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116 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2015/08/09(日) 00:56:57 ID:5vL5xMqw0
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恐怖?の水餃子を聞き終え、残りのコース料理を全て平らげた後。
( ´ω`)「は〜今日も美味しかったお。」
( `ハ´)「ありがとアル。」
('A`)「お酒結構飲んだね。大丈夫?」
( ´ω`)「余裕余裕。そういえばシナーさんの国には幽霊とか妖怪とかいないのかお?」
( `ハ´)「中国の幽霊は子どもを驚かせるための迷信みたいなもんアル。大人になてからは全く聞かないネ......」
('A`)「妖怪は?」
( `ハ´)「基本的に中国には妖怪はいないアルね。」
('A`)「そうなの?日本みたいに沢山いるのかと思った。」
( `ハ´)「龍とかの幻獣は聞くけれど妖怪とは違うネ。あ、妖怪はいないけどキョンシーは有名ネ。」
( ^ω^)「あれは......妖怪?ゾンビ?」
('A`)「人間が作ったから妖怪ではないのかな?」
( `ハ´)「おいちゃんはそこらへんよーわからんネ。日本には幽霊も妖怪もいて想像力豊かな国ネ。」
(;^ω^)「神様も八百万柱いるからね......」
( `ハ´)「おいちゃんの国はそんな幽霊とかよりも人間の方が怖いネ。」
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117 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2015/08/09(日) 00:58:52 ID:5vL5xMqw0
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貧しい地区ご飯を食べられず餓死なんて当たり前。
生きるために必死に物を盗む子供もいる。
1日の食費を稼ぐために人を殺す人もいた。
と、顔に影を落とし続けた。
( `ハ´)「ま、そんなこと言てもそん時おいちゃんは子供だたからネ。」
( ^ω^)「おうふ.......」
( `ハ´)「それはそうともう一つとておきの怪談話があるネ。幽霊なんかは出ないけれどけこう怖いと思うアル。」
( ^ω^)「楽しみだおー。」
('A`)「今度はちゃんとしたやつか。」
( `ハ´)「あれ、いつも間にか蝋燭消えちゃてるネ。風も無いのに不思議アル。」
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118 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2015/08/09(日) 00:59:39 ID:5vL5xMqw0
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( `ハ´)「おいちゃんの友人の話アル。」
雰囲気を出すために声色を低くし再び蝋燭に火を灯す。
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119 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2015/08/09(日) 01:01:17 ID:5vL5xMqw0
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.,、
(i,)
|_|
『達磨女』
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120 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2015/08/09(日) 01:02:07 ID:5vL5xMqw0
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新婚の夫婦がいた。
女は整った顔立ちをしていた。物静で優雅な振る舞いが絵になっていた。
だが笑った時の人懐っこい笑顔はまるどあどけなさが残る子供のようだった。
彼女は優しい目をしていた中国人。
男は身長が高くがっちりとした筋肉質の体型。
現職の消防士であり日々の鍛錬は欠かさなかった。
彼は顔は強面だがとても心優しい日本人。
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121 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2015/08/09(日) 01:03:35 ID:5vL5xMqw0
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2人の出会いは中国本土。
彼が旅行先で持ち前の経験を活かして彼女を村の火災から助け出したのが始まりだ。
それは彼の仕事が忙しく遅れてしまった新婚旅行で中国に行った時の話。
夏のむしむしした夕方の繁華街を彼女を前にして彼は歩く。
(*゚ー゚)「久しぶりの里帰りだけれど......故郷も家族も友達もいないから特に行きたい場所も無いわね。」
(,,゚Д゚)「まあまあ、俺が君の故郷をもっと知りたいって我儘に付き合ってくれ。」
むすっとする彼女の頭に手を置いてなだめる。
(,,゚Д゚)「あと中華料理なんて友人の店でしか食べたこと無いし是非本場の味を食べたいんだ。」
(*゚ー゚)「もう。貴方ったらそればっかりね。」
シャラン......
