2012年芸術の秋ラノベ祭りのようです
('A`)My baby blueのようです
  Part3



100 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2012/12/31(月) 23:46:20 ID:8iv8QR2Q0


俺は、普段通り港通りを歩いていた。
飛行艇の整備が終わって、家に帰るためだ。

( 'A`)y━・~~ 「おー、さむっ」

季節は冬。
雪こそ今日は降ってないけど、冷たい風が骨身にしみる。

こんな気候で飛行艇なんか乗ったら凍死する、なんて思うかもしれないが案外そうでもない。
エンジンの熱を利用して、暖房じみたことが出来るから、下手すれば夏より快適だったりする。

( 'A`)y━・~~ 「明日、晴れたら飛んでみるかな」

俺は呟いた。
最近独り言が多くっていけない。

101 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2012/12/31(月) 23:50:25 ID:8iv8QR2Q0

前方から、二人歩いて来た。
ブーンとツンだった。

ξ゚听)ξ「おはよう」

( ^ω^)「…」

('A`)「……よう」

俺は応える。
ブーンはじっと俺の目を見据えたままだ。

( ^ω^)「僕は…」

言い淀む。
ブーンは俯いて。

('A`)「え?」

俺は聞き返した。

176 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/01/03(木) 00:18:22 ID:/Bu0Wt6.0

沈黙。
ほんの数瞬。

ブーンが顔を上げる。

( ^ω^)「僕は、まだお前を許したわけじゃないお」

苦虫を潰したような顔。
ブーンも、多分俺も。

( A )「そうか…」

謝ろうと思って。
ただ俺は口を真一文字に閉める。
煙草の煙が視界を塞ぐ。

( A )「俺はまだ、お前のこと親友だと思ってるよ」

言葉が漏れた。
贖罪のつもりか、俺。

( ^ω^)「……今更なんのつもりだお」

ブーンは一言だけ、返事をすると、俺のすぐ横を通り過ぎた。

102 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2012/12/31(月) 23:54:14 ID:8iv8QR2Q0


ξ゚听)ξ「…そう」

('A`)「…すまなかった」

俺は謝った。
念のため。

こういう時のツンは、凄く淡白で話しやすい。
ツンの癖に感情的にならないんだ。


ξ゚听)ξ「あんたは、自分が間違ったことしたって思ってるの?それで、謝ってるの?」

('A`)「いや、これっぽっちも思っちゃいない」

俺はクーの件に関して、ブーンとツンに対して多少の謝意はあれど、間違ったことをしたとは思っていなかった。

むしろ今でも最良の選択ではないにしろ、あれ以外に方策は無かったと、そう思っている。

103 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2012/12/31(月) 23:56:25 ID:8iv8QR2Q0
ξ゚听)ξ「じゃあ今のは、何?」

ツンが俺の目を射抜いて言った。

('A`)「二人で勝手にやっちまったことと、後はあいつの代弁だ」

ξ゚听)ξ「代弁?」

('A`)「あぁ、あいつならきっとこうする」

意外そうな顔。
でもすぐ元に戻った。

ξ゚听)ξ「そ。ならいいわ」

険しい顔が、柔らかくなる。

ツンは、両手を口に添えて、吐息を吹きかけた。
真っ白に染まる。

ずっと外にいるには辛い季節だ。

('A`)「暖炉、着けるか?」

ξ゚听)ξ「お願いするわ」

俺は席を立つ。
火掻き棒で暖炉を少し弄って、点火した。
途端にほんのり目の前が暖かくなる。

184 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/01/06(日) 00:56:01 ID:PF.zYYfM0

こちらに来て三ヶ月あまり。
ツンと腹を割って話したのは、これが初めてだった。

ξ゚听)ξ「…あんたが、巫山戯たこと言ったらブン殴るつもりだった」

しばしの沈黙の後、ポツリとツンは言った。

('A`)「殴ってくれて、構わない」

ξ゚听)ξ「そんなことしないわよ。一番辛かったのはあんただったでしょうに」

ツンはわけも無く言った。
やっぱり人間年齢を重ねると、丸くなるのだろうか。

104 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/01/01(火) 00:01:56 ID:Fw5C8URw0
ξ゚听)ξ「まぁドMって言うんなら殴ってあげなくもないわ」

