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208 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2012/10/10(水) 03:29:56 ID:VyKq31NoO
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ξ゚听)ξ「今はねえ、幽霊も裁判やる時代なのよね。
幽霊になったら女湯覗いちゃうぞー、とか言う人も多いけど、
今の時代にそんなことして見付かったら、お縄にかかって当然だわ」
ξ゚听)ξ「事実、そういう罪で捕まった霊の弁護も何度かしたしね」
駄菓子屋。
軒下に設置されたベンチに、内藤とツンは並んで座っていた。
雨は小降りになっている。
内藤は相槌も打たずにツンから視線を外した。
奢ってもらったラムネの瓶を、口元で傾ける。
( ^ω^)(幽霊が裁判って)
──不幸な内藤少年は、学校から出た瞬間、ツンに捕まったのであった。
しばらく校門前で話す話さないの言い合いをしていたが、
周囲からの視線に耐えかねた内藤が折れてしまった。
別の場所で話しましょう、と。
そして連れてこられた先が、この駄菓子屋だ。
場所は移ったとはいえ、もろに屋外。通行人に見られることには変わりない。
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209 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2012/10/10(水) 03:30:57 ID:VyKq31NoO
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ξ゚听)ξ「──昨日さ」
( ^ω^)「はあ」
ξ゚听)ξ「よくもまあ逃げてくれたわね。ちょっと傷付いたわ」
( ^ω^)「僕、静かに暮らしたい派なので」
ツンは、口をへの字に曲げた。
ξ゚ぺ)ξ「せめて、ちゃんと話を聞くぐらいはしてほしかったわ」
( ^ω^)「頭おかしい人の話は聞かないようにしてるんですお。
金髪で黒ずくめで20代の無職の話は特に」
ξ;゚听)ξ「……あなた、結構言い方きついわね……。
初めて見たときはもっと優しい感じの子かと思ってたけど」
( ^ω^)「幽霊達は、僕に殴られたって言ってたんじゃありませんでしたっけ」
ξ;゚听)ξ「話を誇張してるのかと思ったのよ。
ていうか何よ、誰が無職ですって? 弁護士だっつってるでしょ」
( ^ω^)「幽霊専門ですおね。
幽霊と裁判ごっこして遊ぶのは自由ですけど、それを職業だと言い張るのはいかがなものかと」
ξ;゚听)ξ「もう! いいわ、とりあえず話聞いてよ!!」
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210 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2012/10/10(水) 03:32:25 ID:VyKq31NoO
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ツンは、膝に乗せた鞄に手を突っ込んだ。
どさり。鞄から取り出された分厚い本が、重たい音と共にベンチへ乗せられる。
内藤は、黒い表紙の上部にある銀色の文字を指でなぞった。
( ^ω^)「……おばけ法」
ξ゚听)ξ「間抜けな響きだけど、その名の通り、幽霊や妖怪のために作られた法律のことよ」
( ^ω^)「霊に法律なんてあるんですかお?」
ξ゚听)ξ「時代が流れるにつれ幽霊は増える、それに伴って様々な問題も増える。
それらを律するために作られたの」
ξ゚听)ξ「とは言っても、公布されたのはほんの20年とか30年前だからね。
大々的に公表出来るものじゃないし、まだまだ浸透しきってないのも事実よ」
内藤はすっかり呆れ果てた様子で手元の瓶を揺らした。
からから、ビー玉が甲高い声をあげる。
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211 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2012/10/10(水) 03:33:09 ID:VyKq31NoO
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( ^ω^)「こんな分厚い本を作るほど暇なんですね……」
ξ#゚听)ξ「妄想と決めつけたくて仕方ないみたいね」
( ^ω^)「だって僕は小さい頃から幽霊やら何やらを見てきましたけど、
奴らがそんなの気にしたところなんか一度も見たことありませんお」
いつだって、内藤が「見える」人間だと知れば、彼らは内藤に付きまとい、
憑依しようとしたり祟ったりしようとしてきた。
本当に法律なんてものがあるなら、内藤はもっと生きやすかった筈だ。
ξ゚听)ξ「君は、去年この町に越してきたのよね?」
( ^ω^)「去年の春に」
ξ゚听)ξ「君が前に住んでたところって、大きな神社かお寺がなかった?」
( ^ω^)「……ありましたけど」
内藤は、真っ赤な鳥居の神社を思い浮かべた。
広大な敷地を所有する立派な神社だった。
内藤にとっては、あまり、いい雰囲気の場所ではなかったけれど。
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212 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2012/10/10(水) 03:35:00 ID:VyKq31NoO
