ξ゚听)ξ幽霊裁判が開廷するようです

case2:つきまといの罪/前編

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175 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2012/10/10(水) 02:44:46 ID:VyKq31NoO

( ´_ゝ`)「泥ねえ。そりゃまた、迷惑な話だな」

 夜。流石家の居間。
 内藤と弟者から話を聞き終えた兄者は、
 5人分のグラスに麦茶を注ぎながら唸った。

 2人の上履きは、居間の隅に吊るされている。
 何とか気にならない程度には綺麗になった。

 下駄箱を汚した犯人は未だ分かっていない。

l从-∀-ノ!リ人「もしかしたら、ちっちゃい兄者に泣かされた女子が腹いせに……」

( ^ω^)「僕らの上履きまで汚されるのは困るおー」

(´<_`;)「そもそも女子を泣かせた覚えがないぞ」

 そこへ、がらがらという音を立てて、台所と居間を仕切るガラス戸が開けられた。
 話を中断させる。

176 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2012/10/10(水) 02:45:29 ID:VyKq31NoO

∬´_ゝ`)「妹者、みんなにお味噌汁よそってー」

l从・∀・ノ!リ人「はーい」

 現れたのは、盆を持った女性だった。
 盆には人数分の茶碗と汁椀が重なっている。

 彼女は流石姉者という。
 20代半ば、流石家の長女。
 妹者が通う小学校に勤めている教師だ。

 姉者が妹者の隣に腰を下ろし、2人の間に盆を置く。
 妹者は汁椀を取ると、卓袱台の上の鍋にお玉を突っ込み、味噌汁をよそった。
 先に、弟者へ味噌汁が渡された。

 姉者は傍らの炊飯器の蓋を開け、ご飯を茶碗へ盛りつける。

∬´_ゝ`)「どれくらい食べる?」

 「大盛り」と男3人が同時に答えると、姉者はくすくす笑った。

 全員にご飯と味噌汁が行き渡り、5人はそれぞれ両手を合わせる。

177 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2012/10/10(水) 02:47:52 ID:VyKq31NoO

∬´_ゝ`)「それじゃ、いただきます」

( ^ω^)(*´_ゝ`)「いただきまーす」(´<_`*)l从・∀・*ノ!リ人


 ──内藤が小学生のときに周囲から苛められていたのは、前回話した通り。

 苛めは年々激しくなり、6年生の後半にはほとんど学校にも行かなくなった。
 そんな内藤を見て、両親は、
 この調子だと中学校に上がっても不登校のままなのではないかと危惧する。

 ならば苛めっ子のいない土地へ移ればいいとは考えたものの、
 内藤の両親は共働きで、どちらも簡単に引っ越せるような職ではなかった。

 そこで、他県に住む流石家へ内藤を預けることにしたのである。
 流石家は母方の親戚に当たり、昔から交流があったので
 しばらく内藤の面倒を見てほしいという親の頼みにも、すんなり頷いてくれた。

 内藤も両親も、離れて暮らすことに抵抗はなかった。
 リアリストな両親は内藤を少々気味悪く思っていたし、内藤も、そんな両親に甘えるのが苦手だった。
 別に、互いに愛情がないわけではない。ただほんの少し距離があっただけだ。

 そんな流れの末に今がある──とは言え。
 弟者達の両親も諸事情により、今年の初めに遠方へ行ってしまったため、
 現在、この家には若者と子供しかいないのだが。

178 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2012/10/10(水) 02:49:15 ID:VyKq31NoO

