- 1 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2013/03/14(木) 00:33:13.34 ID:I2qWsDzm0
-
びっくりだね
- 2 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2013/03/14(木) 00:37:46.30 ID:I2qWsDzm0
-
もうすぐ全ての陸地が海の底に沈むらしい
理屈はよくわからないけれど、世界中の科学者がそう言っているのできっと間違いではないのだろう
初めはみんな信じていなかった。温暖化で南極の氷が溶けて陸地が減りますよ、程度の話だと思っていた
しばらくすると世界中の権力者と金持ちが宇宙へ行く準備を始めた
これはいかんと慌てた一般人達は大急ぎで災害に備えた
高地に移住したり、建物を増築したり、食料を確保したり、とにかく色々と準備をした
「来年の秋頃に、海面が10000メートルくらい上昇します」という発表があったのは去年の暮れのことだ
- 4 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2013/03/14(木) 00:45:05.01 ID:I2qWsDzm0
-
(#,,゚Д゚) 美府高〜、ファイ!
(#^ω^) オー!
(#,,゚Д゚) ファイ!
(#´∀`) オー!
(#,,゚Д゚) ファイ!
(#´・ω・`) オー!
(#,,゚Д゚) 甲子園行くぞゴルァァァァァァァァ!!
(#´∀`)(#,,゚Д゚)(#^ω^)(#´・ω・`)「「「「うおおおおおおおおおおおお!!!」」」」
( ・∀・) ……
( ・∀・) ふむ
( ・∀・)φ 夏もいよいよ――――っと
『夏もいよいよ本番という七月、少年達は摂氏三十六度の情熱を持て余し大地を蹴る
暫しの喧騒と生暖かな風を置き土産に走り去った彼らにとって――――
- 7 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2013/03/14(木) 00:53:06.84 ID:I2qWsDzm0
-
( ・∀・) 彼らにとって……さて、どう続けたものか
事実上の死刑宣告とも言えるその発表から半年余り、人々の行動はおおよそ3種類に大別できた
あの野球少年たちのように以前と変わらぬ日常を過ごす者(そのような人々が集まって、今年も甲子園大会が開催されるらしい)
生き残りの道を必死で模索する者(残念ながら現在のところ有効な手段は見つかっていないようだ)
そして、某世紀末モヒカンよろしく略奪行為を行う者(彼らの出現により、この国でも一般人の銃器の所持が認められるようになった)
ちなみに僕はその中で言うと1番目
大学に通いつつ趣味の創作活動に精を出す。幸福ではなくてもせめて平穏に、閑やかな最後を迎えよう。そう決めたのだ
( ・∀・) 彼らにとって……彼らにとって……ん?
さて、最後の時もいよいよ数カ月先に迫り夏本番
虫達はここぞとばかりに自己主張を始め、溶けたアスファルトが靴底を汚す
その夏一番の気温を観測した殺人的な猛暑の中、僕は彼女と出会った
lw´‐ _‐ノv はるーくーれーばー、あーよいしょ
( ・∀・) ……あの
lw´‐ _‐ノv たぜーきーこーぜきーさー
( ・∀・) ちょっと
lw´‐ _‐ノv みずーこーでるー……何?
( ・∀・) 何してるんですか?
lw´‐ _‐ノv 見てわからない?田植えだよ
変わった女性だった
- 8 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2013/03/14(木) 01:00:40.39 ID:I2qWsDzm0
-
大きめの麦わら帽子と首に巻かれたタオル
ズボンを膝までまくり上げ稲の苗床を担いだその格好は、紛れも無くこの国の伝統的な田植えスタイルだ
( ・∀・) そうだろうなとは思ってましたけど、やっぱり田植えですか
lw´‐ _‐ノv 分かっているのに聞いたのか、変な人だな君は
(;・∀・) ……それで、どうして田植えなんかしてるんですか?
lw´‐ _‐ノv 本当は5月辺りにするべきことなんだがね、品種改良に時間がかかってしまったのさ
lw´‐ _‐ノv まあ、寒さにも強く作ってあるから大丈夫だろう
( ・∀・) いや、そういうことじゃなくて
lw´‐ _‐ノv ん?
