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56 名前:名無しさん[sage] 投稿日:2016/03/27(日) 19:28:06 ID:SoEOAtLY0
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警視庁 刑事局 組織犯罪対策部 特定犯罪激化対策課
通称、ハゲタカ。
彼らに解決できない事件は無い。
組織として統制のとれた強さを持つのが特殊部隊だとすれば、
彼らは全くその逆。
突き詰めた能力を持つ個人の集まりである。
(´・ω・`) 「おはようございます……って、あれ、今日デミさん休み?」
( ^ω^) 「ん……あぁ、風邪らしい」
(´・ω・`) 「は? デミさんが?」
諸本が課内に入ってきた時の臭いが違ったのは、それが原因であった。
普段はしない甘い香りが充満しているのは、武雲の煙草によるもの。
出実はいつもそれを馬鹿にしているが、武雲がまともに取り合っているのを見たことはなかった。
( ^ω^) 「おいおい、あいつだって人間だ。風邪くらいひくだろう」
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57 名前:名無しさん[sage] 投稿日:2016/03/27(日) 19:31:27 ID:SoEOAtLY0
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(´・ω・`) 「それで武雲さんはどうしてここに」
( ^ω^) 「ちょっと行き詰っててなぁ。この前の事件、どうもうまくいかない」
(´・ω・`) 「ああ、高層ビルの女性事務員密室殺人事件」
諸本もその概要はデミを通して聞いていた。
珍しく手こずっているのだと楽しそうに話していた。
( ^ω^) 「ふぅー…………」
火のついたままの煙草がバースデーケーキのように灰皿を彩っている。
そのせいで、まだ朝礼前の時間であるのに煙草の臭いが充満していた。
(´・ω・`) 「吸いすぎじゃないですか」
( ^ω^) 「こうでもしないと頭が回んねぇ。お前、どう思うよ」
(´・ω・`) 「いや、どうって言われても。俺は頭脳労働あまり得意じゃないんで」
( ^ω^) 「まぁそう言わずに聞かせてみな」
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58 名前:名無しさん[sage] 投稿日:2016/03/27(日) 19:37:52 ID:SoEOAtLY0
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自他ともに認める肉体派の諸本だったが、先輩に促されて事件概要を思い出す。
煙草に火をつけた後、少し考えてから話し始めた。
(´・ω・`) 「……犯人は合鍵か何かを持っていたんだと思います。じゃないと密室の説明はつかない。
トイレで殺されたガイシャに抵抗の後がないのもおかしい。
普通の女性ならいきなりトイレに入られたら何かするでしょう。見ず知らずの人間ならなおさらです」
( ^ω^) 「顔見知りの犯行ってことか。確かに、ガイシャはキジョロックの重役と不倫関係にあった。
だがこの重役、別件で数か月前に殺されてる」
(´・ω・`) 「……それは初耳でした。しかし、関係はあるのでしょうか。今回の件は手口があまりに素人離れしています。
仮にどこかに依頼したとしても、普通の人間には不可能です」
( ^ω^) 「そうだな。それで?」
武雲は推理を邪魔しない。
諸本が今言った程度のことであれば、通常の捜査本部でも既に考えられている可能性である。
続きを言うように促したのは、諸本自身の言葉で聞くためだ。
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59 名前:名無しさん[sage] 投稿日:2016/03/27(日) 19:38:39 ID:SoEOAtLY0
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(´・ω・`) 「部屋の中が荒らされてなかったことからも、最初からガイシャを殺す気だったんでしょうね。
……あーパソコンとか携帯とかの連絡履歴も調べたんでしたっけ」
( ^ω^) 「ああ。ノートパソコンは開いていたが、何も表示されていなかった。
プロバイダに問い合わせても二人とも特に怪しいサイトには繋いでいない。
