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76 名前:以下、\(^o^)/でVIPがお送りします[] 投稿日:2016/03/27(日) 22:29:29.015 ID:sLW7pJSn0
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( "ゞ)「河合さん」
ζ(゚ー゚*ζ「はい」
デルタが声をかけてきたのは、
入学してから二ヶ月が経とうとしていた放課後のことだった。
このとき、既にデレはクラスメイト達からの質問コーナーを終了させていた。
次々に投げられる質問に殆ど明確な答えを返すことのできないまま一巡目を終え
今は二巡目と称した雑談に花を咲かせる毎日だ。
( "ゞ)「体の調子はいかがですか」
ζ(゚ー゚*ζ「とっても元気ですよ」
( "ゞ)「そうですか。それはよかった」
彼は微笑み、しきりに頷く。
世界唯一を持った女の子、という事実は、デレを大切に扱う充分な理由となる。
だが、同じくらい、自身の生徒、という肩書きは彼女を大切にさせる素となるのだ。
( "ゞ)「私は眠らないのでわからないのですが、
デレさんは平均八時間ほど睡眠を取ると聞きましてね」
ζ(゚ー゚*ζ「時々夜更かしもしちゃうんですよ?」
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77 名前:以下、\(^o^)/でVIPがお送りします[] 投稿日:2016/03/27(日) 22:30:04.777 ID:sLW7pJSn0
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睡眠時間に関してクラスメイトに告げたのは、一ヶ月と少し前のことだ。
質問の一つとして、どの程度の時間が睡眠に消費されるのか、ということを問われた。
その答えは、デレにとって数少ない、嘘偽りも想像も何もない、
真実だけを伝えることのできる貴重な問いかけであった。
( "ゞ)「うちでおよそ十一時間。睡眠に八時間。
残された時間は五時間足らず。
宿題もありますし、大変でしょう」
ζ(゚ー゚*ζ「でもみんなと一緒に授業を受けるのは楽しいですよ」
デレがおよそ八時間眠る、と告げたとき、クラスメイト達は驚愕を露にしていた。
現代人からしてみれば、八時間が無為に過ごされているのと変わらない。
その時間でどれだけのことができるのか、と考えれば、気が動転するのも仕方のないことだった。
( "ゞ)「無理はしないでくださいね」
ζ(゚ー゚*ζ「はーい」
_
( ゚∀゚)「あ、おいデレー!」
ζ(゚ー゚*ζ「なーにー?」
_
( ゚∀゚)「カラオケ! 行こうぜ!」
ζ(゚ー゚*ζ「わかったー!」
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78 名前:以下、\(^o^)/でVIPがお送りします[] 投稿日:2016/03/27(日) 22:30:43.260 ID:sLW7pJSn0
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朝からカラオケの話をしていたので、
誘いがかかるのではないかと思っていたら案の定だ。
先日、開発されたシンガーロイドの新曲が入るのだとクールが言っていた。
時事情報をメインに搭載されたかのシンガーロイドはポップながらも毒のある曲を歌うのだ、と
情報通の彼女は豪語し、ソレの歌う過去の風刺をするような歌詞が実に愉快だとも口にしていた。
( "ゞ)「ちゃんと親御さんに連絡するんですよ」
ζ(゚ー゚*ζ「大丈夫でーす!」
_
( ゚∀゚)「デルちゃんったら過保護なんだからぁ!」
二人はパタパタと廊下を駆けていく。
見れば、向こう側には他のクラスメイト達が彼ら二人を待っている姿が目に映る。
( "ゞ)「廊下は走らない」
_
( ゚∀゚)「あいよー!」
ζ(゚ー゚*ζ「返事だけなんだから」
_
( ゚∀゚)「じゃあ、お前も歩けよ」
ζ(゚ー゚*ζ「ジョルジュ君が歩いたらね!」
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79 名前:以下、\(^o^)/でVIPがお送りします[] 投稿日:2016/03/27(日) 22:31:09.849 ID:sLW7pJSn0
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川 ゚ -゚)「何を話していたんだ?」
ζ(゚ー゚*ζ「体調のこと」
( ・∀・)「どこか悪いの?」
ζ(゚ー゚*ζ「ううん。ただ、寝る時間があるから心配してくれたみたい」
( ・∀・)「あー、八時間」
ζ(゚ー゚*ζ「それそ……」
一瞬、言葉に詰まる。
彼女はわずかに目線を下に向け、目を細めた。
細い手は口元へ。
○。ζ(>∩<*ζ ファ...
