( ^ω^)千年の夢のようです

(´・ω・`):銷魂流虫アサウルス

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808 名前: ◆WE1HE0eSTs[] 投稿日:2014/09/03(水) 21:02:00 ID:THvpQ3w60
( ^ω^)千年の夢のようです


- 銷魂流虫アサウルス -

809 名前: ◆WE1HE0eSTs[] 投稿日:2014/09/03(水) 21:02:49 ID:THvpQ3w60



(`・ω・´) 起きろ


(´・ω・`) …もう? 疲れてるんだけど


(`・ω・´) もうすぐアイツがくるぞ


(´・ω・`) いいよ。 どうせ大した用じゃない


(`・ω・´) 駄目だ。 起きろ


(´・ω・`) …真面目だなもう…わかったよ


(`・ω・´)  フェイントに気を付けてな



.

810 名前: ◆WE1HE0eSTs[] 投稿日:2014/09/03(水) 21:04:01 ID:THvpQ3w60

静かだった部屋に響き渡る堅いノック音。


( ФωФ) 「起きるのだ、朝礼の時間である」


年老いた特級神官の声は空間を仕切る扉などまるで無いかのように、しかと彼の耳に届けられる。


(´・ω・`) 「もう起きてるよ」

( ФωФ) 「それは失礼した。
準備が出来たら礼拝堂まで降りてくるのだ」

(´・ω・`) 「うん」


特級神官を見送り、ベッドから出ると同時。
手の届く範囲に掛けておいたハンガーから外行き用の法衣を掴み、乱暴に背中へと振り回す。

バサァ!と大胆に音をたてて広がり舞った法衣の勢いを殺すことなく片袖を通した。
…そして、もう片袖は放っておく。
だらりと垂れ下がる白の法衣の各部位に施されたゴシック模様。

使用されている金糸によって宗教組織の位を示しているが、
まだ幼さを残すショボンは法衣に着させられているようだ。

811 名前: ◆WE1HE0eSTs[] 投稿日:2014/09/03(水) 21:05:56 ID:THvpQ3w60

( ФωФ)つ | ガチャリ

Σ (´・ω・`;) 「うわびっくりした」

( ФωФ) 「……ちゃんと着るのである」

(´・ω・`) 「着る意味があるならね」


ショボンはそれを拒否する。 毎朝のように。

特級神官ロマネスクもそんな彼を叱るわけでもなく、再び扉を閉める。
二人の関係は、口うるさい老人と、少し背伸びした少年のそれだった。


足音でどこを歩いているのかが分かればもっと楽なのだが、とショボンは思う。
だがこのフロア全体に敷かれる絨毯のせいでそれは叶わない。

なにかと朝礼をサボる彼をわざわざ起こしに来るロマネスクとのやり取りは、もはや様式美というものだ。


(´・ω・`;) 「…フェイントってこれか?」


ため息をついて頭を上げる。

翼を背負い天を仰ぐ戦士達、
覆われた雲から射し込む太陽の光、
彼方を泳ぐ四つ足獣の影…

眠りにつく時、決まってうつ伏せになる彼は
その天井画が好きではなかった。

.

812 名前: ◆WE1HE0eSTs[] 投稿日:2014/09/03(水) 21:08:11 ID:THvpQ3w60


宗教的要素が日々の生活に取り込まれた孤島…
だが、ショボンが産まれる以前からすでに何も崇めてはいない。


礼拝堂で行われる毎日の朝礼。
誰かの長々とした話を聞く時間ではなく、
島の人々が気になる事、不便、不満などを報告し合うことが目的だ。


ミセ*゚ー゚)リ 「ーー 以上が昨夜中に発覚した設備不良だそうです」

( ФωФ) 「ふむ。 では072番、201番の柱の灯りは今日中に取り替えて…」

ζ(゚ー゚*ζ 「ロマネスク様、201ではなく210ですのよ」

( ФωФ) 「おっとすまぬ。 …歳を取るとどうにも数字に弱いのである」


この礼拝堂は全一階。
孤島全体の三分の二を占めるほど広いスペースを誇る。
それは海を渡ってきた何人もの旅人が
荘厳な入り口をくぐるに付けて必ず驚愕するほどに。


いつの日からか
島の住人がこの礼拝堂を家として
自由に眠り、自由に語らっていた。

いま現在もその風習は変わっていない。
この礼拝堂は寝起きする家であり観光地でもある。
旅人はカルチャーショックを受けつつも
そんな孤島を満喫するのだ。

813 名前: ◆WE1HE0eSTs[] 投稿日:2014/09/03(水) 21:09:06 ID:THvpQ3w60

ミセ*゚ー゚)リ 「大きな乱れは今日もありません」

ζ(゚ー゚*ζ 「細かいものはありますけれどね…
計11点の改善要望はこのノートに書いておきましたので後程ご確認を」

( ФωФ )
 つ◇⊂  「うむ、うむ」

( ФωФ)
  つ◇⊂  「……また壁画の縁と空調機の部品が一部紛失しているのであるか?」


顔のよく似た双子の妙齢女性から受け取った朝礼報告書…
そこには最近よく目にする一文があった。


ミセ*゚ー゚)リ 「外蓋を閉じるネジが欠けていたそうですよ」

ζ(゚ー゚*ζ 「何十とあるうちの数台ですので支障はありませんけれど…」

ミセ*゚ー゚)リ 「この前はたしか室外機だったわ」

ζ(゚ー゚*ζ 「どこかに転がってしまうのかしら?」

ミセ*゚ー゚)リ 「殆どは古い設備ですものね」

( ФωФ)
  つ◇⊂  「ふーむ?」


( ФωФ)
  つ◇⊂  「…兄者殿はいずこに?」


.

