ζ(-、-*ζは眠るようです

158 名前:以下、\(^o^)/でVIPがお送りします[] 投稿日:2016/03/27(日) 23:31:01.364 ID:sLW7pJSn0
  
川 ゚ -゚)「目が真っ赤だ」

登校途中に会ったクールがぽつりと呟いた。
昨日、冷やすよりも先に眠ってしまったため、
デレの目が赤くなり、わずかに腫れていた。

ζ(゚ー゚*ζ「え、そ、そうかな?」

見え透いたシラをきろうとするデレに、クールは小さなため息をつく。
深く詮索するな、と言われているのを感じ取ったらしい。
これでも一年以上の付き合いだ。
多少のことはわかるようになってきている。

川 ゚ -゚)「……一つだけ聞かせてほしい」

ζ(゚ー゚*ζ「なぁに?」

川 ゚ -゚)「私はあの馬鹿を殴ってもいいのか?」

ζ(゚ー゚*ζ「…………駄目」

川 ゚ -゚)「……そうか」

長い沈黙と、否定の言葉に、クールは是を返す。
デレが望まないのであれば、彼女は拳を振りかざさない。
たとえ、件の男がそれを望んでいた、としてもだ。

159 名前:以下、\(^o^)/でVIPがお送りします[] 投稿日:2016/03/27(日) 23:31:34.520 ID:sLW7pJSn0
  
ξ゚听)ξ「おかえり」

ζ(゚ー゚*ζ「ただいま」

一日を腫れた目で過ごした。
周囲の反応は様々で、
気づいた者、気づかなかった者。
励ましの言葉をかけてくれた者もいれば、
次はオレなんてどう? と茶化してきた者もいた。

ただ、ジョルジュだけには会わなかった。
クラスが違う、というのも理由の一つなのだろうけれど、
それ以上に、避けられている、というのを感じた。

別れたばかりだ。
まだしばらくは奇妙な距離感が残るのだろう。

叶うことならば、デレはまた、ジョルジュと友人になりたかった。
恋人としては上手くやっていけない二人だが、
ただの友人としてならば、もっと上手くやれる気がした。

ζ(´、`*ζ「お母さん」

ξ゚听)ξ「はぁい?」

ζ(´、`*ζ「ちょっと、つかれた」

ξ゚听)ξ「そう。じゃあ、こっちへいらっしゃい」

160 名前:以下、\(^o^)/でVIPがお送りします[] 投稿日:2016/03/27(日) 23:32:10.499 ID:sLW7pJSn0
  
( ^ω^)「ただいまだおー」

ξ゚听)ξ「おかえり」

( ^ω^)「おっ?」

帰宅したブーンがリビングに入ると、
そこには愛しの妻が、最愛の娘に膝枕しいている姿があった。
どうやら、デレは眠っているらしく、規則的な寝息がかすかに聞こえてきた。

( ´ω`)「……デレ、可哀想に」

ξ゚听)ξ「失恋くらい誰でもするものよ」

( ´ω`)「でも……」

ξ゚听)ξ「デレより、あなたの方がよっぽど悲しんでるわね」

娘が落ち込んでいるのを見て楽しい気持ちになる親はいない。
とはいえ、ブーンの様子は少々過剰な面がある。
長年、一緒に暮らすことさえままならなかった反動だろう。

ここで嗜めてやるべきか、
寄り添ってやるべきか。
ツンは思考を巡らせる。

その時、インターフォンの音が鳴った。

161 名前:以下、\(^o^)/でVIPがお送りします[] 投稿日:2016/03/27(日) 23:32:38.378 ID:sLW7pJSn0
  
反射的に立ち上がろうとしたツンだったが、
膝の上にいる存在に気づき、動きを止める。

ξ゚听)ξ「あなた」

( ^ω^)「ボクが出るお」

二人の言葉は同時だった。
ツンは歩き出した夫の後姿に、小さな笑みを送る。

ブーンはスイッチを押し、外の人物を確認した。
映し出された人物に、彼は目を見開く。

(  ゚ω゚)「は?」

  _
( ゚∀゚)


そこに立っていたのは、ジョルジュだった。

162 名前:以下、\(^o^)/でVIPがお送りします[] 投稿日:2016/03/27(日) 23:33:07.989 ID:sLW7pJSn0
  
( ^ω^)「……どういうつもりだお?」

ζ(゚д゚ ζ「え、ジョ、ジョルジュ君?」

ブーンはジョルジュを家に招きいれた。
デレはツンに起こされ、混乱の渦中に突き落とされている。

目が覚めてみたら、別れたはずの彼氏が家の中にいるのだ。
驚きもするし、思考が上手く回らないのもしかたのないこと。
  _
( ゚∀゚)「ケジメを、つけにきました」