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ξ゚听)ξ「そういうところでは、その土地の神様の力が強いからね。
独裁政治ってわけ。おばけ法なんか導入してないのよ」
腕を組み、ツンは首を横に振った。
困ったもんだわ、と一言。
ξ゚ぺ)ξ「おばけ法の制定には霊だけじゃなく、霊能力を持った人間も大きく関わってるの。
だから、それを良く思わない神様は聞く耳持ってくれないのよねえ。
ちゃんと話を聞けば、生者にも死者にも損が少ない内容だって分かってくれる筈なのに」
( ^ω^)「へえ」
由々しき問題だ、と言わんばかりの口振りをするツンだったが、
内藤は会話を広げることを避けた。
彼の興味は、おばけ法から「裁判」の方へと移っている。
( ^ω^)「ともかく、ここらはおばけ法が適用されてる地域なわけですおね」
ξ*゚听)ξ「あっ、信じてくれるの?」
( ^ω^)「とりあえず聞くだけ聞いてみようかと思っただけで、まだ信じる気にはなってませんお」
ξ*゚听)ξ「まあ聞かずに逃げられるよりマシね。
──法があれば、当然、裁判もあるわ」
ツンが咳払いする。
信憑性を持たせるためか、真面目な顔つきになった。
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213 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2012/10/10(水) 03:36:25 ID:VyKq31NoO
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ξ゚听)ξ「それが幽霊裁判。基本的には、私達生きてる人間の裁判と大差ないわ」
ξ゚听)ξ「事件が起きたら、犯人と思しき霊を捕まえて、裁判にかける。
有罪か無罪か判じて、有罪なら罰を与える。終わり」
( ^ω^)「すごくふんわりしてるんですけど」
ξ゚听)ξ「えっとね、基本的に、被告人は幽霊や妖怪ばかりよ。
ごくたまーに人間が訴えられることもあるらしいけど。
被害者の方も、幽霊だったり人間だったり……色々ね」
ξ゚听)ξ「検察官──検事って言えば分かるかしら?
検事や弁護人は、霊感のある人間がやることになってるの」
私みたいに、とツンは自分自身を指差した。
人間の方が色々と都合がいいそうだ。
内藤は、以前ニュース番組で見た法廷画の記憶を掘り出した。
被告人、弁護人、検事。
裁判といえば、あと──
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214 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2012/10/10(水) 03:36:57 ID:VyKq31NoO
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( ^ω^)「裁判官は?」
ξ゚听)ξ「ううんと……日本で言えば、一番多いのは
その土地で最も大きい神社の神様が裁判長になるパターンかしら。
場所によって、また違うんだけどね」
ξ゚听)ξ「……他に訊きたいことはある?」
( ^ω^)「特には」
気になることはまだまだあった。
だが、そろそろお腹いっぱいだ。
それに、次々と興味が湧いてくるのがよろしくない。
ツンの話が本当か嘘かはともかく、彼女に霊感があるのは信じる。
このまま首を突っ込めば、また毎日幽霊に悩まされるようになるかもしれない。
ξ*゚听)ξ「じゃあ本題なんだけど!」
ツンが、ぐっと身を乗り出させる。
どうやってこの場を逃れようか。
内藤が思考に集中しようとした──そのとき。
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215 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2012/10/10(水) 03:38:19 ID:VyKq31NoO
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(´<_` )「おい、ブーン」
( ^ω^)「あ」
声をかけられる。
傍に、Tシャツとジャージを身に着けた弟者が立っていた。
雨が止んでいることに気付く。
弟者はじろりとツンを睨むと、内藤の腕を掴んだ。
むりやり腰を上げさせられる。
( ^ω^)「部活は?」
(´<_` )「ブーンが出連さんに拐われたって聞いて、
嫌な予感がしたから探しに来た」
まず間違いなく「拐われた」と表現した者はいないだろう。
弟者の、ツンに対する当て擦りのようなものだ。
(´<_` )「行くぞ」
ξ゚听)ξ「あー、待った待った、待って」
弟者は胡乱げにツンを見た。
随分とツンを嫌っているようだ。
そんなにオカルトが嫌いか。
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216 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2012/10/10(水) 03:39:13 ID:VyKq31NoO
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ξ゚听)ξ「せっかく会えたんだから、もう直接言うわ。時間もないし。
弟者君、後でちょっと付き合ってくれないかしら」
(´<_` )「……付き合うって何に?」
ξ゚З゚)ξ「今は内緒」
(´<_` )「後でって、いつ」
ξ゚听)ξ「5時半くらいかな」
もう2時間後だ。
弟者が顔を顰める。
(´<_` )「遠慮しときます」
ξ゚听)ξ「……じゃあ、君のお姉さんの方に交渉しようかしら?
