2012年芸術の秋ラノベ祭りのようです
(#゚;;-゚)影色のあいつのようです


「子猫が仰いだ空の下」さんでは、 イラストNo.158の絵師さん本人による挿絵追加版がまとめられています。
http://konekotoissyo.web.fc2.com/matome/kageiro/kageiro.html



56 名前: ◆v9sUzVr/7A[] 投稿日:2012/11/19(月) 22:47:47 ID:BXk4XTZg0



 ある所に、白い小さな猫がおりました。
 ですが毛並みは汚れ、灰色に見えます。
 猫は、でぃという名でした。

∧ ∧
(#゚;;-゚)


 でぃはいつも一匹ぼっちでした。
 小さい頃から傷だらけで、人から石を投げられたり、猫からも遠巻きにされていたのです。

 ∧ ∧
...(#゚;;-゚)


∧∧
(,,゚Д゚)「おい、でぃだぞ」ヒソヒソ

∧ ∧
(*゚ー゚)「本当だわ。気味悪い」

 ∧ ∧
( ´∀`)「来ないで欲しいモナ……」


 その為に傷は、ずっと治りませんでした。

57 名前: ◆v9sUzVr/7A[] 投稿日:2012/11/19(月) 22:48:32 ID:BXk4XTZg0
∧ ∧
(#゚;;-゚)ムシャムシャ


 そんなある日のことです。


 ∧ ∧
( ・∀・)「よう」


∧ ∧
(#゚;;-゚)そ


 影が、でぃに話しかけてきました。






∧ ∧
(#゚;;-゚)影色のあいつのようです

58 名前: ◆v9sUzVr/7A[] 投稿日:2012/11/19(月) 22:49:14 ID:BXk4XTZg0


∧ ∧
(#゚;;-゚)「……だぁれ?」

 ∧ ∧
( ・∀・)「オレはモララー。お前の影」

∧ ∧
(#゚;;-゚)「もら……?」

 ∧ ∧
( ・∀・)「モララー」


 影はにんまりと笑いながら言いました。

 ∧ ∧
( ・∀・)「お前の出来ないこと、オレがやってやるよ」

∧ ∧
(#゚;;-゚)「できないこと? 本当?」

 ∧ ∧
( ・∀・)「ああ、本当さ。ちょっとオレに貸してみな」


 みにょん、と影の尻尾が弧を描きます。
 少しだけ考えて、でぃはこくりと頷きました。
 すると、ふっと体が軽くなります。

     『ほら、行くぜ』

 頭の中で、モララーの声がしました。同時に、身体が勝手に動き出します。
 たたっと軽快に足が走り、いつもは超えられない壁も簡単に超えていきます。

59 名前: ◆v9sUzVr/7A[] 投稿日:2012/11/19(月) 22:50:07 ID:BXk4XTZg0

∧ ∧
(#゚;;-゚)「わぁ……!」

     『楽しいか?』

∧ ∧
(#゚;;-゚)「うん!」

     『そいつは何より』


 いつもは走れない所を走り、すり抜け、原っぱでようやくでぃの体は止まりました。

∧ ∧
(#゚;;-゚)「はあ、はあ」

 ∧ ∧
( ・∀・)「どうだった」

∧ ∧
(#゚;;-゚)「すごかった……すごいね、もら!」

 ∧ ∧
( ・∀・)「モラって……まあいいや呼び方なんか」


 どうせ、とモララーが呟きましたが、でぃは興奮していて聞こえていませんでした。

 ∧ ∧
( ・∀・)「こうやってお前にやれないこと、オレがやってやるよ」

∧ ∧
(#゚;;-゚)「またしてくれるの?」

 ∧ ∧
( ・∀・)「ああ」

∧ ∧
(#゚;;-゚)「約束だよ、もら」

 ∧ ∧
( ・∀・)「いいとも」


 こうして、でぃはモララーに時々体を預けるようになりました。
 ある時は走り、ある時は電車に忍び込み、ある時はおいしいものを掠め取ったり。

60 名前: ◆v9sUzVr/7A[] 投稿日:2012/11/19(月) 22:50:55 ID:BXk4XTZg0


∧ ∧
(#゚;;-゚)「ねえ、もらはずっといる?」

 ∧ ∧
( ・∀・)「……どうだろうな」

∧ ∧
(#゚;;-゚)「……いなくなっちゃうの?」

 ∧ ∧
( ・∀・)「……さあ。オレはお前の影。お前の闇だから」

∧ ∧
(#゚;;-゚)「…………」


 そしてある時、モララーはでぃを高い木の上に連れて行きました。
 でぃでは途中で落っこちてしまうような、高い木です。
 天辺の枝で、二匹は星を見ました。

 「きれいだね」とでぃが呟きます。「まあな」とモララーが返しました。

∧ ∧   ∧ ∧
(#゚;;-゚)  ( ・∀・)