ジョルジュの目は真っ直ぐだ。
後ろ暗いところなどありはしない、とその目が告げている。

( ^ω^)「ほう?」
  _
( ゚∀゚)「オレは、デレを幸せにするって言いました。
     でもできなかった。
     甘かったんだ。オレも、デレも」

生きる時間のことを軽く見ていた。
睡眠というものをよく理解しきれていなかった。
二人の過ちはそれに尽きる。

163 名前:以下、\(^o^)/でVIPがお送りします[] 投稿日:2016/03/27(日) 23:33:38.634 ID:sLW7pJSn0
  _
( ゚∀゚)「これは、オレとデレの問題ですけど、
     お二人にも宣言した言葉に関しては、オレ達だけの問題じゃない」

言葉を守れなかったことに対するケジメは、
しっかりとつけなければならない。

( ^ω^)「……いい度胸だお。
      そこだけは、評価してやるお」

ζ(゚、゚;ζ「お、お父さん!」

ξ゚听)ξ「デレ」

拳を固めた父に、デレが駆け寄ろうとする。
それを止めたのはツンだった。

彼女は静かに首を横に振り、事態の静観を促す。
わずかな迷いを見せたデレであったが、
母が掴んでいる手を見て、静かに座る。

理解することはできなかったけれど、
こうしておくべきことなのだろう、と想像することだけはできた。

164 名前:以下、\(^o^)/でVIPがお送りします[] 投稿日:2016/03/27(日) 23:34:09.296 ID:sLW7pJSn0
   
( ^ω^)「歯ァ、食いしばれお」
  _
( ゚∀゚)「ウッス」

ブーンが拳を振りかぶる。
ジョルジュが体に力を入れた。

バキ、と音が響いたのは、
数秒してからのことだった。

ζ(゚д゚;ζ「ジョルジュ君!」

成熟しているとは言いがたいジョルジュの体が吹き飛び、床に崩れ落ちる。
デレの位置からは見えなかったが、
ジョルジュは口の端からわずかに血を流していた。

( ^ω^)「……これで勘弁してやるお」
  _
(  ∀ )「アザァッス」

口元の血をぬぐいながら、ゆっくりと上半身を起こす。
  _
( ゚∀゚)「デレ」

ζ(゚д゚;ζ「大丈夫?」
  _
( ゚∀゚)「オレら、友達に戻れるか?」

165 名前:以下、\(^o^)/でVIPがお送りします[] 投稿日:2016/03/27(日) 23:34:50.193 ID:sLW7pJSn0
   
立ち上がることもできないまま、
デレを直視しているジョルジュは、
もうすでに彼氏の面影を消していた。

床に座り込んでいる少年は、ただの友人だった。
いや、とても大切な、友人に戻っていた。

ζ(゚ー゚*ζ「……うん」

デレは頷く。
  _
( ^∀^)「そっか」

ジョルジュは笑った。
真っ白な歯をきらめかせ、清々しげに。
  _
( ゚∀゚)「んじゃ、また明日」

ζ(゚ー゚*ζ「また明日」

立ち上がったジョルジュは、少しばかりふらついていたが、
誰の助けを借りることも、
また、誰かの心配を受けることもなく、デレの自宅から出て行く。

その背中は、とても堂々としたものだった。

166 名前:以下、\(^o^)/でVIPがお送りします[] 投稿日:2016/03/27(日) 23:35:48.848 ID:sLW7pJSn0
  
( ・∀・)「キミ達は進学決めた?」

時が流れるのは早いもので、
デレ達は中学を卒業しようかという時期にまできていた。

川 ゚ -゚)「私はマスコミ系に行きたいんだ。
     生の人間を世界に発信したい」

ζ(゚ー゚*ζ「なら、文系? 機械系もいいよねぇ」
  _
( ゚∀゚)「オレは警察! 正義のヒーロー!」

( ・∀・)「ヒーローとはいうけど、今時、警察の仕事なんて
      機械では対処できない道案内とか、雑用とかが殆どじゃん。
      ジョルジュには丁度良い具合なのかもしれないけどさ」
  _
( ゚∀゚)「あ?」

( ・∀・)「何」

川 ゚ -゚)「そういうモララーはどうなんだ」

おかげさまでというか、何と言うか、
デレとジョルジュが別れた後、
クールとモララーは二人をあっさりと受け入れてくれた。

おかげで二人は今も友人として面白おかしく交流を続けている。
一年半の時を経て、それなりに成長もしたが、所詮は中学生。
成長といってもしれている。

167 名前:以下、\(^o^)/でVIPがお送りします[] 投稿日:2016/03/27(日) 23:36:55.951 ID:sLW7pJSn0
  
( ・∀・)「ボクはロボット工学かなぁ。
     文明、科学は頭打ちって言われてるけど、
     一番やりがいがある分野だろうし」

世界の文明や科学は行き着くところまで行き着いた。
それ故の平和であり、ここ数百年、成長も発達も見せない世界である。

新しい何かを生み出すことは大概の確率で不可能なものの、
停滞の中での最先端を見たい、というのならば、やはりロボットに携わるのが一番だ。
プログラミングされたことしか行うことができないとはいえども、
疲れを知らぬロボットを求める声は各方面から多数聞こえている。