∬´_ゝ`)「口に合うかしら」

( ^ω^)「美味しいですお」

 コロッケを口に運ぶ内藤に、姉者は微笑んだ。
 内藤が頷くと、弟者がそれに続く。

(´<_` )「姉者が作るご飯は何でも美味い」

∬*´_ゝ`)「やあね、もう。──兄者、ご飯こぼしたわよ」

( ´_ゝ`)「おっとっと」

 最年長であり社会人である姉者は、皆の母親代わりとも言える。
 それを意識してか、姉者には「誰よりも大人であろう」としている節がちょくちょく見られた。

l从・∀・*ノ!リ人「あー、姉者姉者、これ食べたいのじゃ」

 妹者がテレビを指差した。
 スナック菓子のコマーシャルが流れている。

179 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2012/10/10(水) 02:50:26 ID:VyKq31NoO

∬´_ゝ`)「新しい味出たのねえ」

(*´_ゝ`)「よしよし、俺が明日帰ってくるときに買ってきてやろう」

l从・∀・*ノ!リ人「おっきい兄者大好きー」

(*´_ゝ`)「俺もこういうときだけデレる妹者が大好きだぞー」

 何とはなしに、皆の視線がテレビに向かう。
 コマーシャルが終わり、番組が始まった。

(´<_` )「……あ」

 おどろおどろしいBGM。
 薄暗い映像。
 エレベーターの監視カメラに映った霊がどうこう、というナレーション。

 心霊番組だ。

180 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2012/10/10(水) 02:51:37 ID:VyKq31NoO

 途端、兄者達が焦り出す。

l从・∀・;ノ!リ人「り、リモコン、リモコンどこじゃ!?」

(;´_ゝ`)「さっきブーンが使ってなかったか!?」

( ^ω^)「あ、ここに」

(´<_`;)「早くチャンネル変えろ!」

 急かされるままにチャンネルを切り替える。
 だが、その寸前。
 エレベーターに霊が現れる瞬間が、ばっちり画面に映ってしまった。

∬;´_ゝ`)「いっ……──」

 内藤は箸とリモコンを置き、空いた手で両耳を塞ごうとした。
 しかし、たった一秒遅かった。

181 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2012/10/10(水) 02:52:19 ID:VyKq31NoO


∬;´_ゝ`)「──いやあああああああああ!!!!!」


 食卓に轟いた姉者の悲鳴が、皆の耳へと直撃する。


 誰よりも大人であろうと頑張っている姉者だが、
 残念なことに、彼女は誰よりも怖がりなのであった。


.

183 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2012/10/10(水) 02:54:30 ID:VyKq31NoO

∬;_ゝ;)「あばばばばばば」

(;´_ゝ`)「おっ、おお、落ち着け姉者、
       おばけなんてなーいさっ! はいっ!」

∬;_ゝ;)「お、お、お、おばっ、おばけなんてなーいさ! おばけなんてうっそさ!」

( ^ω^)「いい歳してそれは……」

(´<_`;)「しっ」

l从・∀・;ノ!リ人「姉者ー、テレビ見るのじゃ、可愛いわんこが映ってるのじゃ」

 妹者に抱き着き、涙声で童謡を歌う姉者。

 昔からこうだ。
 怖い話など聞こうものなら、トイレも風呂も1人で行けなくなる。
 心霊映像など見ようものなら、人から離れられなくなる。

 いっそ面白いくらいなのだが、本人にとっては笑い事ではないだろう。

184 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2012/10/10(水) 02:56:25 ID:VyKq31NoO

(´<_`;)「姉者、幽霊なんていないから。
       ああいう映像は作り物なんだから、怖がる必要ないって」

 オカルト完全否定派の弟者が何度言い聞かせても、
 姉者の怖がりは治らない。

 ほくほくのコロッケを食べつつ、内藤は「怖がると霊が寄ってきますよ」と忠告するべきか否か悩み、
 言ったら余計怯えさせることになりそうだと結論を出した。



*****

185 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2012/10/10(水) 02:58:48 ID:VyKq31NoO

 翌朝。
 内藤は話し声で目覚めた。

( ^ω^)「……?」

 布団から這い出る。
 声は、階下から聞こえていた。

 まだ7時前だ。
 窓の外を見る。しとしとと雨が降り、空は雲に覆われ薄暗い。

 目を擦りながら立ち上がり、スウェットのまま部屋を出た。
 流石家の2階、一番奥が内藤の部屋である。

( ^ω^)(姉者さん達かお)

