※『百物語のようです2015』参加作品です 百物語のようです2015 まとめ - ⊂ブンツンドー⊃
- 247 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2015/08/08(土) 23:22:03 ID:tdqDYF4E0
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( ω )「うーん。
なやむおー、なやむおー」
暗い部屋にひときわ脳天気な声が響いた。
それは怖い話をしているのを忘れそうなくらい、いつも通りなブーンの声だった。
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- 248 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2015/08/08(土) 23:23:00 ID:tdqDYF4E0
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百物語。
怪談を一つ語り、そのたびに蝋燭を一本消す。
それを百話になるまで繰り返す、古式ゆかしい怪談の一形式。
百話語り終えると恐ろしいものが現れる――とかなんとかいうそれを本格的にはじめてもうどれくらいたっただろうか。
会場に使わせてもらっている、ミルナの爺さんの家は暗い。
明かりは三間続きの和室の、一番奥の部屋にある蝋燭だけ。
月のない新月の夜だから余計に闇が濃い。
隣にいる相手の姿も見えないくらいの暗闇は、それだけで恐ろしいものだ。
そんな中で怪談をするとなれば、体がすくんでも仕方がないだろう。
( ω )「困っちゃうおー」
――この個性丸出しの声が、雰囲気をぶち壊してさえなければ。
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- 249 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2015/08/08(土) 23:25:01 ID:tdqDYF4E0
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暗くて姿が見えなくても何の問題もないレベルで、誰がしゃべっているのかまるわかりだ。
しかも、恐怖の欠片もない明るさときた。
('A`)「……」
「お前、怖い話してんの忘れたのかよ」と、思わず口に出しそうになる。
しかも、でけーんだよお前の声。何で急にでかい声になった。
( ゚д゚ )「どうしたんだ、急に?」
川 )「まぁ、落ち着けミルナ。
これはお手本のように見事な、かまってちゃんアピールだ」
(;゚д゚)「かまって……ちゃん……?」
(; )「クーってさ、言いづらいこと、わりとはっきり言うよね。
……ミルナも、本気で相手しなくていいから」
('A`)「やさしい女子なんていなかったんだ」
クーの言い様に、軽くノッてみる。
軽い笑い声が上がり、空気が緩む。
たとえるならば、百物語? なにそれおいしいのといった感じ。
シリアスに怪談をしていたはずなのに、なんかもう空気からしてグダグダだ。
- 250 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2015/08/08(土) 23:26:58 ID:tdqDYF4E0
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気づけば、ちょっと休憩にしようぜムードが漂っていた。
蛇、おまじない、廃村……どれだけ話したか忘れたが、もう長いこと怪談ばかり聞いている。
百話まではかなりかかるだろうし、仕方ないのかもしれない。
('A`)(そういやぁ、どのくらい話してるんだっけ?)
一息入れようとペットボトルに口をつけて、顔をしかめる。
……甘い。甘すぎる。
しかも、ぬるい。
暗くてよく味もわからないのに、強烈な甘さだけは伝わってくる。
口の中がベタベタして、気持ち悪い。
('A`)(……水、……どこだ?)
買い込んだ別の飲み物があったはず――そう思って、俺は手を動かした。
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- 251 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2015/08/08(土) 23:27:59 ID:tdqDYF4E0
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ξ )ξ「――で、ブーンは何に悩んでるのよ」
( ω )「お?」
ξ )ξ「いいからさっさと話しなさいよね。先は長いんだから」
( * ω )「うれしいおー。かまってちゃんとか、みんなひどすぎなんだおー」
周りでは話が進んでいるみたいだが、肝心の水が見つからない。
おかしいな。たしかに買ったのに。
どこ行ったんだ……もっと、違うところに置いたか?
('A`)(明かりでも出すか)
川 )「聞いたか、ドクオ。ラブコメの波動を感じるぞ」
(;'A`)「うわっ!」
肩を掴まれて、声を上げた。
急にどうした? 声からすると……クー、か?