('A`)「馬鹿言え」

変わらないな、そう思った。
十数年ぶりの再会でも俺は、あぁこいつはツンなんだな、と認識出来た。
顔じゃない、もっと別の何かが俺にこう思わせている。

('A`)「お前は変わらないな」

つい、口に出る。

ξ゚听)ξ「あんたに言われたかないわ」

一蹴。
少しは感慨に浸ったりするかとも思ったんだが。

ξ゚听)ξ「あんた昔とちっとも変わらず間抜けで無駄にカッコつけじゃない」

ツンは言い放つ。

105 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/01/01(火) 00:04:20 ID:Fw5C8URw0
(;'A`)「俺そういう風に見られてたのか」

ξ゚听)ξ「ま、クーはあんたのそういうところが好きだったみたいだけど」

少しだけ、鼓動が跳ねた。
名を聞くと動揺してしまう。
躊躇いなく、淀みなくクーの名を呼べるツンが羨ましい。

('A`)「……」

ξ゚听)ξ「ハァ…。あんたって本当不器用よね」

ツンは言った。
その表情は呆れかえっている。

('A`)「悪かったな」

ξ゚听)ξ「だいたい何いい年した男二人がいつまでも意地張り合ってんのよ」

('A`)「俺はそういうつもりじゃ…!」

そういうつもりじゃなくてもそうなってるんだ、とツンに窘められる。

俺は途端に情けなくなった。
これじゃまるで子供じゃないか。

106 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/01/01(火) 00:09:29 ID:Fw5C8URw0

ξ゚听)ξ「だいたいねぇ、あんたブーンが何で怒ってるかも分かってないでしょ?」

さすがにそれは心外だ。
理由なんて分かり切ってる。

('A`)「そんなもん、ひと…」

ξ゚听)ξ「クーの事じゃないわよ」

ツンは遮る。
俺は面食らった。
そうじゃなきゃ、なんだっていうんだ。

ツンは分かっていたと言わんばかりに溜息を付いて、うな垂れた。

(;'A`)「じゃあ何だってんだ」

ツンはもう一度深く溜息を吐いた。

ξ゚听)ξ「あんた、一人で抱え込み過ぎなのよ。悪い癖」

( 'A`)「それは今関係ねぇだろ」

ξ゚听)ξ「関係ありありよ」

107 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/01/01(火) 00:11:45 ID:Fw5C8URw0


ξ゚听)ξ「あのね、ブーンだって子供じゃないからクーの事くらいとっくに理解してるわ」

('A`)「…」

本当に、そうか?
俺には自信がない。

108 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/01/01(火) 00:16:31 ID:Fw5C8URw0


あの頃の俺には、たくさん夢があって。
ブーンとよくその事で語り合った。

飛行艇に乗って極地に行ったり、空軍に所属する一騎当千の猛者を夢見たことだってある。
でもいろんな夢の中で、一つ変わらないのは、そのどれにも俺とブーンとツンとクーがいて、笑いあっていたってことだ。

俺はそれをかなぐり捨てる事で、飛行艇に乗りになった。
勿論望まざる結果ではあったが、だからといって果たして許される事だろうか。

そもそも、俺がブーンの立場だったなら、許しているのか?

やっぱり、俺には自信がない。

109 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/01/01(火) 00:20:23 ID:Fw5C8URw0


俺は胸に手をやった。
タバコを手に取る。
吸おうか、と思ったけどツンに目で制された。

ξ゚听)ξ「あんたの親友は誰?あんたの事を誰よりも分かってるのは?」

そんなの、考えるまでもない。

('A`)「ブーン以外に、いるかよ」

ξ゚听)ξ「ここまで言ってもまだわかんない?」

ツンは、ふぅっと、溜息。
厭感ここに極まれり、と言ったところだ。

勿論俺だってここまで言われて分からないわけがない。
つまりツンの言いたいのは、俺が独りよがりのクソヤロウってことだ。

110 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/01/01(火) 00:24:22 ID:Fw5C8URw0


ξ゚听)ξ「ハァ……あのねぇ」

('A`)「いや、いい。分かったよ」

俺は顔の前でしっしっと手を振った。
ツンは、再び溜息。
今度のは、幾分安堵が混じってたように思う。

ξ゚听)ξ「さっきも言ったけど、あんた一人で抱え込み過ぎなのよ」

('A`)「別に迷惑はかけてないじゃねーか」

ξ゚听)ξ「は?あんた、ブン殴るわよ?」

ごっ、と鈍い音が響く。
俺の頬骨だ。

111 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/01/01(火) 00:31:04 ID:Fw5C8URw0
(#)'A`)「いってぇ…もう殴ってるじゃねぇか」

