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27 名前: ◆HS4z8y6JHc[sage] 投稿日:2016/04/03(日) 16:09:57 ID:62pQqJ3.0
-
―――――
―――
―
(´・ω・`)「よーう、どうだった?」
ただっ広い食堂、間宮が料理を運びながら聞いてきた
('A`)「やっぱ艦娘の配備はしねーんだとよ。監視だけだから必要ねえって言われて」
(´・ω・`)「なんだそりゃ。随分と見下された采配だな」
('A`)「全くだ。ハァァー……これから先、男三人のだけの共同生活か……」
言葉にするだけでむさ苦しさで胸が詰まる
( ^ω^)「まーまー、監視だけの楽な仕事で給料貰えるんだから。前向きに考えるお」
('A`)「金を使える場所はねーんだけどな」
一番近い街まで、車で三時間掛かる
勿論、外出には許可が必要だし、そもそも車がねえ。送迎は本部が行う。それも申請が必要だ
(´・ω・`)「食料、嗜好品は月一の配給だってな。だけど、今の状況でも充分過ぎる量があるぞ」
( ^ω^)「マ?」
(´・ω・`)「マ。多分三ヶ月くらい腹いっぱい食っても大丈夫」
( ^ω^)「最高かよ」
(´・ω・`)「タバコもたんまり」
( ^ω^)「天国かよ」
('A`)「呑気だなお前ら」
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28 名前: ◆HS4z8y6JHc[sage] 投稿日:2016/04/03(日) 16:10:52 ID:62pQqJ3.0
-
(´・ω・`)「考え様だよ考え様、上司のお咎め無しで好き放題だ。後、ここの厨房かまどだった。ほれ飯」
( ^ω^)そ「お米が立ってる!!」
('A`)「いや、一応俺がお前らの上司なんだけどね?」
(´・ω・`)「そういうのいいから」
( ^ω^)「マジ萎えるわ」
('A`)「俺は上司として威張り散らすことさえも出来ないのか」
( ^ω^)「威張り散らしたらアレだお?なんか、こう、三人しかいないのに空気悪くなったら」
( ^ω^)「居辛くなると思うお。廊下ですれ違う度に、舌打ちとかするけどいいのかお?」
('A`)「わかった、わかったから恐い想像させるのやめて」
(´・ω・`)「まぁ、これから何するにしても腹ごしらえだ。食え食え」
山盛りのメシに鳥の竜田揚げ、中華風野菜炒めに卵スープがテーブルに置かれる
どれもこれも美味そうだ。訓練校の学食はどうにも味気なかったからな
(* ^ω^)「ひゃっほう!!いただきますお!!」
(´・ω・`)「いただきますっと」
('A`)「……」
二人がガツガツと飯を掻き込むのを見て、俺の腹の虫も鳴き声を上げて急かした
そういや、ここに来てから何も口にしていなかったな
('A`)「……いただきます」
('A`)「うめえ!!!!!!!!!!!」
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29 名前: ◆HS4z8y6JHc[sage] 投稿日:2016/04/03(日) 16:12:25 ID:62pQqJ3.0
-
食後、コーヒーを飲みながら改めて自己紹介をする流れになった
喫煙者の明石と間宮は美味そうにタバコを吹かす。くせえんだよ
('A`)「えー、では俺から」
(´・ω・`)y-~「ええぞええぞ!!」
( ^ω^)y-~「一発芸やれお!!」
('A`)「新歓かよ。東郷ドクオ、階級は少尉だ。一発芸やります」
( ^ω^)y-~「やんのかお」
('A`)「細かすぎて伝わらないモノマネシリーズ。映画『暴走特急』から。トイレに現れた敵を女の色気で油断させて一瞬でぶっ殺した後のケイシー・ライバックの一言」
('A`)「おっぱいには気をつけろよ」CV.大塚明夫
(´・ω・`)y-~「……」
( ^ω^)y-~「……」
('A`)「なんか言えよ」
( ^ω^)y-~「ドックンはどうして提督になったんだお?」
('A`)「ええ……いきなり馴れ馴れしい……いいけど……」
('A`)「理由なんてお前、そんなもん艦娘とイチャコラ出来る以外にあるか?」
(´・ω・`)y-~「……低俗だな。お前」
('A`)「いや実際、訓練校でもそんな奴ばっかだったよ」
( ^ω^)y-~「ゲス野郎かお」
('A`)「ごめんね!!!!」
( ^ω^)y-~「反省しろお」
('A`)「うわなんか風当たりがキツい」
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30 名前: ◆HS4z8y6JHc[sage] 投稿日:2016/04/03(日) 16:13:30 ID:62pQqJ3.0
