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497 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/05/18(日) 19:23:54 ID:MrK7fFB.O
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9時を過ぎ。
爪'ー`)「さて。本日は、検察側2人目の証人尋問から始める──筈なんだが……」
ほんの数分前に法廷へやって来た検察組は、何やら様子がおかしかった。
裁判長フォックスが開廷を宣言しても、落ち着きがない──どころか
ますます焦り出す始末で。
(;^ν^)「……」
ζ(゚、゚;ζ「連絡つかないです……」
腕を組み、貧乏揺すりをするニュッ。
何度も携帯電話を耳に当てては、その度に首を横に振るデレ。
──検察側の証人が、いなくなってしまったのだという。
たしか、またんきの父親と言っていた。
内藤の記憶が確かであれば。
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498 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/05/18(日) 19:25:07 ID:MrK7fFB.O
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(;゚∀゚)「証人いないのか?」
( ^ω^)「そのようで」
∬;´_ゝ`)「じゃ、じゃあ、どうなるの?」
( ^ω^)「さあ……」
背後からジョルジュと姉者が小声で訊ねてくるが、内藤には答えようもない。
過去に参加してきた幽霊裁判の中で、このような事態になったことがないので。
というわけで、手っ取り早くオサムを見た。
オサムもくるうも、前回の公判のときと変わりがない。
片や落ち着き払い、片や憤っている、という意味でだが。
【+ 】ゞ゚)「俺だったら、まあ、日取りを延期するかな。
証人を見付けて連れてこないことには始まらないだろう」
川#゚ 々゚)「延期でいいよこんなの……」
いや、くるうに限っては、いくらか違いがあるかもしれない。
たしかに怒ってはいるが、前回ほどの元気というか威勢はなかった。
オサムが言うように延期を提案したフォックスへ、ニュッが片手を挙げる。
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499 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/05/18(日) 19:26:30 ID:MrK7fFB.O
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(;^ν^)「少し時間を。──照屋。何が何でも見付けてこい」
ζ(゚、゚;ζ「えー」
(;^ν^)「見付けてこなかったら2週間メシ抜きだ」
ζ(゚、゚;ζ「わっ、分かりました分かりました、行ってきますよう」
ばたばた、デレが慌ただしく体育館を飛び出していく。
微妙な空気が満ちる中、のーとビーグルが溜め息をついた。
(゚A゚* )「まさか、証人が行方をくらますとはなあ」
(;^ν^)「……家まで迎えには行ったが、来る途中で消えてました」
▼・ェ・▼「逃げたってことでいいのか」
爪'ー`)「だとしても、逃げる理由は一体……」
内藤は、ちらりと隣を見た。
(;‘∀‘)「シラネーヨ君、どうしたのかしら……」
弁護側の証人──大前ガナーが困惑している。
検察側証人がまたんきの父ということは、ガナーにとっては娘の夫だ。
彼女もどうしていいか分からなくなったようで、ごめんなさいと辺りへ謝罪し始めた。
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500 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/05/18(日) 19:27:35 ID:MrK7fFB.O
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川 ゚ 々゚)「オサム……」
【+ 】ゞ゚)「大丈夫だよ、くるう」
初っ端からの奇妙な展開に、くるうも不安を覗かせる。
傍聴席のざわつきを静めたのは、フォックスではなくツンの言葉だった。
ξ゚听)ξ「照屋刑事が戻ってくるまでの間、前回の証人、渡辺アヤカさんへの反対尋問を
もう一度させていただけませんでしょうか」
検察席、ニュッの隣で渡辺が肩を揺らした。
戸惑うような瞳をツンへ向けている。
▼・ェ・▼「『もう訊くことはない』と弁護人が言っただろう」
ξ゚听)ξ「……お願いします」
爪'ー`)「必要な尋問なんだな?」
ξ゚听)ξ「はい」
爪'ー`)「なら許可しよう。──検察官はどうだ」
( ^ν^)「然るべく」
昨日のツンの発言を覚えていて、ニュッが連れてきたのだろう。
元より尋問に異論ない筈だ。
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501 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/05/18(日) 19:28:49 ID:MrK7fFB.O
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渡辺が「証言台」へ移動する。
氏名等の確認は省かれ、早速反対尋問が行われた。
∬;´_ゝ`)「……渡辺先生……」
姉者が呟く。
彼女も渡辺とは旧知の仲である。
ツンとは違って、ただただ優しい保育士だという印象が強いのだろうけど。
ツンは書類の一部を指でなぞり、顔を上げた。
ξ゚听)ξ「証人。13年前──5月13日に行方不明になった女児が、
その前日『おばけが自分を呼ぶ』『オサム様のところに行く』と言っていたんですよね?」
从'ー'从「ええ」
ξ゚听)ξ「他の発言は覚えていない」
从'ー'从「はい……」