彼女が振り向くと耳につけた銀の多重リングのピアスが鈴のような澄んだ音を奏でた。
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122 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2015/08/09(日) 01:05:07 ID:5vL5xMqw0
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たくさんの屋台を横目にどこか落ち着ける店を探す。
(,,゚Д゚)「何か食べたいものはあるか?」
(*゚ー゚)「ふふ、なんでもいいわよ。」
(,,゚Д゚)「うーむ.......」
ぶつぶつとああでもないこうでもないと一人唸る優柔不断を見かねた彼女が一言。
(*゚ー゚)「......甘いもの食べれるところが良いわ。」
(,,゚Д゚)「ずいぶんと可愛らしい要望だな。」
(#゚ー゚)「もう!あなたが決めるのが遅いからアドバイスしたのよ。」
彼女は怒って必死に手を伸ばすが、1歩離れるだけでそれは届かない。
ぷりぷりと怒る彼女に合わせシャランシャランとピアスが揺れる。
表情豊かな彼女にとても似合っているピアスだ。
プレゼントしてよかった。
なんとか許してもらい再び歩き出すと、急に後ろから日本語の女性の声が聞こえる。
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123 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2015/08/09(日) 01:06:20 ID:5vL5xMqw0
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川д川「あなた。達磨好きか?」
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124 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2015/08/09(日) 01:07:13 ID:5vL5xMqw0
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うつむいて表情が窺えない和服姿。
どこか浮世絵離れしている女性がいた。
一瞬訝しげに見たがうきうき気分の新婚旅行で深くは考えなかった。
(,,゚Д゚)「ん?だるま?」
少し下を向き言葉の意味を考える。
(,,゚Д゚)「だるま......ダルマ.......ああ、達磨か。好きだが......ん?」
目をこする。
(,,゚Д゚)「んんん?」
女性の姿は既に無かった。
(*゚ー゚)「どうしたの、あなた?」
(,,゚Д゚)「いや、すまない。腹減ったし早く店に入ろう。」
中国には変な人もいるんだな。
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125 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2015/08/09(日) 01:09:09 ID:5vL5xMqw0
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なかなか雰囲気の良い北京ダックの店を出て満足気に繁華街を歩く。
(,,゚Д゚)「本場の料理も美味しいが、やっぱり友人の店の方が美味しいしサービスも良いなあ。」
食後の杏仁豆腐には彼女も満足してくれたようだ。日本のコンビニに売っている物とは別物だった。
(*゚ー゚)「中国の人は冷たいと言うけれど確かに他人には冷たいわね。」
(,,゚Д゚)「ん?」
(*゚ー゚)「でも日本はサービスが仕事の一つだけれど本心で笑顔で他人にサービスしたいなんて人はいないでしょ。ましてや繁華街の安い賃金のアルバイトでね。」
(;゚Д゚)「あっ......」
(*゚ー゚)「中国にはサービスが給料に含まれて無いだけ。もちろん沢山給料が貰える高い店に行けば日本並みのサービスは受けられるわよ。」
どうやら何らかの地雷を踏み抜いてしまったらしい。
(*゚ー゚)「中国人は自国を含め国籍問わず初めて会う人には冷たいけれど、仲良くなるとガラリと変わって友達のために何でもするようになるほど深い関係築けるのよ。」
饒舌をふるう彼女だが何度か聞いたことある話なのでテキトーに相槌を打つ。
(*゚ー゚)「私達からしたら日本の『建前』って文化は信じられないわ。なんで知らない人に気を使わなきゃいけないのよ。だいたい日本の女性達の友情なんかは......」
彼女は彼の前にいるため話を全く聞いていない事には気が付かない。
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126 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2015/08/09(日) 01:10:03 ID:5vL5xMqw0
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彼女は彼にまくしたてる様に散々喋った後。
「中国人は良くも悪くも正直なのよ?」
最後にそう締めくった。
(,,゚Д゚)「......さいですか。」
(*゚ー゚)「さいですわよ!」
何故かその小さな胸を張った。
(,,゚Д゚)「ジャパニーズタテマエね、確かに煩わしいと感じることが何度もあるな。でもあの店は本当に良い店だ。中国人のマスターも良い人だしな。」
(*゚ー゚)「あなたがそう言うなんてよっぽどなのね。」
(,,゚Д゚)「国に帰ったら連れて行く。」
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127 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2015/08/09(日) 01:10:44 ID:5vL5xMqw0
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ぎゅるるるるる。
じわりじわりと嫌な汗が流れる。
