( ^ω^)マインドB!のようです

10話

501 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2015/02/08(日) 17:00:17 ID:/3Wqmaig0


( ;ω;)「いやだおいやだお!ロマネスク、いなくなっちゃいやだおぉ!!」


『therapy room』

簡素な英書体でそう綴られた、白くて重いドアの向こう側。

大病院の三階、児童精神科ユニットの小さな一室で

幼い少年の叫びが痛切に響き渡った。


.

502 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2015/02/08(日) 17:02:01 ID:/3Wqmaig0

ζ(゚−゚*ζ「ね……先生、ほんとなの?」

( ^ω^)「え?」

その日の出席確認でツンと人格交代してからずっと
どこか浮かない表情を浮かべ静かに席に着いていたデレ。

普段の元気いっぱいの彼女らしくなく、大人しく何故だか落ち込んでいる様子の彼女を
周囲が心配し、具合が悪いのかと、何度声をかけても静かに首を振るばかり。

そんなデレが、後半の授業が始まり数分後、意を決したようにそっとブーンに尋ねたのだった。


ζ(゚−゚*ζ「昔は……病院にいったら、マインドBは消されちゃってたって」

( ^ω^)「お……」

503 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2015/02/08(日) 17:03:04 ID:/3Wqmaig0

唐突に、デレが口にした質問。

それはブーンが、以前ギコを連れてきた保護者に対し語った
一昔前に主流として浸透していた治療法のことだろう。
基本人格を残し、後に発生したマインドBを消滅させる。

1つの治療法として、そういう方法も存在するのだということを
ブーンも、周囲の大人達も誰も、幼いデレには教えていなかった。
教える必要が無かったからだ。

ζ(。 。*ζ「……ツンちゃんがね、そういう本読んでたの……
        むずかしい言葉ばっかりで、よくわかんなかったけど、でも
        ツンちゃんがそれを読んで気になったことはわかったの」

ツンは勉強熱心で、知的好奇心の強い子だ。

自分の症状についても詳しく知りたいと思うのは当然で
日頃から本やインターネット等でマインドBに関する情報を集めている。

それらの文章を読んで生じたツンの感情を、心の内に眠るデレが敏感に感じ取り
漠然とした言葉として聞いてしまったのだろう。

504 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2015/02/08(日) 17:07:36 ID:/3Wqmaig0
思いつめた様子のデレの声に、各々課題に取り組んでいた皆の手も自然と止まる。

デレは頭の良い子だ。
下手な誤魔化しは、より彼女に不安を与えるだけだろう。

( ^ω^)「……そうだおね。
      全部の病院でそうだったってわけじゃないけど、確かに、そういう治療法もあるお。
      特に数十年前までは、その治療法が沢山の人に使われていたんだお」

( ・∀・)「……」

( ^ω^)「数年前まで、この病気については今以上に分からないことが多かったから
      発症した人にとって一番良い療法は何か、どの病院でも色々なやり方が試されていたんだお。
      まぁ、今でもまだ詳しいことはあまり分かってないんだけどおね」

505 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2015/02/08(日) 17:08:38 ID:/3Wqmaig0
( ^ω^)「……実際、僕がマインドBを発症した8歳の時には
      発症者にはほぼ例外なくその治療法がとられていたお」

(*゚∀゚)「……!じゃあ医者の奴ら、ロマを消そうとしたのか?」

若干体を強張らせ、2人の会話に耳を傾けていたつーが
デレの隣の席から、緊張の入り混じった疑問の声を投げかけた。

( ^ω^)「うん。そうだおね」

事も無げなブーンの返事。それを聞いたつーが、驚いた顔をして顔を曇らせる。


( ´_ゝ`)「でもさ」

その様子を廊下側の席から見ていた兄者が口を挟んだ。

( ´_ゝ`)「結局そんな方法、上手くいかなかったんだろ?
      だって、ロマ先生は今もブーン先生と一緒にいるもんな」

( ^ω^)、「いや、それは……」

( ´_ゝ`)「?」

506 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2015/02/08(日) 17:10:08 ID:/3Wqmaig0
ζ(゚−゚*ζ「先生」