( ・∀・) どうせ秋にはここら一帯海の底。収穫には間に合わない
lw´‐ _‐ノv だいじょぶだいじょぶ、塩害にも強く作ってあるから
( ・∀・) ……そういうことでもないんだけど
lw´‐ _‐ノv それよりさ、人手が足りないんだけど手伝ってくれる?
(;・∀・) えっ!?
- 11 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2013/03/14(木) 01:07:27.20 ID:I2qWsDzm0
-
lw´‐ _‐ノv さっきも言ったけど田植えの作業は普通、5月中にやるべきことなんだ
lw´‐ _‐ノv 今は7月、予定より2ヶ月も遅れている
lw´‐ _‐ノv 本来なら一刻も早く終わらせないといけないところなんだけど、邪魔が入っちゃってね
( ・∀・) ……僕?
lw´‐ _‐ノv うむ、君と話したせいで随分と時間をロスしてしまったよ
( ・∀・) 3分も話してなかったと思うけど
lw´‐ _‐ノv いいじゃないか細かいことは。わざわざ話しかけてくるってことは、相当暇だったんだろう?
( ・∀・) まあ、特に用事もないけどさ
lw´‐ _‐ノv そうと決まれば早速作業だ。ほら、この長靴に履き替えて!
( ・∀・) 用意がいいね
lw´‐ _‐ノv もともと適当な人に難癖つけて手伝わせるつもりだったし
( ・∀・) ……
- 13 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2013/03/14(木) 01:13:57.78 ID:I2qWsDzm0
-
素直シュール、と、彼女は名乗った
見た目から同い年くらいだと思っていたが、どうやら向こうが4つも上らしい
この若さにして植物育種学――品種改良やら何やらに関する学問らしい――の権威で、その分野ではそれなりの有名人なのだという
lw´‐ _‐ノv 米への愛がわたしをここまで押し上げてくれたのだよ
そう言って彼女は誇らしげに胸を突き出した
泥で汚れたジャージを身に着けた彼女。その胸元には「素直クール」という刺繍がある
lw´‐ _‐ノv 妹だよ。「当選」して今は空の彼方さ
lw´‐ _‐ノv 父も母も「当選」だ。残ったのは私だけ
( ・∀・) ふうん、植物なんとか学の権威なんでしょ?それでも落選したの?
lw´‐ _‐ノv いいや、私も当選したよ。ここに残っているのは私の意志だ
lw´‐ _‐ノv 妹も両親も、必死で引き止めようとしていたがね
( ・∀・) あれま、もったいない
lw´‐ _‐ノv ……理由を聞いたりしないのかな?
( ・∀・) 聞いてどうなるってわけでもないしね
lw´‐ _‐ノv ああ、さいですか
- 17 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2013/03/14(木) 01:21:33.20 ID:I2qWsDzm0
-
今年の4月から5月にかけて、「方舟」と名付けられた数十の宇宙ステーションが地球を後にした
その乗員は主に権力者、富裕者、技術者、その他様々な分野の権威
優秀な遺伝子を持つ彼らは人類の存続のために宇宙へと旅立ち、千年計画で火星を植民地化するのだという
そんなことが実現可能かは分からないが、いずれにせよ僕の人生には全く関係のないことだった
僕はどこにでもいるようなた只の学生。どんな奇跡が起こったとしても、「選ばれし民」にはなれないのだ
lw´‐ _‐ノv しかし、男手が入ると違うものだな
lw´‐ _‐ノv まさかこんなに早く終わるとは思っていなかった。礼を言うよ
( ・∀・) うん、どういたしまして
lw´‐ _‐ノv 明日は朝9時集合だから、遅れないようにね
( ・∀・) はーい……
( ・∀・)
( ・∀・)
( ・∀・) 明日もやるの?
lw´‐ _‐ノv 一日で米ができると思う?怒るよ?