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(´・ω・`)y-~「確認するが、本当に何かやらかしてここに来たんじゃないのか?」
('A`)「教官を何回がぶん殴りそうになったこと以外潔白だよ」
( ^ω^)y-~「問題児じゃねーかお」
('A`)「でもなんでそんなしつこく確認するんだよ」
(´・ω・`)y-~「俺らは問題起こしてここに送られたからなぁ」
( ^ω^)y-~「ハハッ、ワロス」
(;'A`)「それでよく俺のことゲス野郎だの問題児だの呼んでくれたなお前ら?そういや、曰くについて本部は答えてくれなかったんだが」
('A`)「なんかあんの?ここ」
(´・ω・`)y-~「後で話してやるよ。ほれ、次ブーン」
( ^ω^)y-~「明石ホライゾン、渾名はブーンだお。艤装の整備が仕事だお」
('A`)「何の問題起こしてここに?」
( ^ω^)y-~「艤装を魔改造して工廠吹っ飛ばした」
(;'A`)「お前それ軍法会議モンじゃねーか!!!!」
( ^ω^)y-~「うん、その結果がこれ」
(;'A`)「死刑にならなかっただけマシだな……つーか俺はどうしてここに送られたん……?」
( ^ω^)y-~「ドンマイ☆」
('A`)「うるせえ反省しろ」
( ^ω^)y-~「嫌どす」
('A`)「死刑になっちまえ」
-
31 名前: ◆HS4z8y6JHc[sage] 投稿日:2016/04/03(日) 16:15:36 ID:62pQqJ3.0
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(´・ω・`)y-~「最後は俺だな。間宮ショボン、飯炊き当番だ。ショボンでいいぞ」
('A`)「しょぼくれ眉毛はどんな事件起こしたんだ?」
(´・ω・`)y-~「ぶっ殺すぞブサメン」
('A`)「あ?」
(´・ω・`)y-~「お?」
( ^ω^)y-~「出会って半日も経ってないのに仲のよろしいことで」
(´・ω・`)y-~「俺は、アレだ。前の鎮守府で提督のオキニの艦娘寝取った」
(;'A`)「は?」
(´・ω・`)y-~「愛宕とかいう重巡洋艦娘だったな。下の毛がすげー濃いの」
( ^ω^)y-~「下もパツキンだったのかお?」
(´・ω・`)y-~「うん」
(;'A`)「それマj……いや、それはまた今度じっくり聞くとして」
(;'A`)「アンタもすげーことやらかしてんな……」
(´・ω・`)y-~「いや、問題はそこから」
(;'A`)「そこから?」
(´・ω・`)y-~「マジギレして軍刀で斬りかかってきた提督も掘った」
(;'A`)「ブーン、逃げよう!!」
(;^ω^)「僕らの処女が危ねえお!!」
(´・ω・`)y-~「俺にだって抱く男を選ぶ権利くらいあらぁ」
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32 名前: ◆HS4z8y6JHc[sage] 投稿日:2016/04/03(日) 16:16:18 ID:62pQqJ3.0
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(;'A`)「片やマッドエンジニア、方や両刀料理人……まともなのは俺だけか」
(´・ω・`)「顔面がまともじゃねえけどな」
('A`)「あ?」
(´・ω・`)「お?」
( ^ω^)「もう付き合っちゃえおお前ら」
('A`)「で……」
不安ばかりが募る自己紹介も追え、いよいよこの鎮守府の曰くについて聞く
ブーンもこの場所については詳しくないらしく、ただの左遷だと思っているそうだ
(´・ω・`)「あー、俺も前の鎮守府で小耳に挟んだだけで、詳しくは無いんだが」シュボッ
(´・ω・`)y-~「ここは傷害事件や命令無視をした艦娘が送られる流刑地だったらしい」
( ^ω^)「流刑地?」シュボッ
(´・ω・`)y-~「後、提督もな。上官ぶん殴ったりした奴とか」
('A`)「早かれ遅かれここに来る運命だったか……」
( ^ω^)y-~「お前性格に難あるお。で、曰くってのはそれだけかお?」
(´・ω・`)y-~「いや、曰くってのはここから」
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33 名前: ◆HS4z8y6JHc[sage] 投稿日:2016/04/03(日) 16:17:29 ID:62pQqJ3.0
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(´・ω・`)y-~「着任した提督や艦娘が、悉く不審死を遂げたらしい」
(;'A`)「えっ……?」
ショボンはタバコ一服、一呼吸置いた
何この場所?ホラー映画の舞台にでもなったの?
