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42 名前:名無しさん[] 投稿日:2016/04/03(日) 16:22:37 ID:h7hhsNrw0
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田舎の飲み会なんてヤリチンサークルのドラッグパーティーと何も変わらない。
猿じみたジジイどもが卑猥なコンパニオンをはべらせながら高笑いし、いくら呑むことを拒否してもケツからぬるめの燗を漏斗で流し込まれる。
参加したことはないがそうに決まっている。
ついさっきまで、そう思っていた。
_,,..,,,,_
/ ,' 3 `ヽーっ ドン!
l ⊃ ⌒_つ
`'ー---‐'''''"
川 ゚ -゚) 「待たせたな……。これが我が村の名物・族長(オサ)盛りだ」
('A`) 「ごめんなさい神様」
俺は十字を切って己の不明を恥じた。俺は賢者ぶっていただけで、何も分かっちゃいなかった。
だいたい『盛り』とか言っている割に刺身はおろかワサビすら盛られていない。やたら毛深い老人の汚らしい裸身がごろりと横たわっているだけだ。
まさか人肉を食す闇の祭典が待ち受けていようとは。
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43 名前:名無しさん[] 投稿日:2016/04/03(日) 16:23:25 ID:h7hhsNrw0
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川 ゚ -゚) 「なんだよお前、その不満そうな態度は。メインディッシュを目の前にして『いただきます』以外の台詞吐くとか料理人舐めてんの?」
('A`) 「この村長、まだ息があると思うんだけど。ていうか毛深すぎない? 本当に人間?」
川 ゚ -゚) 「村の人間の毛髪を素肌に一本一本縫い付けたからな。あたかも戦地に赴く兵士の無事を願う千人針のように……」
('A`) 「呪いの生贄かな?」
族長(村長)は微かに胸を上下させながら「殺せ、殺してくれ」と呟いている。
武士の情け。俺は濡れ雑巾をそっと村長の顔に被せてやった。
J( 'ー`)し 「ドクオさんはコーラでしたね……。はい、プロテイン(迸るさわやか母乳味)」
('A`) 「どうもありがとうございます」
給仕のおばさんからコップを受け取るなり、俺は庭先へと力強く投擲した。
夏の夜に母乳臭い液体が淡く広がる。たぶん明日には虫が湧くだろう。
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44 名前:名無しさん[] 投稿日:2016/04/03(日) 16:24:56 ID:h7hhsNrw0
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( ゚∀゚) 「えー。ただいまマイクのテスト中。ジュポッ! ジュポッ!」
料理が揃ったところで、村役場の兄さんがこけし型マイクを手に取り、顔をひょっとこにして激しくしゃぶった。
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( ゚∀゚) 「チュポンッ。それではこれより、村の終焉記念写真を撮ってくれるドクオ先生の歓迎会を開催したいと思います」
川 ゚ -゚) 「こけしはこの村の特産品なんだ……」ヒソヒソ
('A`) 「特産品を自ら穢していくスタイル」
それに、わざわざヒソヒソ話で補足されるほど欲しい情報ではない
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( ゚∀゚) 「まずはじめに村長挨拶ですが、本日は体調不良により割愛させていただきます。職責を果たせないとはゴミにも等しいですね。政権交代が強く望まれます」
('A`) 「この村における村長の立ち位置って奴隷的な何かなのかな」
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( ゚∀゚) 「それでは次に我々からささやかなプレゼントをドクオ先生に」
ぱちんと役場の兄さんが指を弾くと、クーがその場を立って「あーだりい」と呟きながら台所方面に行き、薄汚れレジ袋を提げて持ってきた。
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45 名前:名無しさん[] 投稿日:2016/04/03(日) 16:25:55 ID:h7hhsNrw0
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川 ゚ -゚) 「ほら。キン肉マン消しゴム50年分」
('A`) 「わあ、こんなに要らないものを渡されたの初めて」
かつてないときめきが俺を襲う。
('A`)「しかもなんで1つ残らず全部ウォーズマンなんだよ」
川 ゚ -゚) 「あ? じゃあジェロニモならよかったのか?」
言葉の無為を悟った俺は、レジ袋からウォーズマンを鷲掴みにして、未だ横たわる村長の口の中にぎっしりと詰めた。
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( ゚∀゚) 「さて。ダム工事の着工も間近に迫り、数年後にゃこの村も水底に沈みまくりまクリスティなわけです」
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( ゚∀゚) 「まー最期くらいは華々しくって気持ちも分からんでもないですよ」
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( ゚∀゚) 「さてドクオ氏。昼間に視察をなさったようで、この村に関する感想をばよろしくお願いします」
('A`) 「えぇ……そんな挨拶聞いてないよ……」
しかし抗弁叶わず、唾液でテッカテカになったこけしを手渡されたので、とりあえず床に叩き落として地声での挨拶を決意。
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46 名前:名無しさん[] 投稿日:2016/04/03(日) 16:26:59 ID:h7hhsNrw0
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('A`) 「この村の感想を一言で表すと、シベリア超特急でした。以上」
川 ゚ -゚) 「不毛っていうことか? ホモってことか?」
('A`) 「両方だよ言わせんな恥ずかしい」
どっと宴席が湧いて勝手に乾杯が始まった。意味が分からない。
騒げればなんでもいいのだろう。