(;゚Д゚)「うっ......」
先ほどの店で食べ過ぎたのか急に腹痛が起こる。
(;゚Д゚)「すまんちょっとそこの信号のところで待っててくれないか?」
(*゚ー゚)「えっ?」
(; Д )「......トイレ......すぐ戻るから。」
(*゚ー゚)「はいはい行ってらっしゃい。」
(; Д )「気を付けるんだぞ......知らない人についていっちゃ......」
(*゚ー゚)「はよいけ。」
よろよろとトイレへ行く彼を見送る。
(*゚ー゚)「はぁ......顔と性格が全く合ってないわね......」
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128 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2015/08/09(日) 01:11:47 ID:5vL5xMqw0
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129 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2015/08/09(日) 01:12:34 ID:5vL5xMqw0
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川゚д川
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131 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2015/08/09(日) 01:14:07 ID:5vL5xMqw0
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(,,゚Д゚)「......」スッキリ
急ぎ足で戻る
(,,゚Д゚)「おーい!もどったぞー。どこだー。」
待ち合わせ場所には誰もいない。
(;゚Д゚)「あ......れ?」
先ほどとは違い今度は滝の様な汗がどっと流れる
(;゚Д゚)「ど......ど、ど、どどこだあああああああああああああああああああああ!!!!」
通路の人たちが驚き一斉にこちらを向く。
(;゚Д゚)「しいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいい!!!!」
待ち合わせ場所の信号付近にいる人に片言の英語で話しかける。
(;゚Д゚)『あの、ここらへん、小さな女性、見ませんでしたか?』
特徴があってわかりやすい彼女だ。誰かしら見ているはずだ。
しかし
<丶;`∀´>「アイゴオオオオオオオオmkfdsafiaop@mg9io0^aamfopa!!!!!jgioas!!!」
話しかけた人全員が必死な形相の彼を怖がって逃げていく。
生まれて初めて強面に生まれた事を後悔した。
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132 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2015/08/09(日) 01:15:16 ID:5vL5xMqw0
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恥を捨て大声で叫びながら彼女を探した。
この広い人混みの中で見失ったら再び見つけるのはとても困難だろう。
叫び続けるが暫く経つと周りの人の関心は薄れたようで、ちらちらと振り向く程度になった。
自分が繁華街の日常に飲み込まれていく感覚を覚えた。
彼女の言う通りやはり中国人は他人にはとても冷たいのだろう。
(; Д )「あ......ああ......」
だめだ。落ち着け俺......ツーリスト・ポリスは中国には無かったはず。まずは警察に走ろう。
息をつくことも忘れて走る。
転がるように警察署に飛び込むと幸い日本語がわかる警察官に出会えた。
藁にもすがる思いだった。
お役所仕事の様な雑な対応にイラッとしたがこれで一先ずは捜索願いは出せた。
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133 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2015/08/09(日) 01:16:26 ID:5vL5xMqw0
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ふらふらとホテルに戻る。あたりはすっかりと暗くなっていてどう帰ったのかも覚えていない。
直ぐに自国の消防署に連絡し訳を話すと休みの延長を貰うことができた。
幸い普段の仕事ぶりを上司が知っていてくれてよかった。
それからの1週間はあっという間だった。
食べることも寝ることも最小限にし繁華街を歩き回りPCで誘拐記事を調べる毎日。
顔はやつれ無精ひげは生え放題。鏡を見ると一気に10歳は老けこんだのではないかと思う。
中国は何か月もビザなしで滞在できた筈だ。
しかし残念なが俺には生活がある。戻ってきたときに職が無いなんて聞いたら彼女が悲しむだろう。
次の週。歯を食いしばりながら帰国した。
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134 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2015/08/09(日) 01:18:02 ID:5vL5xMqw0
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中国警察には大使館を通しすぐに連絡をしてもらうように言ってある。
帰国してからマスコミに質問責めにされる事態が起こったが報道してもらって目撃証言を集められるのは幸いだった。
世間ではちょっとした有名人だ。
1ヶ月後再び1週間の休みを取ることができた。
この1ヶ月は仕事が手に付かず気が気では無かった。
彼女には両親や友達はいない。故郷も既に焼き払われた。
いなくなっても心配するのは自分だけだ。
自分......1人だけ......