( ・∀・) ああ、うん。すいませんでした
lw´‐ _‐ノv 明日は向こう側の田んぼの田植えするから、よろしく
( ・∀・) ……はーい
- 20 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2013/03/14(木) 01:30:02.49 ID:I2qWsDzm0
-
翌朝、言われた通りに田圃に向かうと、既に作業を始めている彼女の姿があった
lw´‐ _‐ノv 本当に来るとは……君はもしかしたら馬鹿なのかもしれないね
「……それとも、何か下心でもあるのかな?」
そう言って彼女は笑った。甚だ心外である
誓って言うが、僕は他人に命令されたら何でも従ってしまうような馬鹿ではない
ましてや彼女の想像しているであろう不埒な下心を抱えているだなんてことは絶対にありえない
僕が今日ここまで足を運んだ理由、それは――――
lw´‐ _‐ノv ……取材? 何の?
( ・∀・) 趣味で書いてる小説の
lw´‐ _‐ノv 小説ねぇ、なかなかいい趣味をお持ちじゃないの
( ・∀・) それはどうも
lw´‐ _‐ノv どんなのを書いているのか、読ませてもらってもいいかな?
(;・∀・) それはちょっと……恥ずかしいかな
lw´‐ _‐ノv 恥ずかしい? 小説というのは誰かに読まれるために在るんだ。何を恥ずかしがる必要がある
lw´*‐ _‐ノv もしかして、女性には言えないような内容の小説だったりするのかな? その取材ということはやはり……
( ・∀・)ノ[ ミ|彡] どうぞ
lw´‐ _‐ノv わかればよろしい
- 22 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2013/03/14(木) 01:38:25.29 ID:I2qWsDzm0
-
lw´‐ _‐ノv なになに? 「夏もいよいよ本番という( ・∀・) 音読やめて
( つ[ ミ|彡]
lw´‐ _‐ノv ……
( つ[ ミ|彡]
( ・∀・) 僕が書いているのは終わりを直近に控えた人々の記録
lw´‐ _‐ノv 記録ねぇ、そんなもん書いてどうするの?
( つ[ ミ|彡]
( ・∀・) 未来に残すんだよ
lw´‐ _‐ノv 未来に?
( つ[ ミ|彡]
( ・∀・) 何千年後になるかは分からないけど、宇宙へ飛び立った人類も、きっと地球に戻ってくる
( ・∀・) やがて彼らは僕の残した記録を発見する。そして知るんだ
lw´‐ _‐ノv 何を?
( つ[ ミ|彡]
( ・∀・) 僕や君がこの時間に、確かに生きていたということをさ!
lw´‐ _‐ノv ……ああ、そう
( つ[]パタン
- 30 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2013/03/14(木) 01:46:28.50 ID:I2qWsDzm0
-
lw´‐ _‐ノv しかし、アレだね
( ・∀・) なに?
lw´‐ _‐ノv 言葉もクサけりゃ、文章の方も中々にクサい
lw´‐ _‐ノv 「摂氏三十六度の情熱」って何?なんとなく良い感じの言葉浮かんだから使ってみましたって感じしかしないよ
lw´‐ _‐ノv 全体的に気取り過ぎだし、読む側のことちゃんと考えてる?
lw´‐ _‐ノv しかもこんだけ気取った文章書いてるくせにところどころにギャグ挟む意味もわからないね
lw´‐ _‐ノv 「方舟」には世界中の文豪も乗り込んでるんだよ?
lw´‐ _‐ノv こんな文章を彼らの子孫に読ませて恥ずかしいと思わn( ・∀・) それ以上いけない
lw´‐ _‐ノv
( ・∀・)
lw´‐ _‐ノv ……まあ、私は好きだけどね。そういうの
( ・∀・) 多分フォローになってないよそれ
- 37 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2013/03/14(木) 01:54:43.37 ID:I2qWsDzm0
-
lw´‐ _‐ノv さて、またもや時間を無駄に使ってしまったね。作業に移ろうか
( ・∀・) あ、流すのね
lw´‐ _‐ノv 今日も田植えをする……けど、その前にやることがある
( ・∀・) やること?
lw´‐ _‐ノv 車の運転はできるかな?
