( ^ω^)千年の夢のようです

(´・ω・`):銷魂流虫アサウルス

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866 名前: ◆WE1HE0eSTs[] 投稿日:2014/09/05(金) 20:52:08 ID:FCjsfqmk0
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〜now roading〜


( ゚д゚ )

HP / B
strength / B
vitality / B
agility / C
MP / F
magic power / G
magic speed / F
magic registence / B


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867 名前: ◆WE1HE0eSTs[] 投稿日:2014/09/05(金) 20:54:08 ID:FCjsfqmk0


ふたごじま。


大陸の海岸から眺めた時、
ちょうど水平線に浮かぶように佇んだ島…

空から見下ろしたその形が月に酷似する事から、旅人の間では三日月の孤島とも呼ばれる。

868 名前: ◆WE1HE0eSTs[] 投稿日:2014/09/05(金) 20:57:05 ID:FCjsfqmk0

   ( ´・ω・)" 「ーー よっと!」


ロマネスクが天寿を全うし、
弟者とデレも年老いて、やがてこの世を去った。


(;´・ω・`) )) 「重いなあ、これ」


信仰の廃れと共に神官は居なくなり、
島の人口は全盛期の半分以下。
礼拝堂だった建物内部からは壁画、天井画が塗り潰し、
或いは取り外されていき……
観光地としての魅力は大きく損なわれた。