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503 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/05/18(日) 19:30:04 ID:MrK7fFB.O
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ξ゚听)ξ「なら──『おばけ』が『オサム様』を示しているとは限らないですよね?」
从;'ー'从「え? ええと……そう、なのかしら?」
自問し、そうかもしれないわね、と渡辺が言う。
彼女の証言内容はひどく少ない。つまりは、ほとんどがあやふやなのだ。
( ^ν^)「異議。同一の話題の中で出た発言である以上、無関係だとは言えない」
ξ゚听)ξ「途中で話題が変わっていた可能性もあるでしょう。
証人はあまり話を聞いていなかったと言ってますし」
然もありなん。
だが、それには明確な否定を見せた。
从;'ー'从「あの……話題自体は、変わってなかったと思います。
そうだったら、さすがに気付きますから」
女児の話を完全に無視していたわけではない──と渡辺は主張する。
真剣に聞き入らなかったから今おもいだせないだけで、当時としては、話の流れくらいは頭に入れていた筈だ、と。
くるうは反応しない。
つまり「おばけが呼ぶ」「オサムのところへ行く」、この二つの発言は
どちらも互いに関連したものであるわけだ。
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504 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/05/18(日) 19:31:34 ID:MrK7fFB.O
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( ^ν^)「女児が『おばけ』に声をかけられ、姿を消した公園はヴィップ自然公園。
カンオケ神社の裏、林を挟んだ位置にあるものだ。
このことも、被告人が関わっている可能性を示唆している」
恐らくニュッとしては、前回の審理において
こういったやり取りを経た上で、この情報を補助として出したかったのだろう。
あのときツンがあっさり引き下がったからタイミングを逃していたのかもしれない。今の彼は活き活きしている。
ということは、少なくともここまでは彼の予想通りの流れ。
ツンが反撃するなら、更に進む必要がある。
そして彼女もまた、予定した通りに事が運んでいるようだった。
一瞬、不敵に笑んだのだから。
ξ゚听)ξ「小さい子が遊びに行ける距離であるからには、
女児の家は自然公園の近くにあったわけでしょう」
从'ー'从「ええ。あの子の家と公園は大した距離じゃなかったと思います。
事件のしばらく後に、ご家族も引っ越してしまったようですけど……」
ツンはジョルジュを一瞥した。
数枚の書類を持ち上げる。
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505 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/05/18(日) 19:32:32 ID:MrK7fFB.O
-
ξ゚听)ξ「あの近隣の住民は、神社と自然公園の間の森林を
『オサム様の森』『オサム様の土地』という風に呼んでいました。
特にご老人は、『オサム様の土地だから入ってはいけない』と子供達に話していたそうです」
_
(;゚∀゚)「……俺が調べたやつだ」
【+ 】ゞ゚)「そうなのか」
_
(;゚∀゚)「ぁえ、あ、は、はいっ」
2日前の夜にツンがジョルジュに頼んだのは、このことだった。
元々ジョルジュの実家があの辺にあるのだから、
近所と馴染みのあるジョルジュの方が調べやすかろう、と。
爪'ー`)「その林とは、『口減らし』のあれだろうか」
ξ゚听)ξ「あれです。入っちゃいけない、というのも、その名残だったんでしょう。
実際のところは、特別、オサム様の管轄だったわけでもないんですが……」
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506 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/05/18(日) 19:34:18 ID:MrK7fFB.O
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ξ゚ -゚)ξ「ところで証人。13年前の、その女の子の家族構成はご存知ですか」
从'ー'从「ご両親と妹と……父方のお祖父さんが一緒だった筈です」
その通り──とツンが頷く。
ξ゚听)ξ「女児の祖父、沢近シーンさんも信心深い方だったそうです。
──近隣住民から彼が聞き出してきた情報ですし、
私も今日の内に確認したので、間違いはないです」
突然ツンの手によって示され、皆の意識を一斉に向けられたジョルジュは
びくりと体を跳ねさせ、隣の姉者にしがみついた。
そのせいで姉者も飛び上がったが、騒ぐな失神するなというツンの言いつけを守り、両手で口を押さえていた。
ξ゚听)ξ「女児が、祖父あるいは親から『オサム様の森』のことを聞いていた可能性は充分にあります。
当然、オサム様、というのが神社の神様であるのも聞いていておかしくない」
ξ゚听)ξ「そう仮定すると、女児が『オサム様』を『おばけ』と表現するのは、おかしくないでしょうか」
爪'ー`)「……ふむ……」
(゚A゚* )「せやねえ」
ニュッがようやく反論する。
「仮定は仮定だろう」と。
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507 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/05/18(日) 19:35:31 ID:MrK7fFB.O
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( ^ν^)「知っていたかどうかなんて分からねえだろ。知らなかったのかもしれない。
オサムと名乗りはしても、自分が神社の神だということは説明してなかったのかもしれない」
ξ゚ -゚)ξ「『はじめましておばけですオサム様って呼んでね』と挨拶したわけ?
