※下記作品の続編です ( `ハ´)『珀の心』のようです
- 82 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2015/08/09(日) 00:23:08 ID:5vL5xMqw0
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カッとした初夏の陽射し。
アスファルトジャングルにこれでもかと乱反射を繰り返し、そこに住む生き物達をじりじりと焦がした。
その陽ざしから逃げる様に駅前の暗い路地に入ると、ひっそりと営業する小料理屋『琥珀』を見つけることができるだろう。
熱さが和らぐ夕方頃。ひぐらしの声が暗い路地にまで響く。
(,, Д )「......ここだ。」
(* ー )「......」
キィ......キィ......シャラン......
揺れる彼女からは金属の軋む音と鈴を鳴らしたような澄んだ音が響く。
ガラガラガラ
ゆっくりと店内に入り見渡すと日本人から見ると少し不気味な真っ赤な蝋燭に照らされた3つの頭。
2つは驚き言葉を失い1つはニコニコとこちらを見る異様な光景があった
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- 84 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2015/08/09(日) 00:25:05 ID:5vL5xMqw0
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「そうだ、今度実家で子供たちと百物語って怪談会で話すんだけれどシナーさんは何か怖い話持ってないかお?」
『琥珀』での帰り際の何気ない会話。
それが先日。
その一言を聞くと彼は何やら長いこと考え「また来週来てほしいアル」とだけ告げた。
そして今日。
彼は真っ赤な蝋燭に火をつけ燭台に乗せると、ことり......とそれをカウンターに置いた。
( `ハ´)「おいちゃんが小さい頃の話アル。」
- 85 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2015/08/09(日) 00:26:26 ID:5vL5xMqw0
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.,、
(i,)
|_|
『恐怖の水餃子』
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- 86 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2015/08/09(日) 00:27:35 ID:5vL5xMqw0
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おいちゃんの家族は水餃子を売て生計をたててたアル。
父が皮をこねて肉を詰め、母が時間を計り茹でる。昔ながらの手作業の水餃子屋さんネ。
当時は貧乏だたから貧乏な所にしか住めなくて、さらにそこで貧乏相手に水餃子を売るから全くお金が稼げなかたヨ。
でも近所ではうちの水餃子の肉は他の店よりも美味しいと評判だたネ。
儲けが殆どでないから良い材料を買える筈が無いのに、何故だか家の水餃子の肉は美味しいと評判......
違和感はあたけどおいちゃんはまだ小さかたからそんな矛盾に気付けなかたアル。
- 87 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2015/08/09(日) 00:29:05 ID:5vL5xMqw0
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貧乏だったから食事は朝と夜の2食だけ。
それでも毎日父と母とおいちゃんの3人で食卓を囲んで食べるのはとても楽しかったアル。
2人はとても優しくて貧乏なんて気にならかった。
一つだけ不満だったのは水餃子屋さんの子供なのにその水餃子を食べた事が無かった事。
いくら頼んでも両親は頑なに首を横に振り水餃子を食べさせてくれなかった。
- 88 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2015/08/09(日) 00:30:02 ID:5vL5xMqw0
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('A`)「既に不安しかないんだけど。」もそもそもそ
( ^ω^)「絶対あかん肉やそれ。」はむはふはふ
( `ハ´)「あ、お酒切れたネ。新しいのもて来るネ。」
すたすたと厨房の奥に消える。
('A`)「この野菜炒め美味しすぎる。」もそもそ
( ^ω^)「この野菜何?滅茶苦茶うまいカイワレみたいなやつ。」
( `ハ´)「豆苗とマコモダケの野菜炒めネ。」
奥から冷凍庫で冷やした青島ビールを2本持ち出し良く冷えたグラスに注ぎながら言う。
( `ハ´)「カイワレみたいなのは豆苗て言う高級食材ネ。エンドウ豆の若い葉ぱね。マコモダケは......ってモー、料理の説明よりもおいちゃんの話を聞いて欲しいネ。」
( ^ω^)「美味しすぎるのが悪いんだお。」
('A`)「ごめんね。」
ごほんと1つ咳払いの後語りを続ける。
- 89 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2015/08/09(日) 00:31:22 ID:5vL5xMqw0
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おいちゃんが小学校に上がると年に数回お弁当を持参する日があたアル。
普段家で昼食は食べなかたからその日母は弁当を作るのを忘れてたネ。
おいちゃんが両親の水餃子を食べたいて事もあたけれど、何より学校の友達に美味しい水餃子を食べさせてあげたかたネ。
魔が差したアル。
アルミ製のおいちゃんのお弁当箱に10個。
配達に行てる母の目を盗んで店の厨房に忍び込み、出来立ての水餃子を入れたアル。
昼の時間を楽しみにしながら登校したネ。
- 90 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2015/08/09(日) 00:33:22 ID:5vL5xMqw0
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あまりにも楽しみすぎて全速力したら登校途中にド派手に転んだヨ。
膝をすりむいたけれどそれよりも水餃子の事が気になてお弁当を開けて確認したアル。
驚いたネ。
10個あた筈の餃子が8個になてたアル。
でもおいちゃん子供だたから深くは考えなかたネ。
ここで気付いていればあんな恐怖を味合わなかったのに。
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- 91 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2015/08/09(日) 00:34:38 ID:5vL5xMqw0
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外国語を喋りすぎたのか息継ぎのために口に水を含む。
('A`)「......そういえば気になってたんだけれどなんで今日は蝋燭なんか立ててるの?」
( ;`ハ´)「今更アルか......あれから百物語について調べたらこうやて蝋燭を点けるて書いてあたネ。」
(;^ω^)「あ、忘れてたお......これ怖い話だたのか。邪魔してごめんだお。」
( `ハ´)「和蝋燭なんて無かたからうちの国の赤いの使たネ。でもこの蝋燭て旧正月のイメージだからなんか変な感じアル。」
- 92 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2015/08/09(日) 00:36:36 ID:5vL5xMqw0
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学校に着くと早速友達に昼食で最高に美味しい水餃子を食べさせてあげると言いふらしたネ。
授業が始まても水餃子が気になて仕方がなかたアル。
まだ9時前なのにまだかまだかと弁当箱をちらちら見てたネ。