吐き出された息は静かに消える。
_
( ゚∀゚)「どうした?」
川 ゚ -゚)「クシャミか」
ζ(゚ー゚*ζ「え、あくび……」
-
80 名前:以下、\(^o^)/でVIPがお送りします[] 投稿日:2016/03/27(日) 22:31:55.630 ID:sLW7pJSn0
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( ・∀・)「あくび?」
ζ(゚ー゚*ζ「眠たい時とか暇な時に出るの」
周りが疑問符を浮かべるので思い返してみるが、
そう言われてみれば、周囲の人達があくびをしている姿を見たことがない。
ζ(゚、゚*ζ「そっか、みんなはあくびも出ないんだ。
何だか不思議ー」
川 ゚ -゚)「というか、お前は今眠たいのか?」
ζ(゚ー゚*ζ「んー、ちょっとだけ」
学校生活にも慣れ、友達付き合いも増えた。
こうして、みんなで出かけることも多い。
ただ、眠らない彼らとずっと一緒にいる、というのは難しい。
彼らが遊び通してそのまま登校してくるとして、
デレがそれに合わせるのはまず不可能といえる。
そんなことをした日には、授業中の居眠りは必至。
間抜けな顔をして涎を垂らしでもしたら最悪だ。
_
( ゚∀゚)「どうする? 今日は帰るか?」
ζ(゚ー゚*ζ「ううん。このくらい平気」
-
81 名前:以下、\(^o^)/でVIPがお送りします[] 投稿日:2016/03/27(日) 22:32:33.620 ID:sLW7pJSn0
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嘘ではない。
多少の睡眠不足で体調を崩す、ということはない。
不具合といえば、暖かい日中に眠気が襲ってくることくらいだろう。
( ・∀・)「無理はしないようにね」
ζ(゚ー゚*ζ「ありがとう。疲れたら帰らせてもらうから大丈夫だよ」
_
( ゚∀゚)「デレは貧弱だからなぁ」
ζ(゚д゚*ζ「誰が貧弱よ。誰が!」
_
(;゚∀゚)「イテッ!」
軽くジョルジュの脛を蹴ってやる。
学校指定のパンプスはそこそこの強度があるので、当たると結構痛いのだ。
_
(#゚∀゚)「デーレー!」
ζ(゚ワ゚*ζ「キャー!」
( ・∀・)そ「あっ、お前ら先に行くなよー!」
川;゚ -゚)「おぉ、デレ早い……」
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82 名前:以下、\(^o^)/でVIPがお送りします[] 投稿日:2016/03/27(日) 22:33:40.852 ID:sLW7pJSn0
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どれだけ文明が発達しようとも、
地球は太陽をぐるりと回り、世界には四季がある。
都心部の温度はある程度調節されているが、
自然との調和を目指したこの国では、差し込む太陽の光や
流れるままに在る天気に対して手を加えるようなマネをしないでいた。
そのおかげで、春は桜が咲き誇り、
夏は焼け付くような太陽と蝉の声がそこかしこに響くのだ。
_
( ゚∀゚)「もうすぐ一学期が終わるなぁ」
( ・∀・)「夏休み、何処行く?」
川 ゚ -゚)「夏といったら海だろ。
想朔の海がこの間、大規模浄化したらしいぞ」
ζ(゚ー゚*ζ「今なら綺麗な海になってるってことだね」
( ・∀・)「じゃあ、一つは海に決定しようか」
川 ゚ -゚)「潮の流れ的に、夏休みに入って一週間以内には行きたいものだ」
想朔の海は他の場所から流れてきたゴミが留まりやすい場所にあった。
ゴミの終着点、とまではいわないが、
交通量が非常に多い中継地点、といったところか。
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83 名前:以下、\(^o^)/でVIPがお送りします[] 投稿日:2016/03/27(日) 22:34:12.889 ID:sLW7pJSn0
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ζ(゚ー゚*ζ「何でゴミを海に捨てちゃうんだろうねぇ」
( ・∀・)「近くにゴミ箱がないからじゃない?」
ζ(゚ぺ*ζ「なら、海辺にゴミ箱をたくさん設置すればいいだけじゃない」
デレは口をへの字にして反論する。
数日もあれば有害物質を浄化することができるようになっているとはいえ、
大規模な浄化はそう頻繁に行われるわけではない。
その間、苦しんでいる海の生物がたくさんいるのだ。
浄化に資金がかかるというのであれば、汚染の元凶を少しでも断ち切ってやるべきだろう。
一人一人の心がけが、大きな力を生む。
悪意のない行動が、最も性質が悪い。
_
( ゚∀゚)「その手があったか」
川 ゚ -゚)「いくつくらい置けば全員の目に留まるんだろうな」
( ・∀・)「海岸沿いも長いからねぇ」
ζ(゚д゚*ζ「ゴミ箱がないなら持って帰る!
