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930 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/02/27(木) 16:04:33 ID:UH.fsg0oO
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しぃが初めて母の「仕事」を見たのは、5歳の頃である。
(* ;;- )『──、──……』
部屋の真ん中に横たわる母は、衣類を乱し、細い喉を反らして呻いていた。
彼女の着物の裾が独りでに持ち上がっている。
障子の細い隙間からそれを眺めて、しぃは、母に声をかけるのを躊躇った。
読んでほしい本があって来たのだけれど、とてもそんな雰囲気ではない。
──不意に、視界に変化が生じた。
母の傍に、ぼんやりとした輪郭が浮かび上がってきたのだ。
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931 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/02/27(木) 16:05:22 ID:UH.fsg0oO
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(,,゚Д゚)『しぃ、』
囁き。後ろからギコに抱えあげられる。
その瞬間、ぼやけていた「それ」がはっきり見えた。
獣の頭に人間の体をした化け物が、母の上に乗っかっていた。
化け物の手が母の体をまさぐる。
鋭い爪が母の腕に傷を作り、彼女はひときわ高い嬌声をあげた。
しぃの手にある本を見下ろしたギコは、部屋から聞こえる声に気付くと
気まずそうな顔をして、しぃを抱えたまま部屋の前を離れた。
(,,゚Д゚)『本なら俺が読んでやるから』
ギコの部屋に連れていかれる。
しぃを膝に乗せて本を開く彼に、問い掛けた。
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932 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/02/27(木) 16:06:47 ID:UH.fsg0oO
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(*゚ -゚)『おかあさん、おばけに苛められてたの?』
ギコが答えに詰まる。
ああ、とか、うう、とか唸って、ようやく否定した。
(,,゚Д゚)『……あれが叔母様の仕事だから。
苛められてるわけじゃなくて……何て言うかな、仲良くなるためにしてることで』
しぃは首を傾げ、そう、と返した。
幼い彼女には何も分からなかった。
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933 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/02/27(木) 16:08:46 ID:UH.fsg0oO
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成長し、知識をつけていく内に、理解できるようになっていった。
母は、自身の体を差し出すことで妖怪を手懐けていたのだ。
彼女の顔や体にある傷は、化け物と交わる際に出来たものだった。
妖怪との交流の仕方や使役の契約方法は人それぞれで、
母に限って言えば、ああいった関わり方が彼女に合っていたというだけの話。
──母は、人間の男を愛せない。
異形の者に興奮する、そんな性を持っていた。
(*゚−゚)(……気持ちの悪い)
今は亡き父が、生前、彼女に蔑ろにされていたのも。
父が死んだとき、彼女がまるで無関心だったのも。
全ての理由はそれ。
建て前で結婚しただけであって、母は父を置いて妖怪との情事に溺れていた。
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934 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/02/27(木) 16:12:51 ID:UH.fsg0oO
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それを知ると、途端に、周囲の噂話に気が付くようになってしまった。
──「しぃさんは、本当に旦那様の娘だったのかしら」。
しぃは母と父の霊力を受け継がなかった。
そのせいか、しぃの父親は別にいるのではないかと疑う目が多かったのだ。
滑稽だったのが、ギコこそが彼らの子供であろうという話。
もちろんそんな事実はない。
幸い、母よりは父に顔が似ていたため、その噂が表立つことはなかったが。
鏡を見るたび安堵する。
自分にはちゃんと、父の血が流れている。
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935 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/02/27(木) 16:14:23 ID:UH.fsg0oO
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もっと男らしく。
もっと堂々と。
もっと、幽霊裁判での優秀な戦績を。
父に近付きたい。
彼の子供なのだと、証明したい。
散々嫌っていた男に似ていく娘を見て、母はずっと不快になっていればいい。
ざまあみろ。
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936 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/02/27(木) 16:15:08 ID:UH.fsg0oO
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ξ゚听)ξ「検事」
( ^ω^)「あ、どうも」
庭で待っていると、ツン達が玄関から出てきた。
歩み寄る。
(*゚ー゚)「……申し訳ない、原告を閉じ込めた元凶は母だった」
ツンに頭を下げるのは癪だったが、申し訳なく思うのも事実なので