 二匹は、じっと一緒に星空を眺めていました。

61 名前: ◆v9sUzVr/7A[] 投稿日:2012/11/19(月) 22:52:19 ID:BXk4XTZg0

 ある日。
 またでぃは、人に石を投げられました。
 痛みを堪え、ねぐらまで歩きます。

∧ ∧ ∧∧ ∧ ∧
(*゚ー゚)(,,゚Д゚)( ´∀`)


 また猫たちが口さがなく、でぃにヒソヒソ声を投げかけます。


「やだな」
                 「まただよ」

    「何であいつ、居るんだろう」


 ∧ ∧
...(#゚;;-゚)

62 名前: ◆v9sUzVr/7A[] 投稿日:2012/11/19(月) 22:53:05 ID:BXk4XTZg0

 そうしてでぃは、ねぐらに辿り着きました。

 ∧ ∧
( ・∀・)「なぁ」

∧ ∧
(#゚;;-゚)「なぁに、もら」

 ∧ ∧
( ・∀・)「お前に出来ないこと、してやろうか」

∧ ∧
(#゚;;-゚)「いっつもしてもらってるよ?」


 ∧ ∧
( ・∀・)「復讐、してやるよ」


 にんまりと、笑ってモララーは、言いました。

∧ ∧
(#゚;;-゚)「ふくしゅ……う?」

 ∧ ∧
( ・∀・)「そうさ。あいつら、嫌いだろ。イヤだろ。オレが復讐してやる」


 だから、貸せよ。


 モララーは、囁きます。
 でぃは、随分随分、考え込んでいました。

63 名前: ◆v9sUzVr/7A[] 投稿日:2012/11/19(月) 22:53:51 ID:BXk4XTZg0


∧ ∧
(#゚;;-゚)「してくれなくて、いいよ。でも、そうして」

 ∧ ∧
( ・∀・)「ん? どういう意味だ? 復讐しなくていいってことじゃないだろ?」

∧ ∧
(#゚;;-゚)「ううん、しなくていい。でも、もらの好きして」

 ∧ ∧
( ・∀・)


 ∧ ∧
( ・∀・)「お前……意味、分かってる……?」

∧ ∧
(#゚;;-゚)「たぶん。でもあたし、もらに触りたい」

 ∧ ∧
( ・∀・)「――……」


 モララーは、入れ替わるつもりでした。
 何度も体を借り、馴染ませ、やがて取って代わるつもりでした。
 気付いてなんかいないと、思っていたのです。
 でも、そんなことを言い出すなんて。

65 名前: ◆v9sUzVr/7A[] 投稿日:2012/11/19(月) 22:54:39 ID:BXk4XTZg0


∧ ∧
(#゚;;-゚)「あげる、でもねもら、一つお願いがあるの」

 ∧ ∧
( ・∀・)「何だ、やっぱりか。人にか、あの猫どもにか、それとも――」

∧ ∧
(#゚;;-゚)「一緒にいてもいい?」

 ∧ ∧
( ・∀・)

 ∧ ∧
(  ∀ )

 ∧ ∧
(  ∀ )「……お前、……馬鹿だろ」


 こくり、とでぃは小首を傾げます。

  ∧ ∧
⊂( ∀  )


 それでもモララーは、手を伸ばします。
 モララーは、でぃの心の闇。
 付け入る隙があれば、手を出さずには居られない、『そういうもの』なのです。

66 名前: ◆v9sUzVr/7A[] 投稿日:2012/11/19(月) 22:55:19 ID:BXk4XTZg0

∧ ∧
(#゚;;-゚)「モララー」

 ∧ ∧
( ∀  ) ピクッ

∧ ∧
(#゚;;-゚)「あたしの目、みてて」

 ∧ ∧
( ∀  )

∧ ∧     ∧ ∧
(#゚;;-゚)  ⊂(・∀・ )

∧ ∧     ∧ ∧
(#゚;;-゚)つ ⊂(・∀・ )

∧ ∧    ∧ ∧
(#゚;;-゚)つ⊂(・∀・ )



      カッ




     「でぃ」




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67 名前: ◆v9sUzVr/7A[] 投稿日:2012/11/19(月) 22:56:03 ID:BXk4XTZg0


 ある所に、白い猫がおりました。
 その毛並みは美しく、つやつやとしています。

 その猫は、好んで一匹でした。
 他の猫たちは気になっていましたが、なかなか一緒には居られませんでした。

 その猫には奇妙な癖がありました。
 影を、優しく撫でるのです。
 その影も、時折白い線が幾つか走っているように見えましたが、
 美しい毛並みだったので、光の加減だろうと他の猫たちは思っていました。

 そして、その猫は木の上で星を見上げます。
 「綺麗だな」と呟いて。



           おわり

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