踏み出すのに時間がかかってしまった。
中国警察からの連絡は無し。
捜索してくれているのかも怪しい。
休めるのはこれが最後だろう。これ以上続けるとクビになってしまうかもしれない。
それでも構わない。彼女がいなければ仕事なんてする意味がない。
以前と同じホテルへチェックインし、中国語で書かれた捜索願いのビラを両手に繁華街へと繰り出した。
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135 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2015/08/09(日) 01:18:46 ID:5vL5xMqw0
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受け取ってもらうのは簡単だった。そりゃ数年分の給料を報酬としてかけているんだから当たり前だ。
3日間繰り返すが全く情報は入って来なかった。
あの日待ち合わせた信号の前でうなだれる。
(; Д )「俺の......大切な人なんだ......頼む......無事でいてくれよ......」
どれくらいそうしていただろうか。
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136 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2015/08/09(日) 01:19:26 ID:5vL5xMqw0
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川д川「あなた。達磨好きか?」
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137 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2015/08/09(日) 01:20:20 ID:5vL5xMqw0
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突如声をかけられた。
見上げると浮世絵離れ離れした和服を着た髪の長い女性。
いや、声をかけられたと言うよりもただ目の前に立ち誰にでもなく話しかけている様に感じられた。
(;゚Д゚)「きっ、君は!あの時もいた......」
かすかな希望をもち立ち上がる。
川д川「......」
(;゚Д゚)「なあ!!!あの時もいた子だろう?」
川д川「......」
(;゚Д゚)「俺の彼女がここの信号の近くで誘拐されたんだ、何か知らないか?」
川д川「......」
無言。
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138 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2015/08/09(日) 01:21:05 ID:5vL5xMqw0
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(;゚Д゚)「......聞いているのか?」
川д川「あなた。達磨好きか?」
うつむき表情は窺えない。
(;゚Д゚)「おい!聞いてくれよ。もう頼るあてが無いんだ!」
川д川「あなた。達磨好きか?」
俺を無視して淡々と呟く女性にイラつき声が大きくなる。
(#゚Д゚)「ああ、俺は達磨は好きだ!だから彼女に心当たりが無いか教えてくれ!見ればすぐに分かるはずだ。だって彼女は......」
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139 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2015/08/09(日) 01:22:06 ID:5vL5xMqw0
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川゚д川「付いてきて......」
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140 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2015/08/09(日) 01:23:13 ID:5vL5xMqw0
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急に踵を返し人ごみをすり抜けるようにスルスルと移動を始める。
(;゚Д゚)「お、おい!」
見失わない様に人にぶつかりながら追いかける。
いつの間にかいかにも治安が悪そうな暗い裏路地に差し掛かる。
(,,゚Д゚)「何処へ行ったんだ......」
見失ってしまった。
(#゚Д゚)「糞っっ!!!!」
裏路地の出口を探そうとあたりを見渡す。
途端、視界の端に奇妙な建物が映る。
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141 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2015/08/09(日) 01:24:09 ID:5vL5xMqw0
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中華式のロールケーキの様な瓦屋根が錆びついていて汚らしい。
嫌味なほど紅と金の装飾が施されているぎらぎらとした館の様な建物。
『達磨館』
看板にはそう書いてあった。
気味が悪い。
率直な感想だった。
だが日本を感じられる建物に惹かれゆっくりと彼は吸い寄せられる。
何か手がかりがあるかも知れない。
まともに言葉が通じる人がいるかもしれない。
淡い希望を抱く。
暖簾をくぐると異質な光景が広がっていた。
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142 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2015/08/09(日) 01:25:21 ID:5vL5xMqw0
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日本のものと思われる達磨がずらっと並べられており店員らしき人物はいない。