弟者君を少しだけ貸してくださいって。
きちんと保護者に話を通さないといけないしね?」
(´<_` )「……」
内藤の腕を掴んでいる弟者の手に、力が篭った。
痛い。
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217 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2012/10/10(水) 03:40:47 ID:VyKq31NoO
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(´<_` )「姉者があんたを恐がってるのは知ってるだろ」
ξ^竸)ξ「そりゃ勿論。面白いくらいよね、あの怯えっぷり」
(´<_` )「分かってるなら近付くな」
( ^ω^)(出たシスコン)
兄者は歳の離れた妹者を一番可愛がる。
逆に弟者は、歳の離れた姉者に一番懐いている。
弟者がオカルトを否定するのは、恐らく、姉者が怖がりだからだ。
彼女を怯えさせるようなものが嫌いなのだろう。と、内藤は考えている。
だから──こうしてツンを嫌うのも、何となく分かる。
ξ^竸)ξ「でも、ねえ? 君が私のお願いを聞いてくれないんだもの。
なら、お姉さんから説得してくれーって頼みたくなるじゃない」
(´<_`#)「……くそっ」
空気がぎすぎすしている。
居た堪れない。腕が痛い。
オカルト女とシスコンの勝負、今回はシスコンの負けのようだ。
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218 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2012/10/10(水) 03:42:08 ID:VyKq31NoO
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(´<_`#)「どこで合流すればいい」
ξ゚听)ξ「どこでも」
(´<_`#)「じゃあ5時半に中学校の前で待ってろ! 小学校や俺の家には近寄るなよ!!」
ξ*゚ v゚)ξ「おっけー」
(´<_`#)「言っとくが、場合によっちゃあ通報するからな!!」
ξ*゚ v゚)ξ「おっけー」
(´<_`#)「事前に人に連絡しとくから、遅くまで帰さなかった場合も通報されるんだからな!!」
ξ*゚ v゚)ξ「おっけー」
(´<_`#)「『こいつちょろい』みたいな顔すんな! 行くぞブーン!!」
( ^ω^)「おー……」
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219 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2012/10/10(水) 03:44:30 ID:VyKq31NoO
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内藤は瓶を持った手を挙げて、ツンに軽く頭を下げた。
( ^ω^)「ラムネ、ごちそうさまでしたお」
ξ゚听)ξ「内藤君も同じ時間に同じ場所でよろしくねー。その子1人じゃ不安だわ」
(´<_`#)「はあ!? うちの居候まで巻き込む気か!?」
ξ゚听)ξ「嫌なの?」
(´<_`#)「……っ、……っ!!」
ξ*゚ v゚)ξ
それ以上は何も言わなかった。
弟者の中での優先順位は、内藤より姉者の方が上であった。
当たり前といえば当たり前だが、一番仲のいい友人として、そこそこ悲しい。
*****
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220 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2012/10/10(水) 03:46:39 ID:VyKq31NoO
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放置するわけにもいかず。
一旦家に帰って私服に着替え、内藤は5時半ぴったりにヴィップ中学校前へ到着した。
既に弟者とツンは待機していて(物凄く険悪な雰囲気だった)、
内藤が着くなり、空気が若干──本当に若干──和らぐ。
ツンが「ついてこい」と言って歩き出し、内藤と弟者は顔を見交わしてから、
ツンに続く形で一歩踏み出した。
──ツンの言葉が正しければ、今から赴くのは法廷だ。
それも、幽霊を裁くための。
( ^ω^)(……本当に、幽霊裁判なんかやるつもりかお)
それが事実だとしたら、一体、どんな事件について裁くのだろう。
被告人は誰なのだろう。
なぜ弟者が証人になるのだろう。
好奇心が胸を満たしているのに気付き、内藤は首を振った。
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221 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2012/10/10(水) 03:47:29 ID:VyKq31NoO
