ζ(-、-*ζは眠るようです

36 名前:以下、\(^o^)/でVIPがお送りします[] 投稿日:2016/03/27(日) 21:59:35.901 ID:sLW7pJSn0
  
施設と自宅を行き来する生活は大変だったが、
デレの健やかな成長のために下した判断は間違っていなかったらしい。

ヾ(゚ワ゚* し「あ、かー、ぁ!」

面会に行くと、デレはいつも笑顔でツンのことを迎えてくれる。
日中しか会えないものの、きちんと彼女のことを母と認識してくれているようだ。

ξ゚ー゚)ξ「おはよう、デレ」

(゚、゚* し「うー、あっ」

研究の結果、いくつかわかったことがある。
まず、眠りのためには静かな空間と暗闇が必要だということ。
これは現代では中々手に入りにくい。

普通の人間は夜も起きているため、
物音や生活音が充満しているし、明かりもついている。
そのため、デレは幼くして寝不足、という状態にあったらしい。

ツンやブーンは寝不足とやらのことはよくわからなかったが、
不足している、ということは良くないことなのだろう、とだけ認識していた。

37 名前:以下、\(^o^)/でVIPがお送りします[] 投稿日:2016/03/27(日) 22:00:47.808 ID:sLW7pJSn0
  
次に、デレの発育についてだ。
常に起き、動こうとする現代の赤ん坊と違い、デレには眠りという休息の時間がある。

そのため、どうしても発育が他の子達よりも遅れてしまうのだそうだ。
代わりに、というのもおかしな話だが、
文献によると昔の人間は現代人よりも寿命が長かったそうなので、
デレもその恩恵を受け、普通の子よりも長生きするだろう、と言われた。

ξ゚听)ξ「今日は絵本を読んであげるわね」

ヾ(゚ワ゚* し「あー! あっ! ううー!」

デレは嬉しそうに手足をバタバタさせる。
外で遊ぶことも大好きな彼女だが、それ以上に絵本が好きなのだ。

ツンは本を求める姿に、思わず顔を綻ばせる。
将来は立派な学者になるかもしれない、
などと親馬鹿なことを考えてしまうほどに、彼女は娘を愛していた。

ξ゚ー゚)ξ「はいはい。ちょっと待ってね」

知能も他の子と比べてゆっくりとした成長になるだろうけれど、
眠っている間も脳の一部は動いているため、
小学生にもなれば周囲と同等の知性を得ることが可能らしい。

ξ゚听)ξ「むかしむかし、あるところに――」

38 名前:以下、\(^o^)/でVIPがお送りします[] 投稿日:2016/03/27(日) 22:01:32.106 ID:sLW7pJSn0
  
デレがある程度、言葉を操れるようになった。

(゚、゚*从 「か、さん。ばいばい?」

ξ゚听)ξ「また、明日も来るからね」


デレは絵本を通し、外の世界を通し、知識を得た。

(゚、゚*ζ「なんで、おかあさんはわたしといっしょにいてくれないの?」

ξ゚听)ξ「……あなたのためなのよ」


デレは小学校に通うことができなかった。
睡眠という枷を持っていては、普通の子と同じだけの時間、
授業を受けきることができない、と判断されたのだ。

ζ(゚、゚*ζ「ねえ、小学校ってどんなとこなの?」

ξ゚听)ξ「デレと同じくらいの年の子がたくさんいて、
      色んなお勉強をするのよ」

ζ(゚、゚*ζ「アタシは行かないの?」

ξ゚听)ξ「いつかきっと学校に行けるようになるわよ」

ζ(゚、゚*ζ「そうかなぁ……」

39 名前:以下、\(^o^)/でVIPがお送りします[] 投稿日:2016/03/27(日) 22:02:40.066 ID:sLW7pJSn0
 
デレは寂しい思いをたくさんしてきた。
施設の人達はとても優しく、いつも彼女の体調を気にかけてくれていたが、
父や母が傍らにいない寂しさはそう簡単に埋まるものではない。

毎日のように顔を出してくれるツンではあったが、
彼女には彼女のするべき仕事がある。
夫の稼ぎだけで生活していけるほど、世の中は甘くないのだ。

ζ(゚ー゚*ζ「学校かぁ」

小学生のカリキュラムを分割で受けながら、
デレはいつも想像していた。
外で一緒に遊ぶことのある男の子や女の子。
彼らと一つの空間で勉強する。

時々、悪戯をしてみたり、
休み時間には鬼ごっこをして遊んだり。

ζ(´ー`*ζ「たのしそー」

だが、聞くところによると、小学校というのは、
朝の八時から夕方の六時。
実に十時間もの間、拘束を受けるらしい。

まだまだ体が未発達なデレにとって、十時間は膨大だ。
寝起きと学校だけで一日が終わってしまう。

40 名前:以下、\(^o^)/でVIPがお送りします[] 投稿日:2016/03/27(日) 22:03:16.514 ID:sLW7pJSn0
  
そんな日々が続いて六年間。
来年はどうなるのだろう、とデレが考えていたところに、
いつもの先生がやってきて言ってくれたのだ。

(-@∀@)「デレちゃん。キミは退院できます」

ζ(゚、゚*ζ「え?」

きょとん、としてしまった彼女を責めることのできる人間はいない。

(-@∀@)「来週から、キミはお父さんとお母さんと一緒に暮らします。
      中学にも通ってもらえます。ただし、VIP中学校と決まっているけどね」

まだ幼い彼女には全て伝えられることはなかったが、
今後、デレが現代社会に適応していくためにも、学校生活というものは避けて通れなかったのだ。

眠る彼女と、眠らぬ同級生達。
折り合いをつけるのは困難かもしれないが、
少しずつ乗り越えていかなければ、成人したときに困るのはデレのほうだ。

(-@∀@)「今までよく頑張ったね。
      月に一度の検査は受けてもらわないといけないけど、
      これからは普通の子と同じように過ごしてもらえるよ」