 わざと音を立てるようにして階段を下りる。
 話し声は玄関の方向から。

∬;´_ゝ`)「──あ……ブーン君、起こしちゃった?」

 玄関に立っている姉者が、おろおろした様子で内藤に声をかけた。
 続いて、姉者の傍にいた弟者が「おはよう」と言う。
 弟者はジャージを着ている。足元に鞄が置いてあるので、朝練に行くところだったのだろう。

 2人に挨拶を返してから、内藤は首を傾げた。

186 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2012/10/10(水) 03:00:44 ID:VyKq31NoO

( ^ω^)「どうかしたのかお」

(´<_`;)「ああ……」

 弟者は、中途半端に開いた玄関の引き戸を指差した。
 引き戸の一部に磨りガラスが入っているのだが、
 そのガラスの向こう側に、何かが飛び散っているのが見えた。

 嫌な予感。
 内藤は外に出て、引き戸を確認した。

( ^ω^)「……泥」

(´<_`;)「だよな」

 放射線状に広がっているのは、間違いなく泥だった。
 まるで引き戸の真ん中に巨大な泥団子を叩きつけたかのようだ。

 触れてみると、指にべったりと付着した。
 まだ少しも乾いていない。

187 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2012/10/10(水) 03:03:12 ID:VyKq31NoO

( ^ω^)「昨日のと同じ犯人かお、これ」

(´<_`;)「分からん……」

 玄関の中に戻る。
 警察を呼ぶのかと問うと、弟者は首を振った。

 また何かあれば通報するつもりだが、今の段階では、その気はないそうだ。

( ^ω^)「いま通報した方がいいんじゃないかお?」

∬;´_ゝ`)「私もそうしようって言ってるんだけど……」

 弟者は頑として頷かなかった。
 慎重なところのある弟者であれば、すぐにでも警察に相談しそうなものだが。

 そこに言い様のない違和感があった。
 洗い落とすと言って弟者が道具を取りに行っている間に、
 内藤は部屋から携帯電話を持ってくると、カメラ機能で引き戸を撮影した。

 このまま泥を落とすより、せめて画像としてでもこの状況を残しておいた方が、
 いざ警察を呼ぶ事態になったときに役立つのではないかと考えたのである。



*****

188 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2012/10/10(水) 03:04:39 ID:VyKq31NoO


 内藤や弟者は警戒していたが、予想に反し、
 新たな事件が起こることはなかった。

 下駄箱の件も犯人不明のまま進展はなく、生徒達の話題から消えていった。



 ──そうして、一週間が経った。


.

189 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2012/10/10(水) 03:08:43 ID:VyKq31NoO

(´<_` )「ブーン!」

 放課後。
 帰ろうとしていた内藤は、昇降口で弟者に呼び止められた。

( ^ω^)「何だお?」

(´<_` )「悪いんだが、帰りにトイレットペーパーを買ってってくれないか?
       姉者から、切らしてるのを忘れてたってメールが来てたんだ。
       俺は部活があるし、兄者は帰るの夜になるだろうから、ブーンに頼んだ方がいいと思う」

( ^ω^)「ああ、分かったお。……いつものやつ?」

(´<_` )「いつもので。安売りしてるのがあれば、それでもいい」

( ^ω^)「了解だお。じゃあ、部活頑張れおー」

(´<_` )「気を付けて帰れよ」

 弟者と別れた後、財布の中身を確認しながら学校を出た。
 月末に親から仕送りをもらったばかりなので、出費は気にならない。

 ふと。校門の辺りで、周りが静かになったのを感じて顔を上げた。
 生徒達が一点を見つめ、ひそひそと話している。

190 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2012/10/10(水) 03:10:00 ID:VyKq31NoO