(´・ω・`) 「こんなものかな…」


双子もあまり産まれなくなった。
一両親に一人ずつ、新たな命は順番に宿っていく。



 ーー 約90年。
青年として、そして不死者として…
ショボンの歴史が始まり、経過した年月は
"ふたごじま" がそれと呼ばれなくなる程の時間を過ごさせた。

869 名前: ◆WE1HE0eSTs[] 投稿日:2014/09/05(金) 20:58:50 ID:FCjsfqmk0


「あの人、またなにかやってるのね」


離れた場所で一組の夫婦が
一つのバケツからいくつものザルへと
魚、貝、海藻、ゴミ… 収穫した海産物を
分別しながらひそひそと話している。


「漁の邪魔にさえなんなきゃ構わないよ、
こちとら生活が掛かってるんだから…」

「……不老不死って楽でいいわね。
飲み食いしなくたって生きていけるんでしょ?」


夫婦の視界の先…浜辺でショボンは杭を打ち付けていた。
その手には黒く長い槍が握られ、
それを一度振り下ろすだけで1m近い杭が音もなく軽々と砂に食い込んでいく。


(´・ω・`) 「よし」


一ヶ所に三本ずつ、
等間隔に打ち立てられた杭がずらりと並ぶ。
杭を打ち付けるたび、羽織っている法衣の裾がふわり。

漁に出るための舟が集う港から少し離れた場所で、ぽつんと独り、寂しげな光景を醸し出していた。

870 名前: ◆WE1HE0eSTs[] 投稿日:2014/09/05(金) 21:00:13 ID:FCjsfqmk0

「さあ、できた。
お前はそっちのバケツを持ってくれ」

「ええ。 …声、かけていかなくていいの?」


帰り支度を始めた夫に対し、妻が遠慮がちにショボンを見やる。


「いいだろ、俺のジイさんの代ならともかく…今じゃ単なる変人さ。
ったく、毎日毎日、飽きずに何してるんだか分かりゃしねえよ」

そういってその場を離れていく若夫婦。
……入れ違いに、礼拝堂の方から歩いてきた男が浜辺に現れた。


年の頃はショボンと同年代。
その身体は大きく、広い肩幅は恵まれた身体能力を隠しきれない。

871 名前: ◆WE1HE0eSTs[] 投稿日:2014/09/05(金) 21:01:03 ID:FCjsfqmk0

(´・ω・`) 「ひい、ふう、……15隻分か。
もう少し必要かな?」

腕を組み、片手を顎に当てる仕草がわざとらしくもある。


( ゚д゚ ) 「そろそろ休憩したらどうだ?」

そこへ背中から声を掛けられて、
ショボンは首から上だけで振り向いた。
一呼吸、顔を見合わせ視界を杭へと戻す。


(´・ω・`) 「ミルナか。 なんだい?
誰かに言われてきたの?」

( ゚д゚ )
つ□~ 「そう捻くれなくていいだろう。
コーヒーを淹れてきたから飲まないか?」

(´・ω・`) 「いらないよ。 コーヒーは嫌いなんだ」

( ゚д゚ ) 「……そうか」

872 名前: ◆WE1HE0eSTs[] 投稿日:2014/09/05(金) 21:02:34 ID:FCjsfqmk0

ショボンは砂浜に数式のような、
あるいは図面のようなものを描いていく。
いつも違うものを描いている気がするが…
ミルナにはそれが何を意味しているのか分からない。


( ゚д゚ )
つ□~ 「ここ毎日はずっとじゃないか。
部屋に戻った様子も無いから気になってな」

"(・ω・` ) 「…」ガリガリ


("Е◎゚ ) グイッ…

( ゚д゚ )
つ□~ 「…よほど大事なことなのか?」

(´・ω・`) 「君は自前の舟を持ってなかったよね?」

( ゚д゚ ) 「? ああ、俺は必要な時に
人から借りる程度しか使わないからな」


ミルナは "運び屋" だ。
島ではどんな重いものも顔色一つ変えず持ち上げる。
しかし、停泊した船から荷下ろしはするが自身が乗ることはない。

当のショボンは先の砂の数式に線を足し、
また作業を再開する。

873 名前: ◆WE1HE0eSTs[] 投稿日:2014/09/05(金) 21:04:06 ID:FCjsfqmk0

( ゚д゚ ) 「……」

(´・ω・`)" 「…」


カツン…!

ショボンが黒い槍を振り下ろす。
叩かれた長い杭が抵抗なく砂に埋もれる。

そうして繰り返される作業も時々何か気に食わなかったのか、深々と突き刺した杭を引き抜く場面も見られた。

舟を持たないミルナも、それを見て気付く。


( ゚д゚ ) 「これは一時的に舟を留めておくためのものか」

( ´・ω・)" 「…よく分かったね」


錨をおろさず、岸壁に係留させる時
主に使用するビットの役目を果たす係船柱…
ショボンが造っているのはその代わりとなる杭だった。

島には小型舟しか置かれておらず、
大きな船を造る技術もまだない。
だからこの杭でも充分実用に耐えうる。

例えば…予めここに小舟を用意し、
縄で縛り付けておけばそれを切るだけで何隻もの舟が同時に海へと出発することもできるだろう。


( ゚д゚ ) 「どうしてまたそんなものを…
しかもこんなに」

(´・ω・`) 「必要だから」

874 名前: ◆WE1HE0eSTs[] 投稿日:2014/09/05(金) 21:06:10 ID:FCjsfqmk0

( ゚д゚ ) 「……」


返ってきたのは簡潔で質素な回答だった。
だが不思議と不快ではない。


ミルナが小さい頃、礼拝堂の改築を行っていたショボンを思い出す。

当時は子供の我が儘と思って遊んでくれたのだろうか?
周囲の大人達は相談もなしに一人で黙々と改築作業を行うショボンを煙たがっていたが、
ミルナには優しかった気がする。


( ゚д゚ ) (…改築中に取り外した鉄骨をみて、
片手で持つショボンに憧れて真似たら
滑って膝を強打した事もあったっけ)

その時の傷はまだミルナの膝小僧に痕を残している。

だがやがて年を重ねるごとに、
ショボンと皆の間にはより深く溝ができていった。
ミルナともあまり話すことが無くなった。
ミルナが話し掛ければ答えはするが、人々がそれを見てコソコソ耳打ちする姿が燗に触る。

その都度、ミルナの両親のそのまた親、
つまりは……

( ゚д゚ ) (あの頃はじいさん達が率先して周囲をたしなめていたな)


二人の言葉。
彼は今でも思い出す事ができる。


.

875 名前: ◆WE1HE0eSTs[] 投稿日:2014/09/05(金) 21:07:47 ID:FCjsfqmk0


(´<_╲` )『ショボンは私らの頃から
共に育ってきた仲間だ。 家族だ。
皆が思うほど悪い奴じゃない…それに ーー』


ζ(゚ー╲゚*ζ 『彼は他の人と少し違ってるだけ。
偏屈だけど…根は良い子だから ーー』



(´<_╲` )
      『島に必要な人間だから』
ζ(゚ー╲゚*ζ


.