ζ(゚、゚*ζ「本当?」

(-@∀@)「勿論」

41 名前:以下、\(^o^)/でVIPがお送りします[] 投稿日:2016/03/27(日) 22:04:41.300 ID:sLW7pJSn0
  
世界に唯一の眠る子。
そんな彼女のために、国もある程度の援助はしてくれる。
VIP中学校ではデレを受け入れるための準備が着々と進められ、
デレ一家はVIP中学の近くに新しく家を借りることとなった。

通学時間を少しでも減らすことで、彼女の睡眠時間を確保しやすくするためだ。
無論、そんなことをデレに伝えるような人間はいない。

子供は子供らしく、無邪気に喜んでいればいいのだ。
本来なら、この時期の子供は余計な苦労や悩みに囚われる必要がなく、
それらは周りの大人だけが背負うもの。

たまたま、運悪く眠りを得てしまったデレ。
彼女にこれ以上の重りは必要ない。

ζ(゚ー゚*ζ「ねえねえ! 一緒に住んだら、一緒に寝たりもできるかな?」

(-@∀@)「横で寝転ぶくらいなら、ね。
      ただ、デレちゃんの歳だとちょっと恥ずかしいかもしれないよ」

ζ(゚、゚*ζ「そんなのしーらない、しーらなぁい!」

デレは胸を躍らせ、身体を躍らせる。
早くその日が来ることを願いながら、世界でただ一人、眠りにつくのだ。

42 名前:以下、\(^o^)/でVIPがお送りします[] 投稿日:2016/03/27(日) 22:05:18.804 ID:sLW7pJSn0
  
そんなこんなで迎えたのが今日だった。

親子で迎える初めての朝。
デレが学校に通う初めての朝。

ζ(゚、゚*ζ「……眠るって、変かな。
      みんな、気持ち悪がったりしないかな」

愛する父が未だ自身の眠りを受け入れきれていない、
ということにデレは胸をもやもやさせていた。
実の親がそうであるならば、同級生達にとっては尚更そうかもしれない。

みんなと仲良くしたいけれど、
みんなの方はどうかわからない。

ζ(>、<*ζ「駄目駄目!」

デレは両頬を軽く叩く。
気合を注入しなおし、改めて目の前の鏡を見る。

ζ(゚ー゚*ζ「大丈夫! きっとみんなわかってくれる!
       アタシもわかってもらえるように頑張る!」

映っているのは、百点満点の笑みを浮かべた可愛い女の子だ。
寝癖もばっちり直っている。

ちなみに、彼女は一般的な「ベッド」がアダルトグッズであることを未だ知らない。
当然、デレが使用しているものは睡眠用の特注品だ。

43 名前:以下、\(^o^)/でVIPがお送りします[] 投稿日:2016/03/27(日) 22:05:46.518 ID:sLW7pJSn0
  
ζ(゚ー゚*ζ「じゃじゃーん!」

リビングに飛び込んできたデレは制服を身にまとっており、
洗練されたデザインのスカートふわりと揺れる。

( *^ω^)「おお! 可愛いお! 流石、我が娘!
      マイスイートデレ!」

ξ゚ー゚)ξ「よく似合ってるわよ。
      髪も綺麗になってるし」

ζ(゚ー゚*ζ「これで掴みはばっちりかな?」

ξ゚ー゚)ξb「ばっちりよ。
       クラスの男子全員を虜にして帰ってきなさい」

ツンは親指をたて、娘の幸運を祈る。
それに異議を唱えるのは父親であるブーンだ。

(;^ω^)「えっ……。
     それはちょっと、パパ許せないお」

ξ゚听)ξ「過保護」

(;^ω^)「だって……」

44 名前:以下、\(^o^)/でVIPがお送りします[] 投稿日:2016/03/27(日) 22:06:16.736 ID:sLW7pJSn0
  
