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839 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2015/08/16(日) 19:51:48 ID:06HkyG4g0
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+ + + + + + + + + + + +
ミセ*゚ー゚)リ「ねーねー!トソっちー」
(゚、゚トソン「……なんですかミセリ」
机の下からぴょこんと顔を出し、意地悪い猫みたいにニタニタ笑うミセリ。
トソンはそんな親友の顔を怪訝そうに見返した。
自分でも、不貞腐れているのが分かっていた。
ミセ*゚ー゚)リ「へへへー。実はね?ちょーっとしたニュースがあるんだけどね?聞きたい??」
答えはNOだったが、どっちみちミセリが自分の返答など気にしないことは分かっていた。
(゚、゚トソン「つまらない話なら後にしてください。今そんな気分じゃないんです」
ミセ*゚ー゚)リ「まーまー聞いて聞いて!
あのねー?トソっちにはちょっとショッキングなニュースかもしれないんだけどー」
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840 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2015/08/16(日) 19:53:19 ID:06HkyG4g0
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ほらね。聞いてない。呆れるトソンの前で、ミセリはへらへらと笑った。
どうやらこの友人は、その”ちょっとしたニュース”とやらを
余程自分に聞かせたくてたまらないらしい。
ミセ*゚ー゚)リ「実はね。ここだけの話……」
口に手をあて、一拍置いて、今の時間空席になっている とある席をチラと見やる。
じろりと睨みつけるトソンの視線を無視して、”ちょっとした”という言葉とは裏腹に
まるで、今世紀最大の重大発表でもするかのように、浅く息を吸い込んでミセリは言った。
ミセ*゚ー゚)リ「……弟者君って、B組の津田さんと付き合ってるんだってー!」
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-
841 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2015/08/16(日) 19:54:10 ID:06HkyG4g0
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(゚、゚トソン「……」
ミセ*゚ー゚)リ「だってー……てー……テー……」←セルフエコー
(゚、゚トソン「……」
ミセ*゚ー゚)リ
(゚、゚トソン
ミセ*゚ー゚)リ
(゚、゚トソン「……」
(-、-トソン「……知ってますよ」
短くそう言ってトソンはそっぽを向いた。
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842 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2015/08/16(日) 19:55:21 ID:06HkyG4g0
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ミセ*゚ー゚)リ「ありゃ?知ってたの??」
(-、-トソン「……」
予想に反してあまりに味気無いリアクションに、ミセリはきょとんとして首を傾げた。
それ以上何も言わないトソンを前にして、邪魔されないのを良いことに
彼女は楽しそうに話を続ける。
ミセ*゚ー゚)リ「この前の土曜日にね、シベリア駅で
こっそり待ち合わせしてるとこ見たって子がいるんだー。
2人とも私服に着替えて、仲良さそうだったってさ。確かな筋よ!」
(-、-トソン「……」
ミセ*゚ー゚)リ「うんうん。やっぱさー
同じマインドB持ちで、特別教室に通ってる者同士、気が合うんじゃないかな?
ほら、2人とも読書好きで、秀才タイプだし。お似合いだよね!」
わざとやっているのだろうが、やけに嬉しそうな態度に腹が立つ。
トソンは苛々とした溜め息を吐いた。わざわざ教えられなくても分かっている。
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843 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2015/08/16(日) 19:56:24 ID:06HkyG4g0
-
なにせ先日の放課後、廊下にて
2人で待ち合わせの約束をしているところを
運の悪いことに、ばっちり目撃してしまったのだから。
「じゃ、明日の放課後、公園でな」
「はいはい」
|゚、゚;トソン「……!」
ロッカーの影に身を隠し、弟者にもツンにも、誰にも気づかれないよう
一人その場から走り去り、泣きながら家へと帰った。
あんな光景見たくなかった。信じたくなかった。
その夜はあまりのショックに、家に帰ってからも涙で枕を濡らしたものだ。
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844 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2015/08/16(日) 19:57:20 ID:06HkyG4g0
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―――あれから、今日でもう4日経つ。
流石にもう落ち着いて、いつもの冷静な自分を取り戻したとはいえ
廊下で見た仲の良さそうな2人の姿は、日常のなかフと脳裏をよぎっては
ギトギトとした嫌な気持ちを呼び起させ、決して平常心でいさせてはくれないのだった。