んなわけないでしょ」
( ^ν^)「誘い出したのは被告人本人ではないかもしれない。
──協力してくれそうなのはいるだろう」
川;゚ 々゚)「え、」
ニュッの目は、間違いなくくるうを指した。
射竦められたくるう本人も当惑の表情を浮かべている。
だが──
【+ 】ゞ゚)「前回の狼藉は大目に見たが、くるうまで疑うのならそれ相応の態度をとるぞ」
( ^ω^)(わあ)
内藤の肌が粟立った。
オサムから、巨大な憤怒の気配を感じたからだ。
普段より一層低めた声も、それを如実に表している。
ニュッがくるうを泣かせた際、冷静に対処したのを意外に思っていたが、
どうやらあのときも怒ってはいたらしい。
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508 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/05/18(日) 19:36:29 ID:MrK7fFB.O
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反対側に立つニュッにも充分伝わったようで、
彼は、たじろいでしまったのを誤魔化すように咳払いなんかをしてみせた。
爪'ー`)「被告人。威嚇はやめよう」
【+ 】ゞ゚)「すまない」
(゚A゚* )「まあ怒るのも無理ないな。でもあかんよ」
裁判官から緩めの叱責を受け、オサムの怒気は引っ込んだ。
引っ込んだだけで、内側には留まっているのだろうけど。
嫌な予感がしたので姉者の様子を窺ってみると、白目をむきかけていた。
すんでのところで気絶を耐える。偉い。
川*゚ 々゚)「オサム……」
こっちはこっちで、それどころではないのに惚れ直した様子。
ツンがやりにくそうに頬を掻いて、ニュッへの反論を続行させる。
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509 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/05/18(日) 19:39:52 ID:MrK7fFB.O
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ξ;゚听)ξ「えー……。……で。仮に、かーりーに、くるうさんだとしても。
子供を誘い出す上で、わざわざ自分がおばけであることなんか言うわけない。
怖がらせちゃ意味ないんだから」
ξ゚听)ξ「オサム様にしろくるうさんにしろ、見た目は人間と変わらないわ。
彼らに声をかけられたとして、『あ、自分は今おばけに声をかけられたんだな』なんて思うかしら」
( ^ν^)「見た目以外からも判断は出来る。
たとえば、自分には見えているのに、周りの友人たちには見えていない……となれば
相手が人間ではないと推測するのは可能だ」
ξ゚听)ξ「そうであった場合、『自分以外には見えていない』と確信できるだけの何かがあったわけでしょう」
ξ゚听)ξ「『何で1人で話してるの』『何もないとこ見てどうしたの』と言われるとか。
ともかく第三者、この場合は一緒に遊んでたお友達かしら。
お友達が関わってくるわけだけど……」
ξ゚听)ξ「事件後の警察の捜査において、お友達がそういったことを証言した形跡は無いわ。
『かくれんぼをしてた。探しても見付からなかった』──それだけ。
おばけのおの字も無い。おばけに関する証言は家族と渡辺先生……証人の話だけよ」
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510 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/05/18(日) 19:41:27 ID:MrK7fFB.O
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从;'ー'从「あ……たしかに、そうです。
あのとき、保育士からも子供達に訊いてみてくれないかって警察に頼まれたんです」
从;'ー'从「私、『おばけ』のことを訊いたんですけど、みんな知らないって答えてました」
ニュッが苦虫を噛み潰したような顔をした。
対してツンは得意気な。
ξ゚听)ξ「つまり、女児に声をかけたのは、
見た目ではっきり人間ではないと分かる……おばけ然とした何者かであった可能性が高いわ」
ξ゚听)ξ「そのおばけが『オサム様のところ』──つまり
林の中に行った、と女児は言っていたのではないかしら。
自分がオサム様のもとへ行く、ということではなくてね」
( ^ν^)「……憶測が過ぎる」
ξ゚听)ξ「そっちも同じでしょ。
──検事。この証人の証言は曖昧で不確かで情報が欠如してて、不完全なのよ。
事実を語るに値しないの。いま私が言ったことでさえ証明は出来ないわ。残念ながらね」