もそもそとブーンが口ごもっている間に、
時計は七時を示す。

ζ(゚д゚*ζ「あっ! そろそろ行かないと!」

ξ゚听)ξ「あら本当」

( ^ω^)「ボクも一緒に出るお」

ξ゚听)ξ「じゃあお弁当持ってくるわね」

残された朝食を回収し、ツンが台所に戻る。
かちゃかちゃ、と弁当の用意がされているであろう音が聞こえてきた。

ζ(゚ー゚*ζ「一緒に、かぁ」

( ^ω^)「一緒に、だお」

親子は顔を見合わせて笑う。
こんな簡単なことでさえ、今まではできなかったのだ。

( ^ω^)「何かあったらすぐ父さんに言うんだお」

ζ(゚ー゚*ζ「はーい」

( ^ω^)「あと、好きな男の子が出来ても言うんだお」

ξ゚听)ξ「馬鹿」

45 名前:以下、\(^o^)/でVIPがお送りします[] 投稿日:2016/03/27(日) 22:07:24.252 ID:sLW7pJSn0
  
ツンからのツッコミチョップをくらい、ブーンはその場に蹲る。
その間に素早く鞄の中へ弁当を入れてくれる彼女は出来た妻だ。

ξ゚ー゚)ξ「頑張ってらっしゃい」

ζ(゚ー゚*ζ「うん!」

眠らない社会と真正面から向き合うのはこれが始めてだ。
不安がないはずがない。
学校の授業についていくことができるかもわからない。

けれど、それ以上にデレはワクワクしているのだ。

ζ(゚ワ゚*ζ「友達たくさん作ってくるね!」

(;^ω^)「あっ、待って、父さんも行くおー!
      ツン、行ってきます!」

ζ(゚ー゚*ζ「忘れてた!
      お母さん、いってきまーす」

ξ゚听)ξ「いってらっしゃい」

笑顔で家を出る娘と、慌ててその後を追う夫。
二人を見送り、ツンは小さく笑う。

ξ゚ー゚)ξ

何て幸せで、平凡な家庭なのだろうか、と。

46 名前:以下、\(^o^)/でVIPがお送りします[] 投稿日:2016/03/27(日) 22:08:00.199 ID:sLW7pJSn0
  
( "ゞ)「みなさん。始めまして。
    一年A組担任の関ヶ原デルタです。
    これから一年、よろしくお願いします」

一クラス三十人の教室に、同じ年の子がギュッと詰まっている。
そう思うだけでデレの心臓は鼓動を早くする。
同じ年の子をこんなにたくさん一度に見たのは初めてだった。

清潔感のある教室の壁は白く、床には埃一つない。
新たな生徒がやってくるこの日のために清掃が行われたのだろう。

( "ゞ)「そして、みなさんに一つ、お伝えすることがあります」

デルタの言葉に教室がざわつく。
その中でデレだけが身を硬くし、彼の言葉を待っていた。

( "ゞ)「河合デレさん」

ζ(゚д゚;ζ「は、はいっ!」

名を呼ばれ、背筋を伸ばして立ち上がる。

彼女の存在により、かつてヒトが睡眠をとっていたことが正式に判明。
ひっそりとではあるが、学会を通して世間に公表された。
おかげでここ十年、歴史の授業で睡眠の項目が飛ばされたことはない。

一応、デレの名前は伏せられているため、
彼女の生活が脅かされたことは一度としてないまま今に至る。

47 名前:以下、\(^o^)/でVIPがお送りします[] 投稿日:2016/03/27(日) 22:08:52.589 ID:sLW7pJSn0
  
( "ゞ)「えー、みなさんの中にも、もしかすると睡眠、
    というものについて知っている人がいるかもしれません」

ヒトがかつて睡眠をとっていた、と発表されたとはいえ、世間一般における認知度は限りなく低い。
普通に生活していれば一生縁のない知識であるし、知らずとも問題はないためだ。