飲み物探しに気を取られて完全に油断していた。
- 252 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2015/08/08(土) 23:28:57 ID:tdqDYF4E0
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( )「別にアンタのことなんて気にしてないんだからね! ――ってやつなんだからな」
(;'A`)「は? どうした急に」
( )「よかったね。やさしい女子はここにいたよ」
ヤバイ。聞いていなかった。
これはどういう流れだ? ラブコメ? やさしい女子?
そんな話なんてした――いや、したか。
('A`)「……やさしい女子なんていたか?」
( )「あ、馬鹿!」
ξ:::::::::)ξ「……静かにって言ったわよね」
('A`ii)「――っ」
暗闇の中に、とてつもなく低い声が響いた。
はっきりいって怖い。恐怖とは別の意味で怖い。
こんな声で話す女子なんていたか?
いまここにいる女子と言ったら、クーとツンのはず……だが。
- 253 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2015/08/08(土) 23:31:41 ID:tdqDYF4E0
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……いや、ツンたちと一緒に他の女子が来たんだと思っておこう。
精神衛生上そっちのほうがいい。
川 )「いいじゃないか。ほら、ブーンが待ってるぞ」
ξ; )ξ「な、なんでそこでブーンが出てくるのよっ!」
('A`;)(ツンだと!?)
あの人を殺せそうな声が、ツンだと……。
……現実は非情だ。
かわいい女子なんて二次元にしかいないのである。
川 )「ツンは本当にかわいいなぁ。私が男なら嫁にしたというのに」
( ω )「え? ツン結婚するのかお?」
('A`;)「お前は、ちょっと黙ってろ!」
( ω )「ひどいおー。せっかく何を話そうか悩んでたのにー」
ξ; )ξ「はぁ!? アンタそんなことで悩んでたの!?」
( * ω )「そうですおー」
- 254 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2015/08/08(土) 23:33:51 ID:tdqDYF4E0
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気づけばなんかもう、めちゃくちゃだ。
怖い話どころか、このまま飲み会に突入してもおかしくない流れだ。
それはそれで楽しそうだが、人の家を会場にしといてそれはダメな気がする。
ミルナの爺さん婆さんに会った時に、気まずすぎるだろ。
(; )「みんな落ち着こうよ……」
( ゚д゚ )「いいじゃないか、楽しそうで」
( )「続きマダー」
ダメだ。堅物なミルナまでもが、場の空気に染まっている。
このままでは本格的に解散の流れだ。それはイカン。
そうだ。こういう時こそ怪談だ。無理矢理にでも誰かに話させてしまうに限る。
- 255 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2015/08/08(土) 23:34:49 ID:tdqDYF4E0
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('A`)「おい、ブーン。そろそろ話せ」
( ω )「お? もう話すのかお?」
ブーンのいるらしき方向に顔を向けると、そこに白い顔が浮かび上がる。
人畜無害を絵に描いたような、丸っこい顔。
それが暗闇の中でにこにこと笑顔を浮かべ、口を開いた。
( ^ω^)「そうだおねー。ええと……、あ。
この前あったというか、気づいた話なんだけど……」
こうして、今夜最大の適当なムードの中。
ブーンの怖いであろう話が始まった。……多分。
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- 256 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2015/08/08(土) 23:35:29 ID:tdqDYF4E0
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('A`)百物語、のようです
奇妙な偶然
.,、
(i,)
|_|
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- 257 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2015/08/08(土) 23:38:09 ID:tdqDYF4E0
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「食べ物は大事にしなさい」って、カーチャンに言われたことないかお?
うちはしょっちゅうなんだお。
だから、僕は出されたものは全部おいしく食べて、お残しはしないんだお。
好き嫌いだってしないし、お魚の骨や、米粒だってキレイに食べるお!
『それはお前が、食い意地張ってるだけじゃねーか』って、そんなこと言うのはドクオかお?
