■2012年芸術の秋ラノベ祭りのようです
└( ><)種育てのようです
- 180 名前: ◆v9sUzVr/7A[] 投稿日:2012/11/25(日) 20:42:48 ID:.p7.I0bo0
僕の、小さなひみつのせかい。
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- 181 名前: ◆v9sUzVr/7A[] 投稿日:2012/11/25(日) 20:43:43 ID:.p7.I0bo0
( ><)種育てのようです
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- 182 名前: ◆v9sUzVr/7A[] 投稿日:2012/11/25(日) 20:44:23 ID:.p7.I0bo0
ふんわりみかん色の、優しい空。
柔らかな地面を靴下で駆けて、僕はスーツのお姉さんに手を振ります。
( ><)「ぽぽさーん!」
(*‘ω‘ *)「おや、ビロード。いらっしゃいませっぽ」
( ><)「あっ、ツンちゃんも来てたんです!」
ξ//听)ξ コクリ
スーツのお姉さん、ぽぽさんの近くには、眼帯をした女の子、ツンちゃんも居ました。
( ><)「調子はどうですか?」
ξ//听)ξ「悪くないわ」
( ><)「よかったんです!」
( ><)「内藤くんも元気そうです」
( ^ω^) オッオッ
ξ//听)ξ「いっつも元気よ」
( ><)「ふふ、そうですね!」
ツンちゃんの頭の上には、白っぽいお餅のような生き物が乗っています。
この子は内藤くん。ツンちゃんが育てた『種』です。
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- 183 名前: ◆v9sUzVr/7A[] 投稿日:2012/11/25(日) 20:45:18 ID:.p7.I0bo0
(*‘ω‘ *)「ビロード、今日はどうやって来たっぽ?」
( ><)「今日はドクオくんとクールちゃんと遊んでたんです。
二人が帰った後、眠っちゃったみたいなんです!」
(*‘ω‘ *)「それじゃ、晩御飯までに帰らないといけないっぽね」
( ><)「そうみたいです……でも、ここは時間がよく分からないからいいと思うんです」
ここに来る時、いつも僕は眠っています。眠らないと、来れないのです。
そして夜、普通に寝る時は来れません。居眠りしたり、お昼寝したりした時じゃないと来れないのです。
何でかはわかんないんです!
( ´∀`) モナー ( ・∀・) モラッ
(*゚ー゚) ニャー
( ><)「あ、モナーくんにモララーくん、しぃちゃん」
ぽぽさんたちと話していると、足元に白とオレンジ色とピンク色の生き物たちが寄ってきました。
この子たちもお餅のような身体ですが、耳のようなものがあるのが、内藤くんとは違います。
僕は直接会ったことはないのですが、ここの来ている誰が育てた『種』だそうです。
何度もここに来る内に、案内人のぽぽさんやよく会うツンちゃんだけでなく、他の人の『種』とも仲良くなりました。
『種』の皆は、話しかけると鳴いて返事をしてくれます。
触るとふにっとしてて、とっても気持ちいいのです。ただ、触らせてくれる人は限られているんです。
未だにしぃちゃんは、なかなか触らせてくれません。
とてとて、ぽぽさんと並んで僕は歩きます。ツンちゃんも今日の分は終わったのか、着いて来ます。
すぐに紫色の、大きなコーヒーカップが見えました。僕のお気に入りの場所です。
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- 184 名前: ◆v9sUzVr/7A[] 投稿日:2012/11/25(日) 20:46:29 ID:.p7.I0bo0
( ><)「ワカくん! ギコくん!」
( <●><●>) ワカッテマス
(,,゚Д゚) ゴルァ
入口とテーブル付のコーヒーカップの隣。
白く、僕の胸程まであるぱっちり目の子と、小さく青い身体の子に僕は抱きつきました。
やっぱりワカくんとギコくんの触り心地が一番です。
ワカくんとギコくんは、僕が育てた『種』なのです。
(*‘ω‘ *)「ビロードはワカとギコが大好きっぽね」
( ><)「はいなんです! ツンちゃんが内藤くんを好きなのと同じです!」
ξ//听)ξ「べべべ別に私はすすすすす好きとかじゃなくて、ただ私の育てた『種』だかららら」
( ><)「いつも通りの動揺っぷりなんです」
(*‘ω‘ *)「眼帯で表情分かりづらいけど、分かりやすいっぽ……」
相変わらず慣れないっぽねぇ、とぽぽさんは優しく笑います。
ツンちゃんはぷいとそっぽを向いてしまいました。
僕も笑っていましたが、コーヒーカップの傍に目がいきました。
从'ー'从 アレレ〜?
