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271 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2015/08/09(日) 00:10:32 ID:lvJC6wew0
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映画でいろいろあって、あの時はすっごくおかしなテンションだったんだお。
それで、ヤケになって焼き肉食い放題するぞ、ってなんたんだお僕たち。
( ^ω^)「お?」
それで外に出たとき、映画館の外のところにあったんだお。
例のプラスチックのカップ。
透明なカップに黒いストロー、それでもって中身がまだ残ってるやつ。
_,
( ^ω^)(ゴミがいっぱいだお)
でも、その映画館ってそんなにキレイじゃなかったから、そんなに気にしなかったんだお。
ボンノウと焼き肉で、僕の頭マッハだったし。
もちろん、「もったいない」くらいは思ってたと思うお。
……そのことをはっきりと思い出したのは、後になってからだったけど。
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272 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2015/08/09(日) 00:12:18 ID:lvJC6wew0
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('A`)「ふぃー、食った食った」
(´・ω・`)「今日は派手に散財しちゃったね」
(*^ω^)「お腹いっぱいだお〜」
それで、焼肉食べ放題で満足して、さあ帰るぞって時だお。
入り口のドアを開けた時。ショボン、止まったおね。
(*'A`)ノシ「どしたー、しょぼんくーん?」
(´・ω・`)「何かがひっかかったみたい。あ、開いた」
( ^ω^)「なにがあったのかおー」
ショボンとドクオは、もう忘れちゃってるかもしれないけど……
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273 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2015/08/09(日) 00:14:24 ID:lvJC6wew0
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あの時、ドアにひっかかってたの。プラカップだったんだお。
中身が入った、黒いストローのやつ。
そいつが倒れて、ドアの向こうに転がってたんだお。
( ´ω`)「おー」
(*''A`)「どしたー、くらいぞー、ブーンちゃぁぁぁん!!」
( ´ω`)σ「そこにカップが……もったいないお」
まだ残ってるのにもったいないとか、世の中にはゴミを捨てる悪い人が増えたんだなー、って僕は悲しくなったんだだお。
それから、倒れたコーヒーだかお茶だかを避けて、外に出て。
それから、アレって思ったんだお。
――そういえば、あのカップみたいなやつ映画館でも見たなって。
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274 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2015/08/09(日) 00:15:14 ID:lvJC6wew0
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('A`)「偶然だろ」
考えるよりも先に、そう言っていた。
だって、そこらで売っているカップだ。コンビニに行けばいくらでも買える。
というか、俺はそれよりも。焼き肉の時の俺がどれだけ醜態を晒していたのかのほうが気になる。
あの日は確か勢いのままに酒も飲んだから、後半の記憶は曖昧だ。
思いだせ、何かアホなことをやらかしてないか思い出すんだ俺。ついでに、例のカップも。
( ω )「僕もそう思ったお。
本当にあのカップのお茶流行ってるんだおって……そのときは、そんくらいだった」
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275 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2015/08/09(日) 00:16:22 ID:lvJC6wew0
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( ゚д゚ )「そのときは?」
( ω )「ん」
ブーンが一瞬、口ごもる。
馬鹿みたいに明るいヤツにしては珍しい反応だ。
その珍しさに、俺は先日の記憶を掘り起こす作業を止めた。
(; )「あ」
ブーンに続き、ショボンらしい声も上がる。
こちらも一言だけ。
何かを思い出したのか……?
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277 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2015/08/09(日) 00:18:27 ID:lvJC6wew0
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('A`)(何か、あったか?)
記憶をたどる。
フワフワとして、踊りだしたくなるような気分だったのは覚えている。
食い過ぎた肉を胃に押し込めて。
ぬるい空気の中を走れば、空も飛べそうな気がして。
走りだそうとした足を、ショボンかブーンに無理やり抱えて止められて。それから……?
「ドクオ、やめるお!」
「ほら、飲めないからそれ。あとで自販機行こ」
暑苦しい野郎どもの腕の向こうに
――プラカップの姿を見た、ような、気が。
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278 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2015/08/09(日) 00:19:58 ID:lvJC6wew0
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(;'A`)(あれ?)
