ξ゚听)ξ幽霊裁判が開廷するようです

case2:つきまといの罪/前編

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149 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2012/10/10(水) 02:05:12 ID:VyKq31NoO

 時は遡って、内藤ホライゾンと出連ツンが出会うよりも前。

 5月の終わりのこと。



(´<_` )「あーあー、泥まみれ」

 早朝。
 ヴィップ中学校のグラウンドに立ち、流石弟者は溜め息をついた。

 昨夜降った雨により、グラウンドのあちこちに水溜まりが出来ていた。

(´<_` )「放課後は校内ランニングだな……」

 弟者は陸上部に所属している。
 今日は朝から練習がある日だった。

 部室に移動し、ロッカーに鞄を置く。
 部活の仲間達と談笑しながら学校の裏に出た。

 グラウンドが使えない日は、学校の敷地の周り、アスファルトの道を走ることになっていた。
 顧問と部長の指示を受けてストレッチをし、体をほぐす。
 それからジョギングへ移った。

 湿った空気の匂いを嗅ぎながら走るのが好きだ。
 弟者は、シューズの底とアスファルトが擦れ合う音に意識をやりながら走った。

150 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2012/10/10(水) 02:07:02 ID:VyKq31NoO

(´<_` )(……人だ……)

 しばらく走った頃、道端に誰かが立ち尽くしているのに気が付いた。
 年齢は分からない。ただ、そこに人──女がいる、という事実だけが思考の片隅に浮かんだ。
 弟者の前を走る部員達は、その女を無視して駆けていく。

 弟者は女性の前を通るときに、ぺこりと会釈した。
 礼儀として。

 視界の端で、女性が何らかの動きで反応を見せたのは認識出来たのだが、
 「何をしたか」とか「どういう反応だったか」までは思考が至らなかった。
 弟者の意識は、走りの方にばかり集中していた。

 もう一周回り、同じ場所に差し掛かったときには、先程の女性はいなかった。

 ただ、そこにバケツ一杯ほどの量の泥が撒かれていた。

151 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2012/10/10(水) 02:09:59 ID:VyKq31NoO



 case2:つきまといの罪/前編


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153 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2012/10/10(水) 02:11:19 ID:VyKq31NoO

( ^ω^)「おはようございますお」

 「流石」という表札の掛かった、2階建ての一軒家。
 階段を下りてきた内藤ホライゾンは、欠伸をしながら居間へ入った。

( ´_ゝ`)「おう、おはようさん」

l从・∀・ノ!リ人「おはようなのじゃー」

 居間の真ん中に置かれた大きめの卓袱台。
 そこに青年と少女がいた。

 少女の方は内藤に挨拶をしてからガラス戸を開け、隣接する台所へ駆けていった。

( ^ω^)「弟者と姉者さんは?」

( ´_ゝ`)「弟者は朝練。姉者はもう仕事行ったよ」

 青年、流石兄者が答える。
 彼は流石家の長男で、弟者と内藤より6つ上の大学2年生だ。
 弟者が大人になればこうなるだろう、というような顔をしている。

 しっかりしている弟者とは反対に、ちゃらんぽらんと評されることが多い。

154 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2012/10/10(水) 02:12:26 ID:VyKq31NoO

l从・∀・*ノ!リ人「大盛りなのじゃ!」

 内藤が兄者の隣に腰を下ろすと、台所から盆を持って戻ってきた少女が
 内藤の前に茶碗と汁椀、箸を置いた。

( ^ω^)「ありがとうお、妹者ちゃん。いただきますお」

l从・∀・ノ!リ人「めしあがれー」

 この少女は流石妹者。流石家の次女である。
 内藤の記憶が正しければ小学3年生だ。

 可愛らしい顔に可愛らしい振る舞い。誰が見ても美少女であろう。
 兄者は、歳が離れていることもあってか妹者を溺愛している。

155 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2012/10/10(水) 02:15:01 ID:VyKq31NoO

