('A`)ドクオは凄腕ハンターのようです

4.騎士

60 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2015/11/23(月) 23:07:13 ID:GMnzFzqA0

4.騎士


(;'A`)

凄腕ハンターのウツタ・ドクオは、困っていた。
彼は、NOと言えないタイプの人であった。

(,,゚Д゚)「な、いいじゃん。騎士団入ろうって。な?」

とりわけ、こういう人種は苦手であった。

(;'A`)「で、でもですね…」

誤解のないよう言うが、嫌いなのではない。
むしろそのコミュニケーション能力に溢れた爽やかな性格は、見習いたい。
自分にはないものを持っていると素直に思う。

しかし、苦手なのだ。
なんというか、押しの強い感じが。

夜8時に来るというのも、割と常軌を逸しているし。

(,,゚Д゚)「だって、ドクオさん。何度も言うが、騎士の方が色々待遇いいんだからさ!」

(;'A`)「いや、お金は…」

(,,゚Д゚)「いーっていーって!そんな聖人ぶらなくったってさー!別に咎めやしないって!」

苦手であった。

61 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2015/11/23(月) 23:09:00 ID:GMnzFzqA0

彼は、騎士のギコ。
勧誘の仕事を当てられているらしく、週に一度は彼が来る。
彼が敬語ではないのはただ無礼だからではなく、ドクオがたまに仕事の愚痴を聞いているうち、仲良くなった(と思われている)からだった。

(;'A`)「やっぱ、一人の方が気楽っていうか…」

(,,゚Д゚)「実家通いのやつもいるぜ?宿舎にいるのは家が遠い奴だけだぞ」

(;'A`)「でも、街の皆さんの依頼も受けたいですし」

(,,゚Д゚)「街の依頼も騎士団に入ってくるぞ?」

(;'A`)「でも」

(,,゚Д゚)「いやホント、頼むよー。ドクオさん程の力の人なんていないんだから。先日もアレでしょ?火竜二体をサクッとでしょ?」

(;'A`)「あ、それはあんま思い出したくないんで…ちょっと諸事情で…」

これまではのらりくらりかわしてきたが、そろそろ騎士団も本腰を入れてドクオをスカウトしようとしている。
こんなことなら、力試しに街の武闘大会なんかに出るんじゃなかった、と思った。

しかし、あの時はまだハンター駆け出しで金がなく、賞金が欲しかった。
結果的に初出場で3位を獲ってしまい、以降騎士団にマークされるようになったのだが。

62 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2015/11/23(月) 23:09:53 ID:GMnzFzqA0

(,,゚Д゚)「なー、頼むよー」

(;'A`)「でも、剣術ならジョルジュさんがいるじゃないですか。魔法ならペニサスさんとか」

(,,゚Д゚)「その両方を、その二人に次ぐか匹敵できるレベルで扱えるのがすごいんだって!
    ウチもドクオさんに憧れて魔法始めた剣士が何人いることかって話よ」

(;'A`)「でもぉ…」

(,,゚Д゚)「いやまー、分かるよ?ドクオさんみたいな性格の人って、騎士団の空気苦手そうだもん」

(;'A`)「そ、そうなんです…」

(,,゚Д゚)「でも、じきに慣れるって!!」

(;'A`)

一生分かり合えない。
改めて、強くそう思うのであった。

63 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2015/11/23(月) 23:11:11 ID:GMnzFzqA0

(,,゚Д゚)「だって、ウチは保険も充実してんよ?例えばね…」

(;'A`)「あ…」

彼の目に何かが見えた。
騎士ギコの後ろに、人影。

(-@∀@)

店主…もとい、友達のアサピーだった。
ドクオの目が希望に輝く。
彼なら、この騎士を言いくるめて帰らせてくれる筈だ、と。

(-@∀@)「やあドクオ君。…どうしたの?彼は?」

(;'A`)「あ…」

(,,゚Д゚)「こんばんは!自分、騎士のネコ・ギコと言います!
    今日はですね、っていうか今日もですね、是非ともドクオさんを騎士団にスカウトしたく参りました!」

(-@∀@)「騎士…団…」

(,,゚Д゚)「はい!ドクオさん程の人なんてそういませんから!」

(-@∀@)