そういうドクオは牛乳飲まないから、背が伸びないんだお。
ちょっとは僕を見習って――、
……
ドクオがひどいおー。
いくら僕だって、そこまで
……いいお、いいお。どうせ僕はお腹ぽよぽよだお〜。
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- 258 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2015/08/08(土) 23:40:28 ID:tdqDYF4E0
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ξ )ξ「ドクオ」
(;'A`)「すいませんでした!!!」
ξ )ξ「謝るなら、もうちょっと静かにしてよね」
低い声で言われて、俺は慌てて謝った。
暗くてよく見えないが、ツンのやつ絶対に怒っている。
しかたないじゃねぇか。ブーンのやつ、どう考えたってツッコミ待ちだったろあれ。
「相撲取り二人分くらいあるだろ」とは言ったが、そこまで凹むようなもんじゃねーし。
ブーンのやつだって、いつもみたいにニコニコ笑ってんじゃねーか。
( ゚д゚ )「楽しそうなのはいいが、話の続きはいいのか?」
(; )「はは、なかなか進まないよね。楽しいのはいいんだけど」
( )「ドクオがそんなやつだっていうのは、わかってたけどね」
- 259 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2015/08/08(土) 23:43:03 ID:tdqDYF4E0
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川 )「ツンもそのあたりにしておいてやれ。
これじゃあ、愛しのブーンも話ができないだろ」
ξ# )ξ「く、クーっ!!!」
次々と声が上がる。
ブーンの話は完全に止まり、みんな口々に話し出している。
まさに、どうでもいい空気ふたたび。ここまで話が止まると、脱線させた俺が完全に悪いような気がしてくる。
('A`)「スマン。俺が悪かった。
ブーン、続き話してくれるか?」
女子二人はまだ楽しそうだが、少し反省しよう。
「またラブコメかよ」とか、「今、リア充いたよな」とか言ったら、絶対にもう百物語に戻れない気がする。
……大人しく聞いてられるだろうか、俺。
( ω )「んー。いいのかお?」
( ゚д゚ )「そうだな。ドクオもああ言っているし、頼む」
(* ω )「じゃあ、話すお!」
……恐怖とは違う不安を抱えながら、俺は小さく頷いた。
- 260 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2015/08/08(土) 23:45:44 ID:tdqDYF4E0
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何を言いたかったか、っていうと。
僕は、食べ物をとても大切にするってことなんだお。
だから、まだ食べれるものが捨ててあったりすると「モッタイナイなぁ」って、思っちゃうんだお。
――で、僕がしたかった話っていうのは飲み物の話なんだお。
プラスチックのカップってあるおね?
強く握るとグシャってなるようなやつだお。
ほら、透明の……コンビニとか、オサレなカフェとかでコーヒー入れたりしてるやつ。
紙コップじゃなくて、ほら透明なやつだお。
アイスコーヒーとかアイスティー在中って感じのアレだお。
ちょっとお高い感じがして、ストローも白じゃなくて真っ黒なやつ。
……あれ? 緑だったかお?
とにかくそんなやつだお。
……え。そんなに高くない?
ジュースと同じか、安いくらいなのかお。
へー。科学は進んでるんだおねー。
ああ、話だおね。
僕がこれから話すのは、そのプラカップ?――ってやつの話なんだお。
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- 261 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2015/08/08(土) 23:50:12 ID:tdqDYF4E0
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んー。いつだったかなぁ。
とにかくちょっと前に、僕はそのプラカップを見つけたんだお。
( ^ω^)「ん?」
ただのカップじゃなくって、まだ中身が残ってるやつ。
……半分くらい残ってたかおね。
透明だから中身が見えるんだけど。茶色い、お茶かだいぶ薄まったコーヒーが入ってたお。
ストローは黒だったと思う。
それが駐車場の端っこにポツンって置いてあるんだお。
ゴミ箱に入れるんじゃなくって、いかにも飲みかけですよって感じで。
_,
(; ^ω^)「もったいないことするやつもいたもんだお」
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- 262 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2015/08/08(土) 23:52:04 ID:tdqDYF4E0
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ああいうカップに入ってるやつって、オサレ〜って感じがして僕は買ったことないんだお。
どっちかというと僕、コーヒーよりも炭酸派だからNE。
もちろんオレンジとかリンゴのジュースも好きだお。甘いやつがいいおね。
……あ、言うお。
続きだおね、わかってるお。
せっかくのオサレ飲み物を残すだなんてひどいヤツがいるんだ――って、その時の僕は思ったんだお。
…
……
場所?