( ´_ゝ`)「妹者、のんびりしてて大丈夫なのか?」

l从・∀・ノ!リ人「今日はぼるじょあ君が迎えに来るからいいのじゃ」

(;´_ゝ`)「ぼ、ぼるじょあ? 誰だ?」

l从・∀・*ノ!リ人「お金持ちの子でのう、いつも高級車で送り迎えしてもらってる子なのじゃ!
        でね、でね、今日は妹者も乗せてくれるって約束したのじゃ!
        ちょっと色目を使ってやっただけなのに、男は単純じゃのう」

(;´_ゝ`)「サッカークラブのセントジョーンズ君はどうした?」

l从-∀-ノ!リ人「やっぱり男は運動出来るかどうかじゃなく、金なのじゃよ、兄者。
       まあセントもキープはしておくが……」

 少々、性格に難有り。

(;´_ゝ`)「……妹者、後でお兄ちゃんと話し合おう。男女の在り方について正しい道を話し合おう」

l从・∀・ノ!リ人「男女の在り方なんて、おっきい兄者は考えるだけ無駄ではないか。
       あ、ブーン、こっちにお漬け物あるのじゃ」

( ^ω^)「ありがとうお」

( ;_ゝ;)「妹者ぁあああ! お兄ちゃんはお前をそんな風に育てた覚えはぁああああ!!」

 焼き鮭をほぐしていた内藤に、妹者が小振りのタッパーを差し出す。
 タッパーに入っていた沢庵を口に運んで、内藤は兄者の慟哭を聞き流した。

157 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2012/10/10(水) 02:16:22 ID:VyKq31NoO

 沢庵を飲み込み、今度は焼き鮭を口に入れる。
 焼きたてであればふっくらしていただろう。
 生憎冷めてしまっているが、それでも美味い。塩味が薄くて内藤好みである。

( ^ω^)「弟者、そろそろ記録会があるんだっけ」

l从・∀・ノ!リ人「そうらしいのう。ブーンは陸上部に入らないのじゃ? 足速いのに」

( ^ω^)「部活は面倒だお。他人に気を遣うことが今以上に多くなるし……」

l从・∀・ノ!リ人「ううむ……万年帰宅部で灰色の青春を送ってきたおっきい兄者を見ていると、
       運動部で汗を流すということは学園生活において重要なことに思えるのじゃが」

 卓袱台の上を、小さな人型の何かが這っている。
 自分の鮭を狙っているのに気付き、内藤は、人型の何かを払い落とした。
 訝しげな顔をする妹者に、蝿がいたのだと答えておく。

 流石家の面々は、付き合いの長さ故、内藤の本性を知っている。
 しかし霊感については知らない。
 話す気もない。

159 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2012/10/10(水) 02:17:42 ID:VyKq31NoO

( ^ω^)「帰宅部でも、他人との付き合いや振る舞いにさえ気を付けていれば
       充実した日々を送れるもんだお」

l从・∀・ノ!リ人「ほう! なるほどなるほど。じゃあおっきい兄者は本人に問題があったのじゃな」

( ^ω^)「多分」

( ;_ゝ;)「うわああああ!! 死にてええええええええええ!!!!!」

 味噌汁を啜る。
 豆腐とワカメ。定番だ。

 こういう、大衆のイメージと違わぬ朝食が、何となく好きだった。
 昔から憧れていた。

 内藤の親は朝食に時間を割くような人ではなかったので、
 いつもシリアルやレトルトばかりで済ませていたから。

160 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2012/10/10(水) 02:18:57 ID:VyKq31NoO

『──のアパートで、男性の死体が──』

 内藤は顔を上げた。
 テレビの中でニュースキャスターが口にしたのは、この町の名前だった。

 どこぞのアパートの一室で住人が死んでいたという。
 風呂場で溺死していたのだが、室内に泥が残っていたことから、
 何者かが侵入して殺害したのでは──と警察は疑っているらしい。

( ぅ_ゝ`)「強盗でも入ったかね。……あ、金品は盗られてないってよ。
       個人的な恨みか」

( ^ω^)「誰かの仕業だとしたら、この町に殺人犯がいるわけですおね」

l从・∀・ノ!リ人「それは恐いのう」

(;´_ゝ`)「妹者あっ! ぼるじょあ君に毎日送り迎えしてもらいなさい!!」

l从・ε・ノ!リ人「ぼるじょあ君が退屈な男でなければな」

.