おかしい。
妙な記憶がある。
いや待て、ブーンが例のプラカップを見たのは映画館と焼肉屋。
でも、そのどっちでもないこれは、何だ。
(;'A`)(飲めないってなんだ? )
ブーンと、それからショボンの方を見る。
あいつらならわかるだろうか。これが本当のことなのか、それとも俺の夢なのか。
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279 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2015/08/09(日) 00:22:07 ID:lvJC6wew0
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(; ω )「その後、その……酔っ払ったドクオが、ね」
やっと続いたブーンの言葉は、歯切れが悪い。
頼むから、はっきりと言ってくれ。
心臓がドクン、ドクンと音を立てる。
額をたどっていく、汗が気持ち悪い。
(; ω )「プラカップを拾ったんだお。電車で」
( ゚д゚ )「それはどういう状況だ?」
(´ ω `)「電車の出入口の脇のところに、置いてあったんだよ。
たぶん、飲み残しの紅茶だと思うんだけど……」
(; ω )「そうだお。ドクオ、ノド乾いたーって、飲もうとしちゃって」
頭をガンッと殴られたような衝撃がした。
拾った? しかも電車? 俺が?
さっきの記憶は、実際にあったこと……なのか?
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280 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2015/08/09(日) 00:25:38 ID:lvJC6wew0
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川 - )「それは、マズいんじゃないか?」
ξ )ξ「なにしてんのアンタ?! 馬鹿なの?!」
(;'A`)「俺もどうしてそうなったのか聞きたいくらいだよ!!」
クーとツンらしき声に問い詰められるが、俺も正直いっぱいいっぱいだ。
正直、はっきりと覚えているわけじゃないし。なんでそんなことをしたのかもわからない。
それに、例のプラカップ……? なんでそいつがここで出てくる。
( )「飲んでたら面白かったのに」
(; A )「おい。今、飲んでたら面白いって言ったやつ誰だ!?」
俺の渾身の叫びに、返事は無かった。
動揺している俺に、ひどいことを言うやつもいたもんだ。絶対に後から殴る。
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281 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2015/08/09(日) 00:28:27 ID:lvJC6wew0
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ドクオは力づくで止めたから大丈夫だったお。
ちゃんと例のブツは駅のゴミ箱にポイして、ドクオには水飲ませたから安心するおー。
あ、水代は今度ジュースでもおごってくれれば、オーケーですから。気にせんでいいお。
まあ、それはともかく。
( ^ω^)「……また、あのカップだったお」
さすがの僕も、ちょっとおかしいなぁと思ったわけだお。
これまで全然気にしてなかったけど、いくらなんでも見る回数が多すぎるお。
だって、一日に3回だお。
いくら流行ってるからっていっても、あんなにカップがあちこちに落ちてるっておかしすぎるお。
しかも、場所も時間もバラバラ。それもおんなじように中身が残ってるんだお。
( ^ω^)「ドクオ、飲んじゃうところだったし……」
まるで、僕の行くところに置いていってるみたいだって。
ちょっと怖かったお。
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282 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2015/08/09(日) 00:29:30 ID:lvJC6wew0
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( ゚д゚ )「……流石にそれは」
川 )「どうということでなくても、こうも続くと気味が悪いな」
ブーンの話に、ミルナの息をのむ声が続く。
クーや他のやつらが何か言ってるようだが、俺の耳にはいまいち入ってこない。
(;'A`)「……」
さっきから、心臓の嫌な音が止まらない。
ブーンたちのお陰で中身は飲まなかったみたいだが、電車に乗ってたのが俺一人だったらと思うとぞっとする。
なんだよ、これ。ブーンの話を適当に聞いていたはずなのに、気づけば一番の当事者じゃねぇか。
何で飲んだんだよ、俺。……その時の俺をぶん殴りたい。
ξ )ξ「私はドクオの方が怖かったけどね。
そんなになるまで飲むんじゃないわよ、馬鹿」
まったくもってその通りだ。
こんな心臓に悪いだけの話、知りたくなかった。
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283 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2015/08/09(日) 00:32:43 ID:lvJC6wew0
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( ω )「まぁ、ドクオはサイナンだったけど、それからはあんまり見なくなったんだお。
例のプラカップちゃん」
('A`)「そんなに転がっててたまるかよ」
(; )「だよね。さすがにあれは焦ったよ」
明るく戻ったブーンの声に、俺も慌てて言葉を返す。
もうこうなったらさっきまでのことは忘れてしまおう。
そうとなったら、ブーンの話はさっさと終了させて、次の話に移るに限る。
('A`)「お前の話はもう終わりか? だったら、次に」
( ω )「んー。そうだおね。
それからは2回くらいしかみてないから」
( )「へー、まだ見てるんだ」
どうやらブーンの話はまだ続くらしい。
俺の酔っ払い事件以上に、まだ話すことがあるのか?
