('A`)巣作りドックンのようです

68 名前: ◆xfSBMT78.A[] 投稿日:2016/03/29(火) 20:51:01 ID:.5wg0tsI0


(;'A`)「……あ、」


灰竜が我に返った時、その人間には首から上がなかった。
正確には頭はあったが、体から離れて転がっていた。


(*'A`)「やった」


頭がなくても生きていける生き物はそう多くない。
たとえ竜の血を浴びて頑丈になっていたとしても、たかが知れている。
人間というのは弱い種族だ。どんなに頑丈だろうと、頭がなければ確実に生きてはいけない。
――つまり、あの人間は死んだのだ。


(*'∀`)「やった。やったぞ!!!」


そう理解した瞬間、竜は歓喜した。
自分は一人前の竜のように、縄張りと巣を守ったのだ。
これまでほとんどの戦いから逃げてきた彼にとって、それは初めて掴んだ勝利だと言えただろう。

69 名前: ◆xfSBMT78.A[] 投稿日:2016/03/29(火) 20:52:56 ID:.5wg0tsI0


(*'∀`)「これならいつ嫁さんを迎えても大丈夫だな」


竜は翼を羽ばたかせ、鳴き声を上げる。
ついさっきまで痛みを訴えていた翼の傷も気づけば治っていた。
背と尾の傷も治さなければと、休息を取ろうとして――ふと、彼は気づく。


('A`)「あの危ない剣、どうにかしねぇと……」


アレがあるかぎり、さっきの人間のようなやつが出てくるかもしれない。
そうなる前に、なんとかあの剣を壊すなり捨てるなりしなければ……。

70 名前: ◆xfSBMT78.A[] 投稿日:2016/03/29(火) 20:54:51 ID:.5wg0tsI0


('A`)「あ、れ?」


そして、見つけたそれを前に竜は首をひねった。
キラキラとした細工と形は、彼が宝物にしたいくらいに細やかで美しい。
しかし、それはあの人間が持っていたものではあるが、剣とは違った。


(;'A`)「おかしいな。なくしたか?」


それは、剣が収められていた鞘だった。
中にあるはずの剣はない。
あれは、確かあの人間が持っていたはず……


(#゚A゚)「っ!!!」


その瞬間、彼の本能は最大の警笛を上げた。
何がなんだかわからないままに、がむしゃらに腕を突き出す。

72 名前: ◆xfSBMT78.A[] 投稿日:2016/03/29(火) 20:56:52 ID:.5wg0tsI0


(  ∀ )「……う」


彼が腕をつきだした先、近すぎて普段はあまり視界に入らない胸元。
そこに、あの人間がいた。
口元から血を溢れさせ、見開かれた瞳には意識と理性の光は見えない。


(;゚A゚)「な、な」


片腕で血まみれの、人間の男。
離れていた首はつながり、それでも完全には治りきらずに血が溢れている。
そして、その手には探し求めていた剣が握られている。


(  ∀ )「……っあ」


その剣が向けられた先は、灰竜の胸元。心臓のあるあたり。しかし、その剣はまだ届いてはいない。
そして、彼のつきだした腕は、男の胸を貫いていた。

73 名前: ◆xfSBMT78.A[] 投稿日:2016/03/29(火) 20:58:57 ID:.5wg0tsI0

竜の腕は、武器として振るうにはやや短い。
しかし、その爪は竜の持つ武器の中でも牙の次に鋭いものだ。


(;゚A゚)「は……はは、」


どんな仕組みで動いていたのかはわからないが、捉えてしまえば人間の体は紙のようにもろい。
鋭い爪が体の内部を切り裂き、人間最大の急所をえぐりだす。
人の中心。どくり、と動き全身へと血をめぐらせる拳ほどの大きさをした器官。