現に、クラスの半数以上がデルタの言葉に首をかしげている。
知っている、という顔をしている者も、
動物園やペットを通して知っている、という者が殆どだろう。

( "ゞ)「睡眠とは、主にヒト以外の生物がとる行動です。
    脳や体を休める働きをしています」

デレは少しだけ顔をうつむける。
現代において、睡眠を取る人間はいない。
その事実がとても恐ろしく感じられた。

( "ゞ)「しかし、昔はヒトも睡眠をとっていました。
    かつてはそうでない、という意見もあったようですが、今は違います」

デルタはデレを手招きする。
彼女はこっそりと深呼吸をし、少し早足で担任の横へつく。

( "ゞ)「彼女は、現在、睡眠を取る必要のある唯一の人間です」

48 名前:以下、\(^o^)/でVIPがお送りします[] 投稿日:2016/03/27(日) 22:09:27.698 ID:sLW7pJSn0
  
教室中に声が溢れる。

睡眠そのものに疑問を投げる者。
人間が眠る、という事実に驚いている者。
デルタの言葉を疑っている者。

全員が全員、違った反応をしている。
そして、それらは全て、デレが今後生きていく上で何度も見ることになるであろう反応なのだ。

ζ(゚д゚*ζ「えっと」

喧騒の中、デレが声を出す。
彼女の声は届かない。

ζ(>д<*ζ「河合デレです!」

普段の声量では届かない。
そう察した彼女は、腹に力を入れて大きな声を出した。
デレの声が全員の鼓膜を揺らしたのだ。

ζ(゚ー゚*ζ「えっと、始めまして」

まずは挨拶。
言いたいことも、言わなければならないこともある。
しかし、それらは学校生活の中ででも話せることだ。

だから、最初の一歩だけは間違えずに踏み出さなければならない。
かつて、ツンがデレに言ってくれた言葉がある。

女の子の武器は笑顔なのだ、と。

49 名前:以下、\(^o^)/でVIPがお送りします[] 投稿日:2016/03/27(日) 22:10:08.987 ID:sLW7pJSn0
  
ζ(゚ワ゚*ζ「アタシはみんなと同じように学校に来ます。
       でも、夜は寝ます。それだけです」

何度も検査を受けたが、それ以外の異常はなく、
脳の動きも然程、代わりがあるわけではないらしい。

ζ(゚ー゚*ζ「なので、仲良くしてください」

最後にお辞儀をする。
そして、慌てて顔を上げ、一つだけ付け足した。

ζ(゚д゚;ζ「あ、でも、学校にくるのは初めてなので、
       色々教えてもらえると嬉しいです!」

知能の面では周囲と大差なくとも、
培ってきた常識の面ではどうかわからない。
施設にいた人達は大丈夫だと言ってくれていたが、
同じ空間にいるからこそ生まれるカーストがある、とデレは幼くして確信していたのだ。
  _
( ゚∀゚)「オレは長岡ジョルジュ!」

一番前の席に座っていた男の子が突然立ち上がり、名乗りを上げた。
  _
( ゚∀゚)「好きな食べ物はからあげ! 嫌いな物はピーマン!」

クラス中が彼に注目していた。
デレでさえ、目を丸くして彼を注視している。

51 名前:以下、\(^o^)/でVIPがお送りします[] 投稿日:2016/03/27(日) 22:10:52.527 ID:sLW7pJSn0
  _
( ゚∀゚)「オレは学校に来るとか当たり前すぎて、
    何を教えてやったらいいかぜんっぜんわかんねぇ」

ジョルジュは男らしく太い眉毛をくいっとあげた。
その動きがやけにコミカルで、デレは思わず笑みを浮かべてしまう。
  _
( ゚∀゚)「だから、オレのことを教えました!」

堂々と、腰に手を当てて言う。
他にも質問があればどうぞ、と続けられ、クラス中が爆笑の嵐に巻き込まれる。
おそらくは同校出身であろう者達からは、ひっこめー、と叫ばれている始末だ。

( ・∀-)「あー、笑った、笑った」

目尻に浮かんだ涙を拭いながら、
もう一人、優男風の男の子が立ち上がる。

( ・∀・)「ボクは徳野モララー。
      パエリヤが好き。嫌いなものは特にないから、手料理待ってます」

川 ゚ -゚)「私は素直クール。
     クーとでも呼んでくれ。
     食べ物に好き嫌いはない。趣味は読書だ」

次々に生徒が立ち上がり、自己紹介をしていく。
真面目な者、笑いに走る者、と様々ではあるが、
誰一人としてデレを茶化すような物言いだけはしなかった。

ζ(゚д゚*ζ「えっ、えっと?」

困惑するデレを横目に、総勢二十九名の自己紹介が滞りなく終了する。
全員が立ち上がり、彼女を見た。

52 名前:以下、\(^o^)/でVIPがお送りします[] 投稿日:2016/03/27(日) 22:11:23.709 ID:sLW7pJSn0
  
ζ(゚д゚*ζ「あの……」

これは改めて自己紹介をしたほうがいいのだろうか。
デレがそんなことを頭の端で考え始めたとき、
一番初めに立ち上がった男の子、ジョルジュが口を開いた。
  _
( ゚∀゚)「よろしく」

彼の言葉を合図に、全員が頭を下げる。
そこに強制の色はなく、誰もが自主的にそれを選択したのだということがわかった。
何とも圧巻される光景ではあるが、これ以上ない誠意の伝え方でもあり、
デレの胸を真っ直ぐに貫いた。

彼らはわからないなりに、デレを受け入れてくれたのだ。
ならば、彼女も応えなくてはなるまい。

じわりと浮かびそうになる涙を必死に押さえ、
デレは満面の笑みを浮かべる。

ζ(^ワ^*ζ「よろしくお願いします!」

53 名前:以下、\(^o^)/でVIPがお送りします[] 投稿日:2016/03/27(日) 22:12:18.125 ID:sLW7pJSn0
  
その日はクラスの顔合わせだけで終わる予定だったというのに、
デルタが教室から出ると同時にクラスメイト全員がデレに群がってきた。
誰もが少し変わった友人と話してみたくてしかたがなかったらしい。
  _
( ゚∀゚)「なあ、寝るってどんな感じなんだ?」

ミセ*゚ー゚)リ「どのくらい寝てるの?」

('A`)「どういうときに寝るんだ?」

(゚、゚トソン「眠る、というのは本当なのですか?」

ζ(゚−゚;ζ「えっと、えっと……」

他人と接したことがないわけではないが、
これ程、大勢の人間と一度に対面したのは初めてなわけで、
デレの脳がキャパオーバーを起こすのは必然であった。

顔を硬直させ、意味のない音で必死に間を繋ぐ。
その間に紡ぐべき言葉を考えるのだけれど、
どうにも上手くいかない。

早く早くと心中が叫び、それが焦りを生んでデレから言葉を消していく。

54 名前:以下、\(^o^)/でVIPがお送りします[] 投稿日:2016/03/27(日) 22:13:07.525 ID:sLW7pJSn0
  
(;・∀・)「お前ら一つずつ聞いてやれよ。
      何言ってんのかわっかんねーよ」

四方八方から飛んでくる質問を遮ってくれらのはモララーだった。
傍から聞いていても、ただの騒音と化していた質問責めを見かねたらしい。
 _
(;゚∀゚)「わ、悪い……」