(´・ω・`)y-~「オカルトか、それとも海軍の闇の部分か……どちらにせよ、役立たずを処理する場所として機能してたそうだ」
( ^ω^)y-~「艦娘の幽霊とか出そうだお。やったじゃんドクオ、イチャコラ出来るお」
(;'A`)「生きてるのでお願いしたい……待てよ、前任はここの海域一層したんだよな?」
(;'A`)「脛に傷のある艦娘を、難ありの提督が指揮してそれほどの大戦果を出せるのか?」
(´・ω・`)y-~「いやそれがお前、すげー強……やっべ、緘口令敷かれてたんだった」
( ^ω^)y-~「緘口令?」
(´・ω・`)y-~「うーん……ドクオが上に報告しないんなら話してやってもいいんだが」
(;'A`)「いやいやお前、ここまで話しといてやっぱ言えないですとか生殺しだろ。黙っといてやるから続き頼むよ」
(´・ω・`)y-~「話が分かるな。前の提督もお前くらい心が広かったらなぁ」
('A`)「いや、流石に女寝取られたら俺だってキレるよ?」
( ^ω^)y-~「掘られるお?」
('A`)「オッサン程度ならボコボコに出来るから問題ねえよ」
( ^ω^)y-~「つえー……」
(´・ω・`)y-~「続き、話すぞ」
-
34 名前: ◆HS4z8y6JHc[sage] 投稿日:2016/04/03(日) 16:19:01 ID:62pQqJ3.0
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灰皿代わりの空き缶に灰を落とし、ショボンは前任の話を続けた
(´・ω・`)y-~「問題児の寄せ集めを、問題児が指揮する……それにも関わらず、すげー強かった」
(´・ω・`)y-~「艦隊戦も然ることながら、格闘、剣術、矛術による白兵戦までこなし、降伏の意思を示す深海棲艦でさえ容赦なくぶち殺す……」
(´・ω・`)y-~「その戦いぶりから、『なんとかかんとかちんちんまんまん鎮守府』と呼ばれてたそうだ」
(;'A`)「肝心な所曖昧じゃねーか!!」
(´・ω・`)y-~「又聞きだからなぁ。だが、その目覚しい活躍の裏で、結構な悪事も働いていたらしい。艤装を外した艦娘を奴隷として売ったり……」
(´・ω・`)y-~「薬漬けにしてアレしたりコレしたりとまぁ、様々な悪事が本部にバレた結果……軍法会議に掛けられて処刑されましたとさ」
最後に、『おしまい』と付けたし、ショボンは短くなったタバコを缶の中に放り込む
『ジュッ』と短く音を立て消えたそれが、さながら前任提督の有様のように思えた
(;'A`)「そんなクソ野郎だったのか……」
(´・ω・`)「さぁな、あくまで噂だ。真相を知ってる奴なんざ、海軍上層部でも一握りだろうよ」
( ^ω^)y-~「そいつに比べたら俺らのしでかした事の罪の軽さたるや」
(´・ω・`)「ホントだよ。こんなブサイクと一つ屋根の下にさせられて……」
('A`)「いやそれ俺のセリフだからな?」
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35 名前: ◆HS4z8y6JHc[sage] 投稿日:2016/04/03(日) 16:20:17 ID:62pQqJ3.0
-
('A`)「しかし、そんなことがあったのか……」
