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164 名前:名無しさん[sage] 投稿日:2016/03/29(火) 22:08:43 ID:J.heRfoA0
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(;´・_ゝ・`) 「まずいな」
パソコンを打ち込む出実の手が止まった。
その視線はテレビに釘付けになっている。
( ´_ゝ`) 「どうした」
(´<_` ;) 「テレビを見ろ、兄者」
特対課の備品である小さなテレビに映っていたのは、爆破炎上するバス。
ゲ=ハのテロと思われる行為で恐らく最初の人的被害。
これにより、民衆の怒りは警察に向くことになる。
( <●><●>) 「諸本君が出向いているのですから、アーカーシャの件は問題なく解決するでしょう」
(´・_ゝ・`) 「ええ。ですが、アーカーシャはここから遠いです。交通渋滞等があれば、尚更時間がかかってしまう」
从 ゚∀从 「厄介だな。俺らが出ていったところで何かができるわけでもない。
例の爆破予定表。どこにある?」
( ´_ゝ`) 「これだ」
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165 名前:名無しさん[sage] 投稿日:2016/03/29(火) 22:10:44 ID:J.heRfoA0
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兄者が資料を投げ渡す。
それを受け取ってさっと内容に目を通す。
从 ゚∀从 「裁判所に始まって、シンフォニーホール、公民館、植物園、美術館、果ては電話ボックスまで。
あちこち好き勝手やってくれたもんだ。今日の予定は……ないんだな」
資料に記述されている日付は、昨日と一昨日のものしかなかった。
(´・_ゝ・`) 「ここから先は無差別ってことかもしれないな……」
从 ゚∀从 「犠牲者が出ないようにするにはどうすりゃいい。……ロマネスクを解放するフリはどうだ?」
(´・_ゝ・`) 「無理だろう。国が許可するとは思えない」
从 ゚∀从 「あんたと流石兄弟がいるんだ。ロマネスクが収監されている監獄の解錠くらいできるだろう」
( <●><●>) 「出来ないとは思いませんが、リスクが高いでしょう。
あの男は絶対に自由にはさせてはいけません」
从 ゚∀从 「ですか……」
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166 名前:名無しさん[sage] 投稿日:2016/03/29(火) 22:11:46 ID:J.heRfoA0
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(´<_` ) 「……おい、バスの影にいる男。諸本じゃないか?」
荒い画像ですらそれとはっきりわかる姿が映っていた。
爆破炎上するバスのすぐ横で、謎の人物を地面に叩き付けている。
( <●><●>) 「犯人でしょうか」
(;´・_ゝ・`) 「流石に何の罪もない人を傷つけるような奴じゃありませんから。
しかしなぜ……。っ! 後ろっ!」
叫んだ警告は届かない。
諸本の後ろに突然現れた何者かが、顔に向けてスプレーのようなものを吹き付けた。
直前まで動き回っていた諸本は、二、三歩ふら付き倒れて動かなくなる。
その体を後から現れた三人がカメラの視野の外へと担いでいった。
(;´・_ゝ・`) 「何が起きた」
( <●><●>) 「倒れ方からすると、死んだのではなさそうですが」
(; ´_ゝ`) 「ちょっとまて、じゃあアーカーシャはどうする」
俄かに緊張がはしる。
兄者の問いを受けて出実は静かに課内を見渡した。
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167 名前:名無しさん[sage] 投稿日:2016/03/29(火) 22:13:24 ID:J.heRfoA0
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流石兄弟は戦闘に関して全くの素人である。
多様な罠が仕掛けられているかもしれない場所に向かわせることは出来ない。
同時に高岡の選択肢も消えた。
優秀ではあるが警察官としては常識の域を出ない。
ゲ=ハにはまだ諸本すら打ち倒した相手がいる。そんな敵と相対できるわけがない。
自分自身の能力はよく理解出来ていた。
先の三人には劣らないものの、さほど上手ではないことを。
残る選択肢は若田一人。
しかし、いくら諸本を瞬時に転ばすことができても、六十になった老人では体力的な問題が大きすぎた。
(;´・_ゝ・`) 「くそっ……高岡、捜査員出せるか?」
从;゚∀从 「今連絡してる。ちょっと待て……。
俺だ、高岡だ。すぐに人が欲しい。え? 特対課の出実さんからだ!