今更そんなことを言うのか──ニュッが呆れ気味に呟く。
今更そんなことを言うわよ──ツンは開き直っていた。
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511 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/05/18(日) 19:44:11 ID:MrK7fFB.O
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(゚A゚* )「たしかにどっちも憶測やけど、どっちも有り得へんわけでは……」
▼・ェ・▼「前回の公判時点では検察の主張が尤もに感じたが、
こうして反論されると、どうにも」
从;'ー'从「ご、ごめんなさい、私お役に立てないようで……」
爪'ー`)「いや、かといって不要な証言でもない筈だ」
( ^ν^)「──林の中は警察も一通り調べたが、
あそこにいた霊はどれも自我や気配が薄い奴らばかりだった。
子供を拐って食うような行動的な奴は見当たらなかったぞ」
ξ゚听)ξ「事件から13年も経ってるのよ。とっくに場所を移しててもおかしくないわ」
過去の神隠し事件は、決まった場所でのみ行われていたわけではない。
裏山で行方不明になった、という8年前の例もある。
ニュッは舌打ちをしてそっぽを向いた。
これ以上の進展はなしと見たか、フォックスは渡辺に、検察席へ戻るように言う。
渡辺と同時に、ツンも腰を下ろした。
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514 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/05/18(日) 19:45:46 ID:MrK7fFB.O
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川*゚ 々゚)「ツンすごいすごい!」
ξ゚ -゚)ξ「まだ、裁判官をこっちへ引き込めたわけではないけどね」
( ^ω^)「ツンさん、渡辺先生相手でも大丈夫でしたね」
ξ゚听)ξ「ん……もう平気よ。内藤君のおかげだわ」
( ^ω^)「?」
何かした覚えはないのだけれど。
首を捻る内藤を他所に、ツンは検察席へ目を戻す。
視線が合ったのか、渡辺は肩を揺らした。
俯き、そして、ニュッへ顔を向ける。
从;'ー'从「……すみません、私、これで」
( ^ν^)「ああ……すぐそこの教室に神社の職員がいるから、そこに行っててくれ。
裁判が終わるまで、帰宅はしないでくれると助かる」
从;'ー'从「はい」
渡辺は、そっと体育館を出ていった。
たいそう気まずかったのだろう。
検察席は、ニュッ1人になってしまった。
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515 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/05/18(日) 19:47:20 ID:MrK7fFB.O
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ξ゚听)ξ「照屋刑事、まだ戻らないわね」
ニュッがむすっとしたまま携帯電話を取り出し、些か乱暴な手付きで操作した。
恐らくデレに電話でも掛けたのだろう。
二つ三つやり取りをして、携帯電話をしまう。
( ^ν^)「まだ見付からねえらしい」
爪'ー`)「そうか……」
( ^ν^)「……弁護側の証人尋問に移ってください。
それが終わってもまだ照屋が戻らないなら──
……延期ということで頼みます」
爪'ー`)「弁護人、異存あるかな」
ξ--)ξ「ありません」
(゚A゚* )「そんじゃ証人、早速お願いしよか」
証言台へ、とビーグルが手振りで誘導する。
内藤の隣、ガナーが返事をした。
(;‘∀‘)「あ──は、はい」
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516 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/05/18(日) 19:48:17 ID:MrK7fFB.O
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恐る恐るといった様子で、裁判官の向かいに立つ。
人生経験がそうさせるのだろうか、不安そうな顔をしていた彼女だったが、
二呼吸ほどの間には覚悟を決めたように背筋を伸ばした。
爪'ー`)「名前と年齢を」
( ‘∀‘)「……大前ガナーです。64歳です」
続いてガナーの生年月日と住所が告げられ、
最後にフォックスは、こう確認した。
爪'ー`)「被害者、斉藤またんきの母方の祖母だな?」