口を噤むと、聞こえてくるのは蛍光灯の音と羽虫の鳴き声
外には街灯すらなく、窓から見える海には、まるで飲み込まれそうな暗闇が広がっている
人里離れた場所での、怪奇で猟奇的な噂に溢れた鎮守府。そう考えると、背筋がゾッと凍った
(;'A`)「とんでもねえ場所に、送られちまったんだな俺ら……」
( ^ω^)y-~「僕らは自業自得だから、割り切れるけどNE!!」
('A`)「あ、自分が悪いって自覚はあるんだ」
( ^ω^)y-~「もっとこっそりやればよかったお」
('A`)「やっぱ反省はしてねえのな……」
(´・ω・`)「俺は納得してねーよ。もっとここに送られるべき野郎は大勢いるぜ?」
( ^ω^)y-~「お?」
('A`)「……?」
ほんの、ほんの僅かだが、ショボンの目つきが険しくなる
無意識にだろうか、机の上に置かれている拳は固く握られていて
何か、嫌な過去を思い出したかのように見えた
(´・ω・`)「……うん?あっ、ああ、なんでもねえよ」
俺ら二人の視線に気付いたオッサンは、パッと表情を戻し、立ち上がる
(´・ω・`)「じゃあ、俺は疲れたから先に休ませて貰うぜ。朝飯は……一応、7時半ってことにしとくか」
それだけ言うと、食堂を後にした
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36 名前: ◆HS4z8y6JHc[sage] 投稿日:2016/04/03(日) 16:21:03 ID:62pQqJ3.0
-
('A`)「……」
( ^ω^)y-~「……」
顔を見合わせ、しばらく黙っていたが
フィルター際までタバコを吸ったブーンが、缶の中に吸殻を捨てたのを皮切りに話を切り出した
( ^ω^)「……オッサンだから、多分、色々見てきたんだと思うお」
('A`)「何を」
( ^ω^)「『人』って奴だお」
『人』。確かに、俺が産まれる前から世界を見たオッサンは、俺より見聞が広いだろう
しかし、ブーンが言った『人』という言葉に、妙な引っかかりを感じだ
( ^ω^)「ドクオは……どんな提督になるつもりだったんだお?」
('A`)「えっ?」
唐突な質問に、俺は言葉を詰まらせる
『どんな提督』?そりゃ、下心がねえと言ったら嘘になるが……
('A`)「……」
『艦隊を勝利に導く為?』『艦娘を無事に帰還させる為?』『犠牲を厭わず敵を殲滅する為?』
考え付く何もかもが、ありきたりだ。安っぽい
( ^ω^)「実はちょっと、安心したんだお。僕は」
返答を待たず、ブーンは話を続けた
('A`)「安心、だと?」
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37 名前: ◆HS4z8y6JHc[sage] 投稿日:2016/04/03(日) 16:22:21 ID:62pQqJ3.0
-
( ^ω^)「ここは深海棲艦の居ない海、平和な海」
( ^ω^)「艦娘が配備される必要の無い、海だお」
( ^ω^)「艦娘が……」
(;'A`)「……」
朗らかな表情は変わらない。にも関わらず、突き刺さるようなこの悲痛は何だ?
こいつは、オッサンは、何を見たのだろうか?聞きたい、知りたい……だが
『その領域』は、俺が踏み込んで良いモノなのか?