( ・∀・) できるけど……
lw´‐ _‐ノv それは都合がいい。この地図の場所まで行って、藁を取ってきてほしいんだ
( ・∀・) それはいいけど、藁? 何に使うの?
lw´‐ _‐ノv 肥料みたいなものだよ。さ、行ってきて
lw´‐ _‐ノv 迷わなければ1時間ちょっとで帰ってこれるはずだよ
------------- 、
/  ̄ ̄ ̄.// ̄ ̄|| |
/ //. || | /~ ̄ ̄ヽ
[/_________. //[ ] || | (〒ソwVw″
.||_ ___|_| ̄ ̄ ∪.|.| |__________________ |w´-_-ノv <車はこいつを使ってくれい
.lO|--- |O゜.|___ |.|_|ニニニニニニl.| |/_>H」|
|_∈口∋ ̄_l______l⌒ l.|_____| l⌒l_|| (ソ/_| | |>
 ̄ ̄`--' ̄ ̄ `ー' ̄ ̄`--' `ー' WVしJv
- 45 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2013/03/14(木) 02:03:28.16 ID:I2qWsDzm0
-
ブロロロロロロロ......
( ・∀・) マニュアル車なんて、教習所依頼だなー
黒皮の座席が太陽光を吸収し、車内は熱気で満ちていた
ハンドルも熱い、窓枠も熱い、もうなんか全部熱い。エアコンも効かないし
どうでもいいけど熱くなった自転車のサドルに座ると痔が治りそうな感じがするよね、どうでもいいけど
( ・∀・) ラジオでも聞こうかな
( ・∀・) ええと、スイッチは……これかな? ピッ
それらしいボタンを押してみると、埃の詰まったスピーカーからノイズ混じりに男の声が聞こえてきた
どうやら当たりだったらしい。まあ、こういう機械はは大体感覚的に操作できるようになっているものなので当然といえば当然か
『ザザッ……おはようございます……ザッ……朝のニュースです』
( ・∀・) おっ
『杉浦ロマネスクを首領とするテロ組織「ローシタ」の活動が活発化し、警察は――』
( ・∀・) ……テロ組織ねぇ
- 51 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2013/03/14(木) 02:10:22.33 ID:I2qWsDzm0
-
世界の終焉を目の当たりにし、一部の――数にして2割程度の――人類は暴徒化した
その多くは中流以下の階級に属する者で、これまでの鬱憤を晴らすためだろうか、上流階級の人間を主な標的として襲撃を始めた
これが半年前の出来事
一歩及ばず「落選」した小金持ち達はその頃、船などによる生き残りを図り準備を進めていた
最早意味を為さなくなり始めていた紙幣をどうにかこうにか捏ね繰り回して、小金持ち達は船と食料を買い漁る
彼らもきっと、生き残るために必死だったのだろう。まあ、残念ながら――
( ・∀・) ――半年後の現在、地球上に船は存在しない
( ・∀・) 客船も漁船も貨物船も、ぜーんぶ壊されちゃったからね
数の暴力には勝てなかったよ、どんまい
- 54 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2013/03/14(木) 02:19:23.80 ID:I2qWsDzm0
-
『ローシタは現在、芝里合市を中心に破壊活動を行なっており――』
( ・∀・) 芝里合……結構近いな
『政府は付近住民に警戒を呼びかけています』
( ・∀・) ふーん、気をつけないとね……っと……
車を走らせて20分ほど、大きな庭のある家に着いた
地図を確認してみる。どうやらここが彼女の言っていた場所らしい
車を降りて庭に入ると、庭の一角、綺麗に整備された花壇の横に、山のように積まれた藁があった
( ・∀・) これは……骨が折れるな……
藁の山を見上げ暫し途方に暮れるが、突っ立っていても始まらない
覚悟を決めて両腕を突っ込み、腕に収まるだけの藁を思い切り持ち上げた
次の瞬間、頭頂部に衝撃
僕は意識を手放した
- 58 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2013/03/14(木) 02:28:08.81 ID:I2qWsDzm0
-
目が覚めると、真っ白な天井があった
lw´‐ _‐ノv 起きた?