814 名前: ◆WE1HE0eSTs[] 投稿日:2014/09/03(水) 21:11:11 ID:THvpQ3w60


□⊂(・ω・` ) 「はい、今日の分」


ーー 同時刻。
島外れの海岸沿いにはロマネスクの呼び掛けを無視したショボンが居た。

その手には小さな布袋が握られている。
差し出した先には彼と似た法衣を羽織る壮年の男性。


( ´_ゝ`)つ□ 「いつもすまない、こんなことをさせて」


兄者は布袋をさっそく漁った。
手のひらにジャラジャラと展開するナットやネジ、ワッシャー等の細かなパーツを満足げに見つめ頷く。


( ´_ゝ`) 「またこれで作業も進みそうじゃないか?」

(´・ω・`) 「そろそろ完成でしょ?
あと必要なパーツを確認してみようよ」


ショボンもそう言って頷いた。
年の離れた兄弟のように仲の良い様子で。


……刻は引き潮。
二人はさらに礼拝堂から離れるように海辺沿いを歩いていく。
普段は水位が上がり通れない道も、
いまなら足も濡らさずに移動できる。

815 名前: ◆WE1HE0eSTs[] 投稿日:2014/09/03(水) 21:11:53 ID:THvpQ3w60

(´<_` )「お。 意外と早かった」

( ´_ゝ`)つ□ 「待ったか?」

□⊂(´<_` )「いや…むしろもう少し遅くても良かったかな」

( ´_ゝ`)「だってよ、ショボン」

(´・ω・`) 「そんなこと言ったって…」


崖下の死角に待っていたのは弟者とその持ち舟。
数十年前と変わらない弟者の舟は薄汚れていたが、当人にとっては何度も年を越した名誉ある相棒である。

当然のことながら何度も穴が開き、
船体は削られていった。
そしてそのたびに弟者は欠かさずメンテナンスを繰り返しながら大切に使用してきたのだ。


(´<_` )「ショボンに言っても仕方無いだろうに」


兄者から受け取った布袋の中身を確認し、
弟者もまた頷いた。
その仕草はついさっきの兄者にそっくりで
ショボンは少し笑ってしまう。


(´・ω・`) 「新しい船、これでもうできるかな?」

"(´<_` )「うーん…そうだなあ」

816 名前: ◆WE1HE0eSTs[] 投稿日:2014/09/03(水) 21:13:29 ID:THvpQ3w60

カチャカチャと音をたてる弟者の腕の先…

そこには四人乗れば限界な彼の舟よりも
二回りほども大きく、
だが近代的なデザインの船が鎖に繋がれ
浅瀬の上にたゆたっている。
その横にはブルーシートにくるまれた浮き袋。

この中に、今日と同じくこれまでショボンが
持ち運んだ数々のパーツが入っていた。
…いや、その他にも大きな鉄板や一般人が
見る機会もないような専門的な物品が
入っているらしい。


(´<_` )「…ざっと見た感じ、
わずかに足らないかもな。
あと兄者も手伝ってくれたらいいのに」

( ´_ゝ`)「俺は毎日仕事で
疲れてるんだって何度も言ってるだろ?
こうして島からすれば紛失した部品だって
適当な理由つけて帳尻あわせしたり
大変なんだから、んもう」

(´<_` )「俺もこの船造るために
色々向こうから持ちこみ過ぎて、
漁港組合からだいぶ睨まれてるんだぞ。
あとなんだよんもうって」


(´・ω・`) 「僕、手伝うよ」

( ´_ゝ`)「「危ないから駄目」」(´<_` )

(´・ω・`)  ショボーン

817 名前: ◆WE1HE0eSTs[] 投稿日:2014/09/03(水) 21:15:02 ID:THvpQ3w60

三人にはそれぞれ役割分担があった。


まだ若いショボンがこっそりと島の備品を拝借し、持ち出してくる。

兄者は素知らぬ顔でその備品を島に補充する名目で、依頼として弟者に注文を頼む。

唯一大陸に居を構える弟者は、組合からそれを取り寄せてこの島まで運ぶ。
…ついでに注文されていない物も持ってくる。


そうしてまで彼らが造っているのは
一隻の船だった。
だが、ただの船ではない。


( ´_ゝ`)「世界にまだない唯一の "潜水艦" か…」

(´・ω・`) 「本当に海を潜れるのかな?」

(´<_` )「俺の腕を信じろ。
理論的には充分可能なんだ」


…だが、まだ誰も挑戦していない。
人間は海を渡る概念を手に入れ、
それを叶えはしたが ーー それだけだ。

818 名前: ◆WE1HE0eSTs[] 投稿日:2014/09/03(水) 21:16:24 ID:THvpQ3w60
----------


きっかけはショボンの言葉だった。


(´・ω・`) 『…どうして海へ還すの?』


人が生命を終えた時、
その故人を悼み、遺族との今生の別れとする葬儀を執り行う…
いつの頃からか生まれたこの風習は、"ふたごじま" にも当たり前のように取り入れられている。


( ´_ゝ`)『……どうしてだろうな』


それは遺体を海へと送り出す海洋葬。
浜辺に作られた石畳は緩やかながら滑りのよい坂を形成し、柩はそこから海へと降ろされる。

その間、柩には遺族や親しい友人と同じ数の縄が繋げられ、周囲の人工柱へと結ばれていた。


(´・ω・`) 『意味もわからずやってるの?』


この時、兄者は答えを知らないわけではなかった。

《神の生んだ自然があるから人間は生まれた。
 それを母なる海へと還すのさ》

こう言えたならば楽だったろう。
…ふたごじまには
"神への信仰" が数十年前まで染み着いていた。


( ´_ゝ`)『誰もが同じ意味や想いを抱くわけじゃないからな』

.