876 名前: ◆WE1HE0eSTs[] 投稿日:2014/09/05(金) 21:08:39 ID:FCjsfqmk0

そんな祖父母の影響が全くないわけではなかったが、ミルナは自分の意思でショボンを見続けてきたつもりだ。


当時は反感をかった礼拝堂の改築も、
「信仰を無くしたこの島には、もっと相応しい象徴と技術がある」として、
工芸作業場のスペースを一人で造り始めた。

荘厳なレリーフ、豪華な刺繍などは
島で代々育まれた技術であり、大陸に出れば唯一無二になり得る職種でもある。
…そう言って技術者を連れだって
大陸で宣伝、売り捌いてきた事もあった。

そしていま大陸では、三日月島出身の職人が各地で裕福な生活基盤を根付ける程、その技術を求められている。


長くショボンを快く思わない島の住人も未だに居る。
だが産業的な結果を出し、
かつ最古参となるショボンに正面から口を出せる者はいない。
 ーー しかも不老不死だ。

世代が変わるにつれ、ショボンは不気味な存在として誰からも一切話しかけられなくなった。
ショボンも、誰に話し掛ける事はない。


……例外はミルナだけ。

877 名前: ◆WE1HE0eSTs[] 投稿日:2014/09/05(金) 21:10:51 ID:FCjsfqmk0

( ゚д゚ ) 「なら舟はこれからか?」


たった一人、
弟者とデレの忘れ形見となったミルナだけが、今もショボンに臆さず話し掛ける。


(´・ω・`) 「もう8割方は準備できてる。
明朝には全て完成する予定だよ」

( ゚д゚ ) 「俺も手伝うよ」

(´・ω・`) 「……」

( ゚д゚ ) 「ダメか?」


( ´・ω・) 「いや、それなら別に頼もうかな」


そう言われて、ミルナは少しだけ驚いた。

申し出たのは自分の方だが…
ショボンから頼み事をされるのは初めてかもしれない。


( ゚д゚ ) 「ああ! 俺が出来ることなら」

(´・ω・`) 「じゃあ明日中に、住人全員が
荷物をまとめてこの島を出れるようにしておいてほしい」

( ゚д゚ )


( ゚д゚ ) 「……は?」

878 名前: ◆WE1HE0eSTs[] 投稿日:2014/09/05(金) 21:12:54 ID:FCjsfqmk0

つい今しがたまで喜んでいた内心に氷水を浴びせられるような一言。


(´・ω・`) 「出来る?」

( ゚д゚ ) 「待ってくれ。 突然過ぎて…
どういう事だ? 俺達にこの島を捨てて出ていけというのか?」

(´・ω・`) 「うん。 誤解を恐れず言えば、ね」


返事は簡潔で質素で…明確に冷徹だった。
数秒前とは真逆に。
ショボンの表情からある種の迫力を感じずにはいられない。


( ゚д゚ ) 「…」


だからこそ、ミルナは頷く。

879 名前: ◆WE1HE0eSTs[] 投稿日:2014/09/05(金) 21:14:14 ID:FCjsfqmk0

( ゚д゚ ) 「…分かった。 明日中だな」

(´・ω・`) 「ありがとう。 なるべく早くだよ」

( ゚д゚ ) 「しかし伝える理由はどうする?
俺が適当に決めていいのか?」

(´・ω・`) 「何も僕を庇わなくて良い。
でももし駄々を捏ねる人がいるなら……」


その問い掛けに少しだけ考えるように…
ショボンは手元の黒い槍を掲げる。


(´・ω・`) 「ねえミルナ。
君の父、末者さんがこの槍を造ってくれたのは知ってるよね?」

( ゚д゚ ) 「昔、隕石と一緒に降ってきた棒を
親父が不馴れながらも加工したと聞いている。 …それがどうした?」


(´・ω・`) 「それがまた降るかもしれない。
それも前回の比じゃなく」

(´・ω・`) 「これは "ふたごじま" 二度目の神託に値する」


.