(-@∀@)「ア ソッスカ…が、頑張ってください…あ、じゃ、あの、自分急ぐんで…」ササッ…

('A`)

類は友を呼ぶ、という言葉を、彼はここまで強く実感したことはなかった。

64 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2015/11/23(月) 23:13:49 ID:GMnzFzqA0

(,,゚Д゚)「行っちゃった…悪いことでも言ったかな…」

(;'A`)「いえ…」

最早、彼は絶望に包まれていた。
これからさらに激化していくであろう勧誘に、耐えられる気がしない。

それならいっそ騎士として就職し、その日のうちに退職届を叩きつけることはできないだろうかと考えた。
二秒なくして、無理だと思った。
間違いなく非現実的であった。

(,,゚Д゚)「ねー、ドクオさん!ほんと、ドクオさんのファンがウチに何人いるかって話よ!」

(;'A`)「そ、そんな…買い被りです…」

その時だった。

ノパ听)「ただいま戻りましたッ!!」

彼の通いのメイド、ヒートが現れた。
現れたというより、正確には帰ってきた。買い物から。

皿は割るわ花瓶は倒すわ料理はマズイわ、諸々の積み重ねで彼の中での扱いは、今や『何故かウチの家事に挑戦している可愛い子』であった。
まだ三日と経っていないが、既に家事への信用はゼロだった。
しかし、選択肢はない。

(;'A`)「あ…」

(,,゚Д゚)「あ、こんばんは!騎士のギコと言います!今日はですね…」

早速ギコが説明をしている。
どうなるかは分からないが、彼女に賭けるしかないようだ。

66 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2015/11/23(月) 23:15:06 ID:GMnzFzqA0

ノパ听)「ダメです!!!!」

結果として、ヒートは勝利の女神だった。
きっぱりと物事が言える、彼にはない力を持っていた。
この時初めて、ヒートを雇って正解だったと思った。

(;,゚Д゚)「えー!?」

ノパ听)「え、だってご主人様、フリーで行くって決めてるんですよね?」

(;'A`)「うん、まあ」

ノパ听)「じゃあダメです!!!!」

(;,゚Д゚)「えーーー……?」

ノパ听)「どうしてもって言うなら…」

(,,゚Д゚)「言うなら?」

ノパ听)「勝負して、勝ったら!」

(;,゚Д゚)「えぇぇ!?」

(;'A`)

その手があったか、と思った。
彼にはまず浮かばない、脳筋、いや、粗暴、でもなく、そう、積極的な発想。
やはり自分にはできないことができる人をパートナーにすべきなのだと、再認識した。

NOと言える人、最高。

67 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2015/11/23(月) 23:16:01 ID:GMnzFzqA0
ノパ听)「じゃ、ご主人様!」

ノハ^竸)「バシッとお願いします!!」

(;'A`)「や…やります…?」

(;,゚Д゚)「……」

(;'A`)「…」

(;,゚Д゚)「『ファイア(;'A`)「『サイレント』」

(;,゚Д゚)「っでやぁぁ(;'A`)「『バインド』」

(;,゚Д゚)「…」

(;'A`)「…」




(;,゚Д゚)「すんません…無理っす…」

(;'A`)「あ、はい…」

68 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2015/11/23(月) 23:17:01 ID:GMnzFzqA0

(;'A`)「じゃ、あの…今日は、これで…」

(;,゚Д゚)「スンマセン、失礼します…また来ます…」

(;'A`)「あ、来るんですね…」

ともあれ、騎士ギコは帰って行った。
ドクオ達も家に入る。

彼はこれから、騎士を撃退する毎にボーナスをやろうと決めた。
料理が出来なくたっていい。
NOと言えさえすればいい。

ノパ听)「じゃ、すぐ夕飯にしますね!!」

(;'A`)「うん…ありがとう…」

ノハ^竸)「いえ!いいんです!」




ノハ*゚听)「家事もできない、こんなメイドを雇ってもらったこと、本当に感謝してますから!ほんのお返しにもなりませんよ!」

69 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2015/11/23(月) 23:18:00 ID:GMnzFzqA0




ノハ*^竸)

(;'A`)


『可愛いから雇ったけど、ここまで家事ができないとは知らなかったんだよ』とは、口が裂けても言えなかった。


しかしそれでも、その日の焦げた夕食は、普段よりも美味く思えた。



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