( ^ω^)「おっお。面倒が少ないってだけの理由だお。そんな深刻な顔すんなお」
(;'A`)「ッ……」
ブーンに言われて、俺は初めて眉間に皺を寄せていることに気がついた
( ^ω^)「お前も疲れてんだお。サッサと寝るに限るお」
(;'A`)「ああ……そうだな」
指で目頭を解すと、ドッと瞼が重くなった
確かに長距離移動をしてからの、この現状だ。肉体、精神共に疲労が溜まっている
( ^ω^)「明日の朝ごはん、楽しみだおね」
そう言って笑うブーンからはもう、先ほどの悲痛は感じられなかった
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38 名前: ◆HS4z8y6JHc[sage] 投稿日:2016/04/03(日) 16:23:54 ID:62pQqJ3.0
-
―――――
―――
―
('A`)「……」
('A`)「平和だねぇ……」
穏やかな波の音、森の木々のざわめき、ウミネコの鳴く声
見張り台からの見る景色は、空より濃い海の青
時折、白いうねりを立たせながら広がっている
('A`)「こちらドクオ、レーダーどうだ?どーぞ」
『異常なしだお。どーぞ』
('A`)「知ってた」
『艤装弄りに戻っていいかお?』
('A`)「お好きにどーぞ……オーバー」
俺の一日の仕事は、肉眼及び双眼鏡による近海の監視
時折、鎮守府内にあるレーダーに何か映らないかを確認し、また監視に戻る
そして一日が終われば、本部に通信連絡をする
『本日も異常なし』と
-
39 名前: ◆HS4z8y6JHc[sage] 投稿日:2016/04/03(日) 16:24:50 ID:62pQqJ3.0
-
(´・ω・`)「おーい、生きてるかー?」
余りの穏やかさに、ついうたた寝をしていたら
下から、オッサンの呼ぶ声が聞こえ覗き込む
('A`)「退屈で死にそうだぜー。次はラジオでも持ち込むかなー」
(´・ω・`)「おやつ食わねーかー」
('A`)「食うー」
塗装が所々剥がれた梯子を降り、コンクリートで埋め立てられた港湾に立つ
その一部分は、海上に面した坂道になっており、レールが敷かれている
海に出る艦娘は、カタパルトのようにそこから射出され、出撃するそうだ
( ^ω^)「おやつと聞いて」
(´・ω・`)「お前、食いモンのことになると機敏だな」
( ^ω^)「よせやい」
('A`)「まぁ、数少ない楽しみだしなぁ……」
実際、この場所は娯楽が少ない
全く無い、と言うわけでは無い。どういうことかは知らないが、映画と漫画だけはやたら揃っていた
後、スポーツ用具とかも結構ある。バトミントンとかしてはいい汗掻いて虚しさに襲われる
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40 名前: ◆HS4z8y6JHc[sage] 投稿日:2016/04/03(日) 16:25:54 ID:62pQqJ3.0
-
(´・ω・`)「ポッキーうっま……うま……」
( ^ω^)「ポッキーうっめ……ありえん……」
('A`)「ポッキー……美味……」
ショボンのオッサンは、こうしておやつを作ったり
その日の献立を考えては、仕込みをしたりと、のんびり料理を作っている
ブーンは、電の艤装を弄繰り回して遊んでいた
頻繁に甲高い金属を打つ音が聞こえてくるのがとても恐い。また工廠を吹っ飛ばすんじゃねえかってヒヤヒヤしてる
('A`)「……」
とまぁ、これが俺が着任してからの三日間だ
要は、欠伸が出るほど平和で、死にそうなほど暇で、白目剥くほどやることが無い
『忙殺』という言葉があるが、退屈でも人は死ぬんじゃねえのかって思うような毎日だった
('A`)「……ダメだよな、こんなんじゃ」
( ^ω^)「は?ポッキー美味いだろ?」
(´・ω・`)「なんや?ナッツ入りが良かったんか?」
( ^ω^)「僕は抹茶の、こうなんか太い奴が良いお」
(´・ω・`)「あれはポッキーと呼んで良いのだろうか……ポキッって言うより最早『ボキッ』……そう、ボッk('A`)「そうじゃねーよバカかよテメーら」
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41 名前: ◆HS4z8y6JHc[sage] 投稿日:2016/04/03(日) 16:27:29 ID:62pQqJ3.0
-
('A`)「考えてもみろ。一日を退廃的に過ごして、飯食って寝る。こんなの、『生きてる』って言えるか?」
変わり映えしない景色に、変わり映えしない日常。心がゆっくりと腐っていくような心地がする
俺はとにかく、この状況を少しでも変えたかった。習慣でも、環境でも、何だって良い
幸いにも、ここでもっとも地位のある人間は俺だった。行動を咎める上官はいない
('A`)「やるぞ」
(´・ω・`)「あ?何を?」
('A`)「春の鎮守府一斉、模様替え大掃除大会だ!!!!!!」
( ^ω^)「大会……?」
(´・ω・`)「大会……?」