携帯も同じだ。事前の連絡先もおかしなところはない」
(´・ω・`) 「最近流行りの電子ドラッグとかも違いますね」
特殊な音源と映像で人間の感覚を麻痺させ狂わせてしまう電子ドラッグ。
実際には噂に尾ひれがついているだけで、そこまで強力なものは存在しない。
( ^ω^) 「それだと自殺になるからな。俺も見たが、あれは自分で刺した傷じゃない」
(´・ω・`) 「すいません、わかんないです」
( ^ω^) 「だよなぁ、時間をとって悪かったな。俺は行くわ」
(´・ω・`) 「何処にですか?」
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60 名前:名無しさん[sage] 投稿日:2016/03/27(日) 19:39:46 ID:SoEOAtLY0
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( ^ω^) 「電子ドラッグと言ったか。
俺はそっちの専門じゃないからよくわからんが、
パソコンは端から関係ないと切って捨てていたフシもある。
もう少し調べてみるさ」
武雲は立ち上がって部屋を出ていった。
一人残された諸本が煙草を吸っていると、遅刻ギリギリに茂羅が入ってきた。
薄い縦のストライプが入った紺色のスーツに、濃い赤のネクタイ。
髪はワックスでバッチリと決め、いつも以上に身だしなみを整えていた。
(´・ω・`) 「おい、茂羅。今日はデートか?」
( ・∀・) 「え、はい」
(´^ω^`) 「そうか、仕事が来たら振ってやるよ」
(; ・∀・) 「やめてくださいよ! 嫌がらせじゃないですか」
(´・ω・`) 「悪いな、家で嫁さんが待ってるんだ。今日は娘の誕生日なんでな」
( ・∀・) 「この前奥さん出て行ってるって言ってたばっかじゃないっすか」
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61 名前:名無しさん[sage] 投稿日:2016/03/27(日) 19:40:42 ID:SoEOAtLY0
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(´・ω・`) 「そうか死ね」
( ・∀・) 「冷たいっすね。あとなんでこんな甘い臭いするんですか」
(´・ω・`) 「さっきまで武雲さんがいたからな」
( ・∀・) 「ああ、っと電話ですよ」
(´・ω・`) 「お前が出ろ」
特対課の電話は基本的にすべて出実がとっていた。
常に課にいることもあり、出実以外への用件は携帯にかかってくるからだ。
依頼された仕事の振り分けも出実のその時の気分である。
必然的に一番若い茂羅、そしてその次の毒男に仕事がまわされることが多い。
かつて一度だけ文句を言った茂羅は、その半期の人事評価を下げられてボーナスが棒引きされた。
その仕返しに劇物を持ち込んで大喧嘩寸前になったところで武雲が間に入り、事なきを得たのだが。
( ・∀・) 「あーはい、特対課です。あ、自分は茂羅です。え? デミさん?」
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62 名前:名無しさん[sage] 投稿日:2016/03/27(日) 19:41:44 ID:SoEOAtLY0
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横目で諸本を確認する。
(´・ω・`) 「休みだ」
( ・∀・) 「休みだそうです。え、あ、はい。ちょっと待ってください。
諸本さん、テレビつけろって部長からです」
(´・ω・`) 「ったくめんどくせぇなぁ……」
机の上に置いてあったリモコンの電池は切れており、しぶしぶテレビの前まで向かった。
テレビの電源ボタンを押して映ったのは臨時ニュース。
どのチャンネルに変えても同じ内容が放映されていた。
( ・∀・) 「適当に見終わったら今いる全員で会議室にこい、だそうです」
(´・ω・`) 「……」
受話器を置いて茂羅もテレビが見やすい場所に移動した。
防犯カメラの映像を見やすいように編集した動画は、画面越しでも伝わるほどの激しい光と音を放つ。
崩落していくのは百五十年の歴史を誇るヴィップ裁判所。
砂煙を立ち昇らせて、わずか数秒で瓦礫の山へと変わった。
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63 名前:名無しさん[sage] 投稿日:2016/03/27(日) 19:44:29 ID:SoEOAtLY0
