('A`)はプロの写真屋のようです

17 名前:名無しさん[] 投稿日:2016/03/27(日) 12:45:08 ID:32zSFS7w0
 |听)ξ
 |ω^) ジー
 |听)
 |Д゚)

川 ゚ -゚) 「まあまずは茶でも飲め」

('A`) 「あぁ……どうも……」

川 ゚ -゚) 「どうした? 元気がないな。毒なんかちょっとしか入ってないぞ?」

('A`) 「いやそうじゃなくて……っていうかちょっとでも毒は毒だろうが糞め……」

川 ゚ -゚) 「なんだ、そのまるでウンコ漏らしたまま会議に出ちゃったサラリーマンみたいな態度は」

('A`) 「ガキどもの視線が落ち着かないんだよ。コミュ障の視線恐怖舐めてんの?」

 俺が挙動不審気味にそう言うと、クーは合図でも出すように指を弾いた。

18 名前:名無しさん[] 投稿日:2016/03/27(日) 12:45:53 ID:32zSFS7w0
 |彡
 |彡 サッ
 |彡
 |彡

('A`) (訓練された犬じゃねえんだから……)

川 ゚ -゚) 「まあ悪く思うな。都会の人間を見るのは初めてだからな。パンダになったと思ってくれ」

川 ゚ -゚) 「もっとも、こんなに禍々しいパンダなら絶滅しても構わんが……」

('A`) 「あ、だから茶菓子が笹団子なの」

 釘でも仕込まれていないか警戒しつつ団子を二つに割る。
 案の定、粒ぞろいの石ころが詰まっていたので、とりあえず客間から庭先に放り投げた。

19 名前:名無しさん[] 投稿日:2016/03/27(日) 12:46:24 ID:32zSFS7w0
川 ゚ -゚) 「ああ! せっかくのクーちゃんブレンド石ころ饅頭がっ!」

('A`) 「嘆くな。きっと大地に還って食物の連鎖を巡るさ」

川 ゚ -゚) 「食べ物を粗末にした言い訳がそれか? お前絶対地獄に堕ちるな。アフリカの子供たちに申し訳ないと思わないの?」


\( ´∀`)/ We are the children of Africa!\(・∀・ )/

( ´∀`) We are friends...

( ・∀・) World is no border...


('A`) 「石ころを詰めた当事者が説教始めたと思ったらなんか変な二人組がAC(公共広告機構)みたいなフレーズ呟き始めた。怖い」

21 名前:名無しさん[] 投稿日:2016/03/27(日) 12:47:41 ID:32zSFS7w0
川 ゚ -゚) 「紹介が遅れたな。彼らは村の青年団の若頭二人だ。普段は派閥争いで抗争が絶えないが、今日は客人を迎え入れるにあたり融和ムードだ」

('A`) 「青年団ってそんな暴力団みたいな体質なんだ」

( ・∀・) Hey Mr.Dokuo I can fly...

( ´∀`) We Can fly...

\( ´∀`)/ We are the Bird!\(・∀・ )/

('A`) 「こいつら本当に普段いがみ合ってるの?」

川 ゚ -゚) 「まあ、日常的に刃物で刺し合う程度には……」

('A`) 「純粋に恐怖しか感じないからどこかに消えてもらって。だいたいなんでずっと英語なんだよ。意思疎通ができてない感じが余計怖いんだよ」

川 ゚ -゚) 「青年団の公用語が今年から英語になってな……」

('A`) 「おそらく世界で最も無駄なグローバル化が行われてた」

22 名前:名無しさん[] 投稿日:2016/03/27(日) 12:48:27 ID:32zSFS7w0
川 ゚ -゚) 「すまんが、客人が怯えているようだから二人とも帰ってくれ」

( ・∀・) ok I'll go home...fuck you

( ´∀`) kill you

川 ゚ -゚) 「おとなしく帰るそうだ」

('A`) 「本当にそう解釈していいんだな? 歪めた翻訳してないよな?」

 粘り付くような視線を最期の一秒までずっとこちらに向けたまま、廊下の向こうに二人の若頭は消えていった。
 今日の夜はハイエースの中で籠城しようと思った。

24 名前:名無しさん[] 投稿日:2016/03/27(日) 12:49:47 ID:32zSFS7w0
川 ゚ -゚) 「すまんな。やはりみんな浮足立っているんだ。いかんせん、数年ぶりの来客だからな」