161 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2012/10/10(水) 02:20:47 ID:VyKq31NoO


 内藤が食事を終えたとき、時計は7時半を回っていた。
 立ち上がり、空の食器を持って台所へ入る。

 台所では、先に食べ終わっていた兄者が食器を洗っていた。
 今日は昼からの講義に出るだけだというので、内藤達ほど急ぐ必要はない。

( ^ω^)「兄者さん、悪いけど僕の食器も洗っておいてくれますかお」

( ´_ゝ`)「分かった分かった、早く準備しないと遅刻するぞー」

( ^ω^)「ありがとうございますお」

 それから身支度を整え、内藤は小走りで玄関へ向かった。
 スニーカーを履き、玄関の引き戸を開ける。

( ´_ゝ`)「行ってらっしゃい!」l从・∀・*ノ!リ人

( ^ω^)「……行ってきますお」

 この家に居候として加わってから、1年と数ヵ月。
 なかなか、悪くはない。



*****

162 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2012/10/10(水) 02:22:07 ID:VyKq31NoO


 学校が近付くにつれ、同じ制服の生徒が視界に入る回数も増えてくる。
 今日の数学で当てられるであろう範囲を考えながら歩いていた内藤は、
 校門を見て、僅かに眉根を寄せた。

('A`)

 痩せぎすの男が校門の上に座っている。

 通り掛かる生徒の顔を眺めて何か言っているのだが、
 誰も気付いていないようだ。

 あの男、生きていない。

 内藤は目を逸らそうとした。
 だが、遅かった。

('A`)

( ^ω^)(あ)

 目が合う。
 すぐに視線を下に滑らせたが、どうせ気付かれただろう。

163 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2012/10/10(水) 02:24:24 ID:VyKq31NoO

 校門の前を通る。
 真横に、男が降り立った。

('A`)「へいへい、そこ行く少年よ」

( ^ω^)(ああああー。面倒くせえええー)

 無視して歩く内藤に、男が付いてくる。

('A`)「目が合ったよな? 俺のこと見えてるよな?
    お前、内藤ほら……? ほら……ええと、下の名前を何つったか忘れたが、内藤か?」

 内藤の目が男を見遣る。
 名前を知られていることに反応してしまった。
 男の口元が笑みを形作る。

('∀`)「やっぱり! 何で知ってんだって顔だな。
    お前、俺らの間じゃ結構有名だぜ? 霊感持ちのガキがいるってよ」

 基本的に霊は無視するよう心掛けているが、しつこく絡まれれば何らかの反応をしてしまう。
 そういったことで、内藤の情報が霊から霊へと伝わっていったのだろう。

164 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2012/10/10(水) 02:28:04 ID:VyKq31NoO

('∀`)「そのガキがヴィップ中に通ってるって聞いたからよお、
    今朝早くからずっと待ってたんだぜ。だから、な、話ぐらい聞いてくれよ」

( ^ω^)

('∀`)「なあに、ちょっくら体を貸してくれるだけでいい」

 昇降口に入り、自分のクラスの下駄箱の前で靴を脱いだ。
 上履きを手に取る。

(;'A`)「おい、とことん無視する気だな……。
    ……頼むよー。やんなきゃいけないことがあんだよ」

( ^ω^)

(;'A`)「悪いことはしない! 本当だって! 体もすぐ返す!」

( ^ω^)

(;'A`)

( ^ω^)