恐る恐る奥へ進むと達磨が敷き詰められた壁以外に幾つか檻がはめ込まれている。
「うう......」
「うぅ......ぐ」
中からは呻き声の様なものが聞こえる。
檻の中の一つを覗く。何も入っていないと思ったが部屋の隅に肌色の肉塊が転がっていた。
(;゚Д゚)「ッッッ!?!?!?!?!?」
焼けて爛れて赤黒くなった顔。目が開けないほと癒着しているのだろう。
手足は付いておらず腕と足の付け根には汚らしい包帯が雑に巻きつけられていた。
衣服は身につけておらず毛は伸び放題。
どのくらい此処にいるのだろう。
体つきからみて30代の男性だろうか。
(;゚Д゚)「見世物小屋......」
そんな言葉が頭自然と漏れる。
気持ち悪くなり目を反らす。
他の檻にも同じ様に小さな肉塊が閉じ込められているだろうか?
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143 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2015/08/09(日) 01:26:20 ID:5vL5xMqw0
-
くらっと目眩がし、隣の檻へ手をかけ倒れそうになるのを堪える。
顔をあげると先ほどよりも髪の長い肉塊が部屋の隅で震えているのか目に入った。
やはり同じ様に手足が根元から切り取られ包帯が巻かれていた。
まだ新しいのか巻きつけられている包帯はまだ綺麗だ。
これは女性だろうか。
「う......うぐぐ、ぐがだずげぐごでがが」
檻の中の女が口を開く。
見えてしまった。
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144 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2015/08/09(日) 01:27:06 ID:5vL5xMqw0
-
口の中にあるべきものがない。
舌と半分ほど切り取られているのかうまく喋れていないようだった。
歯もいくつか抜かれている。
ズル……ズル......と肉の擦れる音を立ててこちらに近づく。
(; Д )「惨すぎる......」
もう限界だ。
他の檻なんて見る気も起きない。
早くここを出て彼女を探しに戻ろう。
こんなものを見るために中国に来たんじゃない
俺は何も見なかった。
すぐにでも離れたかった。
振り向きふらふらと檻を後にする。
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145 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2015/08/09(日) 01:28:17 ID:5vL5xMqw0
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どさっ......
後ろの肉塊が倒れたのであろうか。
そんな音を無視して振り向かずに離れようとした。
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146 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2015/08/09(日) 01:29:01 ID:5vL5xMqw0
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が
倒れる音の後に今、この瞬間。
世界で1番聞きたくない音が聞こえてしまった。
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147 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2015/08/09(日) 01:29:42 ID:5vL5xMqw0
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シャラン
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148 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2015/08/09(日) 01:30:32 ID:5vL5xMqw0
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大好きな音が聞こえてしまった。
絶望に染まっていく顔で彼はゆっくりと振り向く。
心臓がうるさいほど激しく胸を内側から叩く。
焦点が定まらない。
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149 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2015/08/09(日) 01:31:13 ID:5vL5xMqw0
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ズル......ズル......
シャラン
ゆっくりとこちらに近寄って来ている。
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150 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2015/08/09(日) 01:32:06 ID:5vL5xMqw0
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「うぐ、うう......」
ズル......ズル......
シャラン
金縛りにあったかのように目が離せない。
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151 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2015/08/09(日) 01:33:40 ID:5vL5xMqw0
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ズル......ズル......