820 名前: ◆WE1HE0eSTs[] 投稿日:2014/09/03(水) 21:18:53 ID:THvpQ3w60

周囲は無言で手を合わせる島の住人ら…
ーー そこに祈りの声はない。
松明の灯を縄に重ね、着火する。

故人への思い出と共に、
縄の繊維が一本、また一本と燃え千切れていく。


(´・ω・`) 『海中はどんなものがあるんだろう』

( ФωФ) 『これ、集中しなさい』

(´・ω・`) 『ねえ、なにがあるの?』

( ФωФ) 『うむ、魚がいるのは確かだが…
か ーー …人間は水に潜れない。
誰も海の中をきちんと見たことはないのである』


《神のみぞしる》…そう言いかけたロマネスクは唾を飲み込み誤魔化した。

目の前では全ての縄が焼き切られ、支えを失った柩がゆっくりと海へ流れていく。

それを見送るその場の人々は、
やはり声を押し殺して頭を垂れていた…。


(´-ω-`) 『死んだ人も安心していける海の中…か』

( ´_ゝ`)『……』


約30年前の神託以来、このふたごじまで
神への祈りは禁じられていた。

.

821 名前: ◆WE1HE0eSTs[] 投稿日:2014/09/03(水) 21:20:21 ID:THvpQ3w60

(´<_,` )『海に行きたいって?』

( ´_ゝ`)『海じゃない、海の中だ』


数日後、島に物資を運んできた弟者は
何を勘違いしたのか笑ってその話を聞いていた。


(´<_` )『なんだ…』

( ´_ゝ`)『弟者のような立場からみて、
海中ってのはどういうものかと思ってな』


(´<_` )『陸と同じさ。
俺達は酸素がなければ生きられない。
地中に潜って死にかけながら、あるかどうかも分からない何かを探すやつがいるか?』


それはそうだ、と兄者は思う。
普段なら気に止めない一言は、しかし
ショボンが発したからこそ頭に残された。


( ´_ゝ`)『じゃあ地中に何かがあって、
呼吸さえできれば…?』

(´<_` )『行く奴はいるだろうな。
だが誰もそれをしないのはその "何か" を必要としないからだ』

822 名前: ◆WE1HE0eSTs[] 投稿日:2014/09/03(水) 21:21:27 ID:THvpQ3w60

(´<_` )『……』


(´<_` )『そうか。 ショボンは…』


兄者にしては妙に突っ掛かってくると思った。

あの日、信仰が消えたこの町で、
兄者は島に残る人々を説得しながら新しい生き方を共に模索してきた。

根底を揺るがされた人の心をケアしつつ、
代理となる心の支え、習慣の改革を行った。


ーー そんな中のイレギュラー。
過去に例のないもうひとつの出来事は、
ショボン生誕時に起こってしまう。


( ´_ゝ`)『必要とするのかもしれない。
産まれた時、兄弟を死なせたアイツには』



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823 名前: ◆WE1HE0eSTs[] 投稿日:2014/09/03(水) 21:22:44 ID:THvpQ3w60


(´・ω・`) 「具体的にあと何が必要なのか言ってくれたら早いのになあ」


島全土が静まり返る真夜中、丑三つ時。

潜水艦の完成を間近に控えつつも、
残りのパーツ集めに礼拝堂の備品を物色するショボンの姿が闇に浮かんでいる。

船乗りである弟者の頭の中には設計図があるらしいが、兄者やショボンにそれを計り知れるはずもない。
おかげで余分不要な物も持ち出している可能性がある。


(´・ω・`) 「…あっ」


何かに気付き、礼拝堂に延々と建ち並ぶ柱の影に身を隠す。

こっそり顔だけを覗かせた視界の向こう側。

平坦な礼拝堂中央に唯一そびえる段差の前から
掠れ年老いた声と、落ち着き払った声がそれぞれ聞こえてきた。

824 名前: ◆WE1HE0eSTs[] 投稿日:2014/09/03(水) 21:24:55 ID:THvpQ3w60

( ФωФ) 「ーー が、……に…」

( ´_ゝ`)「…では、発 ーー りに……」


(´・ω・`) (こんな時間にロマネスク爺?)