お魚さん達が苦しんでるんだよ」
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84 名前:以下、\(^o^)/でVIPがお送りします[] 投稿日:2016/03/27(日) 22:35:10.142 ID:sLW7pJSn0
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( ・∀・)「苦しんでる?」
ζ(゚д゚*ζ「ほら、これ!」
川 ゚ -゚)「どれどれ?」
デレが取り出したのは、美術の時間、時たま使用される教科書アプリだ。
文字よりも過去の芸術作品が多く掲載されているそれは、
生徒間での評判があまりよくない。
同じ遺伝子を受け継いだ人間であるはずなのに、
どうにも過去のヒトの感性というものは理解しがたいものがある。
星と星を繋げ、そこに熊やら獅子を見出す、というのは不可解極まりないモノの一つだ。
_
( ゚∀゚)「何だ? これ」
ζ(゚д゚*ζ「昔のポスターの再現だって」
表示されているのは一枚の絵だ。
砂浜のようなところに、大小様々なゴミと共に、数尾の魚が打ち上げられていた。
どの魚も、不自然に腹が膨らんでいる。
添えられた文字は古代文字であるため解読ができないが、
絵の隣に翻訳された文章が掲載されていた。
【命を持たぬモノは食べられない】
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85 名前:以下、\(^o^)/でVIPがお送りします[] 投稿日:2016/03/27(日) 22:35:52.092 ID:sLW7pJSn0
-
要領を得ないポスターだ、と思った。
デレ以外の三人全員が、だ。
たとえ、命を持たぬ人工食であったとしても、
口で咀嚼し、胃に落とし込めば栄養として胃や腸が吸収してくれる。
命のあるモノしかたべない、というナチュラリストも存在しているが、
現代においては相当な希少種だといえた。
ζ(゚д゚*ζ「このお魚さんはゴミを食べて死んじゃったんだよ」
川 ゚ -゚)「ほう」
クーはデレを見る。
彼女の見解に興味があるようだ。
ζ(゚д゚ ζ「餌よりもゴミの方が多くて、口に入っちゃったんだと思う。
プラスチックなんかは消化できなくて、体の中に詰まって、
そのまま……」
_
( ゚∀゚)「なるほどなぁ」
( ・∀・)「デレちゃんには芸術の才能があるのかもしれないね」
ζ(゚д゚*ζ「え、何で?」
川 ゚ -゚)「感受性が豊かだからこそ、
この絵一枚でそこまで考えられるのだろ」
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86 名前:以下、\(^o^)/でVIPがお送りします[] 投稿日:2016/03/27(日) 22:37:07.459 ID:sLW7pJSn0
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デレは小さく首を傾げた。
確かに、この教科書にも絵の解説は載っていない。
しかしながら、少し考えればデレと同じ考えにいきつくはずだ。
現在、ゴミとして排出されるものの殆どが自然に溶け還るような物質で作られているため、
環境汚染についてピンとこないのはわからなくもない。
だとしても、だ。
ゴミと死んだ魚。そして、痛烈なまでに鋭い言葉。
過去の人類と感性や生活が変わっているとはいえ、
察しがつきそうなものだろうに。
(´・ω・`)「おーい、もうチャイムがなるぞー」
_
( ゚∀゚)「っと、んじゃ、また次の休憩で!」
次は生物の時間だ。
少し早めにやってきた担当教員、ショボンに声をかけられ、
ジョルジュはそそくさと自分の席へ帰っていく。
授業中、あまりにも騒がしい彼の席は、先頭の列、ど真ん中。
何度席替えをしようとも動くことのない特等席として常にそこにあった。
-
87 名前:以下、\(^o^)/でVIPがお送りします[] 投稿日:2016/03/27(日) 22:39:07.729 ID:sLW7pJSn0
-
(´・ω・`)「それでは今日の授業を始める」
ショボンは黒板に蝶と鼠を描きだす。
上手いとはいえないが、特徴を捉えたいい絵だといえた。
(´・ω・`)「この間の授業までに、植物の話や生物の定義について
話してきたね。今日からは動物について話していくよ」
彼は描いた絵の下に、無脊椎動物、脊椎動物、という単語を足す。
しばらくの間、その両者についての説明が行われた。
生徒達は各々、描かれた図をノートに記入していく。
電子の音と、液晶に打ち込んでいくタップ音が静かに響いていた。
(´・ω・`)「基本的に生物は三つの欲を持っているとされている。
さて、誰にしようかな……」
クラスをぐるっと見回したショボンは、
教室の隅の席にいるモララーへ目を向ける。
(´・ω・`)「じゃあ、モララー君。
わからなくてもいいから、答えてみて」
( ・∀・)「えっと……食欲?」
(´・ω・`)「正解」
-
88 名前:以下、\(^o^)/でVIPがお送りします[] 投稿日:2016/03/27(日) 22:39:28.354 ID:sLW7pJSn0
-
(´・ω・`)「じゃあ、次はジョルジュ」
_
( ゚∀゚)「性欲!」
(´・ω・`)「正解。でも、そんな大きな声はいらなかったね」
_
( ゚∀゚)「だって、性欲ねぇと子孫繁栄できねぇもんな!」
(´・ω・`)「ちょっと黙ろうか」
わざわざ席を立って、大きな声で答えた彼に、
ショボンはため息をつく。
答えそのものは正解であるし、
生物としての本能である「性欲」に恥じらいを感じる必要はない。
ただ、一般的にいえば、性的な言葉を
公共の場で口にするということは憚られて然るべきこと。
その感覚をジョルジュには一刻も早く身につけてもらいたいものだ。
(´・ω・`)「じゃあ、最後はデレさん」
ζ(゚ー゚;ζ「えっ!」
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89 名前:以下、\(^o^)/でVIPがお送りします[] 投稿日:2016/03/27(日) 22:40:13.335 ID:sLW7pJSn0
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デレは驚愕の声を上げる。
