人事件っすね」
(´・_ゝ・`) 「正直に言え。共通点が分かるやつはいるか。俺はさっぱり見つからん」
椅子に凭れて天井を見上げる出実。
顔を歪めているのは頭痛のせいだけではない。
(´・ω・`) 「さっぱりだ。俺はちょっと外に出て来る」
(´・_ゝ・`) 「連絡だけはとれるようにしておけよ」
(´・ω・`) 「了解」
諸本はお気に入りのコートを着て特対課を出ていった。
( ・∀・) 「今回のテロの目的ってなんなんすかね」
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76 名前:名無しさん[sage] 投稿日:2016/03/27(日) 20:05:28 ID:SoEOAtLY0
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('A`) 「仮に事件の首謀者がゲ=ハだとすれば、恐らく目的は手紙の通りだろうな。
刑務所に収監されているゲ=ハの指導者」
(´・_ゝ・`) 「……キングロマネスク」
十三年前のゲ=ハ戦争で荒巻龍に敗れ、捕まった男。
捕まってすぐ一審で死刑宣告を受けたが、
ゲ=ハ残党の暴走を恐れた政府が刑の執行をせずに未だに閉じ込められているまま。
( ・∀・) 「かなりやばい人だったとは聞いてますけど」
(´・_ゝ・`) 「ヤバいなんてもんじゃない。完全にイカれてる。
ロマネスクは龍じいに捕まるまでに二回追い詰められている。
一回目は娘と妻を炎の中に投げ込みその隙に難を逃れ、
二回目は彼を妄信する信者五十人近くを人の壁にして逃げ遂せた」
('A`) 「三回目、民間犠牲者を出しつつも龍さんが捕まえたんでしたね。
その時の死闘の話は聞いたことがあります。全身に八発の銃弾を受けても倒れなかったと」
( ・∀・) 「人間じゃないっすね……」
(´・_ゝ・`) 「他の事件は……エーエーバラバラ殺人事件、ナンジェイネットワーク社員の子供誘拐事件、
キジョ役員殺害事件、ヤオイ館爆破事件……? 最近の凶悪事件ばっかじゃねぇか」
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77 名前:名無しさん[sage] 投稿日:2016/03/27(日) 20:06:10 ID:SoEOAtLY0
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( ・∀・) 「でもたぶんこれ、ほとんど犯人捕まってますよね」
(´・_ゝ・`) 「武雲の事件以外は全部解決済みになってるな……」
事件名の横には詳細と、犯人確保の有無、対応した者、種々の情報が細大もらさず記入されている。
驚くべきは、今朝の会議からたった数時間でそれらの情報を纏めてきた流石兄弟の手腕。
庁内最高の情報屋とも呼ばれる所以であった。
(´・_ゝ・`) 「その通りだ。ったく……十三年もすれば衰えているだろうが、奴だけは解放しちゃいけねぇ。
おい……ニュースを見ろ」
用意された資料を黙々と読んでいた時、つけっぱなしにしていたテレビ番組の変化に出実が最初に気付く。
ニューススタジオに足早に入ってきた男が、一枚の紙を渡してキャスターに囁いた。
それを聞いて血の気をなくした表情のキャスターは、震える声で手元の原稿を読み上げる。
「た、たった今、裁判所爆破グループのものと思われるメッセージが届きました。
全国で流せとのことなので、さ、再生します!」
≪我々は……ゲ=ハである。このテープを聞いている諸君等は、命を無駄にしたく無ければ懸命な行動をしたまえ。
我々の目的は、ロマネスクの解放である。この目的が聞き入れられるまでは、矛先を収めるつもりはない。
三日以内に開放しなければ、あらゆる国の機関が我々の脅威に曝されるであろう。
そしてもう一つ、憎き荒巻龍の首を差し出せ。
さもなくば、荒巻龍が創設したロマネスクの敵。特定犯罪激化対策課の連中も同様に標的とする。
以上だ≫
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78 名前:名無しさん[sage] 投稿日:2016/03/27(日) 20:06:47 ID:SoEOAtLY0
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(´・_ゝ・`) 「…………」
('A`) 「…………」
( ・∀・) 「…………」
煙草を吸うのも忘れ、テレビに釘付けになっていた三人は、
指先に感じた熱で現実へと引き戻された。
( ・∀・) 「諸本さんに教えてあげた方が」
(;´・_ゝ・`) 「茂羅、すぐに電話しろ。毒男は武雲にだ」
('A`)( ・∀・) 「了解!」
毒男と茂羅はすぐに自分の携帯から電話を掛けた。
諸本はすぐに出たが、武雲は留守番電話に繋がっていた。