心臓とよばれるそれが、竜の手によって引きずり出される。


(゚A゚)「今度こそ……、今度こそ」


心臓は人間の中心だ。
体を支える機関であり、魂の宿る場所とも言われる。
人のことは知らずとも、竜は本能で知っていた。

これを握りつぶせば、この生き物はおしまいだと。

74 名前: ◆xfSBMT78.A[] 投稿日:2016/03/29(火) 21:00:56 ID:.5wg0tsI0


(#゚A゚)「俺の勝ちだ――っ!!」


そしてありったけの力を込めて、それを握りつぶそうとし。
ふと、気づく。


生き物の心臓とは、手を焼くほど熱いものだったか。
この生き物はこんなにもむせ返るような甘い匂いがしたか。
そして、自分の力では握りつぶせないほど頑丈だったのか、と。


どくりと、心臓が動く。
どくりと、心臓が動く。
どくり、
どくり、

えぐり出されていてもその動きは止まらない。

76 名前: ◆xfSBMT78.A[] 投稿日:2016/03/29(火) 21:02:53 ID:.5wg0tsI0

(;'A`)「……なんだ、これ」

(  ∀ )「――ぅ」


びくりと、男の体が動いた。
がくがくと動くその動きに応じて、灰竜の手の中の心臓がさらに熱を持つ。


(#゚∀゚)「――ぁぁぁぁっ!!!」


そして、人間が――大きく吠えた。
剣を握る手が妙な具合に曲がったまま、ぎちりと力が篭もる。
完全に力が抜けた体が、操られているような不自然な動きで剣を振り上げる。

そして、光のような速さで剣が振り下ろされる。

77 名前: ◆xfSBMT78.A[] 投稿日:2016/03/29(火) 21:05:19 ID:.5wg0tsI0

反撃をするには、距離が近すぎた。
動かせるのはもう片方の腕か、牙。
広い範囲をなぎ払う翼も尾も、ここまで接近していれば役に立たない。


(;゚A゚)「ぐっ」


手にした心臓は今や、竜の手を焼きつくさんとするほどに熱い。
仮に握りつぶせたとしても、剣が振り下ろされる方が遥かに早いだろう。
腐り落ちる果物よりも強い。むせ返るような甘い匂いに、ドクオ頭がくらくらときしむ。


(;゚A゚) (狙いにくいが牙か? でも、ヤツの首は――)


灰竜は心臓を手放し、腕を自由にするために体を引きちぎろうとする。
しかし、燃え上がる心臓が竜の手を焼き、その動きを阻む。

――動くなと、命じられたかのような奇妙な感覚。

それを感じたのは、一瞬。
しかし、その一瞬が優劣を分けた。


(#゚∀゚)「――っらぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!」

78 名前: ◆xfSBMT78.A[] 投稿日:2016/03/29(火) 21:07:04 ID:.5wg0tsI0

そして、竜は見た。
竜の鱗をものともしない輝きを持つ、剣の残影を。

砕けていく。
やわな刃なら触れただけで砕くウロコが、悲鳴を上げる。
剣の勢いは止まらない。
幾重にも重なったウロコが、貝殻が砕けるような音とともに砕けていく。


(#゚∀゚)「っああ!! ああっあ、あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙っ!!!」


幾重にもまとわれたウロコを砕き、剣は竜を切り裂いていく。
あと少し力を込めれば、竜の首へと届き引き裂かれるだろう。
その先は、死しかない。

目の前の無茶苦茶な相手と違って、彼は平凡以下の竜でしかない。
並の竜にすらかなわない、若くて弱い竜だ。

79 名前: ◆xfSBMT78.A[] 投稿日:2016/03/29(火) 21:08:56 ID:.5wg0tsI0


あと一歩で攻撃が届く瞬間、人間の動きが止まった。


(  ∀ )「……ぼくは、なにを」


悲鳴にも似た咆哮が止む。
脱力したままの体に力が篭もり、その瞳に理性の火が灯る。


( ・∀・)、「いたい。こんなに痛いのに、何で、僕は……動いて……」


掴みだされたままの心臓を見つめ、男はくしゃりと顔を歪める。
水晶の雨の降る空洞に、耳の痛いほどの静寂が訪れる。




(  ∀ )「……馬鹿みたいだ」



そして聞こえた声は、聞き逃してしまいそうなほど弱かった。

80 名前: ◆xfSBMT78.A[] 投稿日:2016/03/29(火) 21:10:51 ID:.5wg0tsI0


――その瞬間、彼は敗北の原因を悟った。
相手が人間である。その思い込みがそもそもの間違いであった、と。


('A`)(それで、か)