( ・∀・) ……ここは?
lw´‐ _‐ノv 私の家。君が倒れてたのはここの庭だね
lw´‐ _‐ノv 中々来ないから様子を見に来たら驚いたよ。藁を抱きしめたまま倒れてるんだもの
lw´‐ _‐ノv 何があったの?
(;-∀・) うーん、藁を持ち上げたところまでは覚えてるんだけど
( ・∀・) 持ち上げた瞬間、頭にがつーんと……
lw´;‐ _‐ノv ……なるほど、わかった
( ・∀・) へ?
lw´‐ _‐ノv ちょっとまってて
( ・∀・) あ、うん
そう言って彼女は何処かに行ってしまった
いったい何が分かったというのだろうか
- 59 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2013/03/14(木) 02:34:56.75 ID:I2qWsDzm0
-
数分後、彼女は両手に大きな藁束を引っさげて戻ってきた
lw´‐ _‐ノv 持って
( ・∀・) え?
lw´‐ _‐ノv いいから、持って
( ・∀・) あ、うん
彼女が何を言いたいのかは分からないけれど、逆らう理由もない
差し出された藁束を両手で掴み、受けと――
(;・∀・) うわっ、何これ!? 超軽い!
lw´‐ _‐ノv でしょ?
(;・∀・) いくら藁って言ったってこれは普通じゃないよ! なんでこんなに軽いの?
lw´‐ _‐ノv そういうふうに作ったからね、中身がスカスカだから綿のように軽い
lw´‐ _‐ノv これを普通の藁のつもりで持ち上げようとしたらそれはもう大変よ
( ・∀・) ……あー
lw´‐ _‐ノv 藁式セルフバックドロップとでも名付けようか
……あー
- 63 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2013/03/14(木) 02:41:27.09 ID:I2qWsDzm0
-
lw´‐ _‐ノv 念のため、しばらく安静にしているといい
lw´‐ _‐ノv 今日はもう遅いし泊まっていきたまえ。幸い、部屋はたくさんある
( ・∀・) もう遅いって……今何時?
lw´‐ _‐ノv もうすぐテレホタイム
(;・∀・) テレ……半日以上寝てたの?
lw´‐ _‐ノv そういうことになるね
( ・∀・) それじゃあ、田圃の方は……
lw´‐ _‐ノv ……君は本当に変わっているね
( ・∀・) 変わってる? そうかな?
lw´‐ _‐ノv 怪我の原因を作った私を責めるでもなく、自分の怪我よりも田圃の心配をするだなんてね
lw´‐ _‐ノv 今の御時世じゃ考えられないようなお人好しだよ
- 66 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2013/03/14(木) 02:50:15.13 ID:I2qWsDzm0
-
( ・∀・) 買いかぶり過ぎだよ
lw´‐ _‐ノv ……ふん、まあいい。明日も早いんだ、私は寝る
lw´‐ _‐ノv 私は向かいの部屋にいるから、何かあったら声をかけてくれ
lw´‐ _‐ノv それじゃあ、おやすみ
( ・∀・) おやすみ
( ・∀・)
( ・∀・)
( -∀-)
( -∀-) Zzz...
- 67 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2013/03/14(木) 02:58:30.82 ID:I2qWsDzm0
-
翌朝、物音に目を覚ます
ベッドから起きて部屋を出ると、作業服に身を包んだ彼女の姿があった
lw´‐ _‐ノv おっと、起こしちゃったかな? まだ4時前だからもう少し寝ててもいいんだよ?