('A`)「……いい加減、温厚な俺も怒るぜ少年……」

( ・∀・)「ブーン、はよーっす!」

 我慢の限界を迎えた内藤が男を蹴っ飛ばそうとしたとき、
 友人の浦等モララーが声をかけてきた。

165 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2012/10/10(水) 02:29:33 ID:VyKq31NoO

 内藤はモララーへ振り返る。
 顔には満面の笑みを張り付けて。

( ^ω^)「おはようお!」

( ・∀・)「今日は弟者は一緒じゃねえのか」

(-_-)「朝練じゃない? おはよう、ブーン」

( ^ω^)「ヒッキーもおはようおー。弟者はヒッキーの言う通り朝練だお」

 モララーの隣には小森ヒッキーがいた。
 彼らは家が近いそうで、よく登校する際に一緒になるらしい。

 2人が靴を履き替えている間に、内藤は男に振り返った。
 笑みは深めたまま。

(*'A`)「おっ、何だ、体を貸してくれる気に──」


   パチィイイン
( ^ω^)☆))'A`)
   ⊂彡

.

166 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2012/10/10(水) 02:31:17 ID:VyKq31NoO

( ・∀・)「ブーンさあ、地理のプリントやった?」

( ^ω^)「やったおー」

(*・∀・)「マジ!? 俺すっかり忘れててさ、プリント見せてほしいなー、なんて」

( ^ω^)「給食のメニューひとつと交換ならいいお?」

(;・∀・)「何だと!? 今日俺の好物ばっかなのに!」

(-_-)「プリントやってこないモララーが悪いよ」

(;・∀・)「お前だって忘れてたじゃんかよ!」

(-_-)「僕は休み時間の内に自力でやるしー」

(#)A`) チュウガクセイ コワイ

 いきなり引っ叩けば勢いをなくす。
 それは、おおよその人間も幽霊も変わらない。

 頬を押さえながら恨めしげに内藤を見つめる男を置いて、
 内藤はモララー達と共に教室へ向かった。

 その日は、特に何事もなく終わった。



*****

167 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2012/10/10(水) 02:32:25 ID:VyKq31NoO

 時を進めて4日後。
 6月4日。

( ^ω^)「おー……」

(´<_` )「どうしたんだ、これは」

 この日は朝から小雨が降っていた。

 登校してきたばかりの内藤と弟者は、自分のクラスの下駄箱の前に
 人だかりが出来ているのを見て、顔を見合わせた。

 傘を閉じ、集団に近付く。

( ^ω^)「靴、履き替えたいんだけど……」

(´<_` )「それどころじゃなさそうだな」

 近くにいるクラスメートに声をかけてみようと口を開いたとき、
 馴染みのある声が内藤の耳を打った。

168 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2012/10/10(水) 02:34:02 ID:VyKq31NoO

(*・∀・)「あ、ブーン、弟者!」

(-_-)「おはよう2人共」

 モララーとヒッキーだ。
 モララーの顔には好奇心の色が滲んでいる。

 内藤は、この場に最も適している表情を作った。
 困惑しているような顔が丁度いい。

(;^ω^)「おはようお。……何があったんだお?」

(*・∀・)「下駄箱に泥が塗ったくられてんだよ」

(;^ω^)「泥?」

(;-_-)「うちのクラスだけみたいだよ」

(*・∀・)「誰の仕業だろうな!」

 ちょっとした事件に、モララーを始めとする大半の生徒はわくわくしているようだった。

 そこへ教師が何人かやって来た。
 生徒達が道を開け、ようやく下駄箱の全体が見える。

169 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2012/10/10(水) 02:35:22 ID:VyKq31NoO

(´<_`;)「うお……」

 想像以上に泥まみれだった。
 場所によっては、上履きにまで被害が及んでいる。

(´<_`;)「全滅っぽいな」

(;-_-)「何で僕らのクラスだけ……」

 泥は乾いているようには見えない。
 あまり時間が経っていないのだろう。

 教師の1人が大量のスリッパを抱えているのに気付いた。
 今日一日はスリッパで過ごさねばならないらしい。

( ・∀・)「午後の体育、どうすんだろな?」

( ^ω^)「スリッパじゃ動きづらいおね……」

 受け取ったスリッパに履き替え、脱いだ靴は
 昇降口の隅にまとめて置くことになった。

170 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2012/10/10(水) 02:36:20 ID:VyKq31NoO

( ^ω^)「──?」

 視線を感じた。
 そちらに顔を向ける。

('A`)ノ

 校門の上に、4日前に見た霊がいた。
 内藤と目が合うと、片手を挙げてどこかへ消えた。


.