ミセ*゚ー゚)リ「それからね!これも噂なんだけど、弟者君たら1年の子とも……」
そんな胸中を知ってか知らずか、今日のミセリはやたらに五月蠅い。
これがもし、見たくない現実を直視してしまった最悪のあの日だったなら
目の前で愉快そうに喋る頭の足りない友人の細い首を
鶏を屠るようにきゅっと絞めているところだったろう。
実際今だってそうしてやりたいくらいだ。この能天気なお喋りミセリめ。
ミセ*゚ー゚)リ「〜〜〜、〜〜〜」
(゚、゚トソン「……」
(゚、゚トソン(……でも)
(-、-トソン(考えてみたら、当たり前ですね)
-
845 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2015/08/16(日) 19:58:17 ID:06HkyG4g0
-
流石弟者はかっこいい。
鼻のすっと通った整った顔をしていて、身長も高いし、真面目だし
それに、少々無愛想ではあるものの、誠実で優しいのだ。
読書が好きでいつも本を読んでいるのも、共通の趣味で好感が持てたし
もしも一緒に好きな本のことなど語り合えたなら、きっと楽しいだろうなと思った。
実際話をしたことなんてほぼ無いし、一方的な片思いでしか無いのだが
そういう話に無頓着でうぶなトソンにとって、人生で初めての初恋の相手だった。
この際、突発的に騒々しい別人になることは置いておいて。
トソンの中で、弟者はまさに理想のタイプであり憧れの存在だったのだ。
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846 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2015/08/16(日) 19:59:01 ID:06HkyG4g0
-
……だからこそ、自分にとって理想の男性像である彼に
既に恋人がいるという事実を知っても、ああ、やっぱりか。
と、どこかで納得してしまっている自分がいる。
それに、相手はあの津田ツンだというのだから。
地味な容姿の自分と違って、彼女は学年の中でもトップクラスで可愛い。
性格は少しきつめだが、それを差し置いても男子の間で人気があるし、頭も良いので有名だ。
(-、-トソン(……それに)
(-、-トソン(同じようにマインドBを持っていて、同じ特別クラスに通っていて……)
ミセリの言う通り、これ以上無いほどにお似合いでは無いか。
心のなかで、人知れず乾いた笑いが出た。
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847 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2015/08/16(日) 19:59:55 ID:06HkyG4g0
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ミセ*゚ー゚)リ「……だからさ、トソっち」
(゚、゚トソン
ズブズブと、泥のような深い思想に1人はまっていくトソンを現実に引き戻し
ミセリはずいと顔を近づけ、強めの口調で言った。
ミセ*゚−゚)リ「―――これできっぱり、諦めなね?」
先程までのふざけた態度を急に止め、やけに強く念を押してくる。
最初に弟者の名前が出た時も、彼女は決して良い顔はしなかった。
彼女は彼女なりに、自分のことを気にかけているということなのだろう。
(゚、゚トソン「……」
ミセリの言いたいことは分かっているつもりだ。
恋は盲目という言葉も知っているし、私だって馬鹿じゃない。
―――だが
(゚、゚トソン(余計なお世話よ)
休憩時間が終わり、席を離れていく親友の背を見つめながら
心のなかで舌打ちをした。
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854 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2015/08/16(日) 20:29:33 ID:06HkyG4g0
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(-、-;トソン「はあぁぁ〜」
体操着姿でのろのろと階段を登りながら、トソンは盛大に溜め息を吐いた。
今は3時間目。体育の時間で、皆別館へと移動しているのだが
何故彼女1人だけが本館に戻り、のろのろと教室を目指しているのかというと
トソンは今日、自分が鍵締め当番だったことをすっかり忘れてしまっていたのだった。
普段は絶対にこんなミスしないのに。
体育館に移動し授業がはじまって、しばらくしてからやっと
誰1人として教室の鍵を閉めていないという衝撃の事実に気づいたのだった。
おかげで本館までの長い渡り廊下を逆戻りし
1人鍵を閉めに来なければいけない破目になった。
この時間はA組、B組ともに体育で、A組は南館、B組はグラウンドで授業が行われている。
その為2年生の教室が並んでいる廊下は、C組とD組の教室から先生の声が聞こえる以外
比較的静かなものだった。
-
855 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2015/08/16(日) 20:30:49 ID:06HkyG4g0
-
(-、-;トソン「なにやってんだろもう、超ダサ……」
まったくもう。先程の休憩時間にした、ミセリとの会話を思い出す。
彼女が急にあんな話をするものだから、あれからそのことばかり考えていて
鍵のことなどすっかり忘れ、ぼーっとしたまま教室を出てしまったのだ。
自分が間抜けだったことは重々承知の上だが
こうもツいていないことが続くと、ついつい他人のせいにもしたくなるというものだ。
階段を登りきる頃には、疲労に心労も相まって どっと歳をとったように感じた。
誰もいない、静まり返った廊下を1人歩く自分は傍から見ればさぞ情けない姿に違いない。