首へと当てられた剣に力がこもる。


( -∀-)「……」


男は一度だけ、瞳を閉じた。
そして瞳を開いた時には、もうそこに弱さの名残は見えなかった。



( ・∀・)「さよなら」

81 名前: ◆xfSBMT78.A[] 投稿日:2016/03/29(火) 21:11:24 ID:.5wg0tsI0









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82 名前: ◆xfSBMT78.A[] 投稿日:2016/03/29(火) 21:13:06 ID:.5wg0tsI0

人間という種族がいる。
ヒト族でも最弱でありながら、最も栄えた種族。

獣人のように、獣のような力や強い繁殖力を持つわけではなく。
エルフのように、強大な魔力と長い寿命を持つわけではなく。
ドワーフのように、屈強な体と手先の器用さを持つわけではなく。

武器を得、数を頼りにした時初めてその力を発揮するのが人間という種族である。
単独では塵にも等しい弱さの種族。

しかし、その弱い種族にも変わった特色が一つある。


    人間は、他の何よりも他の種族に染まりやすい。


人間はその染まりやすさ故に、まったく異なる種族とでも子をなせる。
混血は他の種族でもない話ではないが、人間はその繁殖率がずばぬけて高い。
同じヒト族だけではなく、魔物との間に子をなしたという話さえもある。

人間が染まりやすいというのは、それだけに限ったことではない。
血を吸われ吸血種になったとか、恨みのあげく鬼へと変じたという話はいくらでも転がっている。
魔物であるゴーストや生ける屍は、元は人間であることが多いという。

83 名前: ◆xfSBMT78.A[] 投稿日:2016/03/29(火) 21:14:54 ID:.5wg0tsI0





('A`)「……お前、死にたいのか?」






そして、人間という種族は最強と名高い竜にも馴染み、染まることがある。

.

84 名前: ◆xfSBMT78.A[] 投稿日:2016/03/29(火) 21:16:55 ID:.5wg0tsI0


竜と人間の間に子が産まれたという話は多い。
だからこそ、群れを持たない竜は若い娘を攫う。

また、竜の血は人間の寿命を伸ばし力を高める。
その効果は、竜の力が強いほど。そして、新鮮であるほど強まるという。
だからこそ、竜の血や心臓は価値が高く、竜殺したちに真っ先に狙われる。

かつていた、とある英雄は。
――竜の生き血を浴び、不死身になったのだという。


竜の力に染まった、竜モドキ。
目の前の人間が、そのような存在でないと誰が言い切れるだろうか。


.

85 名前: ◆xfSBMT78.A[] 投稿日:2016/03/29(火) 21:19:01 ID:.5wg0tsI0

( ・∀・)「何それ。命乞いのつもり?」


剣を構えた姿勢のまま、男は止まっていた。
表面の皮は少し切られたが、致命傷にはまだ遠い。
しかし、そんなギリギリな状況も、今の竜には届かなかった。

――どうせもう助からない。
ならば、辿り着いた答えがあっているか確かめてから、彼は死にたかった。


('A`)「はじめは俺の血のせいかとも思った。でも、違った」

( ・∀・)「傷が治るまでの時間稼ぎなら、やめて欲しいんだけど」

('A`)「強いんだ。お前は最初から人間にしては強すぎたんだ。まるで魔物や竜と戦ってるみたいに」


男の問いには答えず、竜は己の手を見つめた。
まだ、そこにはえぐり出されたままの男の心臓が握られている。
体と辛うじて繋がった心臓は、どくり、どくりと動き続けている。