不承不承謝罪した。
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937 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/02/27(木) 16:16:37 ID:UH.fsg0oO
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ξ゚听)ξ「私に謝られてもね。
それに、でぃさんに悪意があったのかは分からないわ」
(*゚ー゚)「あの人は……たまに過度な手段を選ぶ。
妖怪達と関わりを持ちすぎて、基準が曖昧になっている節がある」
きっと母は反省などしていない。
そもそも、自分の行いが悪いかどうかも分かっていない。
昔からそうだ。
彼女は、他者を「傷付かせる」とか「悲しませる」とか、そういったことに鈍い。
妖怪の相手ばかりしているからだろう。
そのせいか、霊障について彼女に相談してきた客とトラブルになることもあった。
それでも優秀ではあるから、猫田家の信頼は失われずに済んでいるけれど。
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938 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/02/27(木) 16:17:51 ID:UH.fsg0oO
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(*゚ー゚)「フィレンクト氏は、あの人に操られたようなものだ」
だが。
まあ。
それはそれとして。
(*゚ー゚)「──なので、やはり、フィレンクト氏の詐欺行為は認められない」
ξ;゚听)ξ「はあっ?」
(*-ー-)「彼は僕の母に言われたことを実行しただけだ。
彼に悪意があったとは、とても……」
ξ;゚听)ξ「悪意が無いのに一年以上もロミスさん閉じ込め続けるって何よ!」
(*-ー-)「不安が拭いきれなかったからでしょう。
彼に純粋な悪意があった証明が出来れば話も変わってくるかもしれませんが。
ありますか、そんなの」
ξ;゚听)ξ「こ、このっ……クソガキ……! さっきまで殊勝な顔して!」
母に対する個人的な感情と、裁判はまた別の話。
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939 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/02/27(木) 16:18:58 ID:UH.fsg0oO
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妖怪に恋するヒールを見ていて、そりゃあ、思うことも無いではないが、
ヒールは純粋にロミスを想っているだけだし、家族に迷惑はかけないと言っている。
それならばヒールの手助けをしてやりたい。
何より自分は勝たねばならない。
(*゚ー゚)「それでは失礼して」
石畳の上を歩き、門をくぐって敷地外へ出た。
後ろからツンが駆け寄る足音がする。
ξ゚听)ξ「ギコとご飯食べに行くんじゃなかったの」
(*゚ー゚)「まだ時間がある」
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940 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/02/27(木) 16:20:36 ID:UH.fsg0oO
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( ^ω^)「どこ行くんですかお」
(*゚ー゚)「素直さんの家に。新たな事実が発覚したんだ、説明する義務がある」
ξ゚听)ξ「あーら、そう。私もロミスさんのとこ行くんだけど」
しぃが足を早めるとツンもスピードを上げ、わざとらしく並んできた。
足は止めずに、互いに顔は正面へ向けつつ、横目で睨み合う。
(*゚ー゚)「素直さんのお姉さんの気持ちを考えずに原告の味方などして」
ξ゚听)ξ「考えてるわよ。そう言うあなたこそロミスさんのこと考えてないじゃないの」
(*゚ー゚)「僕には、彼と素直さんは上手くやっているように見える」
ξ゚听)ξ「……でもロミスさんは離婚を望んでるわ」
(*゚ー゚)「素直さんは望んでいない」
ξ゚听)ξ「……」
(*゚ー゚)「……」
ξ#゚听)ξ(#゚ー゚)「「ふんっ!!」」
同時にそっぽを向く。
仲がよろしくて結構、と内藤が非常に腹の立つ一言をぶつけてくださった。
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941 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/02/27(木) 16:21:40 ID:UH.fsg0oO
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£°ゞ°)「そうですか、検事さんの……」
ロミスの部屋。
ツンから説明を受けたロミスは、合点がいったようだった。
腹が立つかと問うツンに、彼は首を振る。
£°ゞ°)「わざわざお話ししに来てくださって、感謝します」
ξ゚听)ξ「いえ、確認したいこともあったから」
£°ゞ°)「確認?」
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943 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/02/27(木) 16:23:38 ID:UH.fsg0oO
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ξ゚听)ξ「……ロミスさん、あなた、今とってる人型とは別の姿があるわよね」
出されたジュースを飲んでいた内藤は、ちらりとロミスを見た。
別の姿。
内藤はそんなもの知らない。
これまでの調査で、彼女がその結論に至る手掛かりがあったのだろうか。
ロミスが目を伏せる。
否定ではない、寧ろ逆の。
ξ゚听)ξ「そのこと、私にもピャー子さんにも教えてくれなかったのね」
£°ゞ°)「……女性にはあまり好かれないものですので。