ここからではよく聞き取れない…
そう思い、音を立てずに素早く、
柱から柱へと低い体勢で移動しながら近付いていく。


(よし、ここまでくれば) (´・ω・`)



( ФωФ) 「そうそう、ところで兄者殿」

( ´_ゝ`)「どうされました?」

( ФωФ) 「ショボンといつも何をしているのであるか?」

( ´_ゝ`)「…」

( ФωФ) 「ああ、隠さなくて良いのである。
これは我輩の好奇心ゆえ」


( ФωФ) 「きっとデレやミセリが聞けばガミガミ言うのであろう。
だが我輩の胸のうちであればやがて勝手に海に還るとは思わぬか?」

825 名前: ◆WE1HE0eSTs[] 投稿日:2014/09/03(水) 21:26:53 ID:THvpQ3w60

…兄者がその言葉にすぐ答えることは無かった。
しかし隠れていたショボンときっと同じ感想なのだろう。

ロマネスクはすでにこちらの悪巧みに気付きながらも、
いつからか見て見ぬふりをしていたのだ。


( ´_ゝ`)「…騙すような真似をしたことを謝罪します。
だからこのような時刻に私を呼び出されたのですね」

( ФωФ) 「うむ。 デレとミセリが気付き始めそうだったのでな。
陰ながら黙って見守るつもりではあったが
そろそろ我輩も知っておく方が根回しできるかと考えたのだよ」


「たまには悪巧みも悪くないのである」
すっかり白くなったヒゲや髪をさすりながら、ロマネスクはホッホッと笑って言った。


悪くない悪巧みとはまさに "巧み" という事か。
ロマネスクからすれば兄者も息子のような年齢であり、可愛く映るのかもしれない。


( ´_ゝ`)「ショボンの奴が海の中を見たいと言ったので、その準備をしています」

      (あ、言うんだ) (´・ω・`;)

( ФωФ) 「…いつかの葬儀の時か。
しかしなぜ兄者殿が手伝う?
ショボン一人でやらせるのも成長の糧であろう」

826 名前: ◆WE1HE0eSTs[] 投稿日:2014/09/03(水) 21:29:11 ID:THvpQ3w60

( ´_ゝ`)「そうですね。
単なる過保護なのかもしれません」


( ´_ゝ`)「…もしくは私も知りたいのかもしれない。
定義のなかで生きてきた人生の大半に逆らうように、
この島は信仰の代わりをまだ見付けきれていない」


( ∩_ゝ`)「いえ ーー 小難しい言い方はこの際やめておきます。
本来私達にもあるはずの冒険心や、未知への挑戦に私も一歩踏み出したい。
ただそれだけでは…どうでしょうか?」

( ФωФ) 「構わんよ、皆同じである。
特にそなたはこの島に、人々に、
饒舌し尽せないほど貢献してくれた」


( ФωФ) 「デレやミセリ、
そして我輩もそなたに救われた」


( ФωФ) 「…ショボンを特別可愛がってしまうのもな」

827 名前: ◆WE1HE0eSTs[] 投稿日:2014/09/03(水) 21:31:50 ID:THvpQ3w60

  (大人の会話は難しいな) (´・ω・`)

まだ少年の彼には理解できない。
 …人は言葉だけを弄するに非ず。
兄者もロマネスクも、伊達に数十年と共に生活しているわけではない。


( ФωФ) 「巧み…我輩に手伝えることがあれば言うが良い。
ーー だが」

( ФωФ) 「そなたらのやったことは横領である。
罰として向こう一週間の礼拝堂掃除当番を命ずる」

 (あーあ兄者さんかわいそ) (´・ω・`;)


( ´,_ゝ`)「分かりました、連帯責任としてショボンとやらせて頂きますので」

         (なにィ?!) (´・ω・`;)

( ФωФ) 「うむ。 では二人で二週間か」

(;゚_ゝ゚)
     (( な、なにィ?!?! ))
             (´゚ω゚`;)



…少年はこの瞬間理解した。
大人は歳を重ねれば重ねたほど、狡猾になるものなのだと。

.

828 名前: ◆WE1HE0eSTs[] 投稿日:2014/09/03(水) 21:33:22 ID:THvpQ3w60


.

829 名前: ◆WE1HE0eSTs[] 投稿日:2014/09/03(水) 21:34:36 ID:THvpQ3w60



(`・ω・´)  おい、起きろ


(´・ω・`) …また? まだ眠いよ


(`・ω・´)  アイツがくるぞ


(´・ω・`) 掃除当番の一週間も済ませたし、
     そろそろ船も完成するんだ。
     そしたら島ともしばらく ーー


(`・ω・´)  駄目だ。 やることができる


(´・ω・`) …もう、わかったよ……えっ?


(`・ω・´)  挫けるなよ、ショボン。 二回だ


(´・ω・`) ……なに言ってるのさ? シャキン…


.

830 名前: ◆WE1HE0eSTs[] 投稿日:2014/09/03(水) 21:36:27 ID:THvpQ3w60


その日の朝、ロマネスクは
いつものように彼の目を覚ましには来なかった。


ベッドから身体を起こし、
手の届く範囲に掛けておいたハンガーから外行き用の法衣を掴み、乱暴に背中へと振り回す。

バサァ!と大胆に音をたてて広がり舞った法衣の勢いを殺すことなく片袖を通した。
…そして、もう片袖は放っておく。


毎日繰り返すこの習慣も
考え方によっては儀式だな…と、ふと思った。
まだ幼さを残すショボンはこの法衣に着させられているようで、皆のようにきちんと着るには抵抗があったのだ。


(´・ω・`) 「…潜水艦出来たかな?」


毎日その事ばかりを考えている。

…だから、彼は自室の扉を開けて初めて
その異変に気が付いた。

831 名前: ◆WE1HE0eSTs[] 投稿日:2014/09/03(水) 21:38:14 ID:THvpQ3w60

(´・ω・`) 「……なんか騒がしい」


自室のあてがわれたフロアの静けさとは対称的に、礼拝堂の方角が騒がしかった。
構造上、一度は建物外に出なければならないためか、ショボンは面倒な気分を隠すことなくとぼとぼと歩き出す。


まだ太陽が昇りきらない時間…いつもなら朝礼が行われる時刻。

外に出るとよりその騒ぎが大きくなる。
人の声がうるさいといった騒ぎではなく、
混乱と往来でバタバタとしたやかましさ。


ミセ;*゚ー゚)リ 「ショボン! どこにいってたのです?!」


正門へと辿る長階段下でミセリを見つけた。
興奮している様子で大振りに手招きしている。
どうやらあちらもショボンを捜していた様子だが…


(´・ω・`) 「寝てました…なんですか?」

ミセ;*゚ー゚)リ 「そ、そら、空を見て!」




      ( ´・ω・) 「そら?」


.