( ‘∀‘)「はい」
傍聴席から囁き合う声が湧いた。
被害者の身内が弁護側についたのか、といった類のものであろう。
先ほど座ったばかりのツンが、再び起立した。
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517 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/05/18(日) 19:49:39 ID:MrK7fFB.O
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ξ゚听)ξ「お祖母さん……ガナーさん。
お孫さんのまたんき君が、あなたの家を訪れたのはいつでした?」
( ‘∀‘)「1月1日の──お昼頃に。2泊の予定でした」
ξ゚听)ξ「またんき君はあなたの家で何をして過ごしましたか?」
( ‘∀‘)「冬休みの宿題を終わらせようって、頑張ってました」
ξ゚听)ξ「宿題の内容は」
( ‘∀‘)「工作と社会の宿題だけ残ってたみたいです。
工作はお正月にちなんで、私の夫と一緒に凧を作ってました。
結構大きくて、布で裏打ちなんかして、しっかりしたものでした。
その日は途中でやめて、続きは明日にしようって……作りかけの凧が、まだ夫の部屋に残ってます」
ξ゚听)ξ「……社会科の宿題は、どんなものでした?」
( ‘∀‘)「年末年始の風習についての研究、というような。
またんきは、初詣のことを調べると言ってましたね」
2人の会話は淀みない。
ガナーの顔色は浮かないけれど。
孫が姿を消した日のことを語っているのだから、当然ではある。
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518 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/05/18(日) 19:50:52 ID:MrK7fFB.O
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ξ゚听)ξ「その日、彼は初詣に行きました?」
( ‘∀‘)「いえ、2日にカンオケ神社に行くつもりだったみたいです。
……それで、宿題を手伝っていたとき、カンオケ神社の話になりました」
ξ゚听)ξ「どのような」
( ‘∀‘)「昔、神社で神隠しがあったんだよって……。
私の夫が、またんきの興味を引こうと思って話したみたいでした」
( ‘∀‘)「でも──私が『オサム様は悪い神様じゃないよ』と言うと、
またんきはそちらの方に興味を示しました」
──それからガナーは、昔の新聞を引っ張り出してまたんきに見せたらしい。
40年前に神隠しにあった少女の記事。
( ‘∀‘)「あの子は私の知り合いで、とても印象的な事件だったので記事を残してあったんです」
暴力的な母から逃れるために少女がオサムのもとへ身を隠し、
その5年後に帰ってきた、という事件である。
前の公判でも何度か取り上げられていた。
当時の紙面では、少女の証言として全てが語られていたのだ。
記事の文意は半信半疑といった体であったそうだが。
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519 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/05/18(日) 19:52:44 ID:MrK7fFB.O
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( ‘∀‘)「オサム様は子供を守るために隠したんだよ、とまたんきに説明しました」
ξ゚听)ξ「子供を守るため──……あなたもそう思っていました?」
( ‘∀‘)「ええ。その40年前の子から、何度か聞いてたんです。
オサム様は優しかった、何も恐くなかったと……。
あんまり真剣に語っていたものですから、そうなのだろうと私は信じていました」
【+ 】ゞ゚) テレル
川 ゚ 々゚) ナンダカ フクザツ
( ^ω^)(くるうさんが喜ぶべきか嫉妬するべきか悩むような顔をしている)
ξ゚听)ξ「またんき君も信じましたか?」
( ‘∀‘)「あ、いえ、興味深そうに聞いてはいましたけど……。
他の神隠しの事件も夫が話していましたので
どちらかといえば、そちらの印象の方が強かったのではないかと」
他のというと、つい今しがた語られた13年前だとか8年前だとか、
「被害者が帰ってきていない」パターンの方か。
この法廷でもそうであるように、行方不明者が帰ってきたものと帰ってきていないもの、
後者にオサムが関わっていないという証明は一度も出来ていない。
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520 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/05/18(日) 19:54:10 ID:MrK7fFB.O