それに人の姿の方が色々と勝手がいいですから、わざわざあちらの姿になることもなくて」
話す必要を感じなかったとロミスは言う。
£°ゞ°)「ここ十数年は、ずっとこの姿でしたし……私のことを知っている方でも、
『あちら』の状態の私を見た方は少ないでしょう」
ξ゚听)ξ「でぃさんのお知り合いは知ってたみたいだけどね」
一体何なのだと内藤が訊ねようとしたところで、ドアが開いた。
どうも、内藤が真相に近付こうとしても上手くいかない。
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944 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/02/27(木) 16:25:08 ID:UH.fsg0oO
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川*` ゥ´)「──盃って、これでいいの? 食器棚の奥にあったやつ洗ってきたけど」
赤い盃を手に持ったヒールがやって来る。
この家に来て真っ先に「盃はないか」とツンが言ったのだ。
今まで探してくれていたようだ。
しぃは彼女の部屋で待たされているらしい。
ξ゚ー゚)ξ「ありがとう。盃で何杯くらい飲んだら酔うのか、確かめたかったの」
ツンの目配せを受け、内藤は鞄から一升瓶を取り出した。
神社でもらってきたお神酒である。
瓶の蓋を開けた。
ごく普通の酒にしか思えなかったが、にわかにロミスが食いついた。
身を乗り出させ、鼻をひくつかせる。
£°ゞ°)「この匂い……」
ξ゚听)ξ「カンオケ神社のお神酒よ」
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946 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/02/27(木) 16:28:16 ID:UH.fsg0oO
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£°ゞ°)「お神酒……ああ、そうか。
昔に飲んだ覚えがあったのは、立ち寄った神社で頂いたものか……」
ツンの手招きで、ヒールがしゃがみ込む。
盃に透明な酒が注がれた。内藤にはやはり、変わったところは見られない。
ヒールが盃を差し出すと、ロミスは待ちきれないと言わんばかりに手を伸ばし、それを受け取った。
一度唇を舐め、それから、盃を傾けて酒を口に流し込む。
喉が動く。はあ、と息をついた彼の顔は、満ち足りていた。
£°ゞ°)「──この味です」
ξ゚听)ξ「もっと飲む?」
£°ゞ°)「是非」
2杯。3杯。
そんなペースで飲んで大丈夫なのかと心配になるほど、ロミスは次々に酒を飲み下していった。
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947 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/02/27(木) 16:29:03 ID:UH.fsg0oO
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──そしてものの30分で。
ξ;゚听)ξ「……美味しい?」
£*´ ゞ`)~゚「おいしいれす……」
泥酔した。
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948 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/02/27(木) 16:30:17 ID:UH.fsg0oO
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£*´ ゞ`)「もっとくらさい、出連しぇ、うぃっく」
ξ;゚听)ξ「まだ半分もいってないんだけど……」
川;` ゥ´)「祖父ちゃんがたまに普通のお酒あげてたときは、一本空けても平気な顔してたよ?」
ξ;゚听)ξ「お神酒だからかしら」
ロミスが盃を持ち上げようとするが、手に力が入らないらしく落としてしまった。
拾おうと手を伸ばしても、距離が上手く掴めないのか、指先が掠るだけ。
完全に酔い潰れている。
見兼ねたヒールが盃を拾い上げた。
ツンがそこに酒を注ぐ。
川*` ゥ´)「おら、口開けろ酔っ払い」
ロミスの隣に座って、彼の口元に盃を押し当てた。
こくりこくり、ゆっくりと酒を飲み下していく。
内藤は、ロミスの体が徐々にヒールの方に傾き、両手が彼女へ回されようとしているのを見た。
ヒールは気付いていない。
盃が空になる。
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949 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/02/27(木) 16:31:39 ID:UH.fsg0oO
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川*` ゥ´)「お前さあ、ここら辺にし──」
ヒールの言葉が途切れた。
ロミスがヒールを抱き締めながら、床に倒れ込んだからだった。
仰向けで倒されたヒールだったが、ロミスの右腕が支えていたので
床に頭を打ちつけることだけは避けられたのだけが幸いか。
川;` ゥ´)「は!?」
ξ;゚听)ξ「ロミスさん!?」
川;*` ゥ´)「なっ、ロミ、ロミス、こら、重い! どけ!」
£*´ ゞ`)「ぴゃーこさん……」
もごもごとヒールを呼び続けるロミス。
やがて言葉に変化が生じた。
いつもありがとうございます、と言っているのだと気付くのに時間がかかった。
ヒールは聞いていないようで、ロミスの胸を押したり脇腹を蹴ったり、必死に抵抗している。
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951 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/02/27(木) 16:32:46 ID:UH.fsg0oO
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川;*` ゥ´)「うわああああ!! やめろやめろやめろ!