答えがわからなかったわけではない。
実に勤勉な彼女は、毎日の予習復習をかかさないのだ。
故に、答えも知っている。
しかしながら、その答えを自身が言うとなれば話はまた変わる。
ζ(゚、゚*ζ「……睡眠欲」
眠らないのはヒトと機械と、極一部の生物だけ。
鳥類、哺乳類、爬虫類、両生類、魚類……。
睡眠を必要としない種は多い。
極一部の生物がそれを不要としているものの、
まだまだ睡眠を必須とする生き物の方が大多数を占めている。
(´・ω・`)「正解。
一年の最後でもやるけど、
昔はヒトにもその欲求があったんだよね。
今じゃすっかり失われて、眠るのはデレさんだけになってるけど」
ζ(゚、゚*ζ「そう、ですね」
(;´・ω・`)「あ、ごめん。もしかして、答えたくなかった?」
ζ(゚、゚*ζ「いいえ。別に、そういうわけじゃないんですけど」
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90 名前:以下、\(^o^)/でVIPがお送りします[] 投稿日:2016/03/27(日) 22:44:24.655 ID:sLW7pJSn0
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答えたくなかったわけではない。
ただ、口にしてしまうことで、自分が他人とは違うのだ、
ということを改めて認識しなければいけなかったことを苦に思っているだけ。
クラスメイトも先生も、両親も、皆みんな受け入れてくれている。
受け入れきれていないのは、当の本人であるデレだけだ。
(´・ω・`)「……とにかく、他の生物には睡眠、というものが残っているんだ。
何故、現代まで彼らが睡眠を必要とする進化を続けてきたのか、
生きるために睡眠を必要とする理由はなにか。
全てが謎のままだ」
高度な文明と科学を得た現代においても、
不明瞭なことは山のように存在している。
(´・ω・`)「まあ、進化の全てが合理的であるわけではないからね。
動物達は人間と違って時計を持たない分、
睡眠によって時間の管理をしている、という説が今は有力だよ」
そこまで話したところで、授業の本筋である、動物の体の作りや、
進化の過程、といったことに話が戻っていく。
デレも落ち着かぬ気持ちを切り替え、ショボンの講義に耳を傾けていた。
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91 名前:以下、\(^o^)/でVIPがお送りします[] 投稿日:2016/03/27(日) 22:45:14.863 ID:sLW7pJSn0
-
夏が盛ると中学校は長期休暇に入る。
これは遥か昔からの慣習で、暑い部屋に子供を閉じ込めておくのは
非常に危険である、という考えから生まれた休暇だ。
室内温度の設定だけではなく、
着る服や装飾品によって外での気温にも対応できるようになった現代では、
これほど長い休みは必要とされていない。
しかし、わざわざ失くす必要もないだろう、という考えのもと、
今の時代の子供達にも長い休みが与えられているのだ。
_
( ゚∀゚)「海ー!」
川 ゚ -゚)「おぉ、まだ綺麗だな」
ζ(゚ー゚*ζ「すっごーい!」
(;・∀・)「お前ら! 準備体操!」
近隣の海にまでやってきた四人のうち三人は、
我先にと海水の中へ身を投じていく。
盛大な水飛沫と共に、緩やかな波が砂浜へと押し寄せる。
三人を止めようとしていたモララーは、頭から飛沫を被る結果となった。
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92 名前:以下、\(^o^)/でVIPがお送りします[] 投稿日:2016/03/27(日) 22:46:30.976 ID:sLW7pJSn0
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( #・∀・)「ボクの話を少しは聞けよ」
_
(メ゚∀゚)「何でオレだけ殴られたの?」
( ・∀・)「目立つから」
_
(メ゚∀゚)「ヤダ、理不尽」
頭の天辺からつま先まで、
仲良く水浸しになった四人は波際で軽く体を伸ばす。
何かあれば近くに設置されているロボットが助けてくれるとはいえ、
平穏無事に遊びを楽しめるのであれば、それに越したことはないだろう。
ζ(゚ー゚*ζ「よーし! リ・トライ!」
準備運動を終えたデレは少しだけ海から距離をとった。
オレンジを基調としたフリルで構成されたセパレートの水着が、
風と彼女の跳ねるような動きによって緩やかに揺れる。
川 ゚ -゚)「スリー!」
_
( ゚∀゚)「ツー!」
( ・∀・)「え? あ、ワン!」
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93 名前:以下、\(^o^)/でVIPがお送りします[] 投稿日:2016/03/27(日) 22:47:04.578 ID:sLW7pJSn0
-
ζ(>ワ<*ζ「ゴー!」
デレの細い足が砂を蹴り上げる。
一、二、と、きめ細かな砂に足を埋めては再び蹴り上げ、海へ近づいていく。
波の一つ手前で彼女は力一杯飛び上がった。
( ・∀-)そ「うわっ!」
ドボン、という音と共に、
先ほどと同等の水飛沫が上がる。
ζ(゚ー゚*ζ「どう?」
_
( ゚∀゚)「百点!」
川 ゚ -゚)「実にいい飛び込みだった」
水面から顔を出したデレが尋ねると、
二人は頭の上に大きな丸を作って応える。
(;・∀・)「もー、危ないよ?」
ζ(゚ー゚*ζ「大丈夫、大丈夫!」
-
94 名前:以下、\(^o^)/でVIPがお送りします[] 投稿日:2016/03/27(日) 22:47:56.697 ID:sLW7pJSn0
-
( ・∀・)「デレちゃんって意外と思い切りがいいというか、
活発というか……。色々すごいよねぇ」
ζ(゚ー゚*ζ「え、アタシ大人しそう?」
黒の海パンを装備したモララーは、
しみじみとした様子で言った。
( ・∀・)「窓辺で小説とか読んでそうなイメージ」
_
( ゚∀゚)「あ、わかる」
彼の言葉に頷いたのは、
黄色をメインにしたド派手な海パンを履いているジョルジュだった。
_
( ゚∀゚)「始めましてのときなんてさ、
キョドキョドして、他人と接しなれてません!