880 名前: ◆WE1HE0eSTs[] 投稿日:2014/09/05(金) 21:15:06 ID:FCjsfqmk0


( ゚д゚ ) 「だからせめて一日だけ、緊急避難するつもりでこの島を離れてくれれば良いんだ」


その後すぐに人々を集めたミルナは
さっそくショボンの意と言の葉を伝えた。

昔の神官のようなまとめ役も階級も風習も
現在は存在しないため時間がかかった。
この場に来ていない人も当然いる。

本来こんな時こそ組織という団結力は必要とされるのかもしれない。


無精髭を蓄えた男が言う。

「…いきなり何言ってんだ? ミルナ。
困るよそんな急に……」

( ゚д゚ ) 「承知の上だ。 それでも伝えなくてはならなくなった。
今夜から舟も次々用意されるから早い方がいいと」


夫に寄り添った女が言う。

「ショボンがそう言ったからって…
悪いけど信用しにくいわ。
そんなことが起きるなんて、とても思えないもの」

( ゚д゚ ) 「過去に事実、同じ事件が起きているのは皆も知らない訳じゃないだろう?
当時も急に異変が起きたから…犠牲者が出た」


腰の曲がった翁が言う。

「信仰は終わらせたはずじゃが…なぜ
ショボンが神託を知るのだ?
なにか企んでおると考えてしまうのが皆の
総意ともいえるのだぞ」

( ゚д゚ ) 「…ならば逆に今、なぜショボンがそれを口にしたのかを考えてやってくれ。
そもそも何を企もうというんだ?」

881 名前: ◆WE1HE0eSTs[] 投稿日:2014/09/05(金) 21:17:47 ID:FCjsfqmk0

無意識のうちに…段々とミルナの口調は強くなる。
彼一人に対して人々は意見を口にするも、
その誰もが "ショボン" という各自のイメージフィルタ越しに見聞きする。

あまつさえ、客観的事実である島の歴史すら直視しようとしない。


      「でもなあ……」ボソッ

…人は過去の教訓すら生かせない。
それが、当事者にならなかった近くて遠い
隣人達の倫理観。


(#゚д゚ ) 「〜っ! 皆どうかしてるぞ?
島が危険だと言われても動かないのか?
自分で自分を見殺しにするのか?!
もし家族に何かあったら…」

(#゚д゚ ) 「自分で責任を取れるのか!!」


その一瞬、人々のざわめきが止まる。


(#゚д゚ ) 「俺の祖父母は弟者とデレだ!
当時ショボンを庇って死んだ流石兄者さんの兄弟と、ミセリさんの姉妹が俺の家族だ!」

(#゚д゚ ) 「ショボンがどうだなんて今は関係ない!
俺は祖父母から教えられた言葉を守りたいだけだ! 俺の意思で!
島全体に関わる問題を、たまたまショボンが提示しただけだろう?」