最低でも十人以上! 危険物が処理出来る奴もいる! は? 三時間も待ってられるか!
いますぐやれ!」
刺々しい言葉を捲し立てる高岡。
出実は電話の相手に多少なりとも同情しながらも、会話の行く末を窺う。
叩き付ける様に備え付けの電話を切った高岡は、頭に手をやって白髪をかき上げた。
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168 名前:名無しさん[] 投稿日:2016/03/29(火) 22:15:13 ID:J.heRfoA0
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从 ゚∀从 「駄目だ。どこの部署もてんやわんや。人を出すだけの余裕がないとさ」
( <●><●>) 「困りましたね。やはり私が行くしかないでしょうか」
(; ´_ゝ`) 「それは……」
(;´・_ゝ・`) 「それは許可できません」
取り敢えずの否定を返したものの、具体案が出せなかった。
武雲が生死不明、毒男が死に、茂羅は消息不明の状況で、特対課には動かせる駒がほとんど残っていなかった。
(;´・_ゝ・`) 「とりあえず、諸本に電話をかけ続けてみます」
从 ゚∀从 「解決までの道筋が見えた所でこれか……一筋縄ではいかねーな……」
(´<_` ) 「高岡、それで三時間後には人が出せるってことか」
从;゚∀从 「それが……」
高岡は俯き言いよどんだ。
その意味が察せられない人間は、今この特対課の部屋にはいない。
高岡が上司に直談判した時、告げられた事実。
それは、仮に人が空いたとしても特対課の要望に応えられるかどうかはわからない、という言葉だった。
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169 名前:名無しさん[sage] 投稿日:2016/03/29(火) 22:16:27 ID:J.heRfoA0
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ゲ=ハの恐ろしさは誰よりも知っている世代の管理職の人間達は、
自らの部下をすすんで危険に曝すようなことはしない。
何かあればその責を負わなければならないため、誰もが協力を渋る。
(#´・_ゝ・`) 「あーっくそ! どうすりゃいい……」
毛のない頭を強く掻きながら、苛立ちを少しでも和らげるために狭い室内を歩き回る出実。
( <●><●>) 「諸本君を探すしかないでしょう。玉砕覚悟で飛び込むことも止む無しですが、まだ時間はあります。
あの場でも殺そうと思えばできたはずですが、それをしなかったからには生かしている理由があるという事。
携帯はまだかかるのでしょう?」
(´・_ゝ・`) 「はい、留守番に繋がりますが、壊されたり電源を切られたりと言うことは無さそうです」
( <●><●>) 「もし本当に限界一杯……そうですね、残り時間が四時間を切った場合は私が出向きます。
いいですね?」
有無を言わせない若田の言葉に、出実はただ頷くことしかできなかった。
( ´_ゝ`) 「しかし、探すと言ってもどこを探す?」
(´<_` ) 「兄者、それを考えるのが俺たちの役目じゃないか?」
( ´_ゝ`) 「確かに」
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170 名前:名無しさん[sage] 投稿日:2016/03/29(火) 22:17:42 ID:J.heRfoA0
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( <●><●>) 「まだ生きていると仮定して、ゲ=ハはどう利用するつもりでしょうか」
(´・_ゝ・`) 「人質交換の材料か……正直俺ら特対課が特別だからと言って、それ程の価値があるとは思えません。
そのことはゲ=ハもわかっているはずだ」
出実には国は絶対に応じないという確信があった。
そしてそれは、他の四人ともが共有していた。
(´<_` ) 「だとすると、遠ざけるのが目的だとか?」
( ´_ゝ`) 「諸本の能力を警戒していれば有り得る。だが殺さない理由にはならないがな」
(´<_` ) 「遠ざけるとすれば、どこかに移動させるか、閉じ込めるか」
( <●><●>) 「私なら前者を取りますね。物理的に間に合わない距離にしてしまう方が、より確実でしょう」
(´・_ゝ・`) 「寝ている人間を移動させる方法は? あんな目立つ人間を電車に乗せたりは出来ないだろう」
鍛え抜かれ逞しい身体に、目立つ頭髪。