ツンは悪びれもせず、あらごめんなさいと一言。
久方ぶりの拳は少しも衰えてないみたいだ。

俺は、拳の真意を問うた。

ξ゚听)ξ「あのねぇ、あんたのそのブッサイクな顔見てデイラントまで心配してんのよ?」

ξ゚听)ξ「おじ様が元気無いからなんとかしてあげたいって」

('A`)「…俺、顔に出てるか?」

ξ゚听)ξ「あの子曰く、ね」

俺は頭を掻く。
そんな事少しも考えなかった。
そして痛感する。
足繁くあいつが俺の元へ足を運んだのは、他でもない俺のためなんじゃないか。

( 'A`)「……だっせぇなぁ、俺」

ξ゚听)ξ「まったくだわ」

先程から一貫して顰め面だったツンは、ここでようやく笑みを零した。
釣られて俺も笑う。

113 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/01/01(火) 00:37:53 ID:Fw5C8URw0

ξ゚听)ξ「じゃ、用も済んだ事だし」

ツンは立ち上がった。
俺も立ち上がって、玄関へと向かう。

('A`)「わざわざこのために来てくれたのか?」

ξ゚听)ξ「勘違いすんじゃないわよ!あんたじゃなくてブーンのためだから」

ツンはそっぽを向く。
ああ、期待通りのテンプレな返事だ。
だけど、おそらく今の台詞に間違いはなくて。
疑いようもなく、今回の彼女の行動理念はブーンの為と、自分の為と、ほんの少しの俺とクーの為だ。

俺同様好い加減に決着を付けたかったんだと思う。

114 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/01/01(火) 00:42:38 ID:Fw5C8URw0

('A`)「ありがとな」

ξ゚听)ξ「……ふん」

見慣れた、見慣れていた照れ隠しだ。
すごく新鮮に感じる。
でもそれは、きっとツンが俺の中で過去になっていたからだ。
それが少し寂しくも感じた

115 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/01/01(火) 00:48:54 ID:Fw5C8URw0


ξ゚听)ξ「……じゃ」

('A`)「おう。ガキンチョによろしく」

俺は手を軽く上げる。
そのまま俺は別れを告げた。
ツンは部屋から出て行く。

( 'A`)y━・~~

煙草で一服。
寒いけれど、窓を開けた。
窓のへりには、いつだかデレが持って来た、花が生けてある。
この地方特有の、冬に咲く花だ。

( 'A`)y━・~~ 「あの丘にも、咲いてたな」

ふと記憶が蘇って。

もう一度行ってみようか。
行って何かが変わるわけじゃないけれど。
ブーンは誘ったら来るだろうか。
ツンは…来るだろうな。

俺は立ち上がった。
思い立ったが吉日、なんて言葉は初めて使うが、なんとなく行く気になったのだ。


だけど、俺は煙草を吸い終わる暇もなく、部屋を飛び出すことになる。

116 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/01/01(火) 01:10:27 ID:Fw5C8URw0




(;'A`)「飛行艇…!」

空を翔ける一艇の飛行艇。

この地方は田舎も田舎。
だから来る飛行艇と言えば週に一度の定期便だけ。
俺が着陸した時も、少しざわめいたものだったが。

この艇は、なんだ?

明らかに貨物や貨客ではない、一人ないし二人乗りの艇だ。
ただの通りすがり、という事も考えられるが、見る限りではここに着水する気満々だ。

とすれば、残るは可能性は一つ。

(;'A`)「くそっ、これからって時に!」

俺は駆け出す。

完全に油断していた。
道中追ってらしきものは一切無かったはずだ。
なのにいったいどうやってここまで来たってんだ。

117 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/01/01(火) 01:12:30 ID:Fw5C8URw0

ξ;゚听)ξ「あんた、血相変えてどうしたのよ」

ツンに追いついた。
俺は事の次第を手早く説明。

(;'A`)「とにかく、デレは任せた!」

それだけ言い残して、また駆け出す。
背後から何やら怒号が聞こえた。
無視。
どうせ押し付けだとか無責任だとかそんな事だ。

何だかんだ言いながらも結局はやってくれる、というのがツンだから、きっと大丈夫。

118 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/01/02(水) 21:56:42 ID:yPRZkqck0


(;'A`)「ハァッ……ハアッ……」

港につく頃には息もそぞろだった。
煙草なんて、やめとけば良かったと今更後悔。

俺は息を整え、飛行艇に乗り込む。
久々にしっかりと握る操縦桿はひんやりと冷たい。
でも安心感がある。
艇に乗ると、心が落ち着く。

('A`)「久しぶりだな、クー」

エンジンを掛ける。
が、まだ動かしはしない。

ちょうど上空から、飛行艇が降りてくるところだ。
相手も、もう俺に気づいてるだろう。

ベストなのは、着水前に打って出る事だが、まだ追っ手だと決まったわけでもないし、些か早計だ。

119 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/01/02(水) 21:57:50 ID:yPRZkqck0