インドア派です! って雰囲気バリバリだったのになぁ」
川 ゚ -゚)「ひと月も経たないうちに馴染んでたけどな」
_
( ゚∀゚)「確かにそーだった」
肯定の言葉を出しつつも、ジョルジュの目線はクールの胸元に寄せられている。
デレとは違い、発達を見せ始めている胸はわずかにふくらみをみせており、
黒の水着を魅惑的に張り詰めさせていた。
-
95 名前:以下、\(^o^)/でVIPがお送りします[] 投稿日:2016/03/27(日) 22:48:43.700 ID:sLW7pJSn0
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川 ゚ -゚)「体育の成績は平均だったが、
いつも楽しそうにやっているのは好感がわく」
ζ(゚ー゚*ζ「えへへ。走ったりするのは好きだよ」
_
(メ゚∀゚)「また殴られた」
( ・∀・)「自業自得って言葉知ってる?」
ジョルジュは頬を押さえる。
あからさまな視線がクールの怒りを買い、
彼女から熱烈なストレートを頂いてしまったのだ。
ζ(゚ー゚*ζ「昔は本を読むのも好きだったんだけどね」
川 ゚ -゚)「今は嫌いなのか?」
ζ(゚ー゚*ζ「そんなことないよ!
ただ……」
( ・∀・)「ただ?」
わずかにデレが言い澱む。
モララーが先を促すと、彼女は小さな苦笑いを顔に浮かべた。
ζ(゚ー゚*ζ「……一人じゃなくなったから、
みんなと外で遊ぶほうが楽しいな、って」
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96 名前:以下、\(^o^)/でVIPがお送りします[] 投稿日:2016/03/27(日) 22:49:17.310 ID:sLW7pJSn0
-
_
( ゚∀゚)「デレ……!」
軟禁されていたわけではないけれど、
何となく同世代の子供と接することができなかった。
楽しげに学校の話をされたとしても、
返す言葉がないのだと気づいてしまったのだ。
かといって、一人きりで遊ぶには外は広すぎる。
周りが楽しく遊んでいるのに、
仲間に入れない、というのは辛いことだ。
川 ゚ -゚)「遊ぼうか」
( ・∀・)「そうだね。何しようか」
クールがデレの手を引き、
モララーは彼女の隣に立つ。
_
( ゚∀゚)「サーフボード借りるか?」
ζ(゚ー゚*ζ「あれってコツがいるんじゃないの?」
( ・∀・)「立つのがちょっとね。
でも基本的にはセンサーが波を捕まえてくれるし、
すっごく楽しいよ」
川 ゚ -゚)「私は未経験だ。
だが、楽しそうだな」
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99 名前:以下、\(^o^)/でVIPがお送りします[] 投稿日:2016/03/27(日) 22:50:03.998 ID:sLW7pJSn0
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ワイワイと四人は言葉を交わしながら、
少し離れたところに建っている店舗へと足を運ぶ。
今のところはサーフボードのレンタルが最大の目的となっているが、
必要となれば何でも揃うので、ボールやら小型船やらのレンタルも視野に入れておく。
ζ(^ー^*ζ「サーフィンは初めてだから楽しみ!」
デレは一つ、嘘をついた。
友達が出来たから本を読まなくなったのではない。
彼女は、読書を楽しい、と思えなくなったから、それを手に取らなくなってしまったのだ。
幼い頃はどれも目新しく、
自分の知らない世界を作り上げてくれる本が大好きだった。
しかし、デレは気づいてしまった。
本の中にある世界はどれもよく似ていて、代わり映えがない。
時として、同じ本を読んでしまったのではないか、と錯覚してしまうことすらあった。
ならば、荒唐無稽で、予測のつかない夢を思い返しているほうが、
ずっとずっと楽しかった。
_
( ゚∀゚)「楽しみっていえば、モララーはあれ買った?」
( ・∀・)「どれだよ」
-
100 名前:以下、\(^o^)/でVIPがお送りします[] 投稿日:2016/03/27(日) 22:51:23.709 ID:sLW7pJSn0
-
_
( ゚∀゚)「少年ホライゾン」
( ・∀・)「あぁ、買ったよ」
_
( ゚∀゚)「今週、メッチャクチャおもしろくなかった?」
彼らが話しているのは、週刊の漫画雑誌のことだ。
十代の男子向けに作られ、恋愛や冒険、
わずかなエロスといったデータによって生成された漫画が、
毎週おおよそ五百ページほど掲載されている。
( ・∀・)「わかる。来週が楽しみだよなぁ」
川 ゚ -゚)「どんなのだったんだ?」
_
( ゚∀゚)「お前買ってねぇのかよ!」
ジョルジュがニヤニヤ笑いながらクールに問いかける。
川 ゚ -゚)「私は月刊オムライス派だ」
月刊オムライスは少女向けの漫画雑誌。
苦しみを乗り越え、最後には主人公が報われる、
といったパターンの少女漫画ばかりだが、人気は高い。
_
( ゚∀゚)「『ブンロット』って漫画がさ、
ヒロインを救出した、ってところで、
背後から謎の影が――! って終わり方してたんだよ」
川 ゚ -゚)「それは……気になるな」