ξ゚听)ξ


 校門に寄り掛かるようにして、女性が立っていた。

 金色の髪。
 黒いブラウスとスラックス、襟に白いリボン。
 やけに目立つ姿だった。

 不意に、女性が内藤を見る。
 2人の視線が絡んだ。

191 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2012/10/10(水) 03:11:18 ID:VyKq31NoO

ξ゚听)ξ「……あ、内藤君?」

( ^ω^)「……は」

ξ゚听)ξ「内藤ホライゾン君かしら、あなた」

 彼女は内藤の名を呼んだ。
 内藤は眉を顰めて、しかし堅すぎない表情を保って首を傾げた。

(;^ω^)「そうですけど……」

( ^ω^)(……誰だお、この人)

 女性は、にこりと笑んだ。
 なかなか綺麗な人だ。

ξ゚ー゚)ξ「そう。ちょっと話したいことがあるんだけど、いいかしら」

 良くない。
 どう考えても関わらない方がいい。
 皆の反応を見れば分かる。

 すみません、買い物に行かないといけないので。
 そう返し、内藤はそそくさと彼女の横を通りすぎた。

 早足でスーパーへの道を歩く。

192 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2012/10/10(水) 03:12:19 ID:VyKq31NoO

ξ゚听)ξ「──君自身に用があるわけじゃないんだけどさ」

( ^ω^)「……」

 ついてきた。

 内藤の数歩後ろを歩きながら、話しかけてくる女性。
 厄介な類の人かもしれない。どうしよう。

ξ゚听)ξ「あの、流石さんのところに居候してるのよね?」

( ^ω^)「……」

ξ゚听)ξ「流石弟者君とは仲いい?」

( ^ω^)「……」

ξ゚听)ξ「私、彼に用があるのよね。
      でも、あの子、ちょっと私のこと警戒してるみたいで。
      なかなか迂闊に話しかけられないの」

( ^ω^)「……」

ξ゚听)ξ「だから君に手伝ってほしくて……」

193 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2012/10/10(水) 03:13:23 ID:VyKq31NoO

 人気のない場所に差し掛かったとき、腕を掴まれた。
 後ろを向かされる。
 至近距離に女性の顔があって、息を呑んだ。

ξ゚听)ξ「急に現れて何の話だ、って思うでしょうけど……。
      お願い、もう時間がないのよ。
      どうにか、私と弟者君が話を出来るように計らってくれない?」

 無視しても無駄か。
 内藤は、いかにも弱々しい声を出した。

(;^ω^)「あ、あの、あの、僕……」

 俯き、言い淀む──ふりをする。
 女性は内藤から手を離すと、顔を覗き込み、「どうしたの」と優しく問い掛けた。

(;^ω^)「僕、あの……お、弟者、くん、に、き……嫌われてて……」

 泣きそうな表情と声。
 もちろん演技である。

194 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2012/10/10(水) 03:15:15 ID:VyKq31NoO

(;^ω^)「だから……、……お姉さんのお手伝い、出来ないかもしれない……」

ξ゚听)ξ「昨日、2人仲良く登下校してたのは何だったのかしら」

 沈黙。
 見つめ合う。

 内藤はとびきりの笑顔を見せた。
 女性はにたりと笑う。

ξ^竸)ξ「お手伝いよろしくね?」

( ^ω^)「お断りしますお」

 背を向けて歩き出す。
 こつこつ、女性のパンプスの音が響く。

ξ^竸)ξ「素直で優しくていい子だって評判のくせに、
      随分とまあ、『しっかり』した子じゃないの」

 しっかり、の部分に力が篭っていて、嫌味であることは容易に理解出来た。

195 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2012/10/10(水) 03:15:56 ID:VyKq31NoO