機械とも思えるほどの正確さで、操縦士はピタリと俺の横に飛行艇を着けた。
その挙動は疑念をほぼ確実な物とした。

厄介なのが追ってきたな…。


男は、ゴーグルを外した。
結構若い。
俺と同じか、幾つか年下といったところか。

('A`)「よう。見たところ空賊じゃあなさそうだが…旅人かい?」

俺は声をかける。

( ・∀・)「…どちらかというと、空賊はあんたじゃあないのか?」

('A`)「なに?」

男は俺を睨んで言った。
全く手間かけさせやがって、などとぼそぼそ呟いている。

ああ胸糞悪い。

俺も相手も嫌悪感丸出しで、しばし見つめあった。

120 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/01/02(水) 21:58:37 ID:yPRZkqck0

( ・∀・)「娘を返して貰えるかい?」

切り出したのは相手。

デレの事だとはっきり分かる。
お互いに。

だが親父が直々に来るとは思わなかった。
勿論嘘の可能性もある。
だけど嘘をつく理由が見当たらないし、何よりその顔にデレの面影をほんのりと感じたのだ。

121 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/01/02(水) 22:00:03 ID:yPRZkqck0

('A`)「依頼主以外の命令は受けられない」

( ・∀・)「僕は父親だ」

('A`)「娘を売っぱらっちまう奴を父親とは認めねぇ」

( ・∀・)「分かったような口を聞くな」

('A`)「お前よりは分かってるつもりだ」

( ・∀・)「空賊風情がいきがるんじゃあない」

('A`)「貴族のボンボンには分かるめぇよ」

男は舌打ちをして、押し黙る。
苛ついているようだが、飛行艇を降りる気配はない。

122 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/01/02(水) 22:01:48 ID:yPRZkqck0

( ・∀・)「おい」

( ・∀・)「適合者の割合を知っているか?」

唐突に、男は話を切り出した。

シートベルトを外して、艇から降りる。
同時に懐から何やら取り出す。

俺は身構える。
が、それは杞憂で。

( 'A`)「なんだよこれ」

俺も艇を降りて、受け取った。

渡されたのは小さな紙切れ。
真ん中に名前が書いてある。
造艇会社の社長らしい。
名は、モララー。

( ・∀・)「名刺も知らないのか?蛮人め」

('A`)「そうじゃあねぇ」

俺は息を吐いで続ける。

123 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/01/02(水) 22:03:50 ID:yPRZkqck0

('A`)「お前、造艇会社の社長なのか?」

( ・∀・)「あぁ、そうだ」

途端に怒りが沸き立って。
気づけば俺は男、モララーを殴り飛ばしていた。

(#'A`)「ならわざわざ自分の娘を飛行艇なんぞにする必要はねぇだろうがッッ!!!」

襟首を掴み上げる。
モララーは怯むことなく俺の手首を握って、離さんと力を込めた。

(#)・∀・)「お前がそれを言うのか…!?」

(#'A`)「なんだと…?」

モララーは、何か言おうとして口を開ける。
だけど、すぐに閉じた。

(#)・∀・)「いや、いい。どこか別のところで話そうじゃないか」

寸ともブレない瞳、声。
ほとんど無意識に俺は手を離す。
離すべきだと、思った。

124 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/01/02(水) 22:05:16 ID:yPRZkqck0

モララーは服についた塵を払う。
さらに口元の血を拭って。

( ・∀・)「さぁ、どこか落ち着いて話せるところへ連れて行ってくれ」

なんだよこの温度差。
まるで俺が無意味に叫んでるだけじゃないか。

(#'A`)「何のつもりだ……」

( ・∀・)「話をしようと言ってるんだ」

(#'A`)「……」

クールには、なれない。

( ・∀・)「あんたは何で怒ってる?」

(#'A`)「お前が気に食わない」

( ・∀・)「じゃあもう一度僕を殴ったらいい。それで気が済んだら話をしよう」

モララーは真顔。
煽ってる風ではなくて、純粋にそう思っているみたいだ。

俺は右手を少しだけ持ち上げた。
しかし男の頬までは届かない。

代わりに口を開いて。

('A`)「……ついて来い」

踵を返した。

125 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/01/02(水) 22:07:54 ID:yPRZkqck0