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101 名前:以下、\(^o^)/でVIPがお送りします[] 投稿日:2016/03/27(日) 22:52:04.240 ID:sLW7pJSn0
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だっろー、と叫ぶジョルジュを横目に、
デレは胸中でひっそりと呟く。
その影は味方の影で、主人公とヒロインはほっと一息をつく。
その途端、敵のアジトが崩れ始め、三人は共に脱出に向けて走り出す。
いつも通りの王道だ。
王道が悪いとはいわない。
多くを楽しませられるからこそ、王を冠することができる展開だ。
しかしながら、この広い世界に、
それしか溢れていない、というのも些か問題だろう。
もう少しひねた作品があってもいいだろうに。
やはり、感情なきロボットにそこまで求めるのは酷というものなのだろうか。
ζ(゚ー゚*ζ「あ、ほらほらサーフボード選ぼうよ!」
_
( ゚∀゚)「よっしゃ。オレ、一番星!」
デレが店内を指差すと、真っ先にジョルジュが飛び込み、
大きな星が一つ描かれたサーフボードを手に取った。
( ・∀・)「ボクは何でもいいや」
川 ゚ -゚)「私はこの青で」
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103 名前:以下、\(^o^)/でVIPがお送りします[] 投稿日:2016/03/27(日) 22:53:33.537 ID:sLW7pJSn0
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デレは花柄を、モララーは黒に赤のラインが入ったボードを選んだ。
_
( ゚∀゚)「っしゃ、行くぞ!」
ζ(゚ー゚*ζ「おーう!」
二人は砂浜を駆け、ザバザバと波を掻き分ける。
いくらセンサーが波を捕まえてくれるとはいっても、
浅瀬で楽しむことができるようなスポーツではない。
沖にまでは自力でいかなければならないのが、サーフィンの辛いところだ。
ζ(゚ー゚*ζ「どうせなら、上に乗ってるだけで前にも
進んでくれるようなボードにしてくれたらいいのにねぇ」
_
( ゚∀゚)「それって、船でよくね?」
ζ(゚д゚*ζ「えー? 波のあるところまで自動で行ってくれるとか、
便利でいいと思うんだけどなぁ」
( ・∀・)「一理在る」
二人の右隣に並んだモララーが会話に割り込んでくる。
見れば、彼は自分達の後方を指差していた。
( ・∀・)「そうであったなら、クーがあんなに苦労することはなかった」
_
( ゚∀゚)「え」
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104 名前:以下、\(^o^)/でVIPがお送りします[] 投稿日:2016/03/27(日) 22:54:52.814 ID:sLW7pJSn0
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川 д )「ま、まって……」
_
( ゚∀゚)「あっちゃー」
足がつく場所はとうに越えた。
今、三人はボードを目の前に浮かせながらバタ足だけで進んでいるような状態だ。
それがクールには堪えたらしい。
顔をうつむけ、肩を上下にしている様子を見れば、
彼女がどれほど極限的な状況に身を置いているのか理解できてしまう。
ζ(゚ー゚;ζ「く、クーちゃん!」
慌ててデレが近づく。
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( ゚∀゚)「こりゃ先は長そうだな」
( ・∀・)「無理そうならボール遊びに切り替えよう」
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( ゚∀゚)「それがよさそうだ」
二人は顔を見合わせ、肩をすくめてからデレの後を追う。
いくらなんでも、クールを置いて先へ行くわけにはいかない。
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105 名前:以下、\(^o^)/でVIPがお送りします[] 投稿日:2016/03/27(日) 22:56:09.240 ID:sLW7pJSn0
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楽しい夏が終われば、次にやってくるのは文化祭。
生徒達は休み明けのテストに苦しみながらも、
次のお祭り騒ぎに向け、着々と準備を進めていく。
ζ(゚ー゚*ζ「ワッフル屋かぁ」
( ・∀・)「嫌い?」
ζ(´ー`*ζ「好きすぎて困ってる〜」
_
( ゚∀゚)「やーい、デブー!」
ζ(゚ー゚#ζ「あ?」
_
(;゚∀゚)「ヒッ」
普段、ほわほわとしている彼女から、途方もない怒気を感じ取り、
ジョルジュは思わず後ずさりをする。
彼らの様子を目にしたクラスメイト達からは、
暖かい視線を頂くこととなった。
川 ゚ -゚)「今日、材料の買出しに行くが、
良かったらデレも一緒に行ってくれないか?