('A`) 「外部から物資とか来ないのか? 郵便は?」

川 ゚ -゚) 「まあ……そこはあまり気にするな……」

 どうにも歯切れが悪かった。
 クーはわざとらしく手を叩き合わせると、その場から立ち上がった。

川 ゚ -゚) 「そうだ! 今日の夜は宴会にしようじゃないか! 撮影は明日からでもいいだろう! まずはこの村のよさを知ってもらわんとな!」

('A`) 「いいよ。俺、飲み会とか苦手だから」

川 ゚ -゚) 「大丈夫だ。若頭たちは参加させないから。一晩中穴掘りとかさせておくから」

('A`) 「逆に後が怖い」

25 名前:名無しさん[] 投稿日:2016/03/27(日) 12:50:31 ID:32zSFS7w0
 ここの客間でやるから夕方には絶対戻って来いよ、とクーは一方的に宣告し、食材の調達に出て行った。
 どうやら、それまでは自由に出歩いていいらしい。

('A`) 「それにしても……この広い家にあんな若い女が一人暮らしか……。ますます不自然だな」

 所詮は田舎の年代物と括ってしまえばそれまでだが、広さだけでいえば豪邸と呼んで差支えない。
 江戸時代の庄屋みたいな構えの、石垣に囲まれた立派な建物だ。


ξ*゚听)ξ 「ねえ!」

(;'A`) 「うわっ!」

 何かと思ったらさっきの子供たちだった。クーがいなくなったと見るや、障子の陰からぞろぞろと出てきた。

26 名前:名無しさん[] 投稿日:2016/03/27(日) 12:51:32 ID:32zSFS7w0
ξ*゚听)ξ「カメラマンの人でしょ? うわー! うわー! 初めて見た! 想像以上に人間そっくり!」

( ^ω^) 「全然亀じゃないお!」

('A`) 「俺、一応は人間だからね?」

ノパ听) 「人間の亜種か!」

('A`) 「亜種でもないから」

く(,,゚Д゚)/ 「いちいち騒ぐな……くだらん……」ポーズキメー

('A`) 「まだ撮らないよ。機材車の中に置いてるし」

(,,゚Д゚)クワッ 「うるせえ別に撮って欲しくなんかねえよぉおおおおお!!!」

('A`) 「うわあ面倒臭えガキ」

('A`) 「まあちょうどよかった。今から撮影場所を探しにいくから、いいとこ教えてくれよ」

('A`) 「子供ならではのスポットとかあるだろ」

27 名前:名無しさん[] 投稿日:2016/03/27(日) 12:52:05 ID:32zSFS7w0
( ^ω^)ノシ 「あるおあるお! いくらでも案内するお!」

ノパ听) 「まっかせろ!」

 庭先で飛び跳ね始めたガキどもに少し微笑んでから、玄関に移動して靴を履く。中に画鋲が仕掛けられていたので、近くに飾ってあったバービー人形の乳首にそっとインプットしてやる。
 ドリル乳首バービー。略してドリバビの爆誕である。この世界は美しい。

('A`) 「俺ってば紳士だってばよ」

 奇行をしつつも注意は欠かさない。
 画鋲トラップとか若頭どもの恐怖とか、そういう話ではない。
 ガキどもがはしゃぎながら纏わりついてくるが、俺の視線はもっと遠くを見ている。

('A`) (妙に人の気配がないな……)

 過疎村と言ってしまえばそれまでだ。しかし、極端なのだ。賑やかな箇所は異様に賑やかで、そうでない箇所はまるで廃村のように静かだ。
 もっと直截的に表現するなら、常に俺の半径数メートルだけが賑やかなのだ。

28 名前:名無しさん[] 投稿日:2016/03/27(日) 12:52:42 ID:32zSFS7w0
 ――まるで『撮影に必要なキャスト』が『必要なだけ配置』されているように。



('A`) 「はっ。考えてもしょうがねえか」 

 俺は写真屋である。言われたとおりに写真を撮ればいいのだ。

ξ*゚听)ξ 「こっちこっち!」

 手を振るガキどもに俺はついていく。
 少し歩くと、まるでテープを再生したかのような唐突さで、小川のせせらぎが聞こえ始めた。
 先頭に立っていた巻き髪の少女がくるりと振り向く。
 