おかげで、数年先までロボット産業の需要は確約されているも同然だ。
  _
( ゚∀゚)「デレはどーすんだ?」

ζ(゚ー゚*ζ「アタシ?」

デレは笑う。

ζ(゚ワ゚*ζ「歴史医療学者になりたい」

168 名前:以下、\(^o^)/でVIPがお送りします[] 投稿日:2016/03/27(日) 23:39:57.399 ID:sLW7pJSn0
  
ζ(゚ー゚*ζ「自分の体のことをもっとよく知ってみたいし、
      できることならみんなと同じような体になりたい」

長い長い歴史を研究する歴史学者の中でも、
医療に特化して調べたいのた、とデレはいう。

険しい道だ。
何せ、かつての医療を調べようと思えば、
消失期は避けて通れない。

当然、史料は極々少数しかなく、
言語も今とは違ったもとが使用されている。
史料を読み解く力や、データを解析する力に加え、医学的な知識も必要になるだろう。

多岐にわたる能力が必要とされ、容易くない努力が求められる。
しかし、彼女の決意は固く、揺ぎないものとなっていた。

川 ゚ -゚)「勤勉なデレならすぐにでもなれそうだ」
  _
( ゚∀゚)「眠る生活ってのも面白いと思うんだけどなぁ」

( ・∀・)「だけど、デレちゃんが医療歴史学者を目指すなら応援するよ。
      眠ることのできるキミだからこその発見もあるかもしれない。
      意外と、世界の発展に繋がるかもしれないしね」
  _
( ゚∀゚)「そりゃいい。今よりも便利な世の中なんて想像できねぇけど、
     夢があって悪くねぇ」

川 ゚ -゚)「デレは選ばれた者、というわけか。
     世界中に名を知らしめるときは呼んでくれ。
     独占インタビューを敢行する」

三人はクスクスと笑いあう。
現在、この瞬間こそが、世界の行く着く先である、ということを知っている。
これ以上を望むのは贅沢であるし、達成されることのない欲求とでしかないが、
だからこそ、口にするのが楽しくてしかたがなかった。

170 名前:以下、\(^o^)/でVIPがお送りします[] 投稿日:2016/03/27(日) 23:40:49.351 ID:sLW7pJSn0
   
かくして、四人はバラバラの道を歩み始めた。
距離も分野も、まったく違う高校に進学し、
そこからまた違う大学へと通いだす。

中には実家を出た者もいたが、
連絡だけはそれなりに取り合い続けていた。
ひと月以上の間を空けることなく、彼らのメッセージは飛び交い、
年に数度は直接顔を合わせることが当たり前になっていた。

他の友人ができようとも、頼りになる先輩が現れようとも、
中学時代の友人がどうでもいい存在になることだけはなかった。

川 ゚ー゚)「見たか、ジョルジュ」
  _
( ゚∀゚)「見ねぇわけねーだろ。
     毎日毎日、あぁもテレビにネットにって出てりゃよ」

( ・∀・)「逃した魚は大きかったねぇ」
  _
( ゚∀゚)「バッカ。んな打算であいつと付き合ってたわけじゃねーよ」

久々に会した三人は、数ヶ月の空白程度では変わらぬ気軽さを持って言葉を交し合う。
彼らにとってみれば互いは中学時代の友人でしかないが、
傍から見れば少々違った様相を見せている。

171 名前:以下、\(^o^)/でVIPがお送りします[] 投稿日:2016/03/27(日) 23:41:52.209 ID:sLW7pJSn0
  
彼らは中学の卒業前に口にした通りの道を歩み続け、
見事、その道で大成していた。

川 ゚ー゚)「私が撮ったデレはどうだ。
     可愛らしく撮れていただろ」

にんまりと笑いながら言うクールは、
凄腕のカメラマンであり、レポーターという地位を確立し、
連日あちらこちらへ忙しく走り回っている。

美人な顔立ちとスレンダーな体つきも
彼女の人気を支えている一要素であることは言うまでもない。
  _
( ゚∀゚)「ありゃあ素体がいいんだ」

ジョルジュも立派に警察官として生計をたてている。
近年、犯罪者の減少とロボットの活躍により、立場を奪われつつある警察官だが、
生まれ持った人懐っこさと、行動力をもって、
配属されている町のことなら隅から隅まで知り尽くしているスーパーポリスとして名を馳せた。

先日も、迷子の猫を見つけ出した上に、
その途中で保護した子供を無事親元まで届けきった実績を持つ。

( ・∀・)「キミって奥さんいるよね?
      まだデレちゃんにメロメロなわけ?」

ロボットの製作に携わるモララーは、
緻密な作業を得意とし、どのような設計にも瞬時に対応する能力を持つ。
奇抜に思えるような図案が送られてくる昨今、
彼のような存在は必要不可欠となっていた。

172 名前:以下、\(^o^)/でVIPがお送りします[] 投稿日:2016/03/27(日) 23:42:27.249 ID:sLW7pJSn0
  _
( ゚∀゚)「オレはあいつの信者一号みたいなとこあるからな」