( ・∀・)「さっきも言ったが、適合者の割合を知っているか?」

席に着くなり話を始めた。
俺は、とりあえずコーヒーを二人分頼む。

('A`)「約1パーセント」

( ・∀・)「そうだ。女性のうち百人に一人だ」

つまり、適合者自体はそう珍しい事ではない。
本人も気づかぬまま一生を終えたりすることもままあるのだ。

しかしそれが今何だと言うのだ。

( ・∀・)「だがそのうちにも約0.0001パーセント、異常なまでの出力を得るものがいる」

('A`)「……は?」

( ・∀・)「つまり、普通の適合者が単座、あるいは複座の飛行艇に組み込まれる程度だとしたら、
       異常適合者はその数十倍下手すれば数百倍の出力を出すことが出来る、という事だ」

呆然。
言葉が出なかった。
俺は驚いているのか?
よく分からない。

126 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/01/02(水) 22:08:37 ID:yPRZkqck0

( ・∀・)「もう、分かったろう。それがあの子の価値だ」

俺が言葉を紡げずにいると、モララーはなおも重ねてきた。

( ・∀・)「あんただって、国の現状を知らないわけじゃないだろう?」

( ・∀・)「あの子はそれを打破する鍵だ」

(#'A`)「そんな……そんな理由で実の娘をぶっ殺すってのかよ」

( ・∀・)「死ぬわけじゃない。飛行艇として生きるんだ」

(#'A`)「どう違うってんだ!」

( ・∀・)「あんただって、経緯はどうあれ一人の女を殺してのうのうと空を飛んでいるじゃないか」

(#'A`)「違う!!!!」

違わない。
何も間違ってなどいない。
でもこいつの言い方は、違う。

127 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/01/02(水) 22:09:45 ID:yPRZkqck0

( A )「お前も飛行艇乗りなら分かるだろうが」

俺は病床に伏すクーを糧に、飛行艇を作った。
許されざる事だ。
例えクーが望んだ事だとしても。

だけど、それが過ちだったか?後悔しているか?と問われれば、俺は即NOと答えるだろう。
答えなければならない。
それは、半ば義務のようなものだ。
でなけりゃ俺は飛行艇に乗る資格はないし、クーに合わせる顔もない。

きっと、一部の連中を除いたどの飛行艇乗りも似たような感情を抱いていると思う。

言うなればそれは、飛行艇乗りとしての誇り。
自分がクズだって事は理解しているけれど、それでも誇りだけは持っている。

自分にはかつて愛した人がいて、愛した人と共に空を飛んでいるのだと。

いつだってこれだけは忘れない。
誰にだって乗れるわけじゃないから。
自身の飛行艇には自身しか乗れないから。

そうあってこそ俺たちは空を飛んで、その広さに身を震わせ、蒼さに心を奪われるんだ。

128 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/01/02(水) 22:11:15 ID:yPRZkqck0


( ・∀・)「あんたは、見た目に似合わず暑苦しい人間みたいだな」

いいだろう話してやる、そう言って、モララーはコーヒーを啜った。

( ・∀・)「僕の妻がね、会ったばっかりの頃言ったんだ。空が赤いのは、飛行艇になった人の悲しみの色だって」

( ・∀・)「笑っちゃうだろう?こんな臭いセリフ良く言えたもんだ」

(;'A`)「何の話だよ」

( ・∀・)「でもそれから十年くらいかな。病気を患ってね」

俺は息を呑んだ。
モララーはちらりとこちらを一瞥。

( ・∀・)「その時に言ったんだ。空が赤いのはきっと誰かの為に飛行艇になった人の愛の色だって」

('A`)「……」

俺はだんまり。
確かにクサイが、いい言葉だと思う。

( ・∀・)「そんな目で見るのはやめろ。一番恥ずかしいのは僕なんだ」

129 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/01/02(水) 22:12:48 ID:yPRZkqck0


( ・∀・)「僕は飛行艇なんて物は終わらせたいんだ」

モララーは言った。

何の理由にもなってないじゃないか。

でも、俺はあぁと合点する。
どうせこいつは潰す為には力がいるだの、必要な犠牲だの吐かすんだ。
俺の一番嫌いなタイプで、最も恥ずべき勘違い野郎。

( ・∀・)「その為には感情論なんかこれっぽっちも役に立たないんだよ」

('A`)「ガキはその犠牲か」

俺は尋ねる。
あぁそうだ、とモララー。

なんてベタな展開。
ベタだが、悪くない。

乗ってやろう、ぶちのめしてやろう、そういう気になった。



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