頭の側頭部からだけ長い髪の毛が垂れ下がっている男などそうはいない。
ロップイヤーと呟いた諸本の同期が、片手で足を持たれて振り回されてた光景を思い出す出実。
幸い怪我はなかったが、その後すぐに地方への転属を申し出ていた。
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171 名前:名無しさん[sage] 投稿日:2016/03/29(火) 22:18:22 ID:J.heRfoA0
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从 ゚∀从 「今、現場付近で目撃証言を探させてましたが、何人か見たと言ってます。
黒のハイエースに乗せて移動していったようですね。番号はわかり次第連絡してくれます」
(´・_ゝ・`) 「流石兄弟!」
(#´_ゝ`) 「ああ、もう調べ始めてる。ったく」
(´<_`#) 「あのハゲ、面倒かけやがって」
ぶつくさと文句を言いながらも、指は細かくリズムを刻む。
首都高から一般道まであらゆる道路上の監視カメラのシステムへと潜り込み、
指定されたハイエースを探す地道な作業。
流石兄弟は、それをいくつも同時並行で行っていく。
刻一刻と過ぎていく時間の中で、特対課の部屋に焦躁が満ちる。
高岡はただ座して連絡を待ち、若田は全員に目が覚める様な熱いお茶を用意した。
出実もまた、特対課に置いてあるパソコンでできる限りを尽くす。
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172 名前:名無しさん[sage] 投稿日:2016/03/29(火) 22:19:47 ID:J.heRfoA0
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突如として鳴り響いた音楽。
十年ほど前に流行ったその曲は、高岡の携帯電話から流れていた。
从#゚∀从 「なに!?……番号が分かった? ああ!
三三〇四か! ありがとう! だそうだ!」
( ´_ゝ`) 「オーケィ。ばっちり聞こえた」
(´<_` ) 「番号が分かればわけはない。すぐに見つけてやるさ」
それは時間との戦いであった。
誰も話すことなく、ただただパソコンを叩く無機質な音だけが響く。
( ´_ゝ`) 「見つけた!!」 (´<_` )
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173 名前:名無しさん[sage] 投稿日:2016/03/29(火) 22:20:43 ID:J.heRfoA0
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環状線から北東方面のニューソクへ抜けるバイパス道。
完全に目張りをした黒色のハイエース。
番号は高岡の言っていた通りの三三〇四。
兄者と弟者がハイエースの向かっている先をあらゆる手段を用いて特定していく。
諸本が攫われてから五時間かけて、ようやくその居場所を突き止めた。
現在もヴィップから離れるように動き続けている車は、戻ってこれない程遠くへ向かおうとしていた。
(#´・_ゝ・`) 「高岡! すぐに止めろ!」
从#゚∀从 「あぁもう! わかってるって! 今、現地の警察に連絡してる!」
高岡は出来るだけ簡潔に、その用件を伝えた。
どうやら現地警察署の署長が電話を取っていたようで、話はスムーズに終わった。
从 ゚∀从 「今すぐ検問をしいて止めてくれるらしい!」
ゲ=ハの爆破予告まで残り十一時間。
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174 名前:名無しさん[sage] 投稿日:2016/03/29(火) 22:26:08 ID:J.heRfoA0
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【姓名】 流石 兄者
【読み】 サスガ アニジャ
【年齢】 42
【役職】 警視
【専門】 ソフトウェア 情報整理
【付記】 特対課の諸本と同期。双子の兄。思考が真逆のため非常に仲が悪い。
警察庁内では出実に次ぐ実力の持ち主。
【姓名】 流石 弟者
【読み】 サスガ オトジャ
【年齢】 42
【役職】 警視
【専門】 ハードウェア 情報整理
【付記】 特対課の諸本と同期。双子の弟。兄と比べれば多少温厚であるが、諸本とは犬猿の仲。
資料作りなどの細かい作業が得意。
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