ζ(゚ー゚;ζ「ううん。あたしこそ、ちゃんと言えばよかったね。ごめん」

モララーの言葉はあまりにも正論で、生徒達は口々に謝罪を述べていく。
眠る、という一点さえなければ、彼女は普通の同級生でしかない。
一度に二十何人もの質問を聞き取れるはずがなかったのだ。

川;゚ -゚)「気が急いてしまってな」

(;'A`)「ごめんな。考えてみたら、これから少なくとも一年は同じクラスなんだよな」

話を聞く時間も、話をする時間も充分にある。
何も今日という日に拘ることはないのだ。

ζ(゚ー゚*ζ「でも、今日たくさんお話したら、
       今日たくさんお友達ができるから嬉しいな」
  _
( ゚∀゚)「バッカ。お前バッカだな」

ζ(゚ぺ*ζ「馬鹿って何よー」

55 名前:以下、\(^o^)/でVIPがお送りします[] 投稿日:2016/03/27(日) 22:14:02.751 ID:sLW7pJSn0
  _
( ゚∀゚)+「オレらはクラスメイト。
     つまり友達、だろ?」

親指を自身に向け、キラリと白い歯を輝かせる。
キザったらしい台詞とポーズのはずなのに、
決まりきらないところが何ともジョルジュらしい。

ζ(゚ー゚*ζ「…………友達」

( ・∀・)「あの馬鹿は放っておいていいよ」

でも、とモララーは続ける。

( ・∀・)「ボクらはキミと仲良くなりたいと思ってるから、
      あとはキミが同じように思っていてくれれば、それで友達になれると思うんだけど」

どうかな?
と、彼はウインクをして問いかけてくる。
こちらはキザなポーズも台詞もバッチリ決まっていた。

ζ(゚ー゚*ζ「うん。あたし、仲良くなりたい」

周囲にいるクラスメイト達を見る。
みんな違う顔をして、けれど、嫌悪の表情は一つもなく、デレをその目に映してくれている。

ζ(゚ワ゚*ζ「だから、みんな友達!」

56 名前:以下、\(^o^)/でVIPがお送りします[] 投稿日:2016/03/27(日) 22:14:43.805 ID:sLW7pJSn0
  
ζ(゚ー゚*ζ「ただいまー」

ξ゚听)ξ「おかえりなさい」

昼を過ぎる前に帰宅したデレを迎えたのは、
本日、わざわざ休みをとって家にいてくれたツンだ。

デレにとっては初めての学校。
何が起こるか全くわからない、と言ってもよく、
緊急事態に備えてできるだけ家で待機していてください、
と医者から言われていたのだ。

ξ゚ー゚)ξ「学校はどうだった?」

ζ(゚ー゚*ζ「楽しかった!」

制服を脱ぎながら答える。
流石にブーンがこの場にいれば、彼女も部屋で制服を脱いだのだろうけれど、
今は母であるツンしかいないため、気にする必要がなかったようだ。

ζ(゚ー゚*ζ「みんなと友達になってね、色んな話をしたの。
       カラオケとかテーマパークとか!」

施設にいたデレとはいえ、娯楽を楽しむための場所に行ったことがないわけではない。
ただ、共に楽しみ、思い出話を共有する相手、伝える相手がいなかっただけ。

58 名前:以下、\(^o^)/でVIPがお送りします[] 投稿日:2016/03/27(日) 22:15:41.495 ID:sLW7pJSn0
  
ζ(^ー^*ζ「今度、一緒にカラオケ行くんだー」

ξ゚听)ξ「あらあら。さっそく遊びの約束?」

ζ(゚、゚*ζ「ちゃんと寝る時間には帰ってくるよ」

ξ゚听)ξ「当然でしょ」

眠らなくていいツン達と違い、デレには睡眠が必要だ。
ある程度ならば我慢もできるが、一定以上を越えると殆ど強制的に眠ってしまう。
かつてのヒトは、それを居眠りだとか昼寝だとか呼んでいたらしい。

そうなった場合、困るのはデレ自身だ。
場所によっては風邪をひいたり、体を痛めたりする。
眠気に耐えることができたとしても、
睡眠を我慢するのはとても辛いことだ、と彼女自身が言っていた。。