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ξ゚听)ξ「つまり、またんき君にとって、オサム様は『神隠し』をする神様というイメージがあった?」
( ‘∀‘)「恐らくは……」
ξ゚听)ξ「そのオサム様が目の前に現れたとして、またんき君はどのような反応をすると思います?」
( ‘∀‘)「警戒するのではないでしょうか。すみません、多分、ですけど」
ξ゚听)ξ「たとえばお菓子などに釣られて、知らない人についていく可能性は」
( ‘∀‘)「もう4年生ですし、ないと思います」
ξ゚听)ξ「では、それらを踏まえて。またんき君がオサム様についていくと思いますか?」
( ‘∀‘)「私は、そうは思いません」
言い切ってから、ガナーはオサムに向かって頭を下げた。
自分自身はオサムを怪しんでいない、この事件もオサムが犯人だとは思えない、と言って。
【+ 】ゞ゚)「ああ……うん、ありがとう」
ξ゚听)ξ「話は変わりますが──
先日お話を伺ったとき、ランドセルに気になることがあると仰いましたね?」
( ‘∀‘)「あ、──はい、えっと、巾着が付いてなくて……」
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521 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/05/18(日) 19:55:41 ID:MrK7fFB.O
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▼・ェ・▼「巾着?」
ニュッは無言のままだったが、僅かに姿勢を崩した。
彼も知らない話なのだろう。
( ‘∀‘)「あの、巾着と言っても、小さいものなんですよ。
本当に小っちゃくて、物も全然入らないくらいの……。
凧作りのときに余った端切れで作ったんです。飾りとして使えればいいと思って」
( ‘∀‘)「またんきにあげたら、またんきはそれをランドセルの、あの──何と言うんでしょう、
横っ側の、細いベルトのようなところに結んだんです」
ξ゚听)ξ「そのことを、あなたや、あなた以外の方は警察に言いました?」
( ‘∀‘)「いえ……ランドセルの確認は娘夫婦の方が行いましたので……。
あの子たちは巾着のこと知らなかったでしょうし、
私は昨日、弁護士さんに写真を見せてもらって初めて気付いたものですから」
( ^ν^)「……巾着……」
ここから弁護側がどう来るのか、ニュッは察したようだ。
厄介なことを聞いてしまったな、といった表情になっている。
そうしてツンが口にした結論はやはり、彼の予想と同じだったのかもしれない。
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522 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/05/18(日) 19:57:27 ID:MrK7fFB.O
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ξ゚听)ξ「またんき君が自らの意思で神社の拝殿へ行った、という見解は検察側も弁護側も一致しています。
では何故ランドセルだけを残してまたんき君が消えたのか……。
それが問題となっていました」
ξ゚听)ξ「──彼は神社へ向かう途中で巾着を落とし、
拝殿の中でランドセルを下ろしたときに、それに気付いたんでしょう。
そして、巾着を探すために外へ出たんです」
その後、外へ出たときに何か事件に巻き込まれたのではないでしょうか──
そう言ってツンは口を閉じた。
ガナーが辛そうに顔を顰める。
これまで踏ん張っていたであろうフォックスの涙腺が、ここで緩んだ。
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523 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/05/18(日) 19:58:31 ID:MrK7fFB.O
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爪;ー;)「だとしたら哀しい話だ……いや、どのみち哀しくはあるんだが」
(゚A゚* )「あー泣いた。今日はハンカチやのうて、ふぇいすたおる持ってきたったからね」
爪;ー;)「ありがとう……」グシュグシュ
▼・ェ・▼「俺のなんだが」
爪;ー;)「ああ犬くさい。敵わん」
▼#・ェ・▼「狐汁染み込ませやがって! 返さんでいい!」
爪;ー;)「きゃんきゃん吠えるな。──弁護側からは以上か?