832 名前: ◆WE1HE0eSTs[] 投稿日:2014/09/03(水) 21:39:56 ID:THvpQ3w60

(;ФωФ) 「なぜ…なにが起こったであるか?」

(;´_ゝ`)「太陽と、 ーー …」


太陽。
かつての信仰に沿うならば…
神はその眼球を抉り出し、世界のあらゆる物質を作りたもうた。


ミセ;*゚ー゚)リ 「…神の虹彩…」

(うω・` ) 「眼が霞んでてよく見えないな」


祈りは止めども、教典は心に残っている。
人々は誰もが棄てることが出来なかった。

いま、目の前にある神の創造 ーー



(´<_`;)「…なんだありゃ」


日課のように島へ向かっていた弟者も、
海の上で雲に隠しきれないそれを確かに見た。



"二つの太陽が人間を照らそうとしている" 。

.

833 名前: ◆WE1HE0eSTs[] 投稿日:2014/09/03(水) 21:42:29 ID:THvpQ3w60

ーー そしてそれは唐突に始まる。

陸地に居た者は気付かなかったが、
前兆は舞堕ちる硬質の灰だった。


(´<_`;)「雨…じゃないよな」


海面に浮かぶほんの細やかな気泡、波紋…
それはパラパラと何かが着水する様を映している。

細かすぎて微弱な反応。
稚魚の大群からはぐれた数匹が舟の周りを泳いでいてももう少しくらい波はたつ。


(´<_`#;)「 ーー って、オイ!」


水平線の向こう……空の上で。
兄者の視線は下がり始める。


異変は果たして。
弟者のいる海上ではなく
兄者達のいるふたごじまで肥大した。

834 名前: ◆WE1HE0eSTs[] 投稿日:2014/09/03(水) 21:43:41 ID:THvpQ3w60
「ショボン! あぶな ーー 」


その声は届けられるべき人間の元へ
不完全なまま届けられた。

ショボンは増えた太陽を直視せず、
少年特有の斜に構えた平静心で物事をしっかりと視なかった。
外見を気にして余裕振ろうと努めてしまった。

……現実を、自室の天井画と同じ程度に嫌ってしまった。


それが幸か不幸だったかは
本人にしか分からない。


ミセ* -( リ


ーー 突き飛ばされたショボンの眼前。

そこには煙のまとわりつく黒い岩石と
頭部を半分以上失い倒れたミセリの姿がある。
腹這いに…しかしその顔は少年ショボンの無事を確かめるように、地から反らしていた。


      (´・ω・`) 「……」


そして、
  どろり、
と。
降り注いだ岩石のせいで濁った血液は、残るミセリの頭蓋骨を盃にして他のすべてを紅く覆ってしまう。

特徴のない鼻も、口うるさそうな唇も、歳より少し若々しかった頬もすべて。

836 名前: ◆WE1HE0eSTs[] 投稿日:2014/09/03(水) 21:46:33 ID:THvpQ3w60

      (´・ω・`) 「……」


ショボンは無表情のままだった。
その胸中とは反対に。

ミセリから目をそらさないまま、笑う膝を抱えて立ち上がる。


(;´_ゝ`)つ|「外に出てる人は
早く礼拝堂に入れ! 危険だ!!」


坂の上では礼拝堂の扉を開けて待つ兄者の小さな姿が見えた。
まだ彼はミセリとショボンの動向に気付いていない。


      (´・ω・`) 「…」


後ろ髪を引かれる思いで階段を駈け上がるも、その足元はおぼつかない。
右、左、と足を動かすたび、
いつもなら歩き慣れたはずの段差にすらつまずきそうになる。

837 名前: ◆WE1HE0eSTs[] 投稿日:2014/09/03(水) 21:48:41 ID:THvpQ3w60

  аζ(゚ー゚*;ζ 「兄者様! 上を!」
(;´_ゝ`)つ|
      「わかってる! ショボン早くしろ!」


兄者と、その後ろに隠れるようにデレが叫ぶ。
その声から明確なのは
未だ脅威は空にある、という事だ。


            (・ω・`; ) ))


だがそれをショボンは理解できなかった。

いざとなれば状況認識もできない憐れな少年。
他人が慌ててるのは分かる…
しかし、
なぜ慌てているのか?
兄者とデレの言葉が何を指しているのか?

頭で反芻するばかりで意味を考えられない。


三(#;´_ゝ`)「このっ ーー 何をのたのた歩いてるんだお前はァ!」

|⊂ζ(゚ー゚*;ζ 「あ、兄者様!」



      ーー 空から音がする。


「シィーーー」 と、
間の抜けたガスが噴き出すような細い音。

.