ξ゚听)ξ「ちゃんと時間を守れるなら母さんは何も言いませんよ」

ζ(゚ワ゚*ζ「やったー!」

59 名前:以下、\(^o^)/でVIPがお送りします[] 投稿日:2016/03/27(日) 22:16:13.031 ID:sLW7pJSn0
  
ξ゚听)ξ「こらこら、跳ね回る前に着替えなさい」

ζ(゚д゚*ζ「はーい」

制服をハンガーにかけ、部屋用の服に着替える。
肌触りがよく、体に負担をかけない軽さの服は、
今日卸したばかりの新品だ。

ζ(゚ー゚*ζ「みんな良い人ばかりでさぁ」

ξ゚听)ξ「良いじゃない」

ζ(゚ー゚*ζ「うん。あたしのことも受け入れてくれて、
       友達だ、って言ってくれたの」

デレとツンは一緒にソファに座る。
座った人間が最も快適に腰掛けることができる形に変化するそれは、
二人のことを柔らかく包み込んでくれた。

ζ(゚ー゚*ζ「でも、すごい質問責めにあっちゃった」

ふぅ、と息を吐いてみせるが、
出された空気に疲労の色は見えない。
どちらかといえば、自慢げな様子さえ感じ取れた。

60 名前:以下、\(^o^)/でVIPがお送りします[] 投稿日:2016/03/27(日) 22:17:03.763 ID:sLW7pJSn0
  
ζ(゚ー゚*ζ「みんな一斉に色々聞くの。
       もう、何言ってるのかぜーんぜんわかんなくて、
       とっても困っちゃった」

ξ゚听)ξ「お疲れ様」

ζ(゚ー゚*ζ「ううん。アタシが困ってたらモララー君って子が、
       みんなを説得してくれたの。
       一気に話しても答えられないよ、って」

目元を赤らめながら話す。
困っているところを颯爽と助けにくる、というシチュエーションは、
童話の中に登場する王子様のようではないか。

ξ゚听)ξ「イケメンだった?」

ζ(゚ー゚*ζ「うん!」

ξ゚听)ξ「良かったじゃない」

ζ(゚ワ゚*ζ「母さんは気が早いってー。
      モララー君のこと、そんな目でアタシ見てないよ」

ξ゚听)ξ「馬鹿ねぇ。良い男は早めに捕まえておかないと、
      他の子に取られちゃっても知らないわよ?」

ζ(゚ぺ*ζ「もー。モララー君はアタシの所有物じゃないの!」

61 名前:以下、\(^o^)/でVIPがお送りします[] 投稿日:2016/03/27(日) 22:17:45.926 ID:sLW7pJSn0
  
ζ(゚ー゚*ζ「それで、アタシへの質問は順番にしよう、ってことになったの」

順番はランダムアプリで決めた。
休み時間毎に一つずつ質問していけば、
半月もしないうちに全員の順番が回ってくる、というわけだ。

考えている質問を先に誰かがしてしまい、
質問がなくなればパスを使ってもいい、とのことだったので、
もしかすると一週間もしないうちに質問コーナーは終わってしまうかもしれない。

ζ(゚ー゚*ζ「嬉しいなぁ。みんながアタシと話したい、って思ってくれてる」

唯一の、という言葉が悪い方向に流れなくてよかった。
デレは心の底から思っている。

外界とあまり関わりがなかったとはいえ、
遊びに出たときや本を通して人と社会というものを知ってきた。
時として、人は人を脅かすことさえあるのだ、と彼女は理解している。

ζ(゚ー゚*ζ「怖い、っていう気持ちなんて吹き飛んじゃった!」

ξ゚听)ξ「デレは繊細な子だから、私もお父さんも心配してたのよ」

ツンは少し意地悪気に笑った。

ξ゚ー゚)ξ「あなたがイジメられたー、もう学校に行かないーって、
      言い出すんじゃないか、ってね」

ζ(゚ぺ*ζ「言わない! 駄々こねるような年じゃないし!」

63 名前:以下、\(^o^)/でVIPがお送りします[] 投稿日:2016/03/27(日) 22:19:50.199 ID:sLW7pJSn0
  
思いっきり口をへの字にしてデレは反論する。
すぐムキになるところが子供なのだ、とツンはあえて口にしない。

その代わり、指で軽くデレの額を突く。
嗜めるようなその行動に、彼女はまたむくれた顔をしてみせた。

ζ(゚ぺ*ζ「もおー」

ξ゚ー゚)ξ「私の可愛い可愛い子供だから心配してるのよ」

ζ(゚ー゚*ζ「可愛い可愛いお母さんの子だからイジメられたりしないよーっだ」

ξ゚ー゚)ξ「それもそうね」

二人はクスクスと笑いあう。
カーテンが開けられた窓からは暖かな日差しが入り込み、
家族の空間を静かに包み込んでくれていた。

ζ(゚ー゚*ζ「お母さん」

ξ゚听)ξ「なあに」

ζ(^ー^*ζ「へへ、何でもない」

ここは彼女達の家だ。
帰る時間を気にかけることもなく、
意味のない話をだらだら続けながら
父の帰りを待つことだけをすることが許された場所。

64 名前:以下、\(^o^)/でVIPがお送りします[] 投稿日:2016/03/27(日) 22:20:55.352 ID:sLW7pJSn0
  _
( ゚∀゚)「で、昨日の続きなんだけどさ」

栄えある質問第一号はジョルジュが勝ち取っていた。
休み時間というか、朝のHRが始まる前の時間に彼は接触を計ってきたのだ。

だが、それをルール違反と取るものはいないらしく、
クラスメイト達に加え、彼らに会いにきていた別のクラスの者達もそっと耳をそばだてている。
デレの体質については早くも学校中に広まっている、と見てよさそうだ。

ζ(゚ー゚;ζ「と、突然だねぇ……」
  _
( ゚∀゚)「別にいいだろ? 時間は取らせねぇし」

ζ(゚ー゚;ζ「う、うーん。別にいいけど……」

時間がかかるか否かを決めるのはデレであるはずだ。
無論、無駄に時間を取らせるつもりはないけれど、
生まれ持った感覚が違うため、上手に説明できるかどうかは未知数だといえる。