というか、ブーンはどうやってこの話にオチをつけるつもりなんだろうか。
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284 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2015/08/09(日) 00:34:50 ID:lvJC6wew0
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( )「2回って、まだあるの?」
ξ; )ξ「本当によく転がってるのね、そのコーヒー? アイスティー?」
( ω )「といっても、そんな怖い話はないお。
この前、自販機のとこのゴミ箱で見かけた時なんて、お久しぶりだったから嬉しくなっちゃったし」
('A`)「……何で嬉しくなってるんだよ。
さっきまでの空気返せよ。完全に俺の醜態のさらされ損じゃねーか」
ブーンの声に気が抜ける。
さっきまで、嫌な汗をかいていたのが嘘のように空気が軽い。
これ俺以外のやつにとっては、完全に笑い話なんじゃねーか?
(; ゚д゚ )「嬉しくなるもの、なのか?」
川 )「ふむ。ブーンにとっては、『すっごい“偶然”にあっちゃったお〜』という感じなのだろう。
……慣れとはおそろしいものだな」
(* ω )「そうだおそうだおー。いやぁ、ホントにこういう“偶然”ってあるんだおね」
(;'A`)「――っ、」
ξ )ξ「……アンタって、ほんとマイペースよね」
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285 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2015/08/09(日) 00:36:48 ID:lvJC6wew0
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偶然。
確かに、ブーンの話はあくまでも偶然だ。
ブーンたちにとってそれが当たり前だし、俺だってそう思ってた。
(;'A`)「……」
だけど、違う。今は違う。
偶然だと言われてはじめて、気づいてしまった。
“たまたま”俺が酔っぱらってのどが乾いたところに、誰かが“都合よく”置いた中身の残ったカップがある。
そんな都合の良すぎる『偶然』あるわけない。
――というか、そんな不自然な現象をよくある偶然にされたらたまったもんじゃない。
('A`)「……もう1回見たって言ってただろ、そっちはどうなんだ?」
ためらいながらも、聞いてみる。
正直に言おう。俺は、最後の1回が偶然以外の何かであればいいと願っている。
あの奇妙な偶然は、偶然じゃないのだと――。
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286 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2015/08/09(日) 00:38:59 ID:lvJC6wew0
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ブーンのいる方を見据える。
ニコニコと笑っていた顔は、暗闇に隠されてはっきりと見えない。
( ω )「ああ、それかお」
だけど、ブーンは言った。
( ω )「ニ週間くらい前に、すっごい暑い日があったおね。
あの日、公園のベンチで見つけちゃって、うっかり飲んじゃうところだったんだお。
僕もドクオのこと笑えないおねw」
なあ、ブーン。
お前、それが偶然って本当に思ってるのか?
(; A )「……公園だろ、自販機とか。
そうじゃなくても、水飲み場とかあるんじゃねえの?」
のどが乾く。
不自然に上ずりそうな声をそっと隠して、言う。
ブーン、答えろ。お前は冗談で言ってるのか? それともまた、偶然って言うのか?