色んな味を試してみたいから、一人でも多く発案者が欲しい」
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106 名前:以下、\(^o^)/でVIPがお送りします[] 投稿日:2016/03/27(日) 22:56:39.372 ID:sLW7pJSn0
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クラスにおけるクールの役割は、
材料集めと新商品開発だ。
つまり、大量の材料を集め、
それらを適当にミックスした生地やらソースを作りだし、
商品として置けるものを探し出せ、とのことだ。
生贄、もとい、考える頭は一つでも多いに限る。
そこで、彼女はデレを指名したのだ。
ζ(゚ー゚*ζ「うーん、ごめん。
今日はやめておくね」
川 ゚ -゚)「そうか、残念だ」
_
( ゚∀゚)「何々? デレ、用事か? 彼氏か?」
付き合いの良い部類に入っていたデレが、
クールの誘いを断った、ということに対してジョルジュはいらぬ詮索をする。
恋の話を聞きたい、などという可愛らしい感情ではなく、
好奇心旺盛な出歯亀、と評すのが似合いだ。
ζ(゚ー゚*ζ「違う違う」
デレは軽く手を横に振る。
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107 名前:以下、\(^o^)/でVIPがお送りします[] 投稿日:2016/03/27(日) 22:57:04.789 ID:sLW7pJSn0
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ζ(゚ー゚*ζ「最近、ちょっと寝不足なの。
だから、早めに帰って早めに寝ようかなぁ、って」
( ・∀・)「あー」
気のない返事になってしまったが、
それも致しかたのないこと。
モララーには寝不足の感覚がわからない。
大変なんだろう、ということだけはデレから聞かされて知っているが、
共感も同意も、ツッコミすらできやしない。
_
( ゚∀゚)「最近、多くね?」
ζ(゚ー゚*ζ「冬が近づいて、日が落ちるのが早くなると、
同じように眠くなる時間も早くなるんだよねぇ……」
川 ゚ -゚)「なら冬は冬眠でもするのか?」
ζ(゚ー゚*ζ「流石にそこまではしないよ」
( ・∀・)「何にせよ、眠るってのは大変だね」
ζ(゚ー゚*ζ「うん。もっとみんなと遊びたいのに」
_
( ゚∀゚)「お前が寝てる間、オレ達がたーっくさん遊んでてやるよ!」
ζ(゚、゚*ζ「もー!」
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108 名前:以下、\(^o^)/でVIPがお送りします[] 投稿日:2016/03/27(日) 22:58:01.072 ID:sLW7pJSn0
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そんな風に時間が過ぎ、
行われた文化祭は中々の成功を収めた。
中でも、デレが時間の合間に作ったキュウイソースが好評で、
学校中からそれを目当てに客がやってくる程だった。
打ち上げには当然、デレも参加したのだが、
結局最後まで参加し続けることはできず、
無念の帰宅を果たすこととなる。
もっとも、クラスの打ち上げは翌日の昼まで続いていた、
というのだから、どうあがいてもデレが最後まで参加することは不可能だったといえる。
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( ゚∀゚)「最後の方なんて、お前を讃える会ができてたぞ」
ζ(゚、゚;ζ「何それ」
川 ゚ -゚)「名前のままだが」
( ・∀・)「デレちゃんのおかげで、うちのクラスが表彰されたからね。
キミはボクらのヒーローになったってわけ」
ζ(゚ー゚;ζ「たかがソース一つで大げさな……」
思わず恐縮してしまう。
昔、キュウイジャムなるものの作り方を見た記憶があったので、
それを応用して作っただけのソースだ。
過剰評価にも程があるというものだろう。
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109 名前:以下、\(^o^)/でVIPがお送りします[] 投稿日:2016/03/27(日) 22:58:36.799 ID:sLW7pJSn0
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( ゚∀゚)「いいじゃん。褒められてんだからさ」
ζ(゚ー゚*ζ「それは嬉しいけど」
実力以上の評価というのは、どうにもむず痒い。
デレは軽く頬を掻く。
( ・∀・)「実際問題、デレちゃんはすごいよ。
そんな発想が! って感じのことよく言うし」
ζ(゚、゚*ζ「それって褒めてる?」
川 ゚ -゚)「無論だ」
想定の斜め上、と言われてもあまり嬉しさはない。
ただでさえ、デレは周りの人間とは根本的な部分で相違がある。
できることならば、他の点においては平々凡々でいたい気持ちがあった。
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( ゚∀゚)「お前といると飽きないしな」
ζ(゚、゚*ζ「いった!」
ジョルジュに背を叩かれ、デレは思わずのけぞる。
軽く叩いたつもりだったのだろうけれど、
男子の力で叩かれるとそれなりに痛い。
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( ゚∀゚)「あ、悪い」
ζ(゚ー゚*ζ「もー! 仕返しだ!」
一発では足りず、二発、三発と殴ってやる。
その様子をクールとモララーは笑いながら眺めているのであった。
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111 名前:以下、\(^o^)/でVIPがお送りします[] 投稿日:2016/03/27(日) 22:59:14.108 ID:sLW7pJSn0
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(´・ω・`)「今日はいよいよ、睡眠についての授業を行うよ」
正月休みが終わり、中学一年もそろそろ終わり、という時期、
順調に進んだショボンの授業は、睡眠の単元に入った。
(´・ω・`)「まず、昔、ボクらヒトも眠っていました。
そうじゃなかった、って説もあったってのは、もう聞いたかな」
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( ゚∀゚)「デルちゃんが言ってたな」