では検察から反対尋問を」
( ^ω^)(弁護士検事だけじゃなく、裁判官まで大人げないのかお幽霊裁判)
ニュッは特に乱れてもいないダークグレーの背広の裾を直し
起立すると、思案するように俯いた後、ガナーを見遣った。
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524 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/05/18(日) 20:00:19 ID:MrK7fFB.O
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( ^ν^)「相手が『オサム様』だと分かっていれば、ついていかない──かもしれない。
逆に言うと、分かっていなければ、ついていくかもしれない。
そうだろう」
(;‘∀‘)「どう……なんでしょう。
でも、オサム様なら、見た目で分かると思います。
『十字の柄のお面をつけている』と、40年前の新聞に載っていましたし、またんきもそれを読みましたし……」
( ^ν^)「面なんて外せば関係ない。
そもそも被告人本人が被害者のもとへ行ったかも怪しい。
協力者がいた可能性は、さっき言った通りだ」
【+ 】ゞ゚)" ピクリ
ξ゚听)ξ「あなた、またオサム様を怒らせたいの」
( ^ν^)「俺が怒られたって、可能性が消えるわけじゃない」
川#゚ 々゚)「くるうはそんなことしないし、オサムもくるうにそんなことさせないもん!」
仲がよろしくて結構、とニュッは受け流す。
流されたくるうは顔を真っ赤にして検察席を睨み、オサムに頭を撫でられるまでそうしていた。
_
( ゚∀゚)(おばけにすら恋人がいるのに俺ときたら)
∬;´_ゝ`) アワワワ
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525 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/05/18(日) 20:02:17 ID:MrK7fFB.O
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( ^ν^)「弁護人は、巾着を落としたのに気付いて拝殿から出たと言うが、
そもそも根本的な疑問が生じる。
『被害者はなぜ拝殿にいたのか』、だ」
( ^ν^)「弁護人の主張が正しいとすれば、
人攫いの神がいると知った上で、被害者は夜中に神社へ行ったことになる。
それは不自然だろう」
ξ;゚ -゚)ξ「む」
( ^ν^)「そんな荒唐無稽な言い分よりは、こちらの
『被告人に誘われるがまま神社へついていった』という主張の方が筋は通る。
またんきは被告人が『オサム様』であることに気付かなかった──という前提でな」
( ^ν^)「行く途中で巾着を落としたのだろうという意見には同意するが、
巾着を探すために拝殿を出たってのはないな」
ξ;゚听)ξ「何か……嫌なことがあって家出したとか……可能性はあるでしょ!」
( ^ν^)「家出。家出ね。まあ子供の浅はかな衝動で家を飛び出ることはあるかもしれん。
だとしても、やはり『何故わざわざ神社へ』という疑問は残るよな?」
ξ;゚ -゚)ξ「うう」
▼・ェ・▼「……まあ、そこだよな」
(;‘∀‘)「家出をするような理由は……なかったと思います」
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526 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/05/18(日) 20:03:21 ID:MrK7fFB.O
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ツンは唇を尖らせ、反論の足掛かりを探している。
その様に気をよくしたのか、ニュッに楽しげな笑みが浮いた。
ここで弁護側の主張を通すのなら、
「またんきが1人で家を出て神社の拝殿に侵入した」という点に合理的な説明を為さねばならない。
しかしそれが出来ないから、こうして向こうに押されてしまう。
ツンが唸る。言葉は出ない。裁判官も短く唸る。ニュッの意見がそれらしいなと。
──そのとき、体育館の入口、扉が勢いよく開かれた。
ζ(゚ー゚*ζ「連れてきましたー!」
デレだ。
左手で男の腕を掴んでいる。
コンビニにいました! と質問が飛ぶより先に答えて、検察席へ立つ。
突然の登場に誰もしっかりとした反応を返せないでいると、それを不審に思ったらしく
デレは辺りをきょろきょろ見渡した。
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527 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/05/18(日) 20:04:01 ID:MrK7fFB.O
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ζ(゚ー゚*ζ「えっと、何か邪魔しちゃいました?」
( ^ν^)「いや、丁度いい。──裁判長、反対尋問はこれで以上です」
爪ぅー;)「そうか、それでは改めて……。
弁護側証人は席へ戻り、検察側証人は証言台へ」
木槌が叩かれ、ガナーは内藤の隣へ、デレは男の腕を離してニュッの隣へ座った。
男は呆然としながら周囲を見回して、その場に立ち竦んでいる。
それに焦れた様子で、デレは再び彼の腕を掴むと証言台へ引っ張っていった。