('A`)「それでわかった」

( ・∀・)「何を?」

86 名前: ◆xfSBMT78.A[] 投稿日:2016/03/29(火) 21:21:06 ID:.5wg0tsI0


('A`)「――お前、死ねないんだろう? だから、死にたいんだ」


(#・∀・)「な」


その瞬間、男の表情が変わった。


(#・∀・)「わかったみたいな口を! 死にたい?」


笑みを浮かべていた口元は歪み、その瞳はギラギラとした光を放つ。
あの異様な咆哮とも違う、血を吐くような表情で男は叫ぶ。


(# ∀ )「そんなの当たり前だろ!! どこの世界に心臓えぐり出されて、生きてる馬鹿がいるんだ!
       毒も、炎も、剣も、串刺しの罠も――魔物に喰われたって、ダメだった! お前でもだ!!」

('A`)「……悪かったな」

(# ・∀)つ「でも、お前の心臓があればどうにかなる。
        竜の心臓は無限の力と魔力を生むんだろ? だったら、僕のこの呪いも解けるはずだ!」

87 名前: ◆xfSBMT78.A[] 投稿日:2016/03/29(火) 21:22:57 ID:.5wg0tsI0

彼の手は未だ剣を掲げている。しかし、その手は細かく震えていた。
あとほんの少し、それだけで男の望みは叶うのに。
それでも、彼はその剣を完全には振り下ろさなかった。


(#・∀・)「そうすれば僕は、」


::(  ∀ )。::「……当たり前に、死ねる」


男の目からギラギラとした炎が消える。代わりに頬に、光る雫が落ちる。
その姿を見つめながら、竜は口を開いた。
言わなければならないような気がしていた。


('A`)「それは無理だ」


彼が掴んだ敗北の原因を、
そして、目の前の人間にとっては致命的な事実を知らせるために。

88 名前: ◆xfSBMT78.A[] 投稿日:2016/03/29(火) 21:23:32 ID:.5wg0tsI0



('A`)「だって、お前の心臓は竜なんだから」


.

89 名前: ◆xfSBMT78.A[] 投稿日:2016/03/29(火) 21:25:02 ID:.5wg0tsI0

灰竜は男の姿を見つめた。
腕を失った腕からぽたりぽたりと垂れる血は、鉄の匂いをしている。

そして、灰竜は手の中の心臓を見つめる。
どくり、どくりと脈打つ心臓は、むせ返るような甘い匂いを放つ。

竜の頭をくらませる、強烈な甘い香りは――群れの女王のものだ。
それは、人間の少女の甘い匂いとは根本的に違うものだ。

それに気づいた時。
彼は自分が負けた理由をはっきりと理解した。


( ・∀・)::;)



――相手は、人間の身を借りた女王竜の心臓だ。


竜のオスは、メスには決して勝てない。
それは竜の本能に刻まれた、絶対のルールだ。

90 名前: ◆xfSBMT78.A[] 投稿日:2016/03/29(火) 21:27:11 ID:.5wg0tsI0


('A`)「どこで取り替えられたか知らねーが、お前の心臓は竜のものだ。
   そいつが怪我を無理やり直して、お前を死なないようにしてる」

::(# ∀ )::「そんな馬鹿な話があるか!」


灰竜は、男の心臓から手を外した。
彼の体から手を引きぬき、心臓を体に戻す。
これで竜は完全に男に勝つ手段を失った。しかし、男はそれには気づかない。

つきつけられた剣を持つ手が大きく震える。
灰色の竜の顔を見る男の目が激しく動き、その動揺を伝えている。


('A`)「信じよう信じまいが勝手だがな。
   その心臓はダメだ。俺の心臓程度じゃ、潰すことも壊すこともできない」

::(  ∀ )::「……」

91 名前: ◆xfSBMT78.A[] 投稿日:2016/03/29(火) 21:29:15 ID:.5wg0tsI0


('A`)「それに、俺は弱いが他の血が混ざらない純血種の竜だ。
   生き血を浴びれば、人間なら不死身……とまではいかなくても、それに近い芸当ならできる」

(; ・∀・)「……っ」


その言葉を聞いた途端、男は大きく後ろへと引いた。
そのままよろよろと、後退していく。
灰竜は致命傷を負っていない。反撃を受ければひとたまりもないはずなのに、男の動きは止まらない。
それとも、竜の反撃程度では自分は死なないとすでに悟ってしまっているのか。