(; ・∀・) 「って大変なんですよ諸本さん、聞いてます? え? いや危ないですって! ちょっと! 話を聞いて……。
……切られました」
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79 名前:名無しさん[sage] 投稿日:2016/03/27(日) 20:07:36 ID:SoEOAtLY0
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(´・_ゝ・`) 「諸本は何て言ってた」
(; ・∀・) 「自分が囮になる……って……」
(#´・_ゝ・`) 「あの馬鹿……武雲はまだ出ないのか!」
('A`) 「すいません、何度もかけてるんですが……」
(´・_ゝ・`) 「ったくどいつもこいつも。いいか、とにかくここが一番安全なはずだ。待機だ。絶対に外に出るな。
後、お前ら家族をすぐに呼べ。ここで保護してもらう」
恨みを晴らすための犯罪は、恨んだ当人だけでなくその周囲に被害を及ぼすことがある。
その可能性を第一に考えた出実は、すぐに他の課員に家族への連絡を実行させた。
独り身一人暮らしで身寄りのない武雲には必要なかったが、諸本の家族には出実が連絡を済ませた。
( ・∀・) 「今回のヤマ、かなり厄介っすね」
('A`) 「敵がどこにいるのか全く分からない。何か少しでも頼りになるものがあれば……」
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80 名前:名無しさん[sage] 投稿日:2016/03/27(日) 20:08:45 ID:SoEOAtLY0
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言葉を切るように携帯が鳴った。
毒男は慌てて耳に当てる。
('A`) 「武雲さんからです。テレビ見ましたか? え? いや……わかりました」
電話をしながらメールを開く毒男。
そこにはほんの五分前に武雲からのメールが届いていた。
すぐに開くように指示され、メールの添付ファイルを開く。
テキストを撮った写真にはヴィップ国の象徴的な建物が羅列されており、幾つかに日付が記入されていた。
最も早い日付は今日と同じであり、裁判所と書かれた場所の隣。
('A`) 「これは……、え、はい。わかりました。武雲さんは……武雲さん? ……切れた」
(´・_ゝ・`) 「で、あいつはなんて」
半ばあきれ顔の出実に毒男は電話の内容を報告した。
(´・_ゝ・`) 「こいつはどこから手に入れた」
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81 名前:名無しさん[sage] 投稿日:2016/03/27(日) 20:11:24 ID:SoEOAtLY0
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('A`) 「例の高層マンション事件のガイシャのパソコンらしいです。
ほとんどデータは入って無いみたいですけど。今から家に帰ってそのパソコンと荷物を持ってくるって」
(;´・_ゝ・`) 「キナ臭くなってきやがった。とりあえず残りの事件を全部……調べろ」
立ち上がろうとしてぐらつき、机に手をついた出実。
その音で出実が体調不良であったことを思い出した毒男と茂羅。
慌てて部屋の中に戻り、両側から支えようとした。
それを断り、出実は椅子に深く座る。
('A`) 「デミさん、少し休んどいてください。俺らがやりますんで」
(;´・_ゝ・`) 「すまん……少し仮眠をする」
( ・∀・) 「ストーブの温度上げときます。毛布か何かいりますか?」
(´・_ゝ・`) 「いや、このままで大丈夫だ。しばらく任せた……」
目を閉じた出実を残し、二人は資料を集めに向かった。
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83 名前:名無しさん[sage] 投稿日:2016/03/27(日) 20:12:11 ID:SoEOAtLY0
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【ゲ=ハ関連予想事件簿】
・高層マンション密室殺人事件
・エーエーバラバラ殺人事件
・ナンジェイネットワーク社員の子息誘拐事件
・化学薬品工場占拠事件
・ヤオイ館爆破事件
・株式会社キジョロック役員拷問殺害事件
・河川敷ホームレス暴行事件
・危険物保管倉庫襲撃事件
・原発テロ未遂
・官邸前突発デモ事
・インターネットウィルス感染事件
・ツイッター上で荒巻龍殺害予告
・暴走運転で死傷者八人
・オフカイ市、リンゴジュース屋放火事件
・警視庁ホームページクラッキング事件
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