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(´・ω・`) 「茂羅、行くぞ」
( ・∀・) 「はい」
テレビをつけっぱなしにして二人は会議室に向かう。
特対課の部屋から出て廊下を真っ直ぐ進み、エレベーターに乗り込む。
庁舎内はいつにもまして慌ただしく、会議室もまた今までになくひっ迫していた。
(´・ω・`) 「特対課、諸本入ります」
( ・∀・) 「同じく特対課、茂羅入ります」
受付に立っている若手に声をかけて中に入った。
( ´_ゝ`) 「お、やっと来たかハゲタカ」
(´<_` ) 「相変わらず遅いな」
瓜二つの男達はタブレットを操作しながら悪態をつく。
騒がしい会議室の中、それを聞きつけた諸本は二人の後ろを通った時に椅子を軽く蹴飛ばした。
ガタイのいい諸本に蹴られたせいでバランスを崩した男は、隣のもう一人を巻き込んで派手に倒れた。
何人かが手を止めて音の出所を探すが、すぐに元の作業に戻る。
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64 名前:名無しさん[sage] 投稿日:2016/03/27(日) 19:45:09 ID:SoEOAtLY0
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(#´_ゝ`) 「てめっ……」
(´・ω・`) 「おっと、すまない。足が長くてな」
( ・∀・) (やっぱこの人性格悪いわ……)
(´<_`#) 「落ち武者野郎……」
(#´・ω・`) 「あぁ!?」
三人が火花を散らす中、茂羅は無視して適当な席に座った。
サイバー課の流石兄弟と諸本は顔を合わせる度に喧嘩をしている仲であり、
会議室にいる他の面子は誰も止めに入らない。
そればかりか煽る者もいる始末。
从 ゚∀从 「やれー! 流石兄弟! 残った髪もむしってやれ!」
捜査一課きっての実力を誇る高岡葉音が流石兄弟に声援を送れば、
('、`*川 「生意気な双子を締め上げてやりな」
薬物課の女傑、伊藤紅須が諸本の背を押す。
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65 名前:名無しさん[sage] 投稿日:2016/03/27(日) 19:46:17 ID:SoEOAtLY0
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周囲の熱気が会議室内満ち、その中心で二人対一人が睨み合う。
会議室が危うくリングになりかけたところで、ようやく静止がかかった。
/ #,' 3 「馬鹿者! さっさと席につけ!」
警察庁 刑事局 局長、荒巻龍。
ヤクザと勘違いされそうなほど鋭い目つきと、年を取ってもなお衰えない肉体に多くの者が畏敬を念を抱いている。
龍じいと呼ばれ、曲者ぞろいの刑事局を纏めている叩き上げ。
/ ,' 3 「大規模なテロがあったのは皆既に知っていることと思う。そして同時に、まだ皆が知らない事実が一つ。
テロがあった少し後の時間に、郵便局から届いたものだ。
ふざけたことに、最寄りの郵便局の消印が押してある」
荒巻が掲げた手紙は、コンビニで売っているような封筒。
住所も郵便番号もなく、宛名に警察庁の荒巻殿へとだけ書いてあった。
/ ,' 3 「この手紙の差出人の目的は、囚人の解放だ。
十三年前に儂が壊滅させたはずの組織。ゲ=ハの残党と思われる」
会議室がざわつく。
今は伝説となっているゲ=ハ戦争。その終止符を打った立役者であったからこそ、荒巻は今の地位にいる。
当時も警察組織に所属していた者達は皆一様に俯いた。
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66 名前:名無しさん[sage] 投稿日:2016/03/27(日) 19:47:31 ID:SoEOAtLY0
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( ・∀・) 「ゲ=ハ戦争っすか……」
(´・ω・`) 「お前いたのか」
( ・∀・) 「入ったばっかりの若手でしたけどね」
(´・ω・`) 「俺もそんなに変わらねぇよ」
/ ,' 3 「今回のような大規模なテロを起こせるほど危険な組織を、野放しにしているわけにはいかない。
全力を挙げて犯人逮捕に繋げるぞ! 諸君らの活躍を期待する!