この野郎! おい、なあ、なあ、酒臭いよ、……や、やめて……」
ξ;゚听)ξ「ちょっとロミスさーん」
( ^ω^)「離婚裁判が別の裁判に変わりりますお」
段々ヒールの抵抗が弱っていったが、どかした方がいいだろう。
女子高生を押し倒す男の図は少々危険である。
ツンと内藤でロミスを引き剥がす。
やはり酒で力が入らないのか、あっさり離れた。
£*´ ゞ`)「ぴゃーこさん」
上半身を起こしたヒールが、ロミスの頭に何度も拳骨を落とす。
それにもめげずに内藤達の腕からするりと抜け出した彼は、
そのままヒールの膝にしがみつくようにして、おとなしくなった。
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952 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/02/27(木) 16:35:17 ID:UH.fsg0oO
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川;*` ゥ´)「なっ、なっ、なっ、何、何これ、何なの」
£*´ ゞ`)~゚ グー
ξ;゚听)ξ「……寝た?」
( ^ω^)「寝ましたお。
起こさないように、しばらくそのままでいたらどうですかお?」
川;*// ゥ//)「……、っ、……」
一瞬にして耳まで赤くなり、ぶわっと汗が浮かぶ。
そして彼女は、振りかぶった手でロミスの後頭部を引っ叩いた。
軽妙な音が響く。
それで起きたのか、ロミスが身じろぎした隙にヒールは勢いよく立ち上がった。
急に枕を失い、ロミスの側頭部が床へと落ちる。
叩かれ打ちつけ、何とも不運な頭である。
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953 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/02/27(木) 16:36:38 ID:UH.fsg0oO
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川;*` ゥ´)「猫田にチクってやるからな!! 馬鹿! 馬ぁあああ鹿!!」
ヒールが部屋を飛び出し、
川;*` ゥ´)「その酒二度とロミスに飲ませんな!!」
ちょっとだけ戻ってきて、即座に走り去っていった。
正直、見ていて面白かったのでもう少し続けてほしかった、と内藤が思ったのは彼の心の中の秘密。
頭を押さえてロミスが呻く。
四つん這いで近付いていったツンが、肩を叩いた。
ξ゚听)ξ「ロミスさん、ロミスさん」
( ^ω^)「ツンさん、近付いたらさっきのピャー子さんみたいになりますお」
ξ゚听)ξ「そうなったらすぐに検事を呼んでちょうだい」
起き上がる。
ぼんやりした目でツンを見て、首を傾げた。
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954 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/02/27(木) 16:37:45 ID:UH.fsg0oO
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£*´ ゞ`)「……ぴゃーこさんは……」
ξ゚听)ξ「部屋に戻ったわよ」
£*´ ゞ`)「ぴゃーこさん……」
ツンに手を出す気配はなかった。
とろんとした顔で壁を眺めている。
また酒を要求する前に、と、内藤は瓶に栓をし、素早く鞄にしまった。
そこへ、ドアがノックされた。ツンが返事をする。
ヒールが戻ってきたのかと思ったが違った。
川;゚ -゚)「あの……ピャー子がロミスさんの悪口言いながら廊下を走っていったんですけど、
何かあったんですか?」
クールが顔を覗かせる。
言いながら、きょろきょろとあちこち見渡している。
彼女にはロミスが見えていないようだ。
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955 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/02/27(木) 16:41:13 ID:UH.fsg0oO
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ξ;゚听)ξ「あ、大丈夫大丈夫、お気になさらず」
川;゚ -゚)「はあ。……あの、お酒の匂いが」
ξ;゚听)ξ「それもお気になさらず!」
川;゚ -゚)「は、はいっ」
一礼の後、ドアが閉められた。
足音が遠ざかっていく。
そのとき、ロミスが呂律の回らない不明瞭な言葉を口にした。
ξ゚听)ξ「え? 何?」
£*´ ゞ`)「くーるさん、きれい」
ξ;゚听)ξ「あ、ああ……そうね」
£*´ ゞ`)「けっこん……くーるさん……ぴゃーこさん……かお……けっこん……」
ξ;゚听)ξ「ロミスさん、ゆっくりでいいから、順序立てて喋ってもらえる?」
俯き、沈黙。