('A`)「お前、俺と戦ってから怪我の治りが早くなったんじゃないのか?
    いつも首が取れたら、そんなに早く治るのか?」

::(; ・∀・)::「やめろ」


灰竜もまた目の前の男に攻撃しなかった。
人間の姿をしっかりと見つめたまま、はっきりと口にする。

92 名前: ◆xfSBMT78.A[] 投稿日:2016/03/29(火) 21:31:09 ID:.5wg0tsI0


('A`)「ただでさえ竜に近いお前が、これ以上混ざりものない竜の血を浴びたらどうなると思う?」

::( 。 ∀ )::「やめて、たのむから……」

('A`)「人間は染まりやすいからな。
    今は心臓だけだが、仕舞いには外側まで竜になるぞ」


そして、灰竜は言い切った。

                       ・ ・ ・ ・ ・
(-A-)「……お前もわかってるんだろ。人間として死にたいなら、やめとけ」

( つ∀ )「何だよそれ」


それ以上の言葉はなかった。
長い沈黙の末に、剣が手から滑り落ちる。
それからパシャリと音がして、男の膝が水面に崩れ落ちた。
静かな大空洞に、嗚咽だけが響いた。


――それがこの戦いの終わりだった

93 名前: ◆xfSBMT78.A[] 投稿日:2016/03/29(火) 21:31:44 ID:.5wg0tsI0









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94 名前: ◆xfSBMT78.A[] 投稿日:2016/03/29(火) 21:33:06 ID:.5wg0tsI0
_ _ _ _ _ _ _ _ _ __________________________
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毒の大地に作られた地下50階層の、大迷宮。
落とし穴、罠、宝物庫――思いつく限りの仕掛けを詰め込んで、彼が作り上げた自分だけの巣。
そこで食って寝て、できればかわいい人間の嫁ができれば幸せだ。

灰色のウロコを持つ若い竜は、そう思っていた。


(ν・ω・)ν( ∵)(・↓・)( б∀б)(ΘωΘ)`ハリ*^ω^ハ⌒*(・∀・)*⌒⌒*(・ω・)*⌒⌒゜(・ω・)゜⌒
( `v´)リハ*゚ー゚リ(∴゚ з゚ )(メ.■ー■)( ∴)@*゚ヮ゚))(`∠´))ルミ゚ ー゚ノ(( ○凵)(■∈■)゙゙( ゚━゚)リコ-〇ー〇)リ
(`c_,´ )( ・∈・ )(-回ε回-)( ̄ー ̄)/ ・∀・ヽ( ∵)(`o´)ノパ-ナル(`ェ´)(´ρ;゙#)从タ ゚ ヮ゚ノソ彡从 ゚ ヮ゚ノミ|iiタ ゚ ヮ゚ノソ
|ハ`∀´ノ8 ( ∴)ノ ・∀・ノj(^ヮ^*il|ノ ノ `∀´ハ∈(・ω・)∋(  ‘3‘)( ∴)(φд゚)|・/ "ヮ")ミ▼ー▼彡ミ■Å■ノ州-凹_凹)
6L `∀´)("・」・")( ∵)( ∵)( ∵)//°H°)(゚、゚ハ゜⌒(〇`ω´〇)W,,゚Д゚W| @Θ@)ijd ´A`)(同し同 )(ε3ε)リノ、゚テモリ
∑<<∈゚∀゚)( ∴)( ∵)( ∵)(┘゚∀゚)┘( ゚ω゚ )ミ ・3・ミ (°∀」「∀°)( ∴)( ∵)6 `ェ´)(・ ∀ ・)从 ゚ー゚V( ∴)( ∴)( ∴)


(;゚A゚)「なんじゃこりゃぁぁぁーー!!!」


――だが、その理想は無残にも砕け散っていた。

95 名前: ◆xfSBMT78.A[] 投稿日:2016/03/29(火) 21:35:09 ID:.5wg0tsI0

魔物の山、山、山。
懐かしいあの大山脈――黒の領域ほどでもないが、それでも凶暴な魔物たちの群れ。
普段は縄張りや集落を作って集まっているモノたちが勢揃いしていた。