838 名前: ◆WE1HE0eSTs[] 投稿日:2014/09/03(水) 21:50:33 ID:THvpQ3w60

空から大地へと墜落する "それ" は、
無防備に晒されたショボンのまだ幼い後頭部にグングンと迫る。


   三(#´_ゝ`)    (・ω・`; ) ))


階段を飛ばし飛ばし下る兄者と、
階段に足をつっかけながら登るショボン。


兄者は思った。
こんなに走るのはいつ以来かと。


ショボンは思う。
なぜ兄者はこちらへ向かってくるのだろうかと。

839 名前: ◆WE1HE0eSTs[] 投稿日:2014/09/03(水) 21:52:02 ID:THvpQ3w60


そして "それ" は笑った。
       顔のない顔で。


わざわざ二人、獲物が
己の着弾地点に入り込んだのだから ーー

.

841 名前: ◆WE1HE0eSTs[] 投稿日:2014/09/03(水) 21:53:28 ID:THvpQ3w60



(´<_`;)三 「ハッ…ハッ…」


弟者が浜辺に着く頃、
すでに周囲はいつもの孤島の空気を取り戻していた。

空は晴れ、太陽は一つ。
海上で見た灰も降り止んでいる。

いつも停泊する島の死角ではなく、今回は堂々と港から上陸した。
最も早く礼拝堂まで辿り着くために。

人々が無事なら安全だったのは建物の中だろう。


…弟者は思った。
陸をこうして走るのはいつ振りかと。


彼が舟の上で見ていたのは降り注ぐ隕石…
そして槍と見間違うような鋭い一本の細い黒線。

842 名前: ◆WE1HE0eSTs[] 投稿日:2014/09/03(水) 21:56:18 ID:THvpQ3w60

礼拝堂に続く長階段、
…その中腹に人影を見た。


(´<_`;)「はあ…はあ……」


砂浜に足をとられながら走ったせいで
思ったより体力を奪われたが、
もはやそれどころではない。

立ちすくむ。
呼吸が荒い。

だがそれは走ったせいだけではない。


(´<_`;)「……お前達、どうして…」


呟いてからの歩みは遅かった。
それでも一歩ずつ前に踏み出して階段を登る。
……時を同じくして、礼拝堂からも人影が現れる。


            ζ(゚ー゚*;ζ


デレもまた様子を窺いに来たのか。
彼女の姿は見えるのに
どうしてその途中にいる影の姿はしっかりと見えないのか…。


ーー 二人が向かい合う長階段。
交差する視線の間で佇む影は、やがてその瞳に正体を映す。

843 名前: ◆WE1HE0eSTs[] 投稿日:2014/09/03(水) 21:59:58 ID:THvpQ3w60


(  _ゝ )


人影は重なり、二つあった。

黒い槍に後頭部から胸部まで貫かれ
百舌鳥のはやにえのような有り様の兄者の死体。


そして……


( ;ω;`)


胸部から腰まで、同じく貫かれてなお
まるで痛みを感じてないかのように涙を流すショボンが居た。


弟者もデレも
しばし言葉を発することはなく…



    「…なんなのさ、これぇ……」


……ショボンの嘆きの息だけが、
   二人の耳にいつまでも残った。


.

844 名前: ◆WE1HE0eSTs[] 投稿日:2014/09/03(水) 22:00:56 ID:THvpQ3w60
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〜now roading〜


(´・ω・`)

HP / C
strength / C
vitality / D
agility / B
MP / C
magic power / A
magic speed / D
magic registence / D


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845 名前: ◆WE1HE0eSTs[] 投稿日:2014/09/03(水) 22:03:50 ID:THvpQ3w60


あの日から幾ばくの夜を跨いで ーー 。


兄者さんとミセリさんの亡骸は
ロマネスク爺によって葬られた。


信仰を失わされたこの島において、
形骸化した神官という立場をあえて貫いていた二人。

神ではなく己の信念を一から組み直し
困難には率先して立ち向かい……
後についてくる人々に新しい生き方を説いてきた二人。


( ФωФ) 『二人の御霊は我らと共にある。
肉体は朽ちても、魂がいく場所は我らの記憶の中なのだ』

( うωФ) 『彼はそう、我輩に説いてくれた… それで…良いのだろう?』


 ロマネスク爺の言葉は
ある日の兄者さんの言葉だったと後で知った。

846 名前: ◆WE1HE0eSTs[] 投稿日:2014/09/03(水) 22:06:19 ID:THvpQ3w60


ζ(;ー;*ζ 『……ミセリは…どんな気持ちだったのでしょう』

 デレさんの心は、死したミセリさんについて逝こうとしていた。


(∩<_∩ )『…代わりにあんたが精一杯生きてやれ』


(´<_` )『思い出は永遠だ……
だから俺も、兄者のためにそうする』

 それを止めたのは追放解除を求めた弟者さんだった。
彼はその日から島に戻ってくることになる。


外の世界で生きてきた彼は
新しい足跡を、デレさんと共に、
この "ふたごじま" に遺していく……。

848 名前: ◆WE1HE0eSTs[] 投稿日:2014/09/03(水) 22:07:31 ID:THvpQ3w60

(´・ω・`)


僕が変わっていったのはそれくらいからだった。

無力どころか、他者の足を引っ張ってまで生き残る自分の厚かましさに打ちのめされたから。


あの日、僕と兄者さんを貫いた黒い槍を握り締めて。
自分に出来ることから始めたんだ。


…不思議とクヨクヨしたりはしなかった。
しても意味がないと思ったし、
その権利すら…あの時に奪われたのかもしれない。


.