(´・ω・`)「デルタ先生、ね」
相も変わらずな席についているジョルジュに
ショボンは嗜めるように言葉を返す。
しかし、その言葉も届いていないのか、
彼は謝罪もなくニコニコと前を手の中にあるペンを回すばかり。
(´・ω・`)「……とにかく、だ。
ヒトは睡眠を必要としない進化を遂げました。
何故でしょうか。はい、ドクオ君」
('A`)「え、っと……」
ドクオは視線を彷徨わせながら考える。
睡眠を必要としない自分と、睡眠を必要とするデレを比べてみた。
何が違うのか。
どのような利点があったか。
('A`)「……時間が、たくさん、使える、から?」
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112 名前:以下、\(^o^)/でVIPがお送りします[] 投稿日:2016/03/27(日) 23:00:39.567 ID:sLW7pJSn0
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(´・ω・`)「なるほど。それもあるかもしれないね。
実は、この問題も答えは明らかになっていないんだ」
どの時点からヒトが睡眠を必要としなくなったのか、
その過程すら現代まで伝わっていない。
進化の理由などわかるはずもなかった。
(´・ω・`)「これは歴史の授業でまた聞くことになるだろうけど、
昔の論文や研究書って残っていないものが多いんだ。
おかげで、つい最近までヒトが眠っていたかどうかでさえ
答えが見つかっていなかった、ってわけ」
( ・∀・)「デレちゃんを調べてもわからないんですか?」
ζ(゚ー゚*ζ「えっ」
調べる、という言葉に悪意は見えない。
だが、一個人としてのデレからしてみれば、
自分の体を好き勝手に調べられる、というのは、決して楽しくない事態だ。
(´・ω・`)「わからない。
ヒトの睡眠とその他の生物の睡眠が殆ど同じだった、
ってことくらいしかね」
デレの体は進化前の状態であり、
過程や、当時の精神状態をそのまま持って生まれたわけではない。
彼女の体一つをどれだけ調べてみても、
かつての人間の全てを知ることはできないだろう。
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113 名前:以下、\(^o^)/でVIPがお送りします[] 投稿日:2016/03/27(日) 23:01:09.873 ID:sLW7pJSn0
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(´・ω・`)「睡眠には大きく二つの眠りがあって、
浅い眠りと深い眠り」
レム、とノンレム、の文字が書き出される。
(´・ω・`)「浅い眠りの時、脳の一部は活性化していて、
眼球が動き、本人は夢と呼ばれるものを見ている状態になっている、
ってことで合っているかな?」
ζ(゚ー゚*ζ「た、たぶん……」
ショボンの質問に、デレは曖昧な答えを返す。
彼女は目を閉じて夢を見ているだけであって、
自身の眼球の動きや、眠りのシステムについて詳しいわけではない。
科学的な質問は専門外にも程がある。
(´・ω・`)「かつてはこの夢を使って占いが行われていたらしいよ。
どんな占いなのかまではボクも知らないけど」
川 ゚ -゚)「占い?」
( ・∀・)「ほら、歴史でやったじゃん。
骨の占いとか、星の占いとか」
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( ゚∀゚)「あの意味わっかんねぇやつな」
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114 名前:以下、\(^o^)/でVIPがお送りします[] 投稿日:2016/03/27(日) 23:01:50.656 ID:sLW7pJSn0
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その気になりさえすれば、全ての事象に関して制御が可能になった現代では、
占いなどという根拠の欠片もないものは残っていない。
歴史の授業で聞いたような記憶もあるが、
嘘くさい、という印象を残すばかりで、細かなことを覚えている生徒はいなかった。
唯一、デレだけが、夢のある話だ、と感じはしたのだが、
記憶はそこまでで止まっている。
(´・ω・`)「科学が発達しきっていなかった時代だから、
多少の不合理や非現実的な考え方は仕方がないよ。
それこそ、宗教なんてその代表格だったわけだし」
ζ(゚ー゚*ζ「宗教?」
(´・ω・`)「あれ? まだそこまでやってない?」
ショボンは首を傾げるが、
本当にそうしたいのは生徒達のほうだ。
急に見知らぬ単語を出されても困る。
(´・ω・`)「昔はね、カミサマってのを信じてたんだって。
悪いことがあるとカミサマが助けてくれたり、
辛いことがあるのはカミサマの試練なんだ、って信じたり」
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( ゚∀゚)「結局、カミサマって何なんだ?」
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115 名前:以下、\(^o^)/でVIPがお送りします[] 投稿日:2016/03/27(日) 23:02:21.026 ID:sLW7pJSn0
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(´・ω・`)「そこまではボクも知らないよ。
詳しく知りたいなら、ミルナ先生に聞いてごらん」
歴史を担当としているミルナは寡黙で有名だ。
授業でも横道にそれた話は絶対にしない。
生徒達の私語に注意をすることもなく、
常にマイペースに授業を進め、想定通りの場所まで続ける。
際立った人気はないものの、
密やかな好感度は高め、といった風な先生だ。
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( ゚∀゚)「や、そこまでは別に」
川 ゚ -゚)「どうせ授業でやるだろ」
(´・ω・`)「うん。だと思うよ。
当時の争いを説明するのに必須だし」
( ・∀・)「領土争いに?」
(´・ω・`)「それだけじゃないんだよ。
というか、そろそろボクは生物の話がしたい。
歴史は専門外なんだって」
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( ゚∀゚)「せんせー! 戦争って何で起きてたんですかー!」
(´・ω・`)「もう、知らないってば。
そういうことは専門の先生に聞いて」