鳥に何故空を飛べるのか、と問うたとして、
原理をきめ細かに説明してくれる鳥はそう多くないだろう。

ζ(゚ー゚*ζ「頑張ってみるけど、期待はしないでね?」
  _
( ゚∀゚)「期待しかしてないぞ?」

ζ(゚ー゚;ζ「プレッシャーだなぁ……」

65 名前:以下、\(^o^)/でVIPがお送りします[] 投稿日:2016/03/27(日) 22:21:32.580 ID:sLW7pJSn0
  _
( ゚∀゚)「そんでよぉ、寝るってどんな感じなんだ?」

デレの感じているプレッシャーもなんのその。
ジョルジュは真正面から質問をぶつけてくる。

少しくらい心の準備をさせてほしい、
という気持ちをこめて言葉を返していたのだけれど、
どうやら彼には伝わらなかったらしい。

ζ(゚ー゚*ζ「どんな感じ、か……」

質問を受けたからには返さなくてはならない。
これはルール、というわけではないのだが、
回答者としての心情がそうさせる。

せっかく自分に興味を持ってくれているのだ。
少しでも意義のある言葉を返したいと思ってしまう。

ζ(-д-;ζ「うーん」

しかし、気持ちとは裏腹に、
彼女の思考は上手いまとまりを見せてくれない。

大体からして、施設にいたときからこの手の質問はされていたが、
今のところデレ自身が満足のいく答えを出せたことがない。

67 名前:以下、\(^o^)/でVIPがお送りします[] 投稿日:2016/03/27(日) 22:23:04.432 ID:sLW7pJSn0
  
ひとまず、という答えを出したことはあれども、
これだ、と思えるものはまだない。

眠れるが故に、眠る必要のない者の感覚がわからないのが原因だ。
どの感覚ならば共有できるのか、という線引きが曖昧だった。

ζ(゚ー゚*ζ「こう……落ちる? みたいな」
  _,
( ゚∀゚)「は?」

ζ(゚ー゚;ζ「いや! 気持ちはわかるよ?
      でも、中々いい伝え方が思いつかないの!」

デレは慌てて両手を胸の前で振る。
クラスの面々からも疑問符つきの視線が突き刺さってくるようだった。

川 ゚ -゚)「デレの言葉は漠然としていてよくわからんぞ」
  _
( ゚∀゚)「もっと具体的にオナッシャッス」

ζ(゚ー゚;ζ「簡単に言ってくれるけど、難しいんだよ?」

ジョルジュと、隣の席に座っていたクールに言われ、
彼女は再び言葉を紡いでいく。

ζ(゚ー゚*ζ「寝る直前って、ふわふわした感じがするの。
       で、その後、静かに落ちて……沈んで? いく感じ」

彼女が毎夜のように感じている浮遊感と、
まどろみに溶け込むような沈殿感。
それらを言葉として伝えるのは非常に難しい。

68 名前:以下、\(^o^)/でVIPがお送りします[] 投稿日:2016/03/27(日) 22:24:15.406 ID:sLW7pJSn0
  _
( ゚∀゚)「浮いて、沈む、ねぇ……。
    プールみたいなもんか?」

( ・∀・)「なるほど。水ならば浮くし沈む、と」

ζ(゚ー゚*ζ「近い、のかなぁ?
       もっと柔からいイメージなんだけど……」

少し暖かで、優しく包み込んでくれる。
デレにとって睡眠とはそういうイメージを付与されたものだった。
頭を悩ませるデレに対し、ジョルジュは頭を掻きながら次の言葉を投げる。
  _
( ゚∀゚)「ていうかよぉ、寝る前じゃなくて、
    寝てる最中のことを聞きたいんだけど」

ζ(゚ー゚*ζ「えっ」

ジョルジュの言葉に、デレは目を瞬かせる。
周囲からは、複数の質問はルール違反だ、という声が上がっているが、
彼女の耳には届かない。

眠る直前ならばともかく、眠っている最中。
それは考えたことがなかったし、学者達からも受けたことのない質問だった。

彼らは研究から、眠っている最中というのは意識がない状態だと知っていた。
対して、ジョルジュを含めたクラスメイト達は何も知らない一般人。
眠っていることと、意識がないことに繋がりはない。

69 名前:以下、\(^o^)/でVIPがお送りします[] 投稿日:2016/03/27(日) 22:24:40.363 ID:sLW7pJSn0
  
ζ(゚ー゚*ζ「……眠ってるときに夢を見ることもあるけど、
       感覚とか意識とかはないかな」
  _
( ゚∀゚)「えっ」

('A`)「夢を見る、ってどういうことだ?」

( ・∀・)「眠ってるときは希望でいっぱい、ってこと?」

川 ゚ -゚)「おいおい、質問が質問を呼んでどうする。
     順番を決めた意味がなくなるじゃないか」

( ・∀・)「それはそうだけど、夢を見てる、って気になりすぎるでしょ」
  _
( ゚∀゚)「そうだそうだ!」

( "ゞ)「なら、真面目に授業を受けましょうね」

やんやか言い合っている最中、教室にデルタが入ってくる。
彼の声に気づき、生徒達が時計を見ると、
HRの開始時間を数分過ぎたところだった。

別のクラスの生徒達は驚きながらも自身の教室へと駆け戻っていく。
残されたのは静まり返った教室と、クラスメイト達。

70 名前:以下、\(^o^)/でVIPがお送りします[] 投稿日:2016/03/27(日) 22:26:04.540 ID:sLW7pJSn0
  
( "ゞ)「先生は担当じゃないので詳しくは知りませんが、
    歴史や生物の授業で睡眠については取り扱います。
    本人から話を聞くことも大切でしょうけれど、
    科学的な観点からの観察や学びも大切ですよ」