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ξ゚听)ξ「──着いたわ」
歩いている間、会話はなかった。
ツンが立ち止まり、ようやく沈黙を破る。
目の前には建物があった。
薄汚れた外壁。
割れた窓。
( ^ω^)「……廃ビル」
3階建てのビルだった。
看板には何も記されていない。
人の気配など皆無だ。
夜が近付いていることもあって、もう、悲しくなるほど「廃墟」然としていた。
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222 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2012/10/10(水) 03:49:10 ID:VyKq31NoO
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(´<_` )「帰ろう」
ξ;゚听)ξ「大丈夫! 大丈夫だから! 何も怪しくないから!!」
( ^ω^)「怪しいとこしかありませんお。
中に入ったら危ない人が待ち構えてそうなんですけど。
というわけでさようなら」
ξ;゚听)ξ「お願い待ってぇええええ!!」
踵を返した内藤と弟者に、ツンが必死に取り縋る。
先程の好奇心は消え失せ、もはや警戒以外の選択肢がなかった。
「──ツン、あんた何してんの」
声がして、内藤と弟者の動きが止まる。
低い、男の声だった。
同時に後ろへ振り向く。
「それ」を視界に収め、内藤は後悔した。
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223 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2012/10/10(水) 03:51:54 ID:VyKq31NoO
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(,,゚Д゚)「遅刻じゃないかって、しぃが怒ってるわよ」
ビルの入口に化け物がいる。
ばっちりメイクをし、女の服を着た、紛うことなき化け物がいる。
子供なら確実に泣く。
(*,゚Д゚)「あら! なあに、男の子2人も連れてきたの!? ヴィップ中の子?」
( ^ω^)「ツンさん、あれ何の妖怪ですかお」
ξ゚听)ξ「人間よ。一応」
(´<_`;)「……ギコさん!?」
真剣に問答する内藤とツンを他所に、弟者が頓狂な声をあげた。
化け物の方も、「弟者君じゃないの」と目を丸くさせる。
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224 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2012/10/10(水) 03:53:25 ID:VyKq31NoO
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(´<_`;)「ギコさ……え……ギコさん……ですよね……?」
(*,゚Д゚)「そうよお、この格好で会うのは初めてかしら。やっだ、気恥ずかしいわあー!」
( ^ω^)「……知り合いなのかお?」
(´<_`;)「姉者の同級生で……警察の人だ」
内藤に去来した驚きは2つ。
これが警察関係者であることが一つ。
姉者は同級生に恵まれなかったのだなということが一つ。
( ^ω^)「それはまた……日本の未来と姉者さんの過去が心配だお」
(´<_`;)「その服装に関しては特に意外性はなかったけど、というかっ、
何でギコさんがここにいるんですか!?」
(,,゚Д゚)「何でって裁判のためだけど」
(´<_`;)「裁判!?」
(,,゚Д゚)「? 証人か何かで出廷しに来たんじゃないの?」
弟者はあんぐりと口を開き、ツンと化け物を見た。
混乱が極限に達したようだ。
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226 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2012/10/10(水) 03:56:28 ID:VyKq31NoO
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ξ゚∀゚)ξ「勝機!」
ツンは呆然とする弟者の手を引き、建物の中へ駆けていった。
化け物はツンの背中を見送ってから、内藤に視線を移す。
(,,゚Д゚)「あんたも証人?」
( ^ω^)「何か、付き添いとして連れてこられただけみたいですお。
……幽霊裁判ってやつ、本当にやってるんですかお?」
演技をするのも忘れ、普段のトーンで問い掛けていた。
内藤も多少は混乱していたのである。
(,,゚Д゚)「やってるっていうか、これから始まるのよ。名前は何ていうの?」
( ^ω^)「……内藤ホライゾンですお」
(,,゚Д゚)「ああ、姉者のとこの居候? じゃあ、幽霊が見えるって子ね!