( ・∀・) 気にしないで、ぐっすり眠れたよ
lw´‐ _‐ノv それは良かった。調子はどうだい?
( ・∀・) 完全復活ってところだね。昨日迷惑かけちゃった分、しっかり働かせてもらうよ
lw´‐ _‐ノv ……じゃあ、お言葉に甘えようかな
lw´‐ _‐ノv ええと、今日はまず昨日できなかった藁運びと田植え、それと色々運ばなきゃいけないものがあるよ
( ・∀・) じゃあ最初は藁運びだね、昨日みたいなミスはしないよ
lw´‐ _‐ノv うむ、早速作業に移ろうか
彼女と二人がかりで藁を軽トラの荷台に積み込む
僕の身長よりも大きかった藁の山も、ものの10分で積み終えてしまった
藁を軽く作ったのは、女手でも簡単に運べるようにするためらしい
- 69 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2013/03/14(木) 03:11:05.98 ID:I2qWsDzm0
-
車に乗って20分、昨日の田圃に到着した
朝の4時ということもあってか、道中歩行者や車とすれ違うことはなかった
( ・∀・) あの発表があってから、外を出歩く人も随分減ったね
lw´‐ _‐ノv 自殺者も随分出たし、何より暴動が怖いからだろうね
lw´‐ _‐ノv さて、次の作業に取り掛かろう。この藁を田圃に撒くんだ
lw´‐ _‐ノv できるだけ均等にね。ムラが出来ると良い米が作れない
( ・∀・) はーい
彼女に言われたとおりに、できるだけ均等に藁を撒く
「良い米が作れない」という言葉を素直に受け入れてしまう辺り、彼女に毒されてきているんだろうなと思う
この米が収穫出来る頃には間違いなく、僕らは海の底だというのに
- 70 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2013/03/14(木) 03:17:57.55 ID:I2qWsDzm0
-
藁を撒き終わり田植えも済んで、その頃には太陽は随分高いところまで上っていた
休憩を兼ねた昼食。彼女が作ったという弁当を二人で食べる
( ・∀・) これは?
lw´‐ _‐ノv おにぎり
( ・∀・) これは?
lw´‐ _‐ノv おかゆ
( ・∀・) これは
lw´‐ _‐ノv 餅
( ・∀・) これは?
lw´‐ _‐ノv リゾット
( ・∀・) これは?
lw´‐ _‐ノv 白米
( ・∀・) レパートリーすごいですね
lw´‐ _‐ノv それほどでもない
- 72 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2013/03/14(木) 03:28:18.51 ID:I2qWsDzm0
-
lw´‐ _‐ノv この米はね、品種改良に使った余りなんだ
( ・∀・) 余り?
lw´‐ _‐ノv 余りというと語弊があるかな? 品種改良の際に出来た失敗作だよ
( ・∀・) ピクッ
lw´‐ _‐ノv 塩害や寒害に強い品種を作ろうと改良を重ねたが、毎回うまくいくとは限らない
lw´‐ _‐ノv この子達は私が望むほどの耐性を持たなかった。そういうことさ
( ・∀・) 失敗作、ね……
( ・∀・) ははは、まるで僕達みたいじゃないか
lw´‐ _‐ノv ……
( ・∀・) 強い者、必要とされる者だけが生き残る
( ・∀・) 弱くて、必要とされていない。僕のような奴は消えていく運命なんだ
( ・∀・) 悲しいけど、そういうものだよね
lw´‐ _‐ノv ……
- 77 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2013/03/14(木) 03:44:58.26 ID:I2qWsDzm0
-
lw´‐ _‐ノv 私はね、世界には君のような人間が必要だと思うんだ
( ・∀・) 僕が? まさかwww
lw´‐ _‐ノv 茶化さないで聞いてほしい
彼女の言葉を聞いて、僕は彼女が僕を慰めるために冗談を言っているのだと思った
しかし、おどけてみせた僕を咎める彼女の目にはなんとも言えない真剣さを感じた
lw´‐ _‐ノv 私の周りに居た人間はね、あの発表以来みんな”閉じて”しまったんだ
( ・∀・) ……閉じて?