寝たか、と内藤が判断しかけたのと同時に、まずは一言目が落ちた。
£*´ ゞ`)「かお、顔で、決めたわけじゃ、ないん、れす」
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956 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/02/27(木) 16:44:53 ID:UH.fsg0oO
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ξ゚听)ξ「……クールさんのこと?」
喉をひくりと震わせつつ、ロミスは大きく頷いた。
それから続いた彼の一語一語は縺れに縺れていて。
ツンが丁寧にほどいていってくれなければ、内藤は理解できなかっただろう。
いわく。
離婚の話になるより以前から、ヒールは、ロミスがクールを意識していることに気付いていた。
それを揶揄されたこともある。大抵「姉ちゃん綺麗だしな」と付け足して。
けれどクールが綺麗だから結婚したいというわけではないのだ。
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958 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/02/27(木) 16:46:30 ID:UH.fsg0oO
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£*´ ゞ`)「……くーるさんは……昔、私を助けてくれました……」
( ^ω^)「助けた?」
ξ゚听)ξ「何があったの?」
£*´ ゞ`)「……カラス……」
ξ;゚听)ξ「へ?」
£*´ ゞ`)「……」
ξ゚听)ξ「……恩人だから好きになったの?」
£*´ ゞ`)「……やさしくて……あったかくて……忘れられなくて……
ずっと欲しくて……」
ロミスの体が揺れる。
小さな欠伸を一つ。眠気が限界に達しているようだ。
そうして彼はついに、ごろりと床へ転がった。
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959 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/02/27(木) 16:48:02 ID:UH.fsg0oO
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( ^ω^)「──どうすんですかお」
ξ゚听)ξ「どうしましょうかねえ、マジで」
帰路。
ツンはぐったりしていた。心労だろう。
ξ゚听)ξ「……あの様子見るとロミスさん、ピャー子さんに……」
( ^ω^)「ずいぶん懐いてましたお」
ξ゚听)ξ「そうよねえ……」
泥酔したロミスは、ツンにも、「欲しい」というクールにも大したアクションは起こさなかった。
なのにヒールにだけは甘えるような仕草を。
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960 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/02/27(木) 16:49:32 ID:UH.fsg0oO
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( ^ω^)「もう、僕はよく分かりませんお」
ξ゚听)ξ「数ある少女漫画を読み漁り、幾人もの脳内彼氏とお付き合いしてきた私はもう粗方理解したけどね」
( ^ω^)「切ない話はやめてください」
ξ゚听)ξ「6番目の彼氏の孝雄くんは内外共にイケメンだったわ。
霊が見える私の体質を知っても、『僕は幽霊よりも君を失うことの方がこわい』と言って受け入れてくれて」
( ^ω^)「何故その話を続けた」
会話が止まる。
さて、裁判はどうなるのだろう。
話は随分こじれている。
関係者全員が納得できる決着など、つけられないようにも思う。
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961 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/02/27(木) 16:51:53 ID:UH.fsg0oO
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ξ゚听)ξ「──、」
不意に、ツンが立ち止まった。
鞄からファイルを取り出す。
( ^ω^)「ツンさん?」
街灯の傍でしゃがみ込み、焦ったような手つきでファイルをめくる。
ふと、手が止まった。
じっとファイルを見下ろしていたツンは、何かに気付いたのか、勢いをつけて顔を上げた。
立ち上がり、内藤の手を掴む。
ξ;゚听)ξ「内藤君! もう一回ロミスさんのとこに行くわよ!」
( ^ω^)「はい?」
この人は本当に突拍子もない。
内藤は手を引かれながら、深く嘆息した。
*****