睡眠に関する史料は依然として少なく、
教科書を通して学べることはそう多くない。
そのあたりを補うためにデレへの問いかけが必要になることはあるだろう。

だが、問いかけとは下地となる知識があってこそ意味を成す。
好奇心だけを糧にした無を問いかけに変換したところで、
要領の得ない謎を生み出すばかりだ。

( "ゞ)「わかりましたね?
    では、本日から本格的に授業を始めていきますよ」

(゚、゚トソン「次は私の番ですからね」
  _
( ゚∀゚)「オレの質問タイムあれで終了?
    納得いかねぇ……」

( ・∀・)「一巡し終わったら次はどうするか考えようか」
  _
( ゚∀゚)「思った以上に色んな質問が出てきそうで、
     二順目が気が遠くなるほど長ぇんだけど」

生徒達は各自席につき、HRを始める態勢に入った。
一日のおよそ半分を使用する学校での時間は始まったばかりだ。

71 名前:以下、\(^o^)/でVIPがお送りします[] 投稿日:2016/03/27(日) 22:26:31.985 ID:sLW7pJSn0
  
('A`)「なあ、夢ってこれのことか?」

昼休み、クラスでデレがお弁当を食べていると、
ドクオが生物の教科書アプリを開いたタブレット片手に近づいてきていた。
  _
( ゚∀゚)「いーけないんだ、いけないんだ!
    ドクオ、ルール違反だぞー」

(;'A`)「雑談の一つと思ってくれよ」

そんな会話をしつつも、ジョルジュはデレとドクオに近づいてくる。
まだ四分の一日程度の学校生活ではあるが、
早くもジョルジュという男の性質が浮き彫りになり始めていた。

良くも悪くもクラスの中心であり、そう在れるように行動する男。
好奇心が旺盛なのだろう。
興味がひかれる方向へスタスタと足を進める様子は
雄々しささえあるような気がしてならない。

( ・∀・)「なになに?」

開かれていたページは、後ろから数えた方が早いくらいの場所だ。
生物の起源やら何やらの基礎を全て終え、
人間の身体、という単元をさらに越えたページ。

そこに、ひっそりと数ページ、睡眠、と書かれた章があった。

72 名前:以下、\(^o^)/でVIPがお送りします[] 投稿日:2016/03/27(日) 22:27:13.659 ID:sLW7pJSn0
  
川 ゚ -゚)「眠りが浅いときに見る幻覚?」
  _
( ゚∀゚)「お前、毎日幻覚見てんの?」

ζ(゚ー゚*ζ「えぇ……。
      夢と幻覚と一緒にしちゃうのは乱暴な気がする」

('A`)「じゃあ、何なんだ?」

ζ(゚ー゚;ζ「そういわれましても……」

( ・∀・)「おおよそ意味のない内容である、って書かれてるね」

ミセ*゚ー゚)リ「夢ってどんなの?」

ζ(゚ー゚;ζ「えっと、えっと」
  _
( ゚∀゚)「おーっと、そこまでそこまでー。
    それ以上の質問は、事務所であるジョルジュを通してくださいねー」

新たな質問責めの予感にデレが慄いていると、
ジョルジュが友人達と彼女の間に割って入ってきた。
意外と周囲の機微をよく見ているらしい。

73 名前:以下、\(^o^)/でVIPがお送りします[] 投稿日:2016/03/27(日) 22:27:51.231 ID:sLW7pJSn0
  _
( ゚∀゚)「お前もちゃんと口に出さねぇと伝わんないんだからな。
    嫌なことはちゃんと言えよな」

ζ(゚ー゚*ζ「うん。ごめんね。ありがとう」
  _
( ゚∀゚)「どういたしまして」

ジョルジュは自然な動作でデレの頭を撫でる。
そのせいで、せっかく綺麗にセットした髪型がぐしゃぐしゃになってしまう。

ζ(゚д゚*ζ「あー! 髪が!」
 _
(;゚∀゚)「うお! ビックリしたぁ」

ζ(゚д゚*ζ「もう、髪がぐしゃぐしゃだよ……」
  _
( ゚∀゚)「あ? んなことで騒ぐなよ。
    お前細かい奴だなぁ」

そう言った彼はデレの髪をさらにかき混ぜる。
二つに結っていた髪が緩み、細い線同士が絡み合う。

ξ(゚д゚ 从 「…………」

( ・∀・)「すごいことになってしまった」
  _
( ゚∀゚)「真顔がギャグ」

川 ゚ -゚)「怒ってる……のか?」

ξ(゚д゚#从「怒ってます」

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