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856 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2015/08/16(日) 20:32:29 ID:06HkyG4g0
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(-、-;トソン「さっさと締めてさっさと戻ろう……」
(゚、゚トソン「……ん?」
その時ふと、トソンは足を止めた。
自分達の教室の前に、誰か立っているのに気づいたからだ。
さらに……よくよく見てみれば
遠目に見えるその人物には見覚えがあった。
(゚、゚トソン「あ」
(゚、゚;トソン「あれって……」
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857 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2015/08/16(日) 20:34:06 ID:06HkyG4g0
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―――10分程前―――
ζ(゚ー゚*ζ「……あれ」
階段を降りている途中、デレははたと立ち止まった。
ζ(゚ー゚*ζ「あれ?」
段差に立って視線をめぐらし、上を見て、下を見た。
もう一度ゆっくりと、同じように辺りを見まわす。何度見ても、どう見ても階段だ。
それは分かる。分かるのだが。でも、どうして自分は階段を降りているのだろうか……。
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858 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2015/08/16(日) 20:35:43 ID:06HkyG4g0
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デレはぼんやりと記憶を辿った。今はツンの時間の筈だ。
だって、ついさっき特別クラスで交代したばかりだもの。それは覚えている。
いつもより時間がかかってしまったので、ツンは次の授業に遅れると言って焦っていた。
ζ(゚ー゚*ζ「………」
ツンはどこにいるのだろうと思い、探してみる。が、彼女はどこにもいなかった。
名前を呼んでも、いつもみたいに返事してくれない。
いつもなら、困った時はすぐ助けてくれるのに。
ζ(゚ー゚*ζ
ζ(゚ー゚;ζ
どうしよう。
迷子になってしまったのだと理解して、途端に心細さがデレを襲った。
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859 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2015/08/16(日) 20:37:06 ID:06HkyG4g0
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迷子になった時は、できるだけその場を動かないで
ツンが出てくるまで待つように言われている。それが一番安全だからと。
だが、早くなんとかしないとツンは次の授業に遅れてしまう。
自分のせいで彼女に迷惑はかけたくなかった。早く2年生の教室へ行かないと。
とはいえ―――デレは今、自分が一体どの校舎の、何階の階段にいるのかも分からなかった。
ζ(゚ー゚;ζ
おちつけ、おちつけ。パニックを抑え、自分に言い聞かせる。
……ツンは当然、次の授業の為に自分の教室に向かっていた筈だ。
どうして途中でいなくなってしまったのか、それはわからないが、とにかく
ツンがこの階段を降りていたのだから、このまま降りるのが正解だと思われた。
降りた先が全然見当違いな場所だったらどうしよう。
先生に見つかって、サボってると思われて怒られたらどうしよう。
不安を抱えながらも、デレは前へと進むことにした。
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860 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2015/08/16(日) 20:38:14 ID:06HkyG4g0
-
ζ(゚ー゚*ζ「!2年……D組」
階段を降りた先で、最初に目についた教室の札を読み上げ
デレはほっと胸を撫でおろした。どうやらここが2年生の階で正解のようだ。
辺りは静かで、誰の姿も見えない。
授業はもう始まっているようだ。急がないと。
ζ(゚ー゚*ζ「えっと……ツンちゃんは、2年B組だよね」
アルファベットは既に学習済みだ。順番も覚えている。
ここがD組で、確か、ツンの学年のクラスはDまでしか無い筈だから
D、C、B、Aと辿っていけば良い。デレは頭の賢い子だった。
D組の教室を通りすぎ、次に、隣の教室にC組の札を見つけた。
長い廊下を歩きながら、教室では無さそうな鍵のかかったドアは幾つか無視して
2年B組の文字を探し、きょろきょろと辺りを見渡す。
後ろを振り向くと、廊下を挟んで向い側に教室が2つ並んでいた。
デレは小走りに近寄り、ガラス窓をそっと覗きこんだ。
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861 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2015/08/16(日) 20:39:49 ID:06HkyG4g0
-
ζ(゚ー゚*ζ「……あれ」
窓からは、机と椅子が沢山並んでいるのが見える。
生徒の物であろう、脱いだ制服や鞄や教科書が机の上に置かれていた。
だが、電気は消えていて薄暗く、生徒は1人もいないようだった。
頭上の札を確認してみると、2年B組と書かれている。
目指していたツンの教室だ。だが、何故誰もいないんだろう?