( ・∀-)「それって胸を張っていうことじゃないよね」

モララーは片目を閉じて苦笑いを浮かべる。
彼女の恩恵を直接受けているモララーならばまだしも、
現状では恩恵どころか、仕事をロボットに奪われる危機に瀕している男の台詞ではない。

友人から恋人へ、そして良き友人となったデレを贔屓するのはわかるが、
それにしても愛が深すぎることはどうにも否めない。

川 ゚ -゚)「恋愛感情を捻らすと、男ってこうなるのか」

(;・∀・)「こいつみたいなレアケースを平均に分類しないでくれる?」

納得した様子を見せたクールだが、
同じ男としてモララーは否定の言葉を口にせずにはいられなかった。
拗らせる隙もないほど、異性に縁のない彼ではあるが、
ジョルジュのような存在と自身を同一系統のモノとしてほしくはない。
  _
( ゚∀゚)「あいつのことが嫌いになって別れたわけじゃねぇし。
     好きな奴が認められりゃ嬉しくもなるだろ」

川 ゚ -゚)「その気持ちはわかる」

( ・∀・)「まあ、わからなくはないよね」

174 名前:以下、\(^o^)/でVIPがお送りします[] 投稿日:2016/03/27(日) 23:43:24.884 ID:sLW7pJSn0
  
今日、この集まりにデレは参加していない。

歴史医療学者として、発明家として、同年代の誰よりも世間に名を知らしめた人物。
それが河合デレだった。

多忙な彼女を捕まえるのは容易なことではない。

( ・∀・)「空を飛ぶ車。
      あれもすごかったねぇ」

川 ゚ -゚)「法整備が必要だからまだ実用化には至っていないが、
     近いうちにそれも整うだろう。
     そうすれば、渋滞がなくなるだけでなく、人身事故の減少、
     移動スピードの上昇といった様々な利点が我々に与えられる」

この画期的な発明に対し、デレは謙遜の言葉を述べるばかりで、
少しも威張る素振りを見せなかった。
それがまた、世間からの好感度を上げる要素となり、
今や河合デレの名を知らぬのは、物を知らぬ幼子だけとなっている。
  _
( ゚∀゚)「なんだっけか。反重力装置を取り付けた車に、
     推進力を持たせたとかなんとか?」

( ・∀・)「詳しいことがわからないなら無理に話さなくていいんだぞ」
 _
(;゚∀゚)「わ、わわわかるわい!」

川 ゚ -゚)「簡単に言うと、浮かせて、進める方法を見つけたよ、ってことだ」
  _
( #゚∀゚)「わかってるって!」

川 ゚ -゚)「そうか? ならいいんだ」

175 名前:以下、\(^o^)/でVIPがお送りします[] 投稿日:2016/03/27(日) 23:44:09.927 ID:sLW7pJSn0
  _
( ゚∀゚)「そういえば、お前、脳写機はどうなったんだよ」

( ・∀・)「あぁ、ずいぶん上手く使えるようになったよ。
     こっちでも改良に改良を重ねてるしね」

川 ゚ -゚)「早く一般にも普及させてくれ。
     私もあれを使ってみたい」

脳写機はデレが発案した道具の一つで、
思い描いた図や絵、文章等を紙に映し出してくれる代物だ。
ただ、慣れなければ適切に使うことが難しい道具でもあった。

イメージのまますぎるのだ。
曖昧なイメージや、ニュアンスだけを意識した文章を紙に落とし込むと、
輪郭の曖昧な絵や単語単語が入り混じった奇怪な言葉が並ぶだけになってしまう。

モララーはそんな脳写機を少しでも早く実用に足る道具へ昇華させるため、
日々の研究を続けているのだ。
これが実用化されれば、様々な分野において
書類や図面のようなものの処理が迅速に進むようになる。
  _
( ゚∀゚)「っと、そろそろ始まるぞ」

ジョルジュはタブレットを操作すると、
ネットテレビを立体映像に切り替え、出現させる。

川 ゚ -゚)「あぁ、私もこの取材陣の一人になりたかった……」

( ・∀・)「担当みたいに追い掛け回してたら怒られたんだっけ?」

画面に映っているのは、
大勢の人間を前にして立っているデレの姿だ。
どことなく緊張した面持ちに見える。

176 名前:以下、\(^o^)/でVIPがお送りします[] 投稿日:2016/03/27(日) 23:44:38.401 ID:sLW7pJSn0
   
川 ゚ -゚)「怒られた、というのは正確ではない。
     新人に譲ってやれ、と言われたんだ」

どのような人物からの質問にも優しく丁寧に対応してくれるデレは、
マスコミ連中にもかなり好感を寄せられていた。

失敗の多いヒヨッコを宛がったとしても、
デレの方が上手くフォローし、必要不可欠な情報を分け与えて帰らせてくれるのだから、
新人育成の場としてはこの上ない好条件なのだ。
  _
( ゚∀゚)「クーもベテランの域に達する歳になったんだな……」