( ><)「ナベちゃん! 随分おっきくなったんです!」
(*‘ω‘ *)「もう『お話』も出来るようになったっぽ。もうすぐ動けるようになるっぽね」
( *><)「凄いんです! 聴かせて貰えますか?」
(*‘ω‘ *)「いいと思うっぽ。ね、渡辺?」
从'ー'从 コクコク
ナベちゃん、渡辺さんも他の人が育てている『種』です。
このコーヒーカップをお気に入りの人が僕以外にも居るみたいで、モララーくんの色に似た花も、
ナベちゃんの隣にあります。
ちなみにツンちゃんのお気に入りはゴーカートのような所です。
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- 185 名前: ◆v9sUzVr/7A[] 投稿日:2012/11/25(日) 20:47:23 ID:.p7.I0bo0
(*‘ω‘ *)「さ、渡辺、お話してっぽ。この案内人と、種育てのビロードと、ツンに」
从'ー'从「うん」
ナベちゃんはにっこり笑います。
『種』は大きくなると『お話』をしてくれます。その時だけは、流れるように喋ってくれるのです。
僕も初めて育てたワカくんが『お話』してくれた時、とっても嬉しかったのです。
从'ー'从「どこか遠いところのお話だよ」
ナベちゃんは、話し始めました。
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- 186 名前: ◆v9sUzVr/7A[] 投稿日:2012/11/25(日) 20:48:05 ID:.p7.I0bo0
――大昔、街がありました。
今は、廃墟です。
ひとりの女の子が、旅をしていました。
女の子は、街と森が好きでした。
(゚、゚トソン「よいしょ」
だから、種を蒔きました。
(゚、゚トソン「よいせ」
やがて、街は廃墟でなくなりました。
けれど、森でもありませんでした。
(゚、゚トソン
街と森が合わさって、廃墟でも森でもない、不思議な庭が出来ました。
樹に覆われた図書館、ビルの幹、沢山の緑と花と、コンクリート。
(゚、゚*トソン
女の子はにっこり笑うと、去っていきました。
いっせんねん。
女の子は満足して、また旅を続けてゆくのです。
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- 187 名前: ◆v9sUzVr/7A[] 投稿日:2012/11/25(日) 20:49:04 ID:.p7.I0bo0
从'ー'从「終りだよ」
ナベちゃんが話し終わりました。
僕は拍手します。ツンちゃんとぽぽさんも拍手します。
ナベちゃんはもう一度笑いました。
他の『種』たちはそれぞれにカップの周りで遊んでいました。
ワカくんとギコくんは僕の近くでお話を聞いてくれています。
いつもどこか不思議なお話を『種』たちはしてくれます。
月夜のお話。
雨の中のお話。
猫たちのお話。
宇宙のお話。
青い石のお話。
神社のお話。
他にも、もっともっと。
お話してくれるのは、大きくなった時と『種』たちが気まぐれにその気になった時です。
( ><)「ありがとなんです」
从'ー'从 アレレ〜
(*‘ω‘ *)「またお話してくれる時を待ってるっぽ」
ξ//听)ξ「……待ってるわ」
(*‘ω‘ *)「さ、ビロード」
( ><)「あ、そうですね、始めましょう!」
ぽぽさんがコーヒーカップを示します。
芽の出た植木鉢をテーブルに置き、僕は座りました。
今、僕が育てている『種』です。
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- 188 名前: ◆v9sUzVr/7A[] 投稿日:2012/11/25(日) 20:50:22 ID:.p7.I0bo0
(*‘ω‘ *)「さあ、種育てビロード、そのこころをこの案内人にみせて」
( ><)「はいなんです」
ぽぽさんのいつもの問いかけに答えると、ふんわりと身体が光ります。
(*‘ω‘ *)「種育てビロード、想いの動き、こころの成長、今ここに」
その光はぽぽさんの手の上に集まり、やがて輝く水になりました。
ぽぽさんが柔らかく手を傾けると、それに合わせて水が滴り落ちます。
ぽたりぽたりと。
( *><)
ξ//听)ξ
わくわくしている僕と、覗き込んでいるツンちゃんを見て、ぽぽさんはふふりと笑います。
その笑みが、僕は大好きです。
芽の出た植木鉢はみるみる水を吸い込んでゆき――完全に、水はなくなりました。
( ><)「今日も、元気に育って欲しいんです」
(*‘ω‘ *)「大丈夫っぽ。いい水だったっぽ」
水は、僕のこころ。僕の想い。
僕が成長した分だけ、水になるそうです。
といっても消費する訳じゃないそうですが、よくはわかんないです。
『種』は、僕たち種育てのこころで成長します。
ワカくんやギコくんのように植木鉢から離れられるようになると、水ではなく、直接僕たちから受け取るそうです。
だから『種』たちがしてくれる『お話』は、僕たちのこころで世界なのだとぽぽさんが言っていました。
内藤くんがしてくれた『お話』はツンちゃんのこころで世界、
ナベちゃんがしてくれた『お話』はナベちゃんを育てる人のこころで世界なのです。
何だかそれはとても、素敵なことのように、僕は思うのです。
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- 189 名前: ◆v9sUzVr/7A[] 投稿日:2012/11/25(日) 20:51:09 ID:.p7.I0bo0
ふわん、とみかん色の景色が浮遊感を増しました。
( ><)「あ、目が覚めそうなんです」
(*‘ω‘ *)「みたいっぽね。ビロード、またおいでっぽ」
( ><)「はいなんです。ツンちゃんもバイバイなんです」
ξ//听)ξ「じゃあね」
手を振ると、ぽぽさんとツンちゃん、ワカくんやギコくんたち『種』も手を振りかえしてくれます。
ふと、ツンちゃんがこちらを見詰めました。
ξ//听)ξ「私ね。目、治すわ」
( ><)「え?」
ξ//听)ξ「いつかぽぽに話せるように。ビロードに会えた時、分かるように」
(*‘ω‘ *)「……ツン」
( ><)「ツンちゃん……! はいなんです! きっと会えるんです!」
会えるんです。
もう一度叫んだ時、僕はリビングのソファの上でした。
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- 190 名前: ◆v9sUzVr/7A[] 投稿日:2012/11/25(日) 20:52:00 ID:.p7.I0bo0
僕の、小さなひみつのせかい。
ぽぽさんの居る、『種』たちの居る、種育ての居る、大事な世界。
おわり
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