隣に並んだ教室へと駆け寄り、同じようにガラス窓に顔を近づける。
こちらも誰もいない。隣り合った教室は同じようにしぃんとしている。
試しに扉に手をかけてみると、ガラガラと音をたててあっけなく開いた。
とはいえ、誰もいないのでは中に入っても仕方が無い。
A組、B組の教室を前にしてデレは途方に暮れた。
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862 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2015/08/16(日) 20:43:34 ID:06HkyG4g0
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ζ(゚ー゚;ζ「どうしよう……」
もう放課後のわけは無いし
きっとB組のみんなは他の場所で授業を受けているんだ。
そうあたりをつけるも、デレはツンの時間割など把握していなかった。
道がわからなくなったら、誰かに聞いて教えてもらいなさい。
優しいパパの言葉を思い出す。
何の授業で、何処にいるのか、誰かに聞けばわかるかもしれない。
だが、辺りを見渡しても誰もいないし、だからと言って
中で授業をしている最中のC組、D組の教室に入るのは流石に躊躇われた。
扉を引いた途端一斉にこちらへ向けられるであろう、40人あまりの視線を想像してぞっとする。
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863 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2015/08/16(日) 20:45:09 ID:06HkyG4g0
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ζ(゚ー゚;ζ「……」
デレは考えた。
3階の特別クラスに戻って、モララーに助けてもらおうか。
でも、マインドBクラスでの授業が終わってから時間が経ってしまっているから
戻ってももう誰もいないかもしれない……。それに、今日はブーンも、ロマネスクもいない。
ζ(゚ぺ;ζ
先生もいないし、つーもいないし、その上ツンちゃんまでいなくなってしまった。
兄者は何も教えてくれないし、シャキンもぴりぴりしているし、みんな怒っているみたいで怖い。
どうしてかはわからないが、今日はなんだか嫌なことばかり起きる。
不意に泣きそうになって、デレはぎゅっと涙をこらえた。
パパのところに帰りたい。
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865 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2015/08/16(日) 20:45:57 ID:06HkyG4g0
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涙が出そうになったので、慌てて目元を擦り
どうしようか考えて、しばらく「2年B組」の文字を見つめた。
これからどうしたらいいのかわからない。誰でも良いから、誰かに助けてほしかった。
他に行く当ても無くて、A組とB組の教室前を行ったり来たりする。
ζ(゚ー゚;ζ(どうしよう、どうしよう……)
良い考えが浮かばない。早くしないと、ツンが……
ζ(゚ー゚*ζ「……あ!」
―――その時、不意に
遠くからこちらへ歩いてくる誰かの人影に気づいて、デレは声をあげた。
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866 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2015/08/16(日) 20:47:21 ID:06HkyG4g0
-
その誰かは、ツンと同じくらいの歳の女の子だった。
制服ではなく体操服を着ている。
デレはすぐに、その女学生が履いている上履きのつま先のカラーが緑色なことに気づいた。
この学校で生徒が履いている上履きは、学年ごとにカラーが分かれている。
確か、1年生は赤、2年生は緑、3年生は紺色。
―――2年生は緑!
すると、こちらに歩いてくるあの女の子は2年生の筈だ。
A組かB組、どちらかの生徒かもしれない。
デレは顔を輝かせ、B組のみんなが何処へ行ったか聞こうと思い
ツンと同じ年の筈の、自分からしたら年上のお姉さんの元へ駆け寄った。
向こうも気づいたようだ。目を丸くしてこちらを見ている。
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867 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2015/08/16(日) 20:48:05 ID:06HkyG4g0
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(゚、゚;トソン
なんということだろう。今一番会いたくない相手に出くわしてしまった。
2年B組、津田ツン。無意識に、4日前の嫌な記憶が蘇る。
(゚、゚;トソン(なんで??)