川 ゚ -゚)「歳じゃない。実力だ」

( ・∀・)「いや、ボクら相手にそこ意地張られてもさぁ。
      みーんな同じ年なわけで」

川 ゚ -゚)「歳じゃない」
 _
(;゚∀゚)「……お、おう。
    そだな。まだまだ、イケるよな」

川 ゚ -゚)「よくわかってるじゃないか」

177 名前:以下、\(^o^)/でVIPがお送りします[] 投稿日:2016/03/27(日) 23:45:42.064 ID:sLW7pJSn0
  
もう適齢期は過ぎているだろうに、
未だ積極的に恋人を作る気はないらしいクールだが、
やはり女として在ることに執着はあるらしい。

歳のことを言われると真顔で威圧してくるのだが、
その圧迫感に勝てた者はいないともっぱらの噂だ。

ζ(゚ー゚;ζ『えーっと、皆様。こんにちは』

タブレットからデレの声が聞こえてきた。
学生時代からあまり変わらない、どこか柔らかい声。

もう何度も大勢の人間の前に立ち、発表をしているだろうに、
彼女の声はわずかに震えていた。
初対面の人間にはわからないだろうけれど、
付き合いの長い三人には彼女が緊張していることがすぐにわかってしまう。
  _
( ゚∀゚)「お、静かにしろよクー」

川 ゚ -゚)「何故名指し」

( ・∀・)「はいはい。二人とも静かにー」

一瞬、火花を散らした両者だが、
間に割って入ったモララーの声に目の位置を変える。
計三対の目が立体映像を注視していた。

178 名前:以下、\(^o^)/でVIPがお送りします[] 投稿日:2016/03/27(日) 23:46:19.645 ID:sLW7pJSn0
  
ζ(゚ー゚*ζ『こうして皆様に集まっていただき、とても光栄に感じております。
       さて、どちら様方も大変お忙しいことかと思いますので、
       手短にすませてしまおう、と考えています。

       この度、私は土地の問題について一つ、提案をさせていただきました。
       昨今、この国は、いいえ、世界中の国々は、
       新たな住宅地開発や農地開拓ができない、という問題を抱えていました。

       そのために必要なのは、たった三つの要素です。
       あちらにいらっしゃるお三方が、その三つを提供してくださります。

       反重力研究開発、盛岡デミタスさんと、
       土地製造開発、眉墨シャキンさん。
       そして、空気圧制御技術、高岡ハインリッヒさん。

       私は、このお三方の持つ技術によって、
       新たな土地を空へ浮かべることを提案いたします。
       海を狭めるでもなく、川や湖を埋め立てるわけでもない。
       全く新しい空間に、人が住み、生活できるスペースを作るのです。

       しかし、そのことによって、地上に降り注ぐ太陽光の遮断される可能性を回避しなければなりません。
       そこれ、高岡さんの持つ技術を使い、
       遥か上空でも我々が生活できるような酸素や空気圧、気温を整えてもらいます』

179 名前:以下、\(^o^)/でVIPがお送りします[] 投稿日:2016/03/27(日) 23:46:44.197 ID:sLW7pJSn0
  
電子に変換された声が語るのは、
画期的としか言いようがない提案であった。

地球の人口は緩やかに減少しつつあるが、
それでも不思議と土地は足りていなかった。

汚染の影響もあるだろうけれど、浄化する技術は確立されている。
建築物の耐久年数も上がっているため、
次々に家を移り変わっていかなければならない、ということもない。

人に対して地上が狭すぎる、ということはなかったはずなのだ。
しかし、現実問題として行く地を失った人間は増えつつあり、
食料を調達するために必要な土が減りつつあった。

デレはそんな問題を解決してくれたのだ。
  _
( ゚∀゚)「――なるほどな」

ジョルジュはゆっくりと息を吐き出しながら呟く。
ここ数年、何度も何度もあった、デレの驚くべき発想。

知らぬうちに体は強張り、全身全霊を持ってデレの声を追ってしまっていた。
息と共に筋肉が緩和していくが、体中に心地良い倦怠感が残っている。

( ・∀・)「理に適っている。
      でも、三つを合わせるなんて、誰も思いつかなかった」

川 ゚ -゚)「これでまた一歩、人類が未来に進んだな」

180 名前:以下、\(^o^)/でVIPがお送りします[] 投稿日:2016/03/27(日) 23:47:21.387 ID:sLW7pJSn0
  _
( ゚∀゚)「しっかし、アイツは歴史医療学者っつーよりも、
    発明家としてのほうが名前を知られてるんじゃねぇの?」

川 ゚ -゚)「残念ながら、な。
     うちの社でも、発明家の河合デレ、で通ってる」

( ・∀・)「うわー、デレちゃん聞いたら悲しむだろうなぁ」

歴史医療学者としての能力が低いわけではない。
むしろ、そちらの方面でも新たな史料の発見、解読に成功し、
学会で注目を浴びたことがある。

ただ、発明家としての力がずば抜けていたし、
それは一般市民の生活に直結するようなものが多かった。
認知度に差ができてしまうのも無理はない。

川 ゚ -゚)「歴史に関心のある人間はもともと少ない。
     その中でも、医療系統の話ともなれば、
     存在を知る人間からして限られてしまう」
  _
( ゚∀゚)「数の力だけはどうにもなんねぇしな」