小さな、ほんの呟きのようなデレの声が、やけに重みを伴って教室内に響いた。

ζ(゚−゚*ζ「”消す”って、どういうこと?
        消されたらどうなっちゃうの?いなくなっちゃうの?どこにも?」

( ^ω^)「……それは先生にも分からないお。でも、デレ」

ζ(゚−゚*ζ「それって、その人を殺すってことじゃない」

(;^ω^)「お」

ζ(゚д゚*ζ「どうしてそんなことするの?ひどいよ!」

唐突に、デレの瞳から涙が零れ出た。

ζ(;−;*ζ「マインドBだって1人の人だって、先生教えてくれたもん!
        デレだって、ツンちゃんと一緒にちゃんとここにいるって。そう言ってくれたもん……!
        なのに、なのに消しちゃうなんて……そんなのひどいっ!」

507 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2015/02/08(日) 17:11:07 ID:/3Wqmaig0
(`・ω・´)「……」

(;´_ゝ`)「デレちゃん」

(;゚∀゚)

ζ(つ−;*ζ「なんでそんなことするの……?邪魔だから?いらないから?
        デレ、ツンちゃんやパパに邪魔だって、いらないって言われたら……
        それで消されちゃうなんて、そんなのやだ!ぜったいやだよ!!」

( ・∀・)

(;^ω^)「お、デレ。落ち着くお」

(;´_ゝ`)「で、デレちゃん!そんなこと、ツンちゃんが言うわけないだろ!?」

(;゚∀゚)「あ、あひゃっ、デレ、泣くな!泣くなよっ!」


突如泣き出したデレに、その場の空気が一気に緊迫したものへと変わる。

デレの悲嘆ぶりに狼狽える兄者とつーは、その両隣にて思わず席を立つが
どちらも、どうすればいいのか分からず困惑している様子だ。


動揺する教室内に、それまで沈黙していたシャキンが言葉を発しかけたその時
今までこの場には存在し無かった筈の、低く厳格な声が発せられた。

508 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2015/02/08(日) 17:12:01 ID:/3Wqmaig0

( ФωФ)「デレ」

( ФωФ)「大丈夫である。
        昔と違って、今では、そのやり方では駄目だと、沢山の人が気づいたのである」

ζ(;−;*ζ「ロマせんせ……」

( ФωФ)「デレが消されてしまうなんて、そんなことは絶対に無いのである。
        我輩が守るであるからな。わかったか?」

( ^ω^)「……それに、僕もね。このクラスにいるみんなもだお」

ブーンが教室を見渡す。
真剣な表情をしたシャキンと兄者が、同時に頷いた。

509 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2015/02/08(日) 17:12:44 ID:/3Wqmaig0
( ^ω^)「ね。だから安心するお、デレ」

ζ(;−;*ζ「……」

ζ(;−;*ζ「ぅ゙んっ」

約束だよ。

大粒の涙の零れるその瞳から、すぅ、と光が失われていく。

ζ(;−;*ζ

ζ(゚−゚*ζ「……」

ξ゚−゚)ξ「……」

ξ゚听)ξ

510 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2015/02/08(日) 17:13:28 ID:/3Wqmaig0

ξ゚听)ξ「……誰か泣いていたの?」

ほんの数秒、内に向かっていた彼女のまなざしが再び世界を捉え
きょとんとした様子で一言、自分を見守る周囲の皆に疑問を投げかけた。

( ^ω^)「デレだお」

ξ゚听)ξ「デレが?」

左手で自らの頬に触り、指を濡らした涙の痕を見て、彼女は怪訝そうな顔をした。
  _,
ξ゚听)ξ「泣いてたの?どうして?」

( ^ω^)「ちょっとね。僕から話すお」

511 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2015/02/08(日) 17:15:15 ID:/3Wqmaig0
(;´_ゝ`)「デレちゃん大丈夫かな?シャキ兄」

(`・ω・´)「デレは感受性が強いからな。そのせいで少しショックを受けただけさ。
     とりあえず落ち着いたようだし、心配することは無いだろ」


(*゚∀゚)「……」

(*゚∀゚)「モララ先生」

フと、ブーンがツンに、先ほどの出来事を説明しているその様子を
押し黙り見つめていたつーが、小さな声で傍らのモララーの名を呼んだ。

( ・∀・)「うん?」

(*゚∀゚)「さっきデレが言ってたこと、本当なのか?」

( ・∀・)「……マインドBを消してしまうという治療法についてかい?」

デレが眠り、皆の様子が落ち着いたことで
再びつーの課題の手伝いを進めようとしていたモララーが、その手を止める。

512 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2015/02/08(日) 17:16:33 ID:/3Wqmaig0
( ・∀・)「ああ。本当だよ」