lw´‐ _‐ノv そうさ。彼らは皆、今持っているものを最後まで保ち続けることしか考えていなかった
lw´‐ _‐ノv 資産も、地位も、命も、人間関係も、持っているものは何一つ失わないようにとね
lw´‐ _‐ノv そこには何の発展もない、閉じた世界、閉じた人間だ
lw´‐ _‐ノv ……しかし、君は違った
lw´‐ _‐ノv 君は一昨日、私という新たな関係を作り出した
lw´‐ _‐ノv この世界の中で、君だけは”開いて”いたんだ
- 79 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2013/03/14(木) 03:55:07.62 ID:I2qWsDzm0
-
( ・∀・) ……
lw´‐ _‐ノv わからないかな? わからなければ、まあ、それはそれでいいさ
lw´‐ _‐ノv だけど覚えていてほしい
lw´‐ _‐ノv 君は弱い人間ではないし、誰からも必要とされていないなんてことはない
lw´‐ _‐ノv 現に今、私が君を必要としているじゃないか
( ・∀・) ……僕は頭が良くないからね、よくわからないよ
lw´‐ _‐ノv そうか、それは残念だ
( ・∀・) わからないけれど、ありがとう。嬉しいよ
lw´‐ _‐ノv ……そうか
lw´‐ _‐ノv それは、嬉しいよ
- 82 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2013/03/14(木) 04:07:03.72 ID:I2qWsDzm0
-
lw´‐ _‐ノv さて、充分休んだならそろそろ作業に戻ろうか
lw´‐ _‐ノv 午後の作業はちょっと遠出することになるな
lw´‐ _‐ノv ……ところで、車の免許は普通免許?
( ・∀・) そうだけど?
lw´‐ _‐ノv そうか、じゃあ私が運転しよう
/~ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ / ̄ ̄ ̄.ヽ..「 .||
γ-1{二二二口口口二二二二i|=l ー ― - ヽ...||
ll |r/ /::::::i::::i:_:/:::::::::::_:ヽ、「 ̄ ̄ ̄!| ̄l ||
「|. | || :::: ::: ::::::::::::::::::::(_ t.||「 l. ̄ ̄l||::::l| ||
L! l :::::::::::::::::::::::::::::::: ||'|!_!| .l||....l| ||.---------------------.--------------------.----------------------┐
'l| il ゞ⌒ヽ ヽ ::::::::::::::::::::::::::::::::〃{_) .,j|.==| || |-| ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄.|-| ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄|-| ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄..| |
ヽ rゝ∠ニニ_∠ニニ__∠ニニ_:::::|Lヽ,__.,/. ...| ...i..|| |. |.. .. . |. | . . . . |. | . ...| |
|―‘――‘--=--‘―‐――┼ ||: ::'''"|~|..,__|..|| |. |.. .. . |. | . . . . |. | . ...| |
|ヽi____ISUZU__giga....iノ.|l .|...|/ ..l..|| |_,i__,.-._,-._,-._,.-._,-._,-_,.-._,-._,.-.__.,.-._,-._,-._,.-._,.-._,-....| |
| l  ̄..| .|'--''''~~ l ̄|..L________________________________ .|_|
| | ヾ=======/ . |. |==_,. -―i,, {ニ}_[三] \|: |:|┐─i. \|: |:|--i ../ _______ヽ. |: |。| |:|ヽ. [_|_[。| /~ ̄ ̄ヽ
|l二二ヽ=== ===/二二l_|---//...,-、l:||ilエ二二二二二二二二二二二二エ/ ./:-,-、 .,-.-,,-、ヽ\.ilエ二二二二二二エi||〒(ソwvww″
|=====----.--.--.-.---=====| |二。/|../.,、!|. .ilエ二二二二二二二二二二二二エ . /:::/ .,.ヽ:::::/. .,..ヽ::.| |ilエ二二二二二二エil|__ lw´‐ _‐ノv
|.==. ヽ二[l・・20l] 二/ .== | |__|..|.:| i*l |.. ilエ二二二二二二二二二二二二エi__/:::::l..,i*l .|::::| i*|. | .|_..|ilエニ二二二二二ニエil_ ] |/_ゝh_||
| ̄~..____.. ~ ̄| |====|:| v i .丶─└───-┘─└───┘:::::l.l.:::::l v ..il:::l .v .,i (7/_| ||ゞ
 ̄ ̄ヽ:::.ゝ_ノ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ヽ..:::.ゝ_ノ ヽ:::::.ゝヽ:.ゝ__ノ::::::ゝ_._ノ wvし'jv
lw´‐ _‐ノv 乗り給え
( ・∀・) ああ、うん
- 84 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2013/03/14(木) 04:21:14.99 ID:I2qWsDzm0
-
ブロロロロロロロ......