人々から賞賛を受けている発明家デレではあるが、
彼女自身は、発明かとして名を馳せるのを嫌う傾向にあった。

ζ(゚ー゚*ζ『皆様。私がしたことなんて、歴史を紐解いただけなんです。
      技術はもとより、殆どのアイディアも、史料が示してくれているものです』

最後の締めに入ったデレの声が聞こえてくる。

181 名前:以下、\(^o^)/でVIPがお送りします[] 投稿日:2016/03/27(日) 23:47:50.430 ID:sLW7pJSn0
   
デレは大勢の人々に対して、
また、ジョルジュ達に対して、いつも言っていた。

人々を幸せに導いている発明の中に、
自分の力が介入しているものなどほんの一欠けら程もないのだ、と。
  _
( ゚∀゚)「謙遜は美徳だっつーけどよ、
     あいつはもっと自分に自信を持つべきだよな」

( ・∀・)「まったくだ。最初の発明を成したときから今まで、
      彼女の姿勢は全く変わっていない。
      数を重ねてきたのだから、そろそろ胸を張ってもいいだろうに」

川 ゚ -゚)「それができないからこそ、私達が力を貸すのだろ?」

クールは呆れたような、しかし愛おしげな音を零す。

最初、人類を大きく前進させる術を思いついたデレは、
科学者に繋がりのあるモララーを頼った。
彼は勿論、快く協力者を探したのだが、肝心のデレが問題だった。

自身のアイディアを技術者に託したかと思えば、
そのまま身を引こうとしてしまったのだ。

慌てたモララーがクールとジョルジュに連絡をいれ、
ジョルジュがデレを足止めしている間に、
クールがマスコミ方面から外堀を埋めていなければ、
今のように彼女の活躍を大勢の人間が知ることはなかっただろう。

182 名前:以下、\(^o^)/でVIPがお送りします[] 投稿日:2016/03/27(日) 23:48:20.362 ID:sLW7pJSn0
   
ζ(゚ー゚*ζ『私からは以上です。
       何か、質問があれ、ば――――』

ガタン、と音がした。

ジョルジュは目を見開き、
クールは眉間にしわを寄せる。
同僚へ連絡を取るため、電話を取り出したのはモララーだった。

『デレさん?』

『おい! 誰か!』

『中継を一時中断してください!』

男女様々な声がテレビ越しに聞こえてくる。
数秒後、映像が途切れた。
 _
(;゚∀゚)「おい、これって生放送だったよな」

川;゚ -゚)「あぁ」
 _
(;゚∀゚)「っつーことは……」

(;・∀・)「連絡とれた!
     急に倒れて、目を閉じてるって。
     息はあるけど、専門家がいないからただ寝ているのか、
     体調の問題かはわからないって言ってる!」
  _
( #゚∀゚)「バッカ! いくらデレが寝るつったって、
     倒れるような寝かたはしねーよ!
     病院! 医者呼べっつっとけ!」

183 名前:以下、\(^o^)/でVIPがお送りします[] 投稿日:2016/03/27(日) 23:48:55.922 ID:sLW7pJSn0
   
バタバタと三人は席を立ち、
デレが送り届けられるであろう病院へと向かう。
身体能力の高いジョルジュが先陣を切りながら走り、
昔とは違い、体力を充分につけたクールがそれを追う。

一人、モララーだけはタクシーを捕まえ、
車中で同僚に指示を出しながら向かうこととなった。

誰も何も言わなかったけれど、
各々自分が成すべきこと、出来ることを判断しての行動だ。

( ・∀・)「デレちゃんのご両親は数年前に他界してる。
      旦那さんもいない。
      想朔病院へボク含め三人が向かってるから、
      詳しいことはボクらが聞くよ。だから一通りの検査をしておいて。
      特に脳。眠るってことが体調に影響を及ぼしているなら、
      脳にも影響が出ているかもしれない」

モララーの専門は機械が相手だ。
人体に関しての知識は、一般人に毛が生えた程度。
ただし、眠ること、それに関することの知識だけは
少しばかり多めに有していた。

彼女が不調で倒れたとき、
専門家以外で助けられるのは自分達になるのだろう、と
大学に入った辺りからずっと考えてきていたのだ。

184 名前:以下、\(^o^)/でVIPがお送りします[] 投稿日:2016/03/27(日) 23:49:28.356 ID:sLW7pJSn0
 _
(;゚∀゚)「最近、アイツから何か聞いてるか?」

川 ゚ -゚)「特には」
 _
(;゚∀゚)「オレもだよ! ちっくしょ。
    急に倒れるって何だ? 前々から体調が悪かったんなら、
    こっちにも一報送っておくのがマナーだろ!」