171 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2012/10/10(水) 02:38:22 ID:VyKq31NoO



(#・∀・)「──誰だよ犯人はよお! 最低野郎め!!」

 事件だ事件だとはしゃいでいたモララーだったが、
 昼休みには、彼の感情はすっかり怒りに塗り替えられていた。

 理由は簡単。
 つい先程、担任から「各自で自分の上履きと下駄箱を洗うように」とのお達しがあったのである。

(#・∀・)「犯人取っ捕まえて、そいつに洗わせようぜ!」

(;^ω^)「どうやって捕まえるんだお……」

(;-_-)「落ち着きなよモララー」

 階段を下り、昇降口へ。

 下駄箱の前に立って、上履きを取る。
 モララーや内藤の上履きには大して泥が付着しておらず、少し洗えば綺麗になりそうだった。

172 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2012/10/10(水) 02:39:30 ID:VyKq31NoO

(;^ω^)「ヒッキーの靴、どろどろだお」

(;-_-)「うええ」

( ・∀・)「持ち帰って洗った方がいいんじゃねえの」

(;-_-)「そうする……」

 ヒッキーの上履きは、広範囲に渡って汚れていた。
 「汚れが酷ければ家に持ち帰れ」と教室で配られていたビニール袋に、ヒッキーが上履きを入れる。
 既に乾いている泥が剥がれ、ぱらぱらと落ちた。

 見た限り、持ち帰る必要があるほど汚れているのは4、5人程度。
 だが、自分で洗うのが面倒だという理由で大半の生徒は持って帰るだろう。
 モララーもそのつもりらしかった。

( ^ω^)「弟者はどうするんだお?」

(´<_` )「今日の部活は屋内でやるだろうから、洗いたいところなんだけどな……」

 下駄箱の前で唸る弟者。
 覗き込んでみると、彼の上履きは特に酷かった。
 全体を泥に覆われている。

173 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2012/10/10(水) 02:40:36 ID:VyKq31NoO

( ^ω^)「部室に予備の靴とかないのかお?」

(´<_` )「ああ、あったかも。じゃあ今日はそれ使うか」

 ビニール袋を広げ、弟者は上履きに手を伸ばした。
 瞬間、顔を顰める。

( ^ω^)「どうしたお?」

(´<_`;)「重い」

 言って、上履きを引っ張り出す弟者。
 彼の手元を見たモララーが、目を丸くさせた。

(;・∀・)「何だよそれ!」

 上履きの中いっぱいに泥が詰められていた。
 左右どちらも、みっしりと。

174 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2012/10/10(水) 02:42:26 ID:VyKq31NoO

 モララーが他の生徒の上履きを見てみたが、
 弟者ほどの被害を受けたものは無かった。

(;-_-)「……弟者だけ? どうしてだろ」

(´<_`;)「俺が知るか」

 弟者は近くにあったゴミ箱の上で、両手に持った上履きを打ち合わせた。
 半端に固まっている泥がぼろぼろと崩れてゴミ箱に落ちる。

( ・∀・)「誰かから恨み買ったんじゃねえだろうな」

(;^ω^)「弟者は人に恨まれるような奴じゃないお」

( ^ω^)(……まあ、そんなの分かんないけど)

 内藤は辺りを見渡し、おかしなことに気付いた。

 他の生徒と比べると、弟者が使用している区画だけが特に汚れている。
 よく見ないと分からない程度ではあるが。

 私怨よりは、揶揄を目的としているように感じられた。



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