(# ゚д゚ ) 「アイツが皆に言えないから、皆がアイツを見ないふりするから!
こうして俺が伝えているんじゃないか!!」

882 名前: ◆WE1HE0eSTs[] 投稿日:2014/09/05(金) 21:20:49 ID:FCjsfqmk0

怒声、もしくは悲鳴か。
人々はそんな彼を見たことが無い。
若いながらもどっしり構えた青年というのが他者からミルナへの評価だった。

ミルナの心の中では亡き家族の在り方と
その言葉が強く遺されている。


たまたまその先にはショボンが居て……
そのショボンが皆に初めて語ってくれた島の危機。

見様によっては皮肉だ。
だから、人々からは尚も反論の声が上がる。


「だからよぉ! そもそもそのショボンが
注目されたくて適当言ってるんじゃねえか、と俺らは言ってんだぜ?」

「仕事がある…身重の妻もいる…身体の不自由なばあばがいる。
外は天気だっていつもと同じで変わりない」

「私も昔のことは聞いてるわ……けど、
その時は礼拝堂に居れば助かったって。
それじゃあ、ダメなの?」


……もはや言葉を交わすほどに呆れてくる。

彼らは単にショボンの存在ならばなんでも拒否したいのではないか。
彼らは恐らく面倒臭いという気持ちが、もしもの自衛の心を上回っている。

…ダメかもしれないから島を出ようと提示されていると、彼らは考えないのだろうか。

883 名前: ◆WE1HE0eSTs[] 投稿日:2014/09/05(金) 21:21:37 ID:FCjsfqmk0

長い人生の一日を惜しんだばかりに
残りの人生をフイにするかもしれないのに
…なにが人をこうさせるのだろう。

島への愛着か? ショボンへの嫌悪か?
ミルナはその場にいる全員の顔を見渡す。


(#゚д゚ ) 「……皆、動く気はないんだな?」


彼らは…
遠い先祖が災害で亡くなっても、
その警告が形として残されたとしても、
同じことを言うのだろうか?