( ・∀・) 今度は何を運ぶの? なんとなく相当な重量だってのは理解できたけど
lw´‐ _‐ノv でっかい石が必要なんだ。沢山ね
( ・∀・) 石? そんなの何に使うの?
lw´‐ _‐ノv ……なんか田圃に置いとくと猪とか来なくなるらしいよ?
( ・∀・) ……ほんとに?
lw´‐ _‐ノv 昔読んだ本に書いてあったのさ。猪の本能的に入りにくくなるんだとか
( ・∀・) へぇ
lw´‐ _‐ノv まあ難しい話はいいじゃないの。聞いて楽しいものでもないでしょ?
( ・∀・) そうかな、結構面白かったけど
lw´‐ _‐ノv せっかく乙女と二人きりなんだからさ、もっと話題あるでしょ?
( ・∀・) 話題っていってもねぇ
lw´‐ _‐ノv 例えばこう、卑猥な話を振って反応を楽しむとかさ
( ・∀・) そんな発想する人に卑猥な話振っても……
lw´‐ _‐ノv せやな
- 88 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2013/03/14(木) 04:28:12.95 ID:I2qWsDzm0
-
lw´‐ _‐ノv ……ところで、聞きたいことがあるんだけど
( ・∀・) なに?
lw´‐ _‐ノv 君は未来に小説を残すつもりなんだよね
( ・∀・) そうだけど?
lw´‐ _‐ノv ええとさ、その……紙で?
( ・∀・) え?
lw´‐ _‐ノv 紙で残すの?
( ・∀・) なんで?
lw´‐ _‐ノv いや、紙って……濡れたら終わりじゃん?
lw´‐ _‐ノv 何か紙以外の方法考えてるのかと思ってね
( ・∀・)
( ・∀・)
(((( ・∀・))))
lw´‐ _‐ノv oh......
- 91 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2013/03/14(木) 04:37:07.15 ID:I2qWsDzm0
-
(ill・∀・) もう駄目だ……お終いだぁ……
lw´‐ _‐ノv あーあ、やっぱり考えてなかったか
lw´‐ _‐ノv 念のため持ってきて良かったよ
(ill・∀・) え?
lw´‐ _‐ノv 今私達が向かってるのは支足場山
lw´‐ _‐ノv 荷台にチェーンソーがあるから、適当に木でも切って来な?
(ill・∀・) 木? 石を取りに行くんじゃないの?
lw´‐ _‐ノv 君のためだよ
lw´‐ _‐ノv 木を板状にカットして、鏝か何かで文字を焼き付けるんだ
lw´‐ _‐ノv それなら時間はかかるけど、紙なんかよりずっと長持ちする。水にも強い
lw´‐ _‐ノv 石は私が運んでおくから、君は自分の好きなだけ木を切ってくればいい
(ill・∀・)
(*・∀・)+
lw´‐ _‐ノv 復活早いね