849 名前: ◆WE1HE0eSTs[] 投稿日:2014/09/03(水) 22:10:21 ID:THvpQ3w60

  _
( ゚∀゚) 「……」


ーー 話をぼんやりと聞いていたジョルジュは、
「ここまでで何か質問はある?」
というショボンの声で我に帰った。


ここは山小屋の寝室。
だが彼とショボンの数分にも満たない戦いによって、壁から天井にまで破壊跡が残されている。

  _
( ゚∀゚) 「…あんたは、生まれつきの不死者だったのか?」

(´・ω・`) 「どうだろうね。
恐らく僕が死んだのはそれっきりだし、
少しして歳も取らなくなったからそうだと思うってだけさ」


ショボンの答えは回りくどくもあり、
限りなく事実に基づいた彼らしい回答だった。

 不死者とは一体なんなのか…

……違和感を残しながらも、ジョルジュは話の続きを促す。


(´・ω・`) 「…場所を移そうか。 まだ長くなる」

850 名前: ◆WE1HE0eSTs[] 投稿日:2014/09/03(水) 22:12:06 ID:THvpQ3w60

破壊された部屋を出ると、すぐそこは階段。
ショボンはジョルジュに背を向けて先に降りていく。

ギシギシと軋む木造階段は、しかしてガッシリと二人分の重量を支える感触がした。



小屋の一階は広くもなければそう狭くもない、何処かの酒場のような雰囲気を醸し出している。

長テーブル席が縦に二つ、横に三つと並べられ、
まだ空いたスペースにはいくつもの大樽と…恐らく予備であろう長テーブルが横倒しに壁際へと寄せられている。

空っぽの陳列棚と向かい合うバーカウンター席に、二人は腰掛けた。


(´・ω・`) 「水くらいならひいてあるから喉が乾いたらそこのシンクで好きに飲んでいいよ」
  _
( ゚∀゚) 「ああ、サンキュー。
ここってあんたの家かなんかか? 」

(´・ω・`) 「ここ何年か勝手に拝借してる。
昔は傭兵やら旅人が集う酒場だったらしいけどね」

851 名前: ◆WE1HE0eSTs[] 投稿日:2014/09/03(水) 22:12:55 ID:THvpQ3w60

適当な相づちをうちながらジョルジュは回り込み、水道から出た水を手すくいで飲む。
ついでに顔も洗った。

…日常的な行為のはずなのに、どうしてか長いこと忘れていた感覚にとらわれる。

静かな空間で、しばらくシンクに当たる水の音だけが響き渡った。


(´・ω・`) 「大丈夫?」
  _
( ゚∀゚) 「……すまん、ぼーっとしてた」


水を止め、ポケットから取り出したハンカチで手顔を拭う。

  _
( ゚∀゚) 「…」

  _
( ゚∀゚) 「他に誰かいるのか?」

(´・ω・`) 「えっ?」


その視線に合わせてショボンは振り向く。

後ろには小屋の出入り口があるだけ。
しかし、特に物音は聴こえない。

852 名前: ◆WE1HE0eSTs[] 投稿日:2014/09/03(水) 22:14:04 ID:THvpQ3w60

(´・ω・`) 「……?」


ショボンも扉を開け外を見回したが、
やはり誰も居ないことを確認して席に戻る。

  _
( ゚∀゚) 「気のせいかな…」

(´・ω・`) 「僕には何も感じない。
でもまた何かあれば教えて」


その声は少しだけ警戒を滲ませていたが、二人は改めて席についた。
一度だけ、ショボンは肩で大きく息を吸う。


(´・ω・`) 「ーー さて、それからなんだけど」


その腰に下げた "隕鉄" の刀が揺れた。

853 名前: ◆WE1HE0eSTs[] 投稿日:2014/09/03(水) 22:16:28 ID:THvpQ3w60

(´・ω・`) 「兄者さん達が死んでから、
僕は当時の馬鹿な頭をフル回転させて原因を調べ始めたよ」

(´-ω-`) 「なぜ島にあんなものが降ったのか?
あの隕石はそもそもなんなのか?
…どうして僕は生物として死ななかったのか?」

(´・ω・`) 「潜水艦の製造も中止した。
弟者さんにはやることが出来たし、
僕の興味も海中から天空へと移ったからね」

  _
( ゚∀゚) 「俺はワカッテマスと同化した一族の魂みたいなもんだ…
でも、あんたみたいな人は普通に母親から産まれたんだよな?」

(´・ω・`) 「そうだよ。 両親はなんの変哲もない人だった。
…双子は産めなかったけどね」


"ふたごじま" ーー 。

それは産まれる子の殆どが双子であり
そこから名付けられた俗称ともいえる。



(´・ω・`) 「正確には双子 "だった" 。
僕もね。

でも片割れは死産だった……
僕だけが、こうして生きて産まれた」

854 名前: ◆WE1HE0eSTs[] 投稿日:2014/09/03(水) 22:18:34 ID:THvpQ3w60

島の歴史において、
彼は最も希有な命だったという。
流産、死産は数あれど
片割れが死体のまま出てきた例は無い。


(´・ω・`) 「島では一人っ子がまず神官職に就く習慣があってね。
僕もそうやってやりたくもない雑務をやらされてた」

(´・ω・`) 「……ずっと思ってたんだ。
ひょっとしたら僕の不死はその片割れ…
シャキンがもたらしているんじゃないかって」
  _
( ゚∀゚) (…兄弟と同化してるってことか?)