ええと、家から駅に行く途中だったと思うお。
たまに行くマンガ喫茶の近くだったかおね……。
一番おっきな道路を渡る手前くらいだったと思うお。
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- 263 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2015/08/08(土) 23:54:17 ID:tdqDYF4E0
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それから次は……えっと?
駐車場もったいないやつ事件からちょっとしてからだったと思うお。
事件じゃない?
食べ物は大切に派の僕からしたら、事件だったんだお。
食べ物は大切に。ゴミはゴミ箱にって、カーチャンいつも言ってるお。
( ^ω^)「あれ?」
僕が、大学まで自転車なのは知ってるおね?
……え? どうでもいい?
そんなこと言うのはドクオかお?
ふふーん、正解だお!
ドクオの言うとおり、自転車自体にそんなに意味はないんだお。
単に自転車に乗ってる時に気づいたってだけだから。
( ^ω^)「これは……」
大学のそばに、喫茶『ロマン』ってあるおね?
――あったんだお! あそこのモンブランがめっちゃ美味いんだお。
まさに栗っ、マロン! 店長は感動的なまでに栗のことわかってるお。
下手なケーキ屋さんより美味いから、今度いっしょに行くお。
- 264 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2015/08/08(土) 23:56:17 ID:tdqDYF4E0
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( ^ω^)「……ひどいやつもいるもんだお」
そこの駐車場の、ブロックのところにやつがいたんだお。
例のにっくきプラスチックのカップ!
それが堂々と放置してあるんだお。
しかも、中身が残ってるんだお。
信じられるかお? コーヒーが勝負の喫茶店に、お茶かコーヒーを放置だお!
しかもヨソの店のだお。ロマンはお持ち帰りセットがないんだから、確定だお。
(#^ω^)「こんなことをする馬鹿はどこのどいつだお!」
その時の僕はプンプンだったんだお。
お? プンプンはキモイ? ……そいつはすまんこ。
あ、そのお茶か、コーヒー?
近くのコンビニのゴミ箱にぶち込んであげましたお。
僕はこう見えても、『ロマン』を愛するロマニストなんだお!
えっへん。
あそこクリームソーダも美味しいからみんなで飲むお!
コーヒー? ごめん、飲んだことないお。
でも、コーヒーが自慢って、店長が言ってたからきっとおいしいお。
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- 265 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2015/08/08(土) 23:58:32 ID:tdqDYF4E0
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(* ω )「オレンジジュースや、レモンスカッシュも美味しいんだお。
店長がちゃんと果物をしぼって作ってるんだってお!」
川 )「ふむ。行ってみるか」
ブーンの話を聞き流しながら、手元を漁る。
コーヒーだかお茶だかの話を聞いていたせいか、飲み物が妙に恋しい。
さっきみたいないジュースじゃなくて、甘くないものが飲みたい。
(;'A`)(どこいったんだ、クソッ)
水とお茶のペットボトルを買ったのは確実だ。
なのに、暗くて手元がよく見えないせいで、さっきから菓子の袋ばかりとぶつかる。
- 266 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2015/08/09(日) 00:00:33 ID:lvJC6wew0
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( )「今のところはまだ、普通の感じだね」
ξ )ξ「おいしいお店情報が手に入ったくらいよね」
( ゚д゚ )「色々な店を知っているんだな」
話は順調に進んでいくが、求めるペットボトルは見つからない。
あきらめて、あのやたらめった甘いジュースのペットボトルを引き寄せる。
(* ω )「お店選びなら僕に任せるお!