( ^ω^)「お褒めにあずかり光栄ですお」

ξ^竸)ξ「演技はもうしないの?」

( ^ω^)「しても無駄じゃありませんかお」

ξ^竸)ξ「それもそうね。
      で、どうしたら協力してくれるのかしら」

( ^ω^)「断るって言いましたけど」

ξ゚听)ξ「幽霊が見えること、バラしちゃってもいいの?」

 足が止まる。
 パンプスの音も止まる。

197 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2012/10/10(水) 03:17:48 ID:VyKq31NoO

( ^ω^)「……何のことですかお」

ξ゚听)ξ「一部の幽霊の間で噂になってるのよね。
      内藤ホライゾンには霊感があるって。
      話しかけたら殴られた、って霊が2、3人はいたわ」

 以前、校門で会った男の霊と似たような台詞だ。
 内藤が振り返ると、彼女は余裕たっぷりの顔つきで小首を傾げてみせた。
 身構える。

ξ゚听)ξ「あ、私は人間よ。生きてるから安心して。
      私、あなたと同じなの。
      幽霊が見える。幽霊と話せる。幽霊に触れる」

 女性が右側を指差す。
 そちらに目を向けると、大木の上に座る少女がいた。
 少女は右半身がぐずぐずに崩れている。

 内藤が慌てて視線を外すと、女性は、またにやにや笑い出した。

198 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2012/10/10(水) 03:18:59 ID:VyKq31NoO

ξ^竸)ξ「ほら見えてる。右半分が崩れてる女の子でしょ」

( ^ω^)「……」

ξ^竸)ξ「あのね内藤君、私、あなたをからかいたいわけじゃないのよ。
      あなたは別にどうでもいいの。
      ただ、弟者君と話す切っ掛けになってくれればいいの」

( ^ω^)「……弟者と何を話すんですかお」

ξ^竸)ξ「交渉」

( ^ω^)「交渉?」

 彼女は笑みを消した。
 真剣な表情をされると、やはり、改めて綺麗な顔だと思う。

ξ゚听)ξ「──彼に、証人として出廷してほしいのよ」

 しゅってい、という言葉の意味をはかりかねた。
 その前の「証人」という単語を反芻して、ようやく「出廷」のことだと理解し、
 そして、彼女が裁判に関わる発言をしたのだと思い至った。

199 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2012/10/10(水) 03:20:09 ID:VyKq31NoO

( ^ω^)「お姉さん、何やってる人なんですかお」

ξ゚听)ξ「そういえば自己紹介してなかったわね、ごめんなさい。
      私、出連ツンっていうの」

 女性は名刺を出すと、それを内藤に手渡した。
 名刺に記されているのは、出連ツンという名前と、住所、電話番号。

 名前の右上には「弁護士」と書かれていた。

( ^ω^)「弁護士さん」

ξ゚听)ξ「そうよ」

 弁護士だと分かっただけで、賢そうな人に見えるのだから不思議──

.

200 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2012/10/10(水) 03:20:32 ID:VyKq31NoO


ξ゚ー゚)ξ「弁護士っていっても、幽霊専門のね」



 急に。
 言葉が通じるような気がしなくなったので。

 内藤は、全力で走って逃げた。



*****

201 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2012/10/10(水) 03:21:34 ID:VyKq31NoO


(´<_` )「変人ってことで有名だよ。
       働いてないし就活もしてないのに、
       真っ黒なスーツ着て毎日あちこちうろちょろしててさ」

 夜。流石家の居間。
 カレーライスに福神漬けを乗せながら、弟者は言った。


 ──あの後、出連ツンが追いかけてくることもなく。
 無事にスーパーでトイレットペーパーを買って帰ることが出来た。

 彼女は関わるべき人ではないと思う。
 しかし気にはなったので、夕食時に「出連ツン」を知っているかと訊ねると
 弟者は上記のように答えた。

 大体は予想通り。

202 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2012/10/10(水) 03:23:09 ID:VyKq31NoO