シャキンは時々、予言じみた言葉を残すためにショボンの眠りに現れる。

とはいえジョルジュとワカッテマスの関係とは異なり、あくまでショボンはショボンとして生きていると言った。


(´・ω・`) 「彼は僕のなかに存在するオラクルそのものだと思う。
ちなみに…さっき君と一戦交えた最後の攻防。

それも事前にオラクルとして知ったから出来た事だよ」

855 名前: ◆WE1HE0eSTs[] 投稿日:2014/09/03(水) 22:20:40 ID:THvpQ3w60

ひとつ、ジョルジュの合点がいった。

蹴り飛ばした刀の疑似チェーンソー…
あの瞬間、あの刹那、
ショボンは顔を上げることなく白羽取りしてみせた。

  _
( ゚∀゚) 「すげえ便利だな…いや、
これは不謹慎か、すまない」

(´・ω・`) 「いいよ。 なんせシャキンは曖昧だ。
その時のオラクルも何か教えてあげようか?」


(`・ω・´)o 『下は向くなよ。 ゲンコツだぞ』


(#´・ω・`)б 「ふざけてるよね、これ……
実際に飛んできたのは刀だよ?
僕はせいぜい君の脚だと思ったんだから」
  _
( ゚∀゚) 「ハハッ 子供かよ」


ジョルジュが笑うと、ショボンも少しだけ笑ったように表情が和らぐ。
こうして思い出話が出来るのは愉快なことなのかもしれない。

少なくともジョルジュにとっては
同じ時間を生きる存在としてショボンを認め始めている。

856 名前: ◆WE1HE0eSTs[] 投稿日:2014/09/03(水) 22:23:16 ID:THvpQ3w60

  _
( ゚∀゚) 「それで、隕石がなんだったのかは判明できたのか?
それが…なんとか虫のアサウルスってやつなのか?」

(´・ω・`) 「銷魂流虫、ね。
結論から言えば…僕達を襲った隕石や黒い棒。

それ自体はアサウルスでありアサウルスではなかった」
  _
( ゚∀゚) 「ん??」

(´・ω・`) 「これの刀身、何で出来てると思う?」


ショボンは腰鞘に収めた刀に手をやり
少しだけ抜いた。
鍔と鞘の隙間から輝く鈍色 ーー 矛盾した刃がその身を覗かせる。


(´・ω・`) 「 "隕鉄" さ。 特に銘付けはしてないけれど…
昔、知り合った職人に刀として加工してもらったのさ」
  _
( ゚∀゚) 「聞いたことくらいはある。
"隕鉄" って言ったら空から降る天の鉱石」
  _
( ゚∀゚) 「俺はそんな由来くらいしか知らないが…
成る程その通りのシロモノなんだな」


(´・ω・`) 「ただし、その職人はその後
長生きできていない。
…燃え尽きたんだ、人としての魂が」

  _
(;゚∀゚) 「……魂が、燃え尽きる?」

(´・ω・`) 「これはね、アサウルスの欠片なんだよ」

857 名前: ◆WE1HE0eSTs[] 投稿日:2014/09/03(水) 22:25:16 ID:THvpQ3w60

ーー ジョルジュが息を呑む音がした。
覗かせていた刃を収めてショボンは悪くなった座りを直す。


(´・ω・`) 「ここまで来ると、今度はアサウルスについて話さないとね」


ショボンは窓の外と出入り口を順に見やる。
ジョルジュもつられて顔を動かし、
  _
( ゚∀゚) 「……やっぱなんか居るよな?」

と聞いた…… いや、"言った" 。


(´・ω・`) 「…実は待ち合わせはしてるんだ。
でもいつ頃に来るかまでは ーー」


ショボンが言い掛けたその時、
初めて彼の耳に外からの音が聞こえる。

      ジャリ… ジャリ…と。

石ころを踏み歩く音が。


(´・ω・`) (…まさかこの音を聴いていたのか?)


ジョルジュの顔を横目に立ち上がる。

858 名前: ◆WE1HE0eSTs[] 投稿日:2014/09/03(水) 22:26:18 ID:THvpQ3w60

やがてその音が扉の前で止むと、
かちゃりとドアノブが捻られた。

  _
( ゚∀゚) 「……」

(´・ω・`) 「……」


かちゃり、かちゃりと ーー

…何度か同じ行為が繰り返されるも
一向にその正体を見せようとはしない。


(´・ω・`) 「……」


(´・ω・`) 「…あっ」


ーー 鍵がかかっているのだ。
だから普通なら扉は開かない。

859 名前: ◆WE1HE0eSTs[] 投稿日:2014/09/03(水) 22:27:10 ID:THvpQ3w60

「おい」


ジョルジュでもショボンでもない、
第三の声が室内にかけられる。

静かに、そして厳しく。


「開けろ。 さもなくば」

(;´・ω・`) 「ま、まずい!」


ショボンは狼狽し慌てて一歩踏み  …出そうとしたが


    「壊してでも入るぞ」


時遅く、扉はその一部を
外からの衝撃によって大袈裟に破壊された。

.

860 名前: ◆WE1HE0eSTs[] 投稿日:2014/09/03(水) 22:28:19 ID:THvpQ3w60
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〜now roading〜

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( ゚∀゚)o彡゜

HP / B
strength / A
vitality / D
agility / B
MP / C
magic power / D
magic speed / C
magic registence / D


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