よろしくね、あたしは埴谷ギコよ」
埴谷ギコというらしい化け物は、にこりと笑って内藤に手招きした。
弟者は、彼──彼女と言うべきなのだろうか──に対しては敵意を持っていなかった。
警察の人間だという話だし、ツンよりは、まだ社会的に信頼される立場にある。
内藤は迷ってから彼へ近寄り、2人でビルに入った。
外は辛うじて薄明かりがあったが、内部は暗い。
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228 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2012/10/10(水) 03:58:55 ID:VyKq31NoO
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( ^ω^)「裁判って、こういう場所でやるもんなんですかお?」
(,,゚Д゚)「人が滅多に来ないような場所なら、どこでもね」
手摺りに掴まりながら階段を上る。
2階へ上がりきったところにドアがあった。
3階から声が聞こえるのだが、裁判に使うのは2階だという。
ギコがドアを開けると、隙間から光が漏れた。
電気が通っているのかと問うと、裁判の間だけ明かりを使えるよう、
警察の方で手配したのだと返答があった。
ドアが開ききる。
途端、弟者の怒鳴り声が聞こえた。
(´<_`;)「幽霊? 裁判? 何の話だよ、聞いてないぞ!!」
ξ゚З゚)ξ「だって話してないし」
(*゚ー゚)「……あのねえ、何も説明しないまま連れてくる人がどこにいるんです」
だだっ広い室内。
窓の辺りに黒いビニールが貼られている。
何となく荒れ果てた光景を想像していたが、事前に片付けたのか、意外と綺麗だった。
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229 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2012/10/10(水) 04:01:52 ID:VyKq31NoO
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距離をあけ、向かい合う形で置かれた机が2つ。
右側の机では弟者がツンに詰め寄り、
左側の机では見知らぬ人物が溜め息をついていた。
(,,゚Д゚)「しぃー、もう1人いるわよー」
(*゚ー゚)「……どうせ、そっちにも碌な説明はされてないんだろうね」
ギコが内藤の肩を叩きながら、左の机の人物に紹介する。
学生服姿の──これは、どっちだろう。
内藤には少女に見える。声も高い。だが服装は男だ。
よくよく目を凝らし、胸元に僅かな膨らみが確認出来た。
ギコが、学ランの少女のもとへ歩いていく。
内藤は一旦後ろを見てからドアを閉め、ツン達に近付いた。
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230 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2012/10/10(水) 04:04:11 ID:VyKq31NoO
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( ^ω^)「こっちが弁護人の席ですかお」
ξ゚听)ξ「そうそう。あっちが検事」
(´<_`;)「ブーン、帰ろう! こいつ幽霊の裁判するなんて馬鹿なこと言ってるぞ!!」
(*゚ー゚)「……ツンさん、どうにかしてくれませんかね。うるさいです」
ξ゚听)ξ「そうねえ。……まあ、とにかく見てもらうしかないか」
ツンが頭上を仰いだ。
天井には真新しい蛍光灯と、下卑た落書きがある。
ξ゚听)ξ「ドクオさーん、入廷して」
数秒間、何も起こらなかった。
弟者が視線を下ろそうとする。
それと同時に──天井から、足が飛び出した。
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231 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2012/10/10(水) 04:06:48 ID:VyKq31NoO
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そのまま、一気に男が下りてくる。
机と机の間に立った男は、ギコ達を睨んでから、こちらも睨みつけてきた。
男の険しい顔は、すぐさま驚きに変わる。
(;'A`)「……あっ、お前!!」
( ^ω^)「うわ。こんばんは」
奇遇というか、何というか。
以前、内藤に声をかけてきた男だった。
男は浮遊し、一気に内藤との距離を詰める。
(;'A`)「何でいるんだよ!! おまえ弁護士だったのか!?」
( ^ω^)「いや、この人に連れてこられて」
ξ゚听)ξ「なに、知ってるの?」
( ^ω^)「この間──うぶ」
取り憑かれそうになった、と説明しようとしたのに、
男の手が内藤の口を押さえた。
額がぶつかる程の距離で、男は声を潜める。
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232 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2012/10/10(水) 04:08:27 ID:VyKq31NoO
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(;'A`)「余計なこと言うなよ、憑依未遂罪に問われたらどうしてくれんだよ……。
心証悪くして有罪まっしぐらじゃねえか……」
( ^ω^)「……」
よく分からないが、黙っていた方が賢明か。
内藤が小さく頷き、男は離れた。