シャラン
「うぐ、ぐぐ.......」
次第に音が大きくなる。
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153 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2015/08/09(日) 01:34:21 ID:5vL5xMqw0
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ズル......ズル......
「......ど......ぐ」
シャラン
(; Д )「違う......」
死にかけの芋虫の様な動きが次第に早くなる
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154 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2015/08/09(日) 01:35:02 ID:5vL5xMqw0
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ズル......ズル……
「や............うぐ」
シャラン
(; Д )「そんな訳は無い。」
あるはずが無い。
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155 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2015/08/09(日) 01:35:42 ID:5vL5xMqw0
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ズル......ズル......
「やっど......」
シャラン
(; Д )「やめろ!こっちに来るな!」
お願いだ......やめてくれ......
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157 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2015/08/09(日) 01:36:41 ID:5vL5xMqw0
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ガシャン!!!!!
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158 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2015/08/09(日) 01:37:32 ID:5vL5xMqw0
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突然の大きな音に驚き現実に引き戻される。
目の前には檻に倒れかかった達磨の様な女性がいた。
目が......合ってしまった。
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159 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2015/08/09(日) 01:39:17 ID:5vL5xMqw0
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女は整った顔立ちをしていた。物静で優雅な振る舞いが絵になっていた。
顔は傷だらけで見るに堪えない。ぱたぱたと感情に合わせて動く手足は既に切り取られ可愛らしい動きは二度とできない。
だが笑った時の人懐っこい笑顔はまるどあどけなさが残る子供のようだった。
彼女は笑っているがうまく笑う事が出来ないのかニタニタと気味悪く笑う。引き抜かれた下の歯の隙間からだらだらと子供の様にヨダレを垂らしている。
彼女は優しい目をしていた中国人。
その目の片方はくり抜かれ優しさなんて言葉とは遠い所にいる。まるで目を書き込む前の達磨の様だ。
「やっど......やっど......」
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160 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2015/08/09(日) 01:39:57 ID:5vL5xMqw0
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(メ*”ー゚)「やっどむがえにぎでぐれたあああああああああああああああああ!!!!!!!!!!」
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161 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2015/08/09(日) 01:40:37 ID:5vL5xMqw0
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ガシャンガシャンとぶつかり檻を揺らす。
檻に噛みつき嬉しそうに歪む。
(メ*”ー゚)「ああああああいだがっだああああああああああああああ!!!!」
嗚呼......夢なら覚めてくれ。
目が覚めたらきっとまた2人で......
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162 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2015/08/09(日) 01:41:42 ID:5vL5xMqw0
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「あああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!」
泣いている様な......喜んでいる様な......彼女の声が耳から離れなかった。
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163 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2015/08/09(日) 01:42:22 ID:5vL5xMqw0
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その男性は壊れてしまった彼女を車椅子に乗せ一緒に今も裏路地を彷徨っていると聞く。
丁度この店の外の様な暗い路地を。
彼女を壊した犯人を見つけるために。
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164 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2015/08/09(日) 01:43:03 ID:5vL5xMqw0
-
(
)
i フッ
|_|
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167 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2015/08/09(日) 01:47:35 ID:5vL5xMqw0
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( ; ゚ω゚)「......」ガタガタガタガタ
( `ハ´)「ふふふふふふ。」
(;^ω^)「あれ?ドクオ?」
('A‘)「」
(;^ω^)「し......死んでる!」