つーの瞳に映る、不安の色が濃くなった。

( ・∀・)「今でもね、その治療法を行っている病院は少なからず存在するんだ。
      専門家や研究者達にとっても、この症状はまだまだ解明されていない部分が多い
      未知の病気であるからね」

(*゚∀゚)、「……そーなのか」

( ・∀・)「ショックかもしれないけれど、その方法が間違っていると
      きっぱりと言いきる事は、現時点では出来ないんだよ。残念だけどね」

( ・∀・)「みんなどの手段が発症者にとって一番いい方法なのか
      手探りで探しているところなんだからね」

(*゚∀゚)「……」

( ・∀・)「むしろ、このVIP高校が特殊なのさ。
      専門的な施設以外で、それも、新しい視点と観点から
      発症者の社会適応能力を育もうという試みはとても素晴らしいと思う。
      だからこそ僕はこの学校へ学びに来たんだよ」

513 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2015/02/08(日) 17:17:21 ID:/3Wqmaig0
( ・∀・)「君も、ブーン先生からそう聞かされただろう?ギコ君」

(,,゚Д゚)「……」

話を一旦区切り、つーから視線を外したモララーは
シャキンの隣、廊下側の席で先程から会話には一言も参加せず
険しい目つきをしている男子生徒に話しかけた。

( ・∀・)「君も、この学校のそういう特殊なスタイルに興味を持って
      このクラスに体験入学する気になったんだよね」

(,,゚Д゚)「……まーな」

( ^ω^)「お。ギコ君には、初めて会った時も先生少しその話をしたおね」

(,,゚Д゚)「ああ」


猫塚タカラがマインドBクラスに来て、今日で一週間が経った。


入学初日とその翌日は、ブーンの呼びかけに応えようとはせず
学校内での行動を全てタカラに任せ、ずっと沈黙を貫いていたギコだったが
週末が明けて最初の授業時間中、誰も気がつかない間に
いつの間にかタカラに代わり、自分の席に大人しく座っていたのだった。

それからは、ブーンから名前が呼ばれると素直に人格上に現れ
授業がある二時間だけは、このクラスに”出席”するようになっていた。

514 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2015/02/08(日) 17:18:29 ID:/3Wqmaig0
( ^ω^)「さーさ、みんな!あと30分しか無いお、みんな自分の勉強に戻って。
      ツンは、自分で好きに勉強してても良いし、読書の時間にしてもいいおよ。
      授業が終わるまではこの教室にいてね」

ξ゚听)ξ、「デレが迷惑かけたみたいね。ごめんなさい」

(`・ω・´)「何を言ってるんだ津田君。誰も迷惑なんて思っていないぞ」

( ´_ゝ`)「そうだぞツンちゃん。迷惑なんてかけてないって!
      だから、デレちゃんのこと怒ったりしないでくれよな」

ξ゚听)ξ「うん。ありがとね」

(*゚∀゚)「……」

515 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2015/02/08(日) 17:19:28 ID:/3Wqmaig0
+ + + + + + + + + + + +


( ^ω^)「じゃあねしぃ。気をつけて帰るんだおよ」

(*゚ー゚)「はい先生。また明日」

ぺこりとお辞儀し、教室を出るしぃの背中を見送る。

朝のことがあってか、珍しく落ち込んでいる様子のつーの事が少し気にはなったが
幸い人格交代に支障が出ることは無く、いつも通り、つーは眠りしぃは起きた。

次に意識上に現れた時には、彼女のプラス面である持ち前の能天気さを発揮して
小難しい話など、悲しいことなど忘れてくれていたらいいのだが。


例え他の場所でそうで無かったとしても、少なくともこの場所は、この教室は違うのだから。
しぃも、つーも、他のみんなも。誰も消されなどしない。みんなが居て良い場所なのだから。

.