ξ*゚听)ξ 「うんとね! ここの川ってすごく綺麗でしょ? 水がキラキラしてて、可愛い魚もいっぱい泳いでて、きっといい写真になると思うの!」

('A`) 「ああ……僕も心の底からそう思うよ……ねえお嬢ちゃん、スク水着て泳いでみない? やっぱりね、泳いでる子供がいるといないじゃ質が違ってくると思うんだ……。はいこれあげる」

 俺は手提げカバンの中からスク水を2着取り出して少女二人にプレゼントフォー・ユーした。
 そこはかとなく臭うのは使用済だからである。チョコに浮かぶ白斑みたいなものだ。品質に影響はない。

29 名前:名無しさん[] 投稿日:2016/03/27(日) 12:53:41 ID:32zSFS7w0
ノハ;゚听) 「な、なんで機材は車の中って言ったのに、こんなものを持ってるんだ……?」

('A`) 「都会人はみんな持ってるから。常識だよ?」

ノパ听) 「そうなのか! 都会ってキチガイじみてるな!」

 ぽいっ、と澄んだ清流にスク水が2着流されていく。世の無常を感じる。あはれなり。

(,,゚Д゚) 「おい兄ちゃん。俺にも何かくれてもいいと思うんだが? だが?」

('A`) 「ああうん。この中から好きなの取っていいよ」

(,,゚Д゚) 「マジかよ!」

 喜々として俺のカバンを覗き込んだ少年だったが、中から立ち込めるイカの芳香に「エンッ!!!」と仰け反った。
 しかし田舎者の「タダなら死んでも貰う」根性は凄まじく、何と異臭に耐えながら俺の財布を掴み上げやがった。

30 名前:名無しさん[] 投稿日:2016/03/27(日) 12:54:15 ID:32zSFS7w0
(,,゚Д゚) 「ゴルアァアア! 大物ゲットォォオ!!」

 意気揚々と勝鬨を上げた少年を俺はすかさず川に蹴り落とし、財布を回収する。
 免許証とクレカはさすがに渡せない。

(,,゚Д゚) 「げふっ、げふっ。何しやがんだてめえ!」

('A`) 「他人が財布に手を触れたらたとえどんな状況だろうと川に蹴り落とすのが都会の伝統だから……」

(,,゚Д゚) 「都会なら仕方ないな……」

 都会という存在にすべての汚名を被せて、この場をうやむやにする。
 とりあえずこのガキには和田アキ子のサイン入りブロマイドを詫び代わりに握らせておいた。

31 名前:名無しさん[] 投稿日:2016/03/27(日) 12:54:58 ID:32zSFS7w0
( ^ω^) 「だけど試し撮りとかしないのかお? 車ならすぐ近くに停めてるんだから、カメラだけでも持ってこれるお?」

('A`) 「プロは技術を安売りしないのさ。趣味でパシャパシャ撮ってる大学生と一緒にすんな。報酬が発生するときだけ撮るんだ」

 本当ならこんなド田舎の風景なんて撮りたくないのだ。証明写真の方がずっと性に合っている。
 不満を垂れそうにデブガキが頬を膨らませたので、俺は一太刀斬りこむ。

('A`) 「ところでお前ら。今は夏休みだろうけど、この村に学校ってあるのか? それらしい建物は見当たらんが」

(;^ω^)
ξ;゚听)ξ
ノハ;゚听)
(;,゚Д゚)

 ほら、予想通り過ぎて笑える反応だ。

32 名前:名無しさん[] 投稿日:2016/03/27(日) 12:55:55 ID:32zSFS7w0
(;^ω^) 「が、学校はないけどっ、役場に先生がいてっ、そこが臨時の学校というかっ」

('A`) 「ああ、いいよ。無理に説明しなくていい」

 俺は手を振ってデブガキの言い訳を制する。

('A`) 「わざわざ言われるまでもなく、だいたい分かる」

(;^ω^) 「へ?」

 無論、少しだけレアなケースではあるが、俺にとっては特別に異常な事態というわけではない。


('A`) 「言ったろう。俺はプロなんだ」

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