誰かに盗まれていないかと心配になて開けてみるとまた餃子が減ていたアル。
6個。
流石のおいちゃんも分かたネ。
何か恐ろしい事が起きている。
誰が盗んでるわけじゃないとしたら水餃子が勝手に動いているのだ。
- 93 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2015/08/09(日) 00:37:32 ID:5vL5xMqw0
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勝手に消える水餃子はとても怖かたネ。
机の中を探しても床に這いつくばて探しても見当たら無かたアル
見間違いじゃなかたヨ
確かめる様にもう一度開ける。
4個。
おいちゃんもうこの時点で泣きそうだたネ。
怖かたこともあるけど両親の水餃子が食べられなくなることが悲しかたネ。
- 94 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2015/08/09(日) 00:38:26 ID:5vL5xMqw0
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もうすぐ昼の時間。
休み時間はいつもなら外で遊ぶのに今日は教室の中で弁当箱を見つめていたネ。
仲の良い友達にあげる分と自分の食べる分くらいは残てて欲しかたヨ。
それは突然の出来事だったアル。
ぐちゃり.......
小さな音だったが確かに聞こえた。
肉が蠢くような音が。
驚き体が動かない。
が
子供特有の好奇心からかすぐに手を伸ばしてゆっくりと蓋を開ける。
- 95 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2015/08/09(日) 00:39:29 ID:5vL5xMqw0
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やっぱり無くなっている。
2個。
これ以上減らないようにすぐに蓋をしめた。
友達に上げる分すら無くなってしまった。
後で謝ろう。
次に餃子を食べることができるチャンスはいつだろうか。
1つだけでも食べたい。
1つだけ......
弁当箱の中で起こっている異変には気付けるはずもなかった。
- 96 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2015/08/09(日) 00:40:53 ID:5vL5xMqw0
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待ちに待った昼食の時間。
誰よりも早く弁当箱を開ける。
0個
酷く落胆した。
自分の食べる分さえ無くなっていた。
- 97 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2015/08/09(日) 00:42:00 ID:5vL5xMqw0
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次食べる機会が訪れるのは何時だろうか……
でもこれ以上恐怖は起こらない。どこか安堵感もあった。
うな垂れたまま弁当箱をしまうために蓋をして持ち上げる。
が気がついてしまった。
- 98 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2015/08/09(日) 00:42:50 ID:5vL5xMqw0
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重い。
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- 99 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2015/08/09(日) 00:43:33 ID:5vL5xMqw0
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アルミの弁当箱にしては重すぎる。
中に何かがいる。
驚き床に落としそうになるが持ちこたえる。
そして未知のものに刺激を与えないようにゆっくりと机に置きなおした。
恐る恐る上蓋を持ち上げアルミの弁当箱の中を覗く
やはり何もいない。
弁当箱の中身は空。
何だ一体何が……
違和感を感じる。
弁当箱が重いわけではない。
蓋を開けた腕がとても重い
重いのは腕の先。
- 101 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2015/08/09(日) 00:44:58 ID:5vL5xMqw0
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そう、上蓋が異様に重いのだ。
上蓋を恐る恐るひっくり返す。
心臓が止まりそうになった。
- 102 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2015/08/09(日) 00:45:44 ID:5vL5xMqw0
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そこには
蓋の裏に
びっしりと
張り付いた
- 103 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2015/08/09(日) 00:46:26 ID:5vL5xMqw0
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10個の水餃子があった......
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- 104 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2015/08/09(日) 00:47:12 ID:5vL5xMqw0
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(
)
i フッ
|_|
- 112 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2015/08/09(日) 00:52:54 ID:5vL5xMqw0
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( `ハ´)「終わりアル。」
( ^ω^)「......」
(゚A゚)「......」
( `ハ´)「......終わりアル。」
- 113 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2015/08/09(日) 00:53:36 ID:5vL5xMqw0
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(#^ω^)「ギャグじゃねえかああああああああ!!!」
(゚A゚)「ひいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいい!!!!」プルプルプル
(#^ω^)「目を覚ませドクおおおおおおおお全く怖くねえおおおおおおお!!!」バシッバシッバシッ
(゚A゚)ガクガクガクガク
( `ハ´)「でも水餃子......」
(#^ω^)「餃子はいらんおおおおおおおおお」
pipipipipipipipi
ブーンの叫びを裂くように厨房からアラームが鳴る。
- 114 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2015/08/09(日) 00:55:02 ID:5vL5xMqw0
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( `ハ´)「餃子蒸しあがたアル。あ、内藤さん餃子はいらないネ......残念アル。」
(#^ω^)「すんませんでしたああああああああああ!!!!」
(゚A゚)「シナーさんの手こねの皮めちゃくちゃおいしいんですううううううう!!!」
(#^ω^)「小籠包もおいしいんですううううううううう!!!!」
小料理屋『琥珀』は今日も常連客と共に賑わう。