(*゚ー゚)「被告人。何をしているんです?」
('A`)「……へいへい、すーいーまーせーん」
男は、ふよふよと浮かんだまま中央に戻った。
ツンは内藤と男を見遣って、首を傾げる。
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233 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2012/10/10(水) 04:10:26 ID:VyKq31NoO
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( ^ω^)(……あ)
はたと思い至り、内藤は弟者へ意識を向けた。
霊感がない、ひいては件の男が見えない弟者からすれば、
今の一連の流れは意味が分からないものでは──
(゚<_゚;)
( ^ω^)「……弟者?」
弟者は、瞠目していた。
視線の先にはあの男。
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234 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2012/10/10(水) 04:11:56 ID:VyKq31NoO
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(゚<_゚;)「な、い、今の、今、天井から出、え、浮いて、え、」
( ^ω^)「……ツンさん」
ξ゚听)ξ「法廷の中だと、霊感のない人でも幽霊が見えるようになるわ。
見えなきゃ意味ないからね」
( ^ω^)「そりゃあ便利なもんですお」
(゚<_゚;)「ゆ……え……あれ……ゆう……」
ξ゚听)ξ「そうね、幽霊よ」
そうして、弟者がただ口を開閉させるだけの物体と成り下がった頃。
突然、かあん、と何かを叩く音が響いた。
空気が変わる。
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235 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2012/10/10(水) 04:14:53 ID:VyKq31NoO
-
ツン達が顔を上げた。
それで予想はついた。案の定、天井から足が出てくる。
裸足だ。
【+ 】ゞ゚)
下りてきたのは、中年の男。
変なお面に着物姿。
ギコや学ランの少女も──性別との食い違いから──変わった格好と言えるが、
その男は、さらに奇妙な出で立ちであった。
右手に木槌を持っている。
そのことから、ほぼ反射的に、内藤はこの男が「裁判官」なのだと考えた。
被告人(らしい)痩せぎすの男と向かい合う場所に降り立つ。
内藤の脳裏に浮かぶのは法廷画。
立ち位置から考えれば、やはり、お面の男が裁判官だ。
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237 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2012/10/10(水) 04:16:22 ID:VyKq31NoO
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【+ 】ゞ゚)「準備はいいか」
ぎょろりとした瞳が、全員を見渡す。
彼は内藤と弟者に目を留めた。
誰だ、とごくごく短い質問が落ちる。
ツンは、隣に立つ弟者を手で示した。
(゚<_゚;)
ξ゚听)ξ「こちら、弁護側の証人で──」
その手が、僅かに弟者の肩に触れる。
瞬間。
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238 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2012/10/10(水) 04:17:42 ID:VyKq31NoO
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( <_ ;) フッ
( ^ω^)ξ゚听)ξ「あっ」(゚Д゚,,)(゚ー゚*)
弟者は、崩れるように倒れた。
生きているのかと問いたくなるほど、真っ青になって。
屈み込んで弟者に触れた内藤は、彼が震えているのに気付いた。
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239 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2012/10/10(水) 04:19:11 ID:VyKq31NoO
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(;*゚ー゚)「ちょっ……大丈夫ですか!?」
(;,゚Д゚)「あらららら」
(;'A`)「何だ? どうしたんだよ、そいつ」
【+ 】ゞ゚)「?」
──昨日と今日で内藤が新たに得た知識は、色々あった。
出連ツンという存在。
彼女が姉者や弟者の知人であること。
幽霊裁判というものがあること。
それと。
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240 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2012/10/10(水) 04:20:51 ID:VyKq31NoO
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ξ;゚听)ξ「……あの姉にして、この弟ありね」
( ^ω^)「そうみたいですね」
( <_ ;) ウゥ…オバケ…コワイ…
弟者が、姉者と同類だったということだ。
case2:続く