今の時間、B組はグラウンドで体育の授業を受けている筈だ。
それが何故制服姿のままこんなところにいるのか。サボり?
ζ(^ー^*ζ
(゚、゚;トソン
いや、しかもなんでそんな嬉しそうな顔して小走りでこっち来んのよ。
トソンはツンとは直接の面識は無い。
クラスが同じになったことも無ければ、話したことさえ無い筈だ。
それなのに、彼女が笑顔でこちらへ駆け寄ってくる理由とは??
他に思い当たる節も無くて、トソンは嫌な予感がした。
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868 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2015/08/16(日) 20:49:39 ID:06HkyG4g0
-
(゚、゚;トソン(ま、まさか……)
(゚、゚;トソン(……私の弟者君に色目使ってんじゃ……
……とかなんとか言われるんじゃ!?)
混乱して、あまりに突飛しすぎた考えに突っ走るトソン。そんな筋合いは無い。
たじろぎ、思わず後ずさるも、恋敵・津田ツンはもうトソンの目の前まで来ていた。
愛想の良い笑顔が怖い。一体……
ζ(゚ー゚*ζ ズイッ
(゚、゚;トソン「あ……」
ζ(゚ー゚*ζ
(゚、゚;トソン
ζ(^ー^*ζ「こんにちは!」
(゚、゚;トソン「、へ?」
―――やけに元気いっぱいの気持ち良い挨拶をされ、トソンは拍子抜けした。
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869 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2015/08/16(日) 20:50:50 ID:06HkyG4g0
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ζ(゚ー゚;ζ「あっあっ、授業中だから静かにしなくちゃだね……」
目を丸くしてぽかんとするトソンの前で
慌てて、シィッと口元に指を当て目線をきょろきょろさせる津田ツン。
それから、歯を見せて へへとはにかんだ。
(゚、゚;トソン
―――なんだ、これ。
目の前の彼女は、トソンの知っているツンのイメージでは無かった。
知り合いでは無いが、彼女はなんていうか、もっとハキハキした性格だった筈だ。
勝手な印象だが、生徒会長とかやってそうな……そんな感じの。
男子に注意する時なんかも、結構きつい言い方してた気がする。
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870 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2015/08/16(日) 20:51:51 ID:06HkyG4g0
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ζ(^ー^*ζ「えへへ……あらためまして、こんにちはっ」
秀才お嬢様(?)キャラってこんな癒し系天然要素も兼ね揃えてるものなの?
それともこれは演技なのだろうか。
自分を油断させる為か……もしくはぶりっこというやつか。
(゚、゚;トソン「……」
それにしても
ζ(゚ー゚*ζ
(゚、゚;トソン(くそう、やっぱり近くで見ると本当に可愛いな……)
自分より背が低く、小柄で、女の子として理想の背丈。
大きな瞳に長い睫毛、白い肌に、綺麗な金色の髪。
まるで西洋のお人形さんみたいだ。地味で目立たない自分とは大違い。
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871 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2015/08/16(日) 20:54:13 ID:06HkyG4g0
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世の中これくらい容姿が愛らしければ
多少のぶりっこは許されてしまうものなのかもしれない。
しかもその見た目に加えて、意外な二面性を持っていることも今明らかになった。
普段つんけんしているのが嘘みたいなこのぽわぽわぶり。どっちが演技かは知らないが。
男の人ってこういうの好きそうだもんなぁ。ギャップ萌えとか言ったっけ?