喚く声の中には方言のほか怪しげな英語も混ざっている。青年団がいるらしい。
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47 名前:名無しさん[] 投稿日:2016/04/03(日) 16:28:36 ID:h7hhsNrw0
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(`;ω;´) 「おいドクオ君!」
('A`) 「うわっ、なんか一升瓶もったハゲが絡んできた」
(`;ω;´) 「ハゲじゃない! 私はこの村の住職だ! うちの寺はなあ……建立38年の立派な寺なんだぞ……! それが沈むなんて……!」
('A`) 「ちょっと古い民家レベル。これは文化財保護の対象にもならない」
(`;ω;´) 「ちくしょう。やっぱり本尊にバイブを崇めていたのが弾圧の対象になったのか……」
('A`) 「やっぱ国の判断って的確だわ。淫嗣邪教は早めに潰すべき」
川 ゚ -゚) 「おいカs……ドクオ。少しいいか」
(`;ω;´) 「まだだ! クーちゃん! まだ私の話はこれからなんだ!」
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48 名前:名無しさん[] 投稿日:2016/04/03(日) 16:29:09 ID:h7hhsNrw0
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川 ゚ -゚) 「うるせえ坊主だな。いいかドクオ。このオッサンは酔うと面倒だが、さっさと黙らせるコツがあるんだ」
('A`) 「その心はいかに?」
クーはビール瓶を手に握ると、それはそれは見事なスイングで住職の後頭部に叩き付けた。
(`゚ω゚´)
川 ゚ -゚) 「ほうら。静かになったろう」
('A`) 「すごいや、世の中のほとんどの人が静かになる裏技だね。伊藤家の食卓で見たことあるよ」
川 ゚ -゚) 「お前も静かにさせられたくなければ少し付き合え」
('A`) 「はい」
俺はクーに従って居間から縁側に移った。蚊取り線香が焚かれていて、懐かしい匂いが漂っている。
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49 名前:名無しさん[] 投稿日:2016/04/03(日) 16:29:42 ID:h7hhsNrw0
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川 ゚ -゚) 「昼間はガキどもが世話になったようだな……」
('A`) 「ああ。本当にいろいろとな」
('A`) 「で、あいつらは飲み会に欠席なのか? こういうところは大人も子供もないものと思ったが」
('A`) 「ていうか、今この瞬間、あのガキどもは存在してるのか?」
たとえば、俺の背後では飲み会の喧騒が絶えない。
しかし、今の俺に認識できているのは田舎者どもの声だけだ。
声がするだけで、俺の背後にブラックホールのごとき暗闇が広がっている可能性もある。
川 ゚ -゚) 「……お前、どれだけ察しているんだ?」
('A`) 「あのな。お前、仕事が粗いんだよ。担ぐならもっと上手くやれ。一から十までボロだらけだ」
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50 名前:名無しさん[] 投稿日:2016/04/03(日) 16:30:20 ID:h7hhsNrw0
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('A`) 「狐とか狸みたいなバケモノ連中ならもっと上手く騙す」
('A`) 「印象でいえば幽霊の方が近いが、お前ら幽霊にしては個人意識がえらく希薄なんだよ」
('A`) 「こんだけ集団でいながら、願いが『村の撮影』だなんてチンケな集団霊はいない」
('A`) 「そうなりゃ結論は一つだろう」
川 ゚ -゚) 「……お前、その歳で幽霊とかバケモノとか語って恥ずかしくないのか? 中二病か?」
('A`) 「しゃあないだろ。実際その手のよく分からん奴らに出くわしてきたんだから」
('A`) 「最初に来たときから分かってたんだよ。お前、出会い頭に俺のアナルから前立腺弄ってきただろ?」
川 ゚ -゚) 「然り」
武士めいた口調でクーが応じる。
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51 名前:名無しさん[] 投稿日:2016/04/03(日) 16:31:17 ID:h7hhsNrw0
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('A`) 「俺だって変態じゃないんだからズボンくらい履いてるよ。ノーパンではあったけどな。だけどズボンに穴すら開けずアナルに挿入なんて……お前の指、明らかにズボンをすり抜けていただろう?」
('A`) 「人間じゃねえよ。人間でできるとしたら加藤鷹くらいだよ。そしてお前はどこからどう見ても加藤鷹じゃない」
クーは加藤鷹のモノマネをしながら神妙に頷いた。
どのようなモノマネかは筆舌に尽くしがたいので読者諸兄のご想像にお任せするが、神妙さと両立しうるギリギリのラインであったことは特筆しておきたい。
川 ゚ -゚) 「そうか……君を上手く担ごうと思っていたんだが、初めから分かっていたんだな」
クーがため息をつくと、途端に背後の喧騒が消えた。
('A`) 「こちとらプロだからな。分かってても仕事に手抜きはしない。そうだな――明日、日が昇ったら撮影しよう」
('A`) 「メイクアップは忘れるなよ」
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52 名前:名無しさん[] 投稿日:2016/04/03(日) 16:32:10 ID:h7hhsNrw0
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川 ゚ー゚) 「ああ、任せたぞ」
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53 名前:名無しさん[] 投稿日:2016/04/03(日) 16:33:45 ID:h7hhsNrw0
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そうして俺は縁側から居間に戻った。無人になった宴会場には眼を見開いて痙攣する族長だけが残されている。
ハイエースに帰ろうとしたら巧妙に靴が隠されていた。
('A`) 「もうやだ帰りたい」
かくして俺は翌日の撮影に臨む。