516 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2015/02/08(日) 17:20:15 ID:/3Wqmaig0
(*゚−゚)「!」

从'ー'从「あ、しぃちゃん。やっほ〜」

( ,,^Д^)「しぃさん!」

しぃに気づき手を振る渡辺に、タカラが振り向く。

授業終了までの時間に、人知れず退席していたらしいギコに代わり
その後の時間は自習に当てて、シャキン達と同じように先に教室から退場していた彼だったが
廊下にていつものようにしぃを待つ渡辺と、軽くお喋りをしていたようだ。


( ,,^Д^)「明日から同じクラスですね。よろしくお願いします!」

今日までマインドBクラスの授業にのみ出席し、その為にVIP高へ通学していた彼だが
明日からはしぃや渡辺と同じ、1年A組のクラスで通常授業も受けることになっている。

マインドBクラスの皆と同じ授業コースを明日に控えたタカラは、心無しかはりきって見えた。

(*゚−゚)「あ……う、うん。そうだね」

从'ー'从「よろしくね〜。教室の場所もう覚えた?」

( ,,^Д^)「はい、バッチリです!」

(*゚−゚)「……」

517 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2015/02/08(日) 17:23:42 ID:/3Wqmaig0
生徒達それぞれが自分の場所へと帰り、2人残された教室。

( ・∀・)「ブーン先生」

( ^ω^)「?」

回収したプリントや教材をまとめ、教室の後片付けに取り掛かろうとしていたブーンの背後
1年A組へと戻るしぃ達の後姿を見送っていたモララーが、不意に声をかける。

( ・∀・)「聞いてもいいですか?」

( ^ω^)「なんだお?」

集めた用紙をトントンと机の面で慣らして揃え、何の気無しに聞き返すブーン。

( ・∀・)「―――誰かに”消されたら”どうなると思いますか?」

( ^ω^)「……お。さっきの話かお?」

( ・∀・)「はい」

518 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2015/02/08(日) 17:24:35 ID:/3Wqmaig0

( ・∀・)「先程デレちゃんに疑問をぶつけられた時、先生は分からないとおっしゃいましたよね」

( ・∀・)「確かに、消された後どうなるのか?
      それは、そのマインドB本人にしか分からないでしょうね……」

( ・∀・)「でも、ブーン先生。先生は、どうなると思います?」

( ^ω^)「……」


( ・∀・)「それってやっぱり、”死ぬ”ことと同じだと思いますか?」


作業していた手を止め、モララーに向き直るブーン。

519 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2015/02/08(日) 17:31:56 ID:/3Wqmaig0
( ^ω^)「……僕は、人為的にマインドBを消滅させる治療法が施された患者を
      今まで何人か見てきたお」

( ^ω^)「いずれ消される予定のマインドBと、セッションを通じ対話をする機会も多かった。
      そして、僕はその治療が完了した後も、彼らと再び接触しようと試みたんだお」

( ^ω^)「でもね」

( ^ω^)「彼らの誰も……、今まで笑い、悲しみ、考え、僕と会話していた筈の
      もう1人の人格は完全に消えていた」

数秒の沈黙。モララーから目を逸らしたブーンの表情には陰りが見えた。

( ^ω^)「僕の感じたままのことを、言葉にして言わせてもらうと」

( ^ω^)「少なくとも、消滅の処置を施された人格については……
      ……生きているとは言わないと思うお」


その答えを聞いて、モララーはにっこりと微笑んだ。


( ・∀・)「ええ。僕もそう思います」

520 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2015/02/08(日) 17:32:49 ID:/3Wqmaig0
その笑みが何を意味しているのか、ブーンには分からなかった。

授業時間中、勉強を手伝いながら生徒達に向ける柔和な笑顔と変わらない筈なのに
今この教室、彼と対峙して改めて自身に向けられたそれは、何故だか酷く空っぽで
だが極めて本物そっくりに精巧に再現された、作り物めいてブーンには見えた。

( ・∀・)「この学校は素晴らしいですね」

( ^ω^)「……」

( ・∀・)「1人の人間が生きていく上で、余計な物は邪魔だから、不要だからと
      もう1人の人間を、まるで腫瘍をメスで切除するかのように無感情に切り捨てる」

( ・∀・)「人1人殺しておいて、それが人助けだなんて笑わせてくれます」

( ・∀・)「そんなことが許されて良い筈がありません。そうでしょ?先生」

( ^ω^)「……そうだおね」

手元の教材をまとめて、モララーは微笑んだ。


( ・∀・)「ありがとうございます。先生の意見、参考にさせて頂きますね」

521 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2015/02/08(日) 17:34:02 ID:/3Wqmaig0