空き缶を蹴飛ばしながら、ジョルジュは大通りを走り抜ける。
いつもの癖で、デザインよりも機能性重視なアンチショックシューズを履いていたことが幸いした。
体に負担がかからないため、いくらでも全速力を出し続けることができる。

川 ゚ -゚)「どんなマナーだ。
     お前だって風邪ひいたくらいじゃメッセージを送ってこないだろ」
 _
(;゚∀゚)「オレはいーの!」

川 ゚ー゚)「馬鹿だなぁ」

デレに対するジョルジュの過保護さは目に余るものがある。
しかし、それに対して彼の妻が何も言わないのは、
懐の大きさもあるだろうけれど、それ以上に、彼の思いが最早恋愛感情に留まらず、
父性愛めいていることが一番の原因だ。

古くからの友人達も、ジョルジュの妻も、そのことを口にはしない。
そのためか、彼があまりにも愚かであるからか、
彼自身はデレに対して父性を持って接していることに全く気づいていない。

185 名前:以下、\(^o^)/でVIPがお送りします[] 投稿日:2016/03/27(日) 23:50:04.631 ID:sLW7pJSn0
 _
(;゚∀゚)「オレは、昔、親父さんに頼まれてんだ!」

川 ゚ -゚)「何度も聞いたよ」

ブーンが六十二年の生を終えるとき、
デレの隣にジョルジュはそっと寄り添った。
母であるツンも体調が思わしくなく、ブーンと同じ病院に入院しており、
泣き崩れるデレに寄り添ってやれるのは友人くらいしかいなかったのだ。

死の間際、ジョルジュはブーンから娘を託された。
特殊な体に生まれてしまったデレを、
彼女が今まで生きた中で唯一愛し愛される関係となったジョルジュへ。

既に恋人関係になかったジョルジュへ託すのは申し訳ない、と言いながらも、
ブーンは退く気のない眼差しを持ってデレのこれからを頼んだ。
 _
(;゚∀゚)「だから、オレは、オレだけは、
    アイツが元気で幸せな一生を終えるまで見届けなくちゃいけねぇんだ」

川 ゚ -゚)「……私達よりも、デレは長く生きるぞ」
 _
(;゚∀゚)「残されたアイツは泣くかな?
    でも、それでも、生きててほしいよ」

川 ゚ -゚)「矛盾している」
 _
(;゚∀゚)「うっせー! 難しいことはわからん!
    デレの一生を見届けたい!
    だが、オレより先に死んでほしくもない! 以上!」

186 名前:以下、\(^o^)/でVIPがお送りします[] 投稿日:2016/03/27(日) 23:50:52.318 ID:sLW7pJSn0
  
ようやく、二人が病院にたどり着くと、
殆ど同時にモララーを乗せたタクシーがやってくる。

( ・∀・)「1023号!」
 _
(;゚∀゚)「了解!」

川 ゚ -゚)「病院の中では走るな」

駆け込もうとしたジョルジュの首根っこを引っ掴み、
クールは早足で病院へ入っていく。
ただ、彼女の眼光があまりにも鋭すぎたため、
病院の待ちうけにいた人々が小さく悲鳴を上げてしまう結果となった。

エレベーターを使い、廊下を歩き、
三人はデレがいるらしい病室へとやってきた。
検査は既にすんでおり、中にはデレと医者がいるはずだ。
 _
(;゚∀゚)「デレ!」

【+  】ゞ゚)「院内では静かにお願いします」

川 ゚ -゚)「すみません」

有名人であるデレに配慮してくれたのか、
1023号室は個室となっていた。
そこそこ広い空間の端に、デレが眠るクッションが置かれている。

人が三人は寝転ぶことができそうなクッションは、
床ずれ等々を起こさぬようにできており、彼女の体全体を優しく包み込んでいた。

187 名前:以下、\(^o^)/でVIPがお送りします[] 投稿日:2016/03/27(日) 23:51:38.333 ID:sLW7pJSn0
  
【+  】ゞ゚)「ご友人の方々ですか?」

川 ゚ -゚)「はい」

( ・∀・)「それで、デレちゃんは……」

医者は片目にかけた医療用眼鏡越しに
一分一秒で変化するデレの体を観察している。
眼鏡の内側は、めまぐるしく変わる数値で一杯だ。

【+  】ゞ゚)「原因はわかりませんが、あらゆる数値に乱れが出ています。
       血糖値や血圧はが上昇傾向にあり、ホルモンのバランスも非常に乱れています」

様々な病気を仮定し、検査を行ってみたものの、
今まで蓄積されてきたデータの中にあるいずれともデレの症状は一致しなかった。
近年、新たな細菌やウイルスは発見されてこなかったが、
ここにきて、それらが新たな進化を遂げたとしても不思議はない。
 _
(;゚∀゚)「そ、そんな……」