_,
(; ω )「それが、僕お金持ってなかったんだおー。
水飲み場も壊れちゃってたし、ホント困ってたんだお〜」
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287 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2015/08/09(日) 00:40:39 ID:lvJC6wew0
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で、ベンチに例のカップが置いてあるおね。
それがこれまでと違って氷が浮いてて、さっきまで誰かが飲んでましたよーって感じなんだお。
カップに水滴がついてて、いかにも冷えてますって感じで、めっちゃうまそうなんだんだお。
しかも、都合がいいことに周りに誰もいなくて、
あ。これ飲んじゃってもいいかも、って――
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288 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2015/08/09(日) 00:45:10 ID:lvJC6wew0
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一瞬、頭が真っ白になった。
悪趣味みたいにひどい『偶然』だった。
(;゚A゚)「飲んだのか!?」
(; ω )「飲んだなんて言ってないおー。
いくら僕でも、流石に外に置きっぱなしのものは飲まないお。
ドクオじゃないんだから」
思わず、目の前の影に掴みかかる。
ブーンらしき体の肩をつかみ、揺さぶる。
ぷよぷよとした柔らかい体は、汗でじとりと湿っている。
(; ω ))「ゆれるおー、ドクオやめるおー」
(;゚A゚)「は、は。よかったー」
息をついて、ブーンをつかむ手を放す。
いつの間にか、俺の目には涙が浮かんでいて、笑いたい気分になった。
ξ )ξ「やめなさいよね、ドクオ。
それにしても、ブーンが怪しいもの飲んでなくてよかったわ」
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289 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2015/08/09(日) 00:49:01 ID:lvJC6wew0
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川 )「いくら食い意地のはったブーンでも、腹を壊しただろうからな」
( )「食中毒とか、変なものが入ってたら怖いしね」
( ゚д゚ )「途中で持ち主が帰ってくる可能性もあるしな」
( )「知らない奴が自分の飲み物飲んでるとか、怖すぎだからな」
ほっとした空気が満ちる。
いくらブーンでも、放置されている怪しい飲み物を飲むほどアホじゃなかったらしい。
だけど、もしブーンが飲んでいたら――。
偶然以外の何かを望んでいたのは俺なのに、そうなっていたらと思うと心臓が止まった。
飲んでいたら、きっと……。それを考えるのが怖かった。
('A`)(……あ)
そして、ふと気づく。
ブーンは大人だったら飲まなかった。
当たり前だ。そんなもの飲む馬鹿はいない。
だけど――、もし
('A`)(見つけたのが子供だったら)
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290 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2015/08/09(日) 00:50:52 ID:lvJC6wew0
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ニ週間くらい前。
セミが一斉に鳴き始めた、本格的な猛暑がはじまる頃。
壊れた水飲み場と、ベンチに置かれたプラカップ。
氷の浮いた、冷たそうな飲み物。
それを見つけたのが、もし子供だったのなら。
そして、“たまたま”水筒もお金も持っていなくて、のどが乾いていたのなら――
(* ∀ )゛ □
その子供はどうするだろうか?
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291 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2015/08/09(日) 00:51:54 ID:lvJC6wew0
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(* ∀ )つ□
――飲むかもしれない。
そう思うのは、きっと俺だけではないだろう。
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292 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2015/08/09(日) 00:55:12 ID:lvJC6wew0
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( ゚д゚ )「どうした、ドクオ?」
(;'A`)「別に」
はじめのカップは駐車場。
それから、映画館や店の入口ときて、電車。
一つ一つは別におかしい場所じゃない。
だけど、電車の出入口といえば目につく場所で。
自販機の横のゴミ箱となれば、飲み物を買おうとするやつならきっと見る場所で。
公園といったら人がよく来る。子供の多い場所で。
そのベンチとなれば当然、多くの人が休みに来る場所なわけで。
どんどん目立つ場所になっている。
……そう思うのは、おかしいだろうか?
(;'A`)(考え過ぎだ、それこそ『偶然』だ)
そこにもし、何かが入っていたら?
毒とまでは言わない。
だけど、中身が腐っていたら?
それとも、誰かが洗剤なんかを入れていたとしたら?