(´<_` )「昔は、幽霊がーとか何とかしょっちゅう言ってたらしい。
       危ない人だ。近付かないようにしろよ。
       福神漬けいるか?」

( ^ω^)「あ、いるお」

(´<_` )「はいよ」

 恐らく、彼女に霊感があるのは間違いない。
 誰も信じなかったようだが。

(´<_` )「そういやブーンは出連さんのこと知らなかったんだな……。
       それにしても急にどうしたんだ? まさか会ったのか」

( ^ω^)「いや、ちょっと」

(´<_` )「絡まれたら、相手にしないで逃げとけ」

(*´_ゝ`)「でも、変人とはいえ結構綺麗だよなあ、あの人」

 兄者が惚けた声で言う。

 たしかにツンは美人だった。
 振る舞いが全てを台無しにしているけれども。

203 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2012/10/10(水) 03:24:28 ID:VyKq31NoO

(´<_` )「兄者、ああいうのが好みだったっけか。年下好きだと思ってたけど」

( ´_ゝ`)「んー、まあ、あれで10歳くらい若ければストライクかな」

(´<_` )「10歳ねえ……あの人、姉者の同級生だろう」

( ^ω^)「え、そうなのかお」

(´<_` )「そうそう。
       姉者の前では出連さんの名前出すなよ? 怖がるから」

::∬;´_ゝ`)::

( ^ω^)「……手遅れだお弟者」

(´<_` )「え?」

(;´_ゝ`)「げえっ姉者!!」

 弟者の真後ろに、姉者が副菜を持って立っていた。
 青ざめて震える姉者の手から兄者が皿を奪い取る。
 もう少し遅れていたら、皿の中身が全て床に落ちていただろう。

204 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2012/10/10(水) 03:25:32 ID:VyKq31NoO

::∬;´_ゝ`)::「つっ、つ、つつつ、つ、」

(´<_`;)「気のせいだ姉者、何でもない、何でもないから!!」

l从・∀・*ノ!リ人「姉者ー、ご飯はどれくらい盛るのじゃー?」

 ほんわかした声が割り込んできて、姉者の恐怖は爆発せずに済んだ。
 胸元を押さえながら台所の妹者に振り返り、少なめにして、と答えている。

l从・∀・*ノ!リ人「はーい」

∬;´_ゝ`)「ふう……」

(´<_`;)「……小学校から高校まで一緒で、ずっと出連さんに怯えてたんだ」

( ^ω^)「なるほど」

 弟者が耳元で囁いた。
 人一倍怖がりの姉者からしたら、霊感を持つ人間など脅威以外の何物でもない。

205 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2012/10/10(水) 03:26:51 ID:VyKq31NoO

 妹者が姉者の分のカレーライスを運んできて、卓袱台に全員分のメニューが並んだ。
 手を合わせ、「いただきます」と同時に言う。

 カレースプーンを手に取りながら、内藤は姉者と弟者を見比べた。


   ξ゚听)ξ『幽霊が見えること、バラしちゃってもいいの?』


 堪ったものではない。
 姉者は怖がりだし、弟者は霊に関しては否定派だ。
 ろくな結果にならないのが目に見えている。

 しかも、あの女は姉者の知り合いだという。
 その気になれば姉者と接触するのは容易いことだろう。

 もし、明日以降も絡んできたら。
 そして同じ手口で脅してきたら──

( ^ω^)(……どうすりゃいいかお)



*****

206 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2012/10/10(水) 03:28:19 ID:VyKq31NoO

 どうか二度と会いませんように。
 内藤のそんな願いは、翌日、早々に打ち砕かれる。


 放課後。
 机の中身を鞄に入れながら、内藤は雨が降っているのを窓際の席から確認した。
 そのまま、目を下に向ける。

( ^ω^)「うわ」

ξ^竸)ξノシ


 校門の前に立っていたツンが、内藤を見上げて、傘を持っていない方の手を振った。

.

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