おいしいお店と、温泉と銭湯なら僕ちょっと詳しいお」
蓋を開けて、口につける。
ごくり――と飲みこんだ味は、果物じゃなくて人口物の味がした。
('A`)(……どうせなら冷たいコーヒーが欲しかったな)
飲むなら、ブーンが話してるみたいなコンビニ売りのやつがいい。
ぬるいジュースを飲みながら、俺は切実に思った。
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- 267 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2015/08/09(日) 00:02:22 ID:lvJC6wew0
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えーと、ここまでは僕も変だなぁなんて思ってなかったんだお。
もったいないことするやつもいるもんだって、怒ってただけで。
あと、あのプラカップのコーヒー流行ってるんだなぁくらいは考えたかもしれんね。
「今度、買ってみるかお。」
たしか、そう思った記憶はあるお。
ジッサイには買わなかったんだけど。
まぁ、それもすっかり忘れてたんだけど。
それからちょっとたった……最近のことだお。
――ほら、ショボンとドクオと焼き肉食べに行ったことあったおね?
あの日のことだお。
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- 268 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2015/08/09(日) 00:04:03 ID:lvJC6wew0
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( )「焼き肉? ……いつのかな?」
聞こえてきた声に、俺は考えこむ。
これは……たぶん、ショボンの声だな。
……いつだ? ブーンとショボンで焼き肉、焼き肉……
焼き肉食べ放題ができたぞーって、何度か行ったことがあるから。
いつだ? 本気でわからん。
('A`)「俺とショボンとブーンでか?」
( ω )「ほら7月の……」
(; )「あ」
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- 269 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2015/08/09(日) 00:05:16 ID:lvJC6wew0
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('A`)「7月ったら、考査の最終日か?
あの日は、そもそも焼き肉じゃなくて映画見に行ったんだろ」
どれだかわかった。忘れもしない前期最後の試験の日だ。
あの日の俺は、開放感でいっぱいだった。
何駅か先に、18歳未満はお断りなピンク色の映画をやる映画館がある。
そのことを唐突に思い出した俺は、行かなければならないという熱い使命感に駆られた。
テストとレポートと徹夜明けのテンションのせいもあるだろう。しかし、ダメ元で誘ったブーンとショボンはわりとノリノリであった。
……まぁ、現実は厳しかったわけだが。
小汚くて暗い映画館で、知らないおっちゃんたちと見るいかがわしい映画は最高に気まずかった。
しかも、隣は友人二人。これは死ねる。
(; )「ドクオ、ちょっと」
( ω )「そうだったお! 焼き肉のインパクトがでかくって、そっちは黒歴史になってたお」
('A`)「わざわざ遠征したんだよな。
あれは地獄だった……そもそも何で行こうと思ったんだか」
ξ )ξ「地獄って一体何を見たのよ」
(; )「あ」('A`;)
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- 270 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2015/08/09(日) 00:06:10 ID:lvJC6wew0
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綺麗なお姉ちゃんにイケナイことを教える話です、もちろん性的な意味で。
――とは、とてもじゃないが言えない。
女子や堅物のミルナの前で口にできるタイトルではないことだけは確かだ。
( A )「黙秘を主張する」
(; )「たいしたタイトルじゃないよ、は、はは」
( )「ドクオのことだから、アニメじゃない?」
川 )「かわいらしい美少女が大活躍するようなやつだろう、おそらく」
( ゚д゚ )「なるほどな」
頼む、このまま映画について忘れてくれ。
ついでに俺の頭からもあの馬鹿な記憶を消し去ってくれ。あの時は若かったんだ俺も!
手にしたままのジュースを飲み込んで、嵐がすぎさるのを祈る。
暗くて助かった。
きっと明るかったら、今の俺は顔面蒼白なことだろう。
( ^ω^)「あ、映画の話かお?」
(;'A`)「いいから次! 次っ!!」
おいこら、ブーン!
余計なことを言うんじゃないっ!!!
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