医者からの説明に、ジョルジュは顔を青くする。
金で治る病気であれば、いくらでも助けてやれる。
だが、未知のモノが相手では、どうしようもできない。

全てを医者に託し、時間の経過を待つか、
穏やかに死ぬことのできる安楽死を選んでやるか。

そのどちらかしかジョルジュは選ぶことができないのだ。

188 名前:以下、\(^o^)/でVIPがお送りします[] 投稿日:2016/03/27(日) 23:52:04.321 ID:sLW7pJSn0
   
ζ(-、゚*ζ「んっ……」

絶望するジョルジュの隣で、デレが小さく声を上げた。
もぞもぞと動き、彼女は上半身を起こす。

ζ(゚ー゚*ζ「……あれ? ジョルジュ君?」
 _
(;゚∀゚)「デ、デレ……」

ζ(゚ー゚;ζ「あ、も、もしかして、アタシ寝てた?」

(;・∀・)「えっと、うーん」

眠る、という定義は未だ曖昧だ。
デレにしかわからぬ感覚であるが故に、
倒れたといっていいのか、突如眠ったといえばいいのかがわからない。

川 ゚ -゚)「お前は倒れたんだ」

ζ(゚ー゚;ζ「あー……」
 _
(;゚∀゚)「体は大丈夫か?
    痛いところとか」

190 名前:以下、\(^o^)/でVIPがお送りします[] 投稿日:2016/03/27(日) 23:52:33.234 ID:sLW7pJSn0
  
ζ(゚ー゚;ζ「大丈夫、大丈夫。
      最近、色々あって眠ってなかっただけだから」

【+  】ゞ゚)「デレさん」

ζ(゚ー゚*ζ「はい?」

医者に声をかけられ、彼女はそちらへ顔を向ける。
受け答えに問題はなさそうだが、彼女の顔色は心なしか暗い。

【+  】ゞ゚)「私としては、入院をオススメします」

ζ(゚ー゚*ζ「えっ」

【+  】ゞ゚)「検査の結果、あなたの体には謎のダメージが確認されています。
       脳にも悪い影響を及ぼしています。
       原因を究明し、治療を受けるべきです」

ζ(゚ー゚*ζ「…………えっと」

デレは視線を落とす。
その目は、まるで全てを知っているかのように澄んでいた。

ζ(゚ー゚*ζ「いいです」

191 名前:以下、\(^o^)/でVIPがお送りします[] 投稿日:2016/03/27(日) 23:53:05.983 ID:sLW7pJSn0
 _
(;゚∀゚)「おい」

ζ(^ー^*ζ「大丈夫。眠るアタシのことは、アタシが一番よくわかってるから」

川 ゚ -゚)「……本当か?」

素人目に見ても、デレの顔色は芳しくない。
原因がわからないにしても、病院で養生するのは悪い選択肢ではないはずだ。

( ・∀・)「でも、キミは急に倒れたんだよ?」

ζ(゚ー゚*ζ「心配しすぎだって。
      ちょっと寝てなかっただけ。寝不足、ってやつ」
 _
(;゚∀゚)「それにしたって倒れるような寝方だったぞ」

ζ(゚ー゚*ζ「そういうこともあるの!」

言い切られてしまうと、反論する術がジョルジュ達にはない。
この場にいる者、医者も含め、睡眠ということを知っているのは、
経験的にも、学術的にもデレが一番だ。

ζ(゚ー゚*ζ「んー。でもそうだなぁ」

デレはそっとクッションから足を降ろし、立ち上がる。
それなりに身長が伸びた彼女の背丈は、ジョルジュよりも少しばかり高い。
寝る子は育つ、と言ったのは、いつかのデレだった。

192 名前:以下、\(^o^)/でVIPがお送りします[] 投稿日:2016/03/27(日) 23:53:59.610 ID:sLW7pJSn0
  
ζ(゚ー゚*ζ「もし、アタシに何かあったら」
 _
(;゚∀゚)「縁起でもないこと言うな」

ζ(゚ー゚*ζ「もしも、だよ」

デレはジョルジュの手を握る。
暖かな体温は、彼女の生をじんわりとジョルジュへ伝えてくれた。

ζ(゚ワ゚*ζ「その時は、アタシの持ってるもの、ぜーんぶ三人で分けて」

川 ゚ -゚)「私達にも?」

ζ(゚ー゚*ζ「もっちろん」

仲の良い友人は何人もいるけれど、
心を預けてもいいと思えたのは、ジョルジュ達だけだった、とデレは言う。

( ・∀・)「……デレちゃん。
      キミの気持ちは嬉しいけど、
      ボクらとしては、キミが生きているほうがずっとずっと嬉しい、
      ってことだけは、忘れないでよね」

vζ(^ー^*ζ「だいじょーぶっ!」

デレはピースをして笑う。

194 名前:以下、\(^o^)/でVIPがお送りします[] 投稿日:2016/03/27(日) 23:54:35.735 ID:sLW7pJSn0
   



それはきっと、全てを知り、全てを終える覚悟を決めていたからこそ、
浮かべることの出来る笑みだったのだろう。


ジョルジュ達のもとに、悲しい訃報が届いたのは、
デレが倒れてからわずか二日後のことだった。



  

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