……彼が丹精込めて作り上げた、彼以外は誰もいないはずの巣の中に。


(; A )「なんだよこれなんだよこれなんだよこれ……」


その悪夢のような光景に、灰竜は悲鳴を上げた。
竜モドキの人間が襲ってくるより遥かにタチが悪い。
それはもしかしたら、彼が巣立ってから一番の驚きであったかもしれない。


⊆( ・∀・)「そりゃあ、見たとおりだからな」


灰竜の横から声が上がる。
調子を確かめるように左の腕を回しながら答えたのは、あの人間。
さっきまで殺し合いが嘘のように、胸に開いた穴はふさがり。ちぎれた腕も綺麗につながっていた。

96 名前: ◆xfSBMT78.A[] 投稿日:2016/03/29(火) 21:37:05 ID:.5wg0tsI0


(;゚A゚)「なんだよこの地獄絵図っ!
    なんで俺の巣にこんな魔物がいるんだよ!」

( ・∀・)「お前がどっかから連れてきたんじゃないの?」

(#゚A゚)「ここは俺の巣だぞ。なんで天敵なんか放り込むんだよ!!
    あああぁぁぁぁ、俺の力作がぁぁぁぁぁ」

(; ・∀・)「うぇー?」


人間が首をかしげ、何かを思いついたように頷く。
そこにはどこか晴れやかな表情が浮かんでいた。


( ・∀・)「じゃあ、勝手に住み着いたんじゃない?
      ここ他に比べると毒も薄いから、地上に住めないような奴らでも生きれそうだし」

97 名前: ◆xfSBMT78.A[] 投稿日:2016/03/29(火) 21:39:07 ID:.5wg0tsI0






彼が敵であったはずの人間と歩いているのには理由がある。
あの戦いのあと、男は灰竜を殺すことを諦めた。
殺しても意味はないどころか、かえって害になると理解したのだろう。


( つ∀ )「結局のところ、僕に呪いをかけた竜を探しだすしかないってことか……」


目元を拭ってそう言った彼の表情は、ひどく疲れていた。
しかし、次の瞬間にはもう感情の見えない笑顔を浮かべている。
そこにはもう敵意はなかった。

98 名前: ◆xfSBMT78.A[] 投稿日:2016/03/29(火) 21:41:13 ID:.5wg0tsI0

('A`)(人間ってやつは、よくわからねーな)

( ・∀・)「……となると、ここにいる意味も無いか。
      まさか毒の大地まで来て、死に損なうとは思わなかったよ」


男は立ち上がると、転がっていた腕を拾う。
そのままちぎれた腕を切断面につけると、瞬きをする間もなく繋がった。
……竜の心臓を持っているといっても、それはなかなか信じられない光景だった。


( ・∀・)「そういえばここって他に出口ある?
      上はトラップだらけだし、魔物もしつこいしさ」

(;'A`)「え?」


その言葉にあわてて上層に来てみれば、彼の巣は魔物の巣窟と化していたのである。
そう。彼がもうやることはないと最下層に引きこもっている間に、彼の楽園はとっくの昔に崩れ去っていたのだ。

99 名前: ◆xfSBMT78.A[] 投稿日:2016/03/29(火) 21:43:07 ID:.5wg0tsI0






(;A;)「何だよこれぇ。俺の巣が、俺の巣……」


目の前に見える光景に彼は絶望した。
竜や魔物どころか、人間にさえ敗北する彼にとってこの状況はとてもではないが信じられなかった。
このままでは巣に引きこもるどころか、魔物たちに巣を乗っ取られかねない。