('A`)「なんだ文句あんのか?やるか?お?」
先ずはこの鎮守府に蔓延する、暗いイメージを払拭する為に
大改造鎮守府ビフォーアフターと行こうじゃあねえか
♪Bruno Mars - Runaway Baby
https://www.youtube.com/watch?v=6Ww-8jvxT5Q
( ^ω^)「木材、釘、それにペンキ。倉庫に置いてあった物持って来たお」
('A`)「よし、ブーンは建物でガタの来てる箇所の修繕に当たってくれ」
( ^ω^)「まかせろ」
(´・ω・`)「鎌に高枝切りバサミ、それと脚立だ」
('A`)「建物に巻き付いているツタを取り除いて、伸び放題の植木の形を整えてくれ。得意だろ?なんか植物の心読めそうだし」
(´・ω・`)「それは別作品の話で、俺は庭師じゃなくて料理人だ。まぁ、やるだけやってみるがよ」
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42 名前: ◆HS4z8y6JHc[sage] 投稿日:2016/04/03(日) 16:28:42 ID:62pQqJ3.0
-
('A`)「さて、俺はひび割れた壁の修繕だ」
練ったコンクリートをひびに沿って塗り、金ごてで綺麗に整える
多少不恰好だが、そのままにしておくよりマシだろう
もしも、この場所に艦娘が来るようなことがあれば
オバケ屋敷でお出迎えなんて、不恰好だし不気味に思うだろう。実際俺は思ったし
例えこの場所が、問題児達の流刑地だったとしても、暖かく迎え入れられるようにしておきたい
('A`)「Run run runaway, runaway baby♪Before I put my spell on you♪」
内地にいた頃にはダリィと思うだろう作業も、ここでは楽しくて仕方が無い
ウミネコと、波と、木々のざわめきに加えて、金づちに鋏を動かす音
なんでもない作業音が、変化のもたらす音楽に聞こえてくる
( ^ω^)「うーん……老朽化は進んでるけど、所々修理もされてるお」トンテンカントンテンカン
(´・ω・`)oVo「……」チョキチョキ
(´・ω・`)oVo「ふむ……」
(´・ω・`)つ8<「……」
(´・ω・`)つ8<「なんだ……しっくり来るな……」
日が暮れるまで作業して、風呂入って飯食って寝て
起きて飯食って、作業して、たまに遊び、休んで、作業する
その合間に、全く変化の無い海を監視、レーダーで確認、一日の最後に報告
そんな日常が、しばらく続いた
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43 名前: ◆HS4z8y6JHc[sage] 投稿日:2016/04/03(日) 16:29:34 ID:62pQqJ3.0
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(;'A`)「カーテンやシーツの洗濯は大変だな……」
( ^ω^)「ドクオ!!世界を、塗り替えなイカ?」
('A`)「は?何その水鉄砲……?」
( ^ω^)「薄めたペンキを発射できるように改造したお」
( ^ω^)「死ね」ドピュッ
(;'A`)そ「うおお声色がマジだ!?」サッ
(´・ω・`)「おーい、おやつ……」ビチャッ
( ^ω^)「あ」
('A`)「あ」
(´・ω・`)「……」
(´・ω・`)「オーケー、宣戦布告と見なした。殺す」
(;'A`)そ「ちょっと待て俺は何もしてなうおお!?」
( ^ω^)「またこの鎮守府に新たな猟奇殺人が追加されると言うのか……人とは哀しい生き物よな……」
('A`;)「お前の所為だろうが!!ちょっ、オッサン!!鎌はやめろ鎌は!!」
たまに、こういったハプニングが有りながらも、改築は順調に進む
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45 名前: ◆HS4z8y6JHc[sage] 投稿日:2016/04/03(日) 16:30:22 ID:62pQqJ3.0
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寝床のマットを干し、シーツやカーテンを洗濯し、軋みを上げる家具の修理をして
窓を磨き上げ、床に転がってるショットガンを片付け、真っ赤なクレヨンで『たすけて』と壁一面に書かれている部屋をピカピカにして
('A`)「ふーい……」
( ^ω^)「終わった、かお」
(´・ω・`)「おつかれさん。さぁ、乾杯だ」
およそ一ヶ月の大改築は終了した
(´・ω・`)「音頭取れ、ドクオ」
('A`)「俺が?」
( ^ω^)「ドクオが言い出したことだお。しっかり締めるお」
(;'A`)「えーと、そんじゃあ……」
手渡された缶ビールの栓を開け、掲げる
('A`)「生まれ変わった、俺達の家に!!」
( ^ω^)「家に!!」
(´・ω・`)「家に!!」
「「「乾杯!!!!!」」」
.