( `ハ´)「ふふふふ、モデルはおいちゃんの友達だけど話は都市伝説をアレンジした作り話ヨ。どうだたアル?」
(;^ω^)「さ、酒が抜け切るほど怖かったお。作り話でよかった。」ブルルッ
( `ハ´)「ふふふふふふ。こわかたアル?ねえこわかったアル?」
(;^ω^)「ええい、うっとおしいお。あとドクオいい加減起きろ。」パチコーン
('A`)「いてえ。」
( `ハ´)「でも都市伝説ていうくらいだから何処かで起こてるのかもしれないネ。」
( ^ω^)「誘拐して達磨の様に手足を切り取る?恐ろしいお。」
-
168 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2015/08/09(日) 01:48:51 ID:5vL5xMqw0
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( `ハ´)「これはおいちゃんの作り話だけれど、実は話の中に一つだけ本当の事がアルネ。」
(;^ω^)「なななんだお?怖いお?」
( `ハ´)「ふふふ、内緒アル。今日は驚かせてごめんアルヨ。」
('A`)「最初の話があれだったせいで気軽に身構えてたから死にかけた。」
( ^ω^)「確かに。」
( `ハ´)「お詫びにデザートつけちゃうから食べててね。」
(*^ω^)「おっおっお。今日はなんだお?」
( `ハ´)「自家製の杏仁豆腐ネ。」
(*'A`)「おお、美味しそう!」
( `ハ´)「本場中国の杏仁豆腐は日本のとは違って......」
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169 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2015/08/09(日) 01:49:47 ID:5vL5xMqw0
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( ^ω^)「美味しかったおー。」
('A`)「お腹いっぱいだ。」
( `ハ´)「ふふふ、いつもありがとうね。美味しそうに食べてくれるとおいちゃんも嬉しいアル。」
( ^ω^)「シナーさんの料理ならいくらでも食べられるお。」
(*`ハ´)「褒めても今日はもう出せるサービスは無いネ。」
ガラガラガラ
( `ハ´)「お、いらっしゃいませアル。」スタスタスタ
( ^ω^)「そういえば今日はお客さん僕らだけだったおね。」
('A`)「ね。」
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170 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2015/08/09(日) 01:50:46 ID:5vL5xMqw0
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2人で話し始めた瞬間。
どこかで聞いたことがあるような鈴を鳴した様な音が店内に響く。
シャラン......シャラン......
( ^ω^)!?
('A`)!?
その男性は壊れてしまった彼女を車椅子に乗せ一緒に今も裏路地を彷徨っていると聞く。
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171 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2015/08/09(日) 01:51:46 ID:5vL5xMqw0
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2人は振り向き直ぐに硬直した。
シャラン......シャラン......
丁度この店の外の様な暗い路地を。
( ; ゚ω゚)!?
(;゚A゚) !?
キィ......キィ.......
(,, Д )「......」
(* ー )「......」
シャラン......
車椅子を押す大きな強面の男性とそれに乗った小柄な女性。
彼女を壊した犯人を見つけるために。
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172 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2015/08/09(日) 01:53:53 ID:5vL5xMqw0
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( ; ゚ω゚)「ぬおおおおおおおおおお!!!いやだおおおおおおお!!!!」
(;゚A゚) 「ピイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイ!!!!!」
どたどたと腰を抜かしかけた情けない走りで2人は走り去った。
(;゚Д゚)「なっ、何だ何だ?」
(*゚ー゚)「あなたの顔が怖かったんじゃないの?」
彼女は振り向きその手で彼の頬を抓る。
( ;`ハ´)「アイヤー......」
(,,゚Д゚ )「ひょんなにこわかっひゃかおれのかお?」
( `ハ´)「達磨女の話して怖がらせちゃったからアル。」
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173 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2015/08/09(日) 01:55:23 ID:5vL5xMqw0
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(,,゚Д゚)「達磨女......ああ前話してくれたやつか.....でもそれ大の大人が逃げ出すほどの話じゃないだろう。」
( `ハ´)「いやあ、まあ。登場人物が目の前にいる強面の男性じゃなきゃそうアルね。」
(,,゚Д゚)「......」
(*゚ー゚)「......」
(,,゚Д゚)「貴様......」
( `ハ´)「?」
(#゚Д゚)「まああああたやりやがったなああああああああああああああああ!!!!」
(;`ハ´)「いやあああああああああああああああああああああああ!!!!」
(*゚ー゚)「面白い人たちね。」
( `ハ´)「おお、あなたがしぃさんネ。驚かせてごめんないネ。食後のデザートの杏仁豆腐サービスするから許してアル。」
(*゚ー゚)「まあ嬉しい。杏仁豆腐は大好物よ。」
(#゚Д゚)「俺の話を聞けえええええええええええええ!!!!」
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174 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2015/08/09(日) 01:57:22 ID:5vL5xMqw0
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コース料理と杏仁豆腐が終わりマスターとの雑談に花が咲く頃。
(,,-Д-)「ぬごー......すごー......」
(;゚ー゚)「あなた......お酒弱かったのね......」
( `ハ´)「あら、寝ちゃったネ。ダメな人アル。」
(*゚ー゚)『ふふ、そんなことないわよ。こんなのでも悪しき風習から解き放ってくれた大切な人なんだから。』
聞きなれた母国語が聞こえる。
( `ハ´)『彼から聞きましたがまだ残っていたんですね......』
(*゚ー゚)『ええ。でも今はこの人に出会えたからその風習があってよかったって思ってるのよ。』
( `ハ´)『あなたは強い人ですね......』
(*゚ー゚)『そんなこと無いわよ。おかげでこうやって一緒にいてくれるんだからね。』
彼女は人間にしてはとてもちいさな足の先をぱたぱたと動かし照れるように笑った。
シャラン......