(;A;)「ちくしょー。侵入者が来ないように絶対に改良してやる」

(; ・∀・)「改良してやるって……。
      これまで魔物がいるって、本当に気づいてなかったの?」

(;A;)「あたりめーだろ。人間のお嫁さんと二人で楽しく暮らすつもりだったのに……」

(; ・∀・)「何それ?! 嫁さんぶっ殺す気?
      こんな毒と瘴気まみれの場所なんて、人間無理だよ。即効で死ぬよ!?」

(;'A`)「何だと……」


それでさえショックなのに、隣にいる人間は灰竜にとって更に衝撃的な事実を伝えてくる。
男は魔物たちからは見えない位置に隠れながら、飄々と話す。

100 名前: ◆xfSBMT78.A[] 投稿日:2016/03/29(火) 21:44:58 ID:.5wg0tsI0

(;゚A゚)「いや、お前ここに居るじゃん。それに人間だって頑張れば、平気だろ」

(; -∀・)「相当、しっかり対策しなきゃ難しいと思うんだけどな。
      僕だって、本当は死のうと思ってここに来ただけだし……」

(ii'A`)「人間ってそんなに弱いのかよ……」

( ・∀・)「僕だって最下層に行くまでにも6回くらい死んでるし、そんなもんだって。
      正直、こうしてる今だって毒でフラフラだし。……死にきれてないけど」


男はカラカラと笑うが、竜にはそれどころではない。
魔物から見つからないように、声を潜めながらひたすら彼に問いかけ続ける。


(ii'A`)「連れてきたらどうにかならない? 慣れたりしない?」

( ・∀・)「無理――っていうか、そもそもお前らって肉食だろ。
      人間の嫁さんなんかもらって大丈夫なの? 腹減ったりしない?」

(;'A`)「お嫁さんは食わないよ!」

( ・∀・)「ホントのところは?」

('A`)「……いや、食べないよ!?」

101 名前: ◆xfSBMT78.A[] 投稿日:2016/03/29(火) 21:46:58 ID:.5wg0tsI0

( ・∀・)「ほんとに? 人間食ったり、攫ってきたりしない? 嫌われるよ」


攫ったり、という部分に竜はギクリと息を呑む。
この人間に蜂合わせる直前に、人間を攫ってこようと確かに彼は思っていた。
それがもし成功していたら愛しい嫁は……と、思うとそれだけで恐ろしかった。


(;'A`)「え゙!? さ、攫わない。ほら、俺こう見えて魔力とか鉱物とか大好きだし?!
    ここいるだけで魔力食いたい放題だから肉なんて、草みたいなもんだし!?」

( ・∀・)「……草」

( ・∀・)「草と結婚しようとするって……」


その瞬間、彼の理性は切れた。
魔物がいることも忘れ、翼をばたつかせながら叫ぶ。


(#'A`)「忘れろー忘れろーお前ーっ!!!」

(; ・∀・)「あ、馬鹿。声が大きいって」

102 名前: ◆xfSBMT78.A[] 投稿日:2016/03/29(火) 21:48:55 ID:.5wg0tsI0


その瞬間、魔物たちが一斉に彼らを見た。
あるものは鳴き声をあげ、またあるものは攻撃の態勢を取る。


( ∵)!

( ∵)( ∴)( ∵)( ∴)!!

⌒*(・∀・)*⌒⌒*(・ω・)*⌒⌒゜(・ω・)゜⌒⌒*(・∀・)*⌒⌒*(・ω・)*⌒⌒゜(・ω・)゜⌒


(;゚A゚)「ひぃぃぃぃぃぃ!!!」


あわてて竜は飛びかかってくる魔物に、炎を吐き、爪を振るう。
小さな魔物はなんとか倒せるが、大きい魔物はそうはいかない。
こちらが狩られないように逃げ回りながら攻撃を当て、迫り来る魔物をひたすら倒し続ける。