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293 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2015/08/09(日) 00:56:22 ID:lvJC6wew0
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よくある、透明なプラスチックのカップ。
黒いストローのささった、コンビニか何かで売られているような平凡なそれ。
中身が少しだけ残ったそれが、
――誰かが悪意をもって残した贈り物じゃないと、誰が言えるだろうか。
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294 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2015/08/09(日) 00:59:46 ID:lvJC6wew0
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('A`)「……」
……やっぱり偶然だ。
それでいい、そっちの方がよっぽど良い。
ξ )ξ「困ったもんよね。ゴミくらいゴミ箱に入れなさいよ」
川 )「まあ、確かに。店ならともかく、公園にならゴミ箱くらいあるだろうに」
聞こえる声は、いつもとそう変わらない。
少しだけ機嫌が悪そうな気がするが、俺が思ってるような悪意なんて感じている様子がない。
それに、わけもなくほっとした。
('A`)(落ち着けよ、俺。
そりゃあ、少しばかり妙だけど偶然なんだから)
ごくりと、ジュースを飲む。
ベタベタとしたぬるい味が、今は少しだけ心地よかった。
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295 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2015/08/09(日) 01:00:54 ID:lvJC6wew0
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( ω )「みんなは飲み物をポイ捨てしちゃダメだおー。
お残しはもったいないし、僕やドクオみたいな不幸な犠牲者が生まれちゃうんだお」
( )「ブーンらしいまとめだね」
( )「この話ももう終わりかー。イマイチだったなぁ」
ワイワイとした声が、聞こえる。
その輪に加われる気分じゃないのが、少しだけ悔しかった。
(; ω )「あー、話したらノド乾いたお」
('A`)「……そりゃあ、この暑さだしな」
ホッとしたように声を上げるブーンに、言葉を返す。
今の俺は、ちゃんと自然な声になっているだろうか。
なっているといい。ブーンの話にはおかしな所なんてなかったんだから、それでいい。
( ω )「あ、これ飲んでもいいかお?
ずっと気になってたんだお、僕」
川 )「いいんじゃないか? 取られたくないものなら、自分の近くに置くだろう」
( ω )「じゃあいただくおー」
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296 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2015/08/09(日) 01:03:23 ID:lvJC6wew0
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ブーンの動く物音がして、それからカタコトと水音がした。
カップに揺れる氷みたいなその音に、俺ののどが鳴る。
氷さえあればこのくそ甘いジュースも、いくらかマシになるだろうに。
ξ )ξ「それにしても暑いわね、こうも暑いと熱中症になりそう」
川 )「飲み物もすっかりぬるくなってしまったよ」
(; )「あ、僕も」
( ゚д゚ )「気が回らなくてすまなかった。冷えた茶を出そう」
お茶か。
探していたペットボトルは見つからなかったし、ちょうどいい。
……そういえばブーンが持ってるの、俺のペットボトルじゃねーよな?
暗くてよく見えないが、確認してみねぇと。
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297 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2015/08/09(日) 01:05:08 ID:lvJC6wew0
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(*^ω^)「ぷはー、よく冷えてておいしいーお!
たまにはコーヒーもありかもしれんね」
闇が揺れて、ブーンの顔がぼんやりと浮かび上がる。
その手元に目をやって、俺は息を止めた。
顔をほころばせたブーンの手の中に、水滴が浮かんだカップがある。
うっすらと見えるその形は、ストローのささった、
――透明のプラカップ。
その奇妙な偶然に、吐き気がした。
頼むからブーンが気づきませんように、と願ってさえもいた。
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298 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2015/08/09(日) 01:06:25 ID:lvJC6wew0
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( )「いいなぁ。それって誰が買ったの?」
ξ )ξ「おいしいのはいいけど、ちゃんとお礼言いなさいよね」
ツンの言葉に、ブーンがあたりを見回す。
その動きに合わせて、カタコトと氷が音をたてる。
水滴の浮かんだカップは、買ったやつなら絶対に飲みたいものだろう。
だけど、――
( ^ω^)「おっおっ。そういえば、誰のだお?」
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299 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2015/08/09(日) 01:07:07 ID:lvJC6wew0
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ブーンの言葉に、返事はなかった。
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300 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2015/08/09(日) 01:07:55 ID:lvJC6wew0
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('A`)百物語、のようです
奇妙な偶然 了
(
)
i フッ
|_|
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