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46 名前: ◆HS4z8y6JHc[sage] 投稿日:2016/04/03(日) 16:31:12 ID:62pQqJ3.0
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(*´^ω^`)「ぎゃはははははははwwwwwwwww」
(* ^ω^)「大麦乳大福もぐもぐwwwwwwwww」
(*´゚ω゚`)「ひーひひひっひひひwwwwwwwww」
そして、一時間でこの有様である
(;'A`)「うわぁ……」
(* ^ω^)(*´^ω^`)「「麦茶だこれ!!!!」」
いいえ、ビールです。それをお前らは麦茶並のペースでガブガブやってるんです
それに加えて、お前らタバコも吸うから酔いが回るのはええんです
いくら備蓄に余裕があるとは言え、流石に呑みすぎだ
('A`)「そろそろお開きにしようぜ」
(*´^ω^`)「堅ぇこと言うなよ提督よぉ〜?俺ァなぁ、俺ァなぁ……」
(*´;ω;`)「ひぐっ、嬉しいんだよォ〜……オオウオウオウ……」
(;'A`)「ええ〜……」
さっきまでゲラゲラ笑ってたオッサンが、急におうおうと泣き出した
笑い上戸な上に泣き上戸かよ……純粋にめんどくせえ……」
(*´;ω;`)「お前、お前……新人なのにさぁ……こんな場所連れてこられてさぁ……散々な目に遭ってんのによぉ……」
(*´;ω;`)「この一ヶ月、ふて腐らねえで鎮守府の改善を成し遂げたじゃあねえかぁ〜……」
(;'A`)「え?お、おう。ありがとう」
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47 名前: ◆HS4z8y6JHc[sage] 投稿日:2016/04/03(日) 16:32:27 ID:62pQqJ3.0
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(*´;ω;`)「最初は、他の連中と同じような、ゲスいだけのクソ野郎だと思ってたけどよぉ……」
聞き捨てならねえが、その通りだから何も言い返せないのが悔しい
(*´;ω;`)「それでもおま、お前……やって来るかもどうかわかんねえ艦娘の為に、ヒクッ、汗水垂らして働いたじゃあねえかぁ……」
(* ;ω;)「うおおおおおおおおおおお!!!!!」
(;'A`)そ「うおっ!?お前もかブーン!?」
ニコニコ笑っていたブーンも、突然大声を上げて泣き出す
何だこれ俺はどうすればいいのこいつらを
(* ;ω;)「愛だお……愛の為せる技なんだおおおおおおおお!!!!」
(;'A`)「愛ってお前……大げさだろ……」
艦娘の環境改善の為に改築に取り組んだのは嘘じゃないが、退屈しのぎで始めたのも事実だ
これほど感動されるほど、俺は大義を持って行動したわけじゃない
照れ隠しも兼ねて、それを伝えようとした矢先に
(*´-ω-`)「ぐごーーーーーーーーーーー!!!!!!!!!」
(* ‐ω‐)「すやーーーーーーーーーーー!!!!!!!!!」
叫んでんじゃねえかと思うほどの、大いびきを掻いて二人は眠ってしまった
(;'A`)「おいおい……」
揺さぶっても起きやしない。今日は総仕上げとして大分働いたから、疲れていたんだろう
それは俺も同じだったが、起きている以上、放っておくわけにも行かなかった