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175 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2015/08/09(日) 01:58:20 ID:5vL5xMqw0
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(*゚ー゚)「ほらあなた。起きて。そろそろ帰るわよ。」
(,,-Д-)「うぐ......おう......」
(*゚ー゚)「もう、私を手放したら承知しないからね。」
( `ハ´)「また来て欲しいアル。」
(*゚ー゚)「とても良い雰囲気だし料理も美味しかったから是非また来たいわ。」
( `ハ´)「ありがとうアル。最後においちゃんの店の会員カード代わりの物を受け取って欲しいアル。」
(*゚ー゚)「何かしら......あっ!!」
渡された淡い青の懐紙を開いてみると小さな琥珀があった。
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176 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2015/08/09(日) 01:59:10 ID:5vL5xMqw0
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(*゚ー゚)『あらあら、私は琥珀なんか無くても彼にたくさんの幸せをもらってるわよ。』
( `ハ´)「失礼したネ。でも幸せなんていくらあっても損は無いネ。だからおいちゃんのお節介だと思って受け取って欲しいアル。」
(*゚ー゚)「ふふふ、それなら仕方ないわね。頂くわ。」
(,,-Д゚)「ん?今なんて言ったんだ?」
(*゚ー゚)「内緒よ。」
( `ハ´)ノシ「再見」
(*゚ー゚)ノシ「再見」
(,,゚Д゚)「また来るよ。」
( `ハ´)ノシ「......」ジー
(*゚ー゚)ノシ「......」ジー
(,,゚Д゚)ノシ「ざ、再見」
(*゚ー゚)「うむ。」
ガラガラガラ
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177 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2015/08/09(日) 02:00:10 ID:5vL5xMqw0
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( `ハ´)「......人間の考えることはどこまでも恐ろしい。
でもそれを乗り越えた人たちは本当に強く輝いて見える......彼女に幸せが訪れますように......アル」
.
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178 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2015/08/09(日) 02:01:02 ID:5vL5xMqw0
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( `ハ´)『珀の心』のようです
百物語編 1話、2話。 〜おわり〜
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181 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2015/08/09(日) 02:11:57 ID:5vL5xMqw0
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補足。
しぃの脚は中国の纏足*というとうの昔に風化したはずの風習によって小さく捩れています。
本当はこの後に
中国の山奥の村に訪れた女性を無差別に足先を削ぐ狂気の村。その村で産まれたしぃをギコが救い出す
という話があったのですが長くなってしまいしかもホラーじゃなくなったので没にしました。
それをあえてぼかすために達磨女の話しではしぃが車椅子に乗っていることはなるべく触れない感じに濁していました。
わかりにくくなってしまいすみません。
*幼児期より足に布を巻かせ、足が大きくならないようにするという、かつて中国で女性に対して行われていた風習。
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『珀の心』