必要な情報はすべて関係各所に送ってある。対策本部の指揮は私が執る! 以上だ!」
荒巻は演説を終えると解散を指示した。
それぞれが情報を集めに自らの部署に戻っていく。
諸本と茂羅も立ち上がり部屋を出ようとしたときに、荒巻に呼び止められた。
/ ,' 3 「おい、ハゲタカ!」
(´・ω・`) 「龍じいか、その名前で呼ぶな」
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67 名前:名無しさん[sage] 投稿日:2016/03/27(日) 19:48:20 ID:SoEOAtLY0
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( ・∀・) 「初めまして」
/ ,' 3 「お、お前さんが茂羅か。ん……? ついにハゲタカにも髪があるやつが入ったのか」
(´・ω・`) 「龍じい、話は何だ」
/ ,' 3 「相変わらず刺々しとるな。ちょっとこっちに来なさい」
荒巻が向かった先は会議室と同じ階にある小会議室の一つ。
完全防音の重い扉を開け、三人は中に入った。
/ ,' 3 「手っ取り早く本題に入ろうか。実はな、手紙にはほかにもいくつかのことが書いてあった」
(´・ω・`) 「他の事?」
/ ,' 3 「警察庁内に裏切り者がいる、と」
( ・∀・) 「……揺さぶりですか?」
/ ,' 3 「儂はそう考えておる。だが、万が一のこともある。信頼できるお前さんたちに話しておく」
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68 名前:名無しさん[sage] 投稿日:2016/03/27(日) 19:48:56 ID:SoEOAtLY0
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(´・ω・`) 「だったらあれだけの大人数で対応しないほうが良かっただろう」
/ ,' 3 「残念ながら……体面と言うものがある。
怪我人や死人が出なかったとは言え、裁判所の破壊はもはや全国民の知るところになった。
それをいくら信頼できるとはいえ、お前さんたち特対課のみで事に当たらせることは出来ん。
世間がそれを許さんだろうて」
(´・ω・`) 「で、龍じいは俺らにどうしてほしいんだ」
/ ,' 3 「特対課を名指しして宣戦布告をしてきおった。
犯行グループと思われるゲ=ハは凶悪な集団だ。お前さんたち全員が協力して立ち向かう必要がある」
( ・∀・) 「協力ですか……」
この一大事に風邪で寝込んでいる出実と、普段朝が弱くて出勤しない毒男を思い出し苦笑いする茂羅。
/ ,' 3 「心配しなさんな、すぐに纏まる。皆、心は同じだからな」
(´・ω・`) 「……恨まれる覚えしかないな」
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69 名前:名無しさん[sage] 投稿日:2016/03/27(日) 19:50:59 ID:SoEOAtLY0
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/ ,' 3 「善人に好かれるより、悪人に嫌われていなさい。儂の尊敬する人の言葉だ。
さて、やり方はいつも通りお前さんたちに任せる。この事件、必ず解決しろよ」
(´・ω・`) 「了解!」
( ・∀・) 「了解!」
荒巻と別れ特対課に戻った二人は、心底驚いた。
誰よりもめんどくさがりで、誰よりも口の悪い男が一番奥の席に座っていたからだ。
( ・∀・) 「風邪だったんじゃ……」
(´-_ゝ-`) 「ったく、頭も痛ぇし喉も痛ぇ」
(´・ω・`) 「うつさないでくださいよ」
(´・_ゝ・`) 「こんな時くらい優しい言葉がかけられねぇのかお前は」
(´・ω・`) 「急に優しくなっても気持ち悪いだろ?」
(´-_ゝ-`) 「はぁ……取り敢えずニュースは見た。すぐに毒男を呼べ。これからの動きを決めるぞ」
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70 名前:名無しさん[sage] 投稿日:2016/03/27(日) 19:55:28 ID:SoEOAtLY0
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【姓名】 荒巻 龍
【読み】 アラマキ リュウ
【年齢】 58
【役職】 警視監/局長
【専門】 交渉術
【付記】 特対課の創設者。あらゆる事件に首を突っ込むため、警察庁の最終兵器との呼び声が高い。
大雑把な性格でありながら、慎重な交渉を得意とする。
解決してきた事件は数多くあるが、荒巻が加わった時点から犠牲者を出さないことで有名。
唯一の例外がゲ=ハ戦争であった。
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