    「「「 ………… 」」」


ーー 誰も応えなかった。
ショボンと自分の声が届かない。

島の歴史すら、
自分達のせいで蔑ろにされている。


それがミルナにはとても悲しかった。
…心のなかで、両親や祖父母、そして、
見たことのない兄者とミセリに謝罪する。

884 名前: ◆WE1HE0eSTs[] 投稿日:2014/09/05(金) 21:22:53 ID:FCjsfqmk0

    「 じゃあ島に居て良いよ 」

( ゚д゚ ) 「!」


礼拝堂に響き渡る声はそう大きくない。
それでも全員がその方向へと顔を向けた。


(´・ω・`) 「居れば良いよ。 この礼拝堂に」


正門に寄り掛かりながら腕を組み、
こちらを眺めているショボンの姿があった。


(´・ω・`) 「ただ、僕はもう君達には警告したからね。
明日中に島を出なかった人の命の保証はない」

(´・ω・`) 「…聴こえたよね?
後になって聞いてない、は通じないよ」


その言葉は挑発めいたものだ。
なにより ーー これはショボンの本心でもある。


( ゚д゚ ) 「ショボン……お前…」

885 名前: ◆WE1HE0eSTs[] 投稿日:2014/09/05(金) 21:24:10 ID:FCjsfqmk0

(( ( ´・ω・)「分かったろ、ミルナ?」


扉から背を離し、ツカツカと音をたてて
こちらへと歩いてくる。


(´・ω・`) 「僕が彼らと接しない理由。
それは僕が不死だとか、気に食わないとか色々あるのかもしれないけど」

(´・ω・`) 「要は相対的にしか物事を判断しないんだ。
視野が狭い。 現実を見ない。
自分達がどれだけ滑稽かも知ろうとしない」


その歩みはゆっくりとしているのに、
いつの間にかミルナと並ぶ位置にショボンは立っていた。


(´・ω・`) 「……この90年間、ずっと見てきたよ」

ーー 間近で見るその顔は、


(´・ω・`) 「君らは昔の僕と一緒だね。
いつも他人に甘えて…それを他人が許容してくれていた事に早く気付くべきだ」

ーー 燐として、しかし空虚な、


(´・ω・`) 「本当は、自分がどうしたいかが大切なのに人の顔色ばかり窺って。
今だって声の大きな人の後ろで悩んでる」

ーー いつかの後悔の顔。


(´・ω・`) 「…君達の人生は一度きりなのに、重大な決断を他人に委ねていいの?」

886 名前: ◆WE1HE0eSTs[] 投稿日:2014/09/05(金) 21:25:32 ID:FCjsfqmk0

静まり返る礼拝堂で、ショボンは一呼吸置き
彼らへの最後の言葉を伝える。


(´・ω・`) 「僕は無駄が嫌いだ…いい?
舟は16隻分、必ず用意しておく。
使わない分は僕が後で処分する」


(´・ω・`) 「自分の舟を持たない人が優先して使ってくれたらいい。
操作できる人は往復して皆を運ぶんだ。
そして少しでも早く島から離れること」


(´・ω・`) 「君らの人生は死ねば終わりだ。
僕と違ってやり直しは効かない。
それに比べれば僕に騙されることくらい、
なんてことないんだよ?」


(´・ω・`) 「それでも島に残る人は以後、
一切の苦情は飲み込むように。
言い換えるなら被害者面はしないでってこと」


(´・ω・`) 「どちらを選ぶのも君らの選択だし、背負う責任でもある。
意地でも僕の言うことを嘘だと決めつけるのは勝手だけど、隣人は巻き込むな」


( ´・ω ) 「…あとは大切な人の顔でも見て決めるんだね」


二度と聞き返されないようにハッキリと言った。
それきり、ショボンはまた礼拝堂の扉を出ていってしまう。

887 名前: ◆WE1HE0eSTs[] 投稿日:2014/09/05(金) 21:27:32 ID:FCjsfqmk0


( ゚д゚ ) 「ショボン…」


後に残された人々が困惑の表情を浮かべる
…その気持ち、ミルナには分かる。

とはいえ気の利いた言葉も見付からない。
無言でショボンを追いかけた。


( ゚д゚ ) (なぜだ? ショボン…)


そして考える。
なぜ無駄なことが嫌いならば、
ショボンは人々ともっと友好的に接して来なかったのだろう。
いわばそのための時間が彼には十二分にあったのではないだろうか?


( ゚д゚ ) (何かできない理由があったのか?)


ショボンも完璧な人間ではない。
ただ不老なだけだ。
  …ゆえに疑うならば。
彼は孤独をこじらせた、ただの甘ったれという見方も出来なくもない。

.

888 名前: ◆WE1HE0eSTs[] 投稿日:2014/09/05(金) 21:28:52 ID:FCjsfqmk0


    三日月島の夜が更けていく ーー 。



.

890 名前: ◆WE1HE0eSTs[] 投稿日:2014/09/05(金) 21:33:16 ID:FCjsfqmk0

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夜が明けて……
ミルナがちからなく砂浜へ向かうと、
舟に荷物を運び出す人々の姿がチラホラと見えた。


( ゚д゚ ) 「……これは」


既に何隻かは出発した形跡すら見られる。
昨日の出来事から皆、島に残るばかりかと懸念していたのだが…

率先して誘導する漁師たちが舟を漕ぎだし
仲の良いグループは集まり、荷分けして水平線を目指し陸離れしていく。
時刻はまだ朝焼けが出たばかりだ。


「あなた、ねえ急いで」

「ま、まってくれよ…お前だけ手ぶらじゃねえかよ」

「舟はまだあるらしいから慌てずに」


振り向けば、まだまだこれから荷造りを終えてくる者達。


( ゚д゚ ) (なんだ、皆分かってくれたのか)


ミルナは辺りを見回してあるものを捜す。
どこにいるのだろう?
浜辺から港へ…港から礼拝堂へと駆け足で通り抜ける。

891 名前: ◆WE1HE0eSTs[] 投稿日:2014/09/05(金) 21:34:46 ID:FCjsfqmk0

島の住人からは不揃いなパーツで組み立てられた舟に不安がる声も聞こえたが、
問題なく海面にたゆたう事を確認すると、
やがて浜辺を離れていく。

その行動はことのほか速やかで、
皆、仲間たちへ
思い思いに手を振り別れを告げていった。


( ゚д゚ ) 「……?」


だがそこにショボンの姿はない。
そして彼を捜す素振りも、人々からは見えない。

用意された舟をさも当たり前のように利用する住人達を横目に、
ミルナは島をまるまる一周するつもりで更に走った。

.

892 名前: ◆WE1HE0eSTs[] 投稿日:2014/09/05(金) 21:36:41 ID:FCjsfqmk0

島の死角 ーー 普段は潮の満ち引き次第で
足場の消える崖の下。
いつもなら踏み入れない領域を覗いた。



     :( ; ´>ω ):