この容姿と性格で、彼のことも好きにさせたのだろうか……
そこまで考えて、トソンははっとした。―――心がざわつく。
心臓の中で大量の虫がぞわぞわ蠢いているような、すごく嫌な感じがした。
胸がむかむかする。
―――こんな子嫌いよ。大っ嫌い。
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872 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2015/08/16(日) 20:55:01 ID:06HkyG4g0
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(゚、゚トソン、「な……なんですか」
ζ(゚ー゚*ζ「あ!あのねあのね、ちょっと聞きたいことがあって」
(゚、゚;トソン「はぁ……」
そんなトソンの胸中も知らず、津田ツンはにこにこと質問を投げかけてくる。
(゚、゚;トソン(調子狂うなぁ)
ζ(゚ー゚*ζ「えっと……おねーさんって、高校2年生?」
(゚、゚トソン「?そうですけど?」
“お姉さん”という物言いが少しひっかかったが、つっこまない事にした。
例え面識が無くとも、上履きのカラーを見れば同じ2年生だと分かるだろうに。
彼女なりの冗談か何かのつもりなのだろうか。トソンは少し苛立ちを覚えながら答えた。
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873 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2015/08/16(日) 20:56:24 ID:06HkyG4g0
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ζ(゚ー゚*ζ「そっか!よかったぁ。
あ……あたしも!高校2年生、なんだけどねっ。
2年B組なんだけど……。その、教室にもどって来たのに、誰もいなくって」
(゚、゚トソン「それは……そうですよ。今は、A組もB組も体育の時間ですから」
ζ(゚ー゚*ζ「!そうなんだ!えっと、B組は今、どこで体育の授業をしてるの?」
(゚、゚トソン「?わからないんですか?」
ζ(゚ー゚;ζ「あ、あの、その……忘れちゃったの」
もじもじと俯き、目線を泳がせるツン。本当に困っているようだ。
(゚、゚トソン「いつもと同じ場所ですよ」
ζ(゚ー゚;ζ「……ど、どこだった……かなぁ?」
(゚、゚トソン
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874 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2015/08/16(日) 20:57:52 ID:06HkyG4g0
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頭の回転が早いトソンは徐々に勘付いてきた。
明らかに、目の前の彼女はさっきから、様子も言動もおかしい。
いつものハキハキしたツンとは違う、あどけない喋り方。
子供のようなトーンの高い声に、口調、それに幼い仕草。
改めて見てみても、演技やぶりっこしているようには思えない。
まるで本当に、5,6歳くらいの幼い女の子を相手しているようだ。
幼い女の子……。
トソンはハッとした。
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875 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2015/08/16(日) 20:59:10 ID:06HkyG4g0
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(同じようにマインドBを持っていて、同じ特別クラスに通っていて……)
そうだ。ツンは特別クラスに通っている。
彼女のマインドBがどんな人物なのかは聞いたことが無いが、きっと性格も記憶も違う筈だ。
本人とマインドBとで性格が異なることは、いつも弟者を見ていたので知っていた。
ζ(゚ー゚*ζ
もしかして―――目の前のこの子は、ツンではなくて
(゚、゚トソン(……津田ツンのマインドB……!?)
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876 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2015/08/16(日) 21:00:20 ID:06HkyG4g0
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ζ(゚ー゚;ζ「おねーさん?」
(゚、゚トソン
……もしこの子が本当にツンのマインドBで、うんと小さい女の子だったなら。
さっきから自分のことを”お姉さん”と呼ぶのにも頷けた。
時間割のことや、体育の授業の場所がわからないのも納得できる。
トソンは確信した。
(゚、゚トソン「……」
―――この子は津田ツンじゃない。別の”誰か”なんだ―――
.
-
877 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2015/08/16(日) 21:01:20 ID:06HkyG4g0
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ζ(゚ー゚;ζ「そ、それでね!早くしないとツンちゃんが……、じゃないや
あの、あたし、授業におくれちゃうの。だから、場所を教えてほしいんだ」
ζ(゚ー゚;ζ「け、ど……」
(゚、゚トソン「……」
ζ(゚ー゚;ζ「?」
急に黙ってしまったトソンに疑問を抱き、顔を覗きこむデレ。
ζ(゚ー゚;ζ
……どうしよう、もしかしたらこのお姉さんも迷子なのかもしれない。
自分と同じように、行くべき場所がわからないのだろうか。それで、困っているのだろうか。
迷子が2人。どうしたらいいんだろう。
なんで、何も言ってくれないんだろう……。
やっと希望の光が見えたと思ったのに、またもデレの心は不安でいっぱいになった。
一度我慢した涙が目尻に熱を持たせ、堪らず泣いてしまいそうになる。
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878 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2015/08/16(日) 21:02:14 ID:06HkyG4g0
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ζ(゚−゚;ζ「……おねーさ……」
心細さに耐えきれず、もう一度声をかけようとしたその時。
トソンは顔をあげ、心配そうに自分を見つめるデレに視線を合わせた。
ζ(゚−゚;ζ
(゚、゚トソン「……ええ、わかりました」
(^、^トソン「私が連れて行ってあげますよ」
僅かに潤んだ金色の瞳をまっすぐに見つめて
トソンは愛想良く ニコリと微笑んだ。