(#'A`)「くっそぉぉぉぉっ!
    お前ら全部追い払って、人間も住める完璧な巣を作ってやるぅぅぅっ!!!」

103 名前: ◆xfSBMT78.A[] 投稿日:2016/03/29(火) 21:51:05 ID:.5wg0tsI0


飛びかかってくるものは食いちぎり、それでも倒せない奴には尾でなぎ払う。
数は圧倒的に不利。
しかし、彼は動きを止めようとしない。


(#゚A゚)「俺の巣から出てけぇぇぇぇっ!!!
    ここは俺ががんばって作った巣なんだぞ!!!」


ここは彼が自らの力ではじめて作り上げた巣である。
そして、竜の心臓を持つ人間と戦ってまで守ろうとした巣だ。
それをこんな不法侵入者たちに渡す訳にはいかないのだ。

――ここには、彼の全てと。いつか来る大切な嫁との未来がある。


( ・∀・)「がんばって作った……」


一人、高みの見物を決めていた人間が小さく首をひねる。
それから、少しだけ考えこむ姿を見せた。
やがて、魔物の攻撃を避け、灰竜へと近づいた。

104 名前: ◆xfSBMT78.A[] 投稿日:2016/03/29(火) 21:53:27 ID:.5wg0tsI0

( ・∀・)「……せっかくだし、僕も加勢しようかな」

(*'A`)「え? ほんと」

( ・∀・)つ「不法侵入分の代金くらいは払っておこうかなって。
        ……あと、心臓のことを教えてくれた礼も兼ねて」


男の手から剣が抜かれる。
まばゆい光を放つ刀身が、竜ではなく魔物たちへと向けられる。


( ・∀・)「あ、そうだ。僕、モララーって言うんだ。
      モララー・モラル。まだ辛うじて人間の、冒険者ってやつだよ」


何百もの魔物へ向けて立ち向かう彼は笑顔を浮かべている。
それを、不思議なものでも見るような目で眺めながら。竜は攻撃を続ける。


( ・∀・)「お前の名前は?」

('A`)「一番下のとか、灰色のとかなら呼ばれたことがあるが……」


その言葉に今度は灰竜が首をかしげた。
竜は名前を持たない。名前をつけるのは、いつだってヒトだ。

105 名前: ◆xfSBMT78.A[] 投稿日:2016/03/29(火) 21:56:31 ID:.5wg0tsI0


(; ・∀・)「竜って、名前ないの? そうだな……だったら」


人間―― モララーが舞うように剣を振るう。
剣を避けて彼のいない方に回ろうとする魔物を、竜の炎が焼いていく。
竜へと食らいつこうとする魔物は、モララーの剣によって命を散らしていく。


( ・∀・)「……ドクオ。毒の大地の王で、ドクオってのはどうだい?」

('A`)「ドクオ? 俺が、ドクオ?」

(*・∀・)「そう。お前は今日からドクオな」


ドクオが魔物を蹴散らし、モララーがとどめを刺す。
魔物は少しも減らないが、そこに不思議と絶望はなかった。


(*'A`)「そうか、ドクオか」


口の中で、何度もドクオと呼んでみる。
その言葉が自分のものだと思うと、どことなくくすぐったかった。


('∀`)「俺はドクオだ!」


ドクオが大蜘蛛の巣を焼き払うと、飛び出してきた巨体をモララーの剣が受け止める。
そこに噛み付けば、あっさりと敵は倒れる。

目の前の魔物を二人がかりで倒していく。
協力しあうその動きは――まるで、群れのようにも見えた。

106 名前: ◆xfSBMT78.A[] 投稿日:2016/03/29(火) 21:57:29 ID:.5wg0tsI0
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竜という種族がいる。
頑丈な体と長い寿命を持ち、知性に優れ、神に最も近いともいわれる種族。
彼らには、様々な特徴を持つ者たちが居る

天空を飛ぶもの、水を治め天候を操るもの、
毒を制するもの、炎を吐くもの……


( ・∀・)「そっち行ったよ、ドクオ」

('∀`)「任せろ、モララー」



……そして、




(#'A`)「このドクオ様の巣に、何してくれるんじゃぁぁぁぁ!!!!」

107 名前: ◆xfSBMT78.A[] 投稿日:2016/03/29(火) 21:58:03 ID:.5wg0tsI0





群れを作り、巣を守るものである。





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108 名前: ◆xfSBMT78.A[] 投稿日:2016/03/29(火) 21:58:41 ID:.5wg0tsI0





   ('A`)巣作りドックンのようです    完




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