ミルナがやっと見付けたのは、ブルーシートに寄り掛かってガタガタと震える
…ショボンの後ろ姿。

まだこちらには気付いていないのか、
振り向く様子もない。


( ゚д゚ ) 「…捜したぞ」


ショボンはゆっくりと立ち上がるも、
ミルナは見逃さなかった…
一瞬その背中が跳ねたことを。


( ´・ω) 「……君か」

( ゚д゚ ) 「皆早くからぞくぞくと避難しているようだ。
昨日のあれも結局はお前の作戦か?」

(´・ω・`) 「…ん、そうだね。
ねえ、避難はもう終わるかな?」

( ゚д゚ ) 「ああ。
あれなら昼頃までには全員済むんじゃないか。
お前の用意した舟も皆使って ーー」


(´・ω・`) 「それじゃあ駄目だ…予想が外れた」

( ゚д゚ ) 「なんだ? 指示通りだと思うが…
なんなら自分で見てきた方が ーー」


(´・ω・`) 「そっちじゃない。
予想より遥かに早いんだ…空をみなよ」


その言葉に、ミルナの背筋に言い様のない悪寒が走る。

893 名前: ◆WE1HE0eSTs[] 投稿日:2014/09/05(金) 21:38:32 ID:FCjsfqmk0

顔を上げると、濃い朝雲がこれでもかと空を覆い囲っている。
…今日は一雨来るのかもしれない。

そんな空模様のはずだった。


(´・ω・`) 「この時期に雨なんて降らないんだよ。
過去90年間で一度もね」


その言葉を聞いているまさに今。
雲が目の前で流動し、その速度を上げ始めた。

それも一方的に流れているのではない…
まるで大きな渦を作り出し、散り散りになりつつも一つの大きな生物のように集合していく。


(; ゚д゚ ) 「な、なんだ…おかしいぞ、空が」

(´・ω・`) 「さあ君も早く避難するんだ、ミルナ」


ショボンの足元には突き立てた黒い槍。
それを握ると、ショボンの震えはもう止まっていた。


(´・ω・`) 「さもないとなにが起こるかわからない」

894 名前: ◆WE1HE0eSTs[] 投稿日:2014/09/05(金) 21:40:23 ID:FCjsfqmk0

(; ゚д゚ ) 「しかしショボン…」

(´・ω・`) 「行くんだ」

(; ゚д゚ ) 「ならせめて一緒に ーー」

(´・ω・`) 「行くんだ」


命令を繰り返す。 親が子を諭すように。

そしてその返事を待たず…
ブルーシートの中から数本の鉄剣と鉄槍を
抱き上げてショボンは駆け上がる。


(´・ω・`) 「稼がなきゃ…時間を」

崖の上へと、
  「ショボン!」
     叫ぶミルナを置き去りにして。



空は今も渦巻いている……。
出てくるのは     鬼か。
             蛇か、


          蟻
            。

895 名前: ◆WE1HE0eSTs[] 投稿日:2014/09/05(金) 21:41:35 ID:FCjsfqmk0

「なんじゃあ、ありゃあ?」


舟に乗り込む一家の老父が最初に声をあげた。
ポカンと開けたその口に灰が落ちる。
まだ陸地にいる周囲の人々も何事かと見上げた。


「空が……黒い…?」


暗いのではない。
黒いのだ。
そして蠢いている… 二つ目の太陽の中で。

中心部から黒点が現れたかと思うと、
徐々にそれは大きくなって、まもなく太陽を遮るほどになる。


人々は釘付けになった。
太陽どころか、ますます大きくなる黒点は
モヤモヤと歪に形を変えながら、


「なにか降ってくるぞ?!」


出発して間もない舟々を海の上から押し潰し、悲鳴を飲み込みながら、


"それ" はついに出現する。

896 名前: ◆WE1HE0eSTs[] 投稿日:2014/09/05(金) 21:42:45 ID:FCjsfqmk0

(´・ω・`) 「ビコーズ!」


二本足で崖を登り礼拝堂の屋根まで登っていたショボンが、手の中から小さな珠を宙に放る。

…そして、一向に落下しない。
ゆらゆらと重力に逆らうように浮かんでいるそれは、過去にご神体と崇められた真球体。


      (( (  ) ))


   ( ー) キュィィ


( ∵) ザザッ


130年前、天かける儀式を経て魔導力を
世界にもたらしたとされる神の使い。


(´・ω・`) 「お前にも責任を取ってもらおう。
僕と一緒にね」

( ∵) ーー ザーザッ ーー


   (`・ω・´) キリッ 「さあ、行くよ」

.

897 名前: ◆WE1HE0eSTs[] 投稿日:2014/09/05(金) 21:43:30 ID:FCjsfqmk0
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〜now roading〜


( ∵)

HP / ??
strength / ??
vitality / ??
agility / ??
MP / ??
magic power / ??
magic speed / ??
magic registence / ??


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