('A`)ドクオは凄腕ハンターのようです

3.ヘルウルフ

36 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2015/11/22(日) 23:26:11 ID:2h1rl2MU0

3.ヘルウルフ


(;'A`)「ぐはぁッ!!」

凄腕ハンター、ウツタ・ドクオは、苦戦を強いられていた。

今回の依頼の相手は、ヘルウルフ。
ただただ大きな、狼である。

本来の彼にとって、こんなものは敵ではない。

(;'A`)「くそ…!」

この魔物を相手にするときは、動き回って的を絞らせないようにするのが定石。
しかし、今日の彼は一点から動かない。

それは何故か。

37 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2015/11/22(日) 23:27:08 ID:2h1rl2MU0

(;'A`)「おまえだけは…俺が護るから…!」

.   _ ∩
  レヘヽ| |
    (・x・) ?
   c( uu}


うさぎがいるのだ!
しかも逃げない!この状況で!この状況なのに!!
子うさぎ!すっごい可愛い!!

(;'A`)「たあッ!!」

常時うさぎを背にしながら戦うのは、彼にとって初めてであった。
しかし、絶対にこの場所は動けない。退けない。

今この場で、戦いの中に、一つの無辜の命が懸かっているのだ。
いつも一人で戦う彼にとって、これは大きなプレッシャーだった。

38 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2015/11/22(日) 23:29:16 ID:2h1rl2MU0

(;'A`)「…」

彼は、ハンターである。
自然の摂理は分かっているつもりだ。

食うもの、食われるもの、その連鎖の関係があるのはとうに承知。
この状況下で逃げないうさぎに、自然界で生きていく権利がないことも、とうに承知。

(;'A`)「でも…」

(;'A`)「それでも、ここは退けない…!」

彼には、理屈だけで一つの命を見捨てることはできなかった。
今この瞬間、この瞬間だけは、自然界の掟に逆らうことを決めた。

(;'A`)「退けないんだッ!!!」

孤独な叛逆者の咆哮は、暗い森に響き渡った。



余談ではあるが、彼は戦闘中は割と喋る方である。

39 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2015/11/22(日) 23:30:36 ID:2h1rl2MU0

そんな彼に、さらなる災難が降りかかる。

視界の端に、何かが見えた。
二体目のヘルウルフだ。

(;'A`)「嘘だろ!二体いるなんて聞いてないぞ!」

そもそもおかしかったのだ。
依頼に来たのがヨボヨボのおばあちゃんだった時点で、情報の正確さは疑うべきだったのだ。

(;'A`)「何が『ここじゃないと山菜とれんから』だ!!買えよ!!!!」

彼の叫びは、依頼主には届かない。
今頃犬の散歩でもしているのだろうか。
孫と楽しく話しているかもしれない。

狼の魔手がうさぎに迫るのを、間一髪魔法で牽制する。

範囲魔法は使えない。
このうさぎを巻き込む可能性もあるし、さらに言えば、うさぎが一羽とは限らないからだ。

狼を倒しても、その後焼きうさぎを一羽でも見つけてしまえば、その時点で彼の中では任務失敗である。

(;'A`)「そらァ!」

狼に向け剣を振る。
軽いステップで避けた狼は、結果的にドクオから離れた。
その隙を逃す彼ではない。

('A`)「燃えろ!『スナイプバーン』!!」

対象のみがピンポイントで燃え上がる、高位の火炎魔法。
熱さにのたうちまわる狼は、じきに動かなくなるだろう。

('A`)「まずは一体!」

40 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2015/11/22(日) 23:31:29 ID:2h1rl2MU0

(;'A`)「…しまったッ!!」

いつの間にか、もう一体の狼がドクオの後ろに回り込んでいた。

腕を向けるが、狼はうさぎとの直線上の向こうにいる。
この一瞬で放てる攻撃魔法では、うさぎも巻き込んでしまう。

最早、一瞬の逡巡すら許されない。


(;'A`)「『防符』!!」


狼の爪がうさぎに達した瞬間、甲高い音を立てて弾かれた。
うさぎの足元に落ちている紙は、高価な魔法符。

魔法符とは、予め魔法式を書き込んでおき、ノータイムで発動できるようにした紙だ。
今回は、短時間ではあるが強固なシールドを張る魔法符を使用した。


今ここに、世界一防御力の高いうさぎが存在している訳である。

42 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2015/11/22(日) 23:32:29 ID:2h1rl2MU0

(#'A`)「覚悟しろ!!」

体勢を崩した狼との距離を一瞬で詰め、その口に剣を捩じ込む。
そのまま風の魔法で吹きとばし、木に激突させて止めを刺した。

(#'A`)「よっしゃ!!」

振り向き、うさぎの姿を確認する。
今ちょうどシールドが剥がれたうさぎは、見事に無傷。
無垢な目をこちらに向けていた。


(;'A`)「はぁ…疲れた…でも」


(・x・)


(*'A`)つ「無事で、よかった」


ドクオは、手を伸ばした。

これからは自分の力で生きろよ、と。
どうか強く生き残ってくれ、と、願いを込めて。

撫でることで、その願いをうさぎに伝えようとした。

43 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2015/11/22(日) 23:33:18 ID:2h1rl2MU0


(*'A`)つ

x・ )三 シュダァッ


(*'A`)つ


逃げられた。


(*'A`)つ


('A`)つ



ドクオは、しばらくその手を下ろせなかった。

急に、うさぎ如きに話しかけていた自分が馬鹿らしく感ぜられた。


しかしーーーーー

44 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2015/11/22(日) 23:34:18 ID:2h1rl2MU0


('A`)「まあ、いいか」


ーーー彼は、どこか満足げな表情をしていた。



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