――――2年A組 教室 1時間目終了後の10分休み


ミセ*゚ー゚)リ「ねーねっ!トソっち」

(゚、゚トソン「はいはい、どうしたんですかミセリ」

ぴょんと飛び跳ねるようにして、同級生でいつもつるんでいるトソンの席へとやってくるミセリ。
いつも通りのこの行動。今日も他愛無く中身も無い、暇つぶしの為のお喋りが始まるのだろう。

そう思っているトソンの前で、親友のミセリは
何故かニヤニヤと口元を緩ませ、不可解な笑みを浮かべている。

(゚、゚トソン「?どうしたんですかミセリ気持ち悪いですよ」

ミセ;゚ー゚)リ「ひどいなぁ。
      いやね?トソっちにちょっと聞きたいことがあってね?」

(゚、゚トソン「聞きたいこと?」

ミセ*゚ー゚)リ「あのさ?最近、トソっちさぁ……」

(゚、゚トソン「……なんですか」

含み笑いする彼女の目線がチラチラと、今の時間は空席になっている
『ある席』に向けられているのに感づいてしまうトソン。嫌な予感がする。

522 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2015/02/08(日) 17:35:43 ID:/3Wqmaig0

ミセ*゚ー゚)リ「―――なんとなくいつも、弟者君のこと見てない?」


((゚、゚;トソン「へぁっ!!?」


思いがけぬ威力を持った次の言葉に、不覚にも思いっきり反応してしまった。

ミセ;゚ー゚)リ(へぁって……)

(゚、゚;トソン「なッ!!そ……っ!そそそんなことはありませんっ!!」

ミセ;゚ー゚)リ「え、ほんとに?でもさぁ、最近いつも弟者君の席の方見て」

(゚、゚;トソン「き、気のせいでしょう気のせい。な……っなんでそんな事思うんですミセリ」

523 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2015/02/08(日) 17:36:32 ID:/3Wqmaig0
ミセ;゚ー゚)リ「いや……もしかしたらトソっち」

(゚、゚;トソン「……」ゴク…

ミセ;゚ー゚)リ「弟者君のこと好きなのかな?とか……」

((゚д゚;トソン「ぶぼぉッ!!?」

ミセ;゚ー゚)リノ「きたなっ唾飛んだ!
       って図星かい!やっぱり図星かい!!」

(゚д゚;トソン「ち、ちちちがっ!……い、ます!」

ミセ;゚ー゚)リ「え、えぇー、……ほんとにぃ?」

(゚、゚;トソン「ほ、ほんとです。いいいい加減なこと言うと怒りますよアホミセリ!」

ミセ;゚ー゚)リ「アホミセ!?おい今心の中での呼び名漏れただろ!!」

(゚、゚;トソン「撤回なさいミセアホリ!」

ミセ;゚ー゚)リ「なんだそれ!?」

524 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2015/02/08(日) 17:38:07 ID:/3Wqmaig0
ミセ;゚ー゚)リ「まぁいいけど……。
      ふーん?そっかぁ……。なーんだ私の思い違いかー」

(-、-;トソン「あ、当たり前でしょう。全く、何をいきなりそんな根も葉も無い話……」

ミセ*゚ー゚)リ「ま、そりゃそうだよねー。あんな変人」

(゚、゚#トソン「弟者君は変人じゃありませんっ!」クワッ

ミセ;゚ー゚)リ「こわっ!ちょ、やっぱり好きなんじゃん。図星でしょ!」

(゚、゚;トソン ハッ

(゚、゚;トソン「……嵌めましたね、ミセリ」

ミセ*゚ー゚)リ「嵌めるなんて人聞き悪いなぁ。友達としてはそういうこと気になるって」

勝ち誇ったかのように腕組みをし、得意気に笑みを浮かべる彼女を前に
ついにトソンは観念する。ここまで暴かれてしまっては認めざるを得ない。

525 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2015/02/08(日) 17:39:10 ID:/3Wqmaig0
こういう事にだけは勘が鋭い友人の洞察力を、トソンは少し甘く見すぎていたようだ。

自身の警戒力の甘さに落ち込む彼女を前にして
ふふんと勝利の笑みをたたえていたミセリだったが
しばらくすると何か思い悩むように、より深く腕を組み首を傾ける。

ミセ;゚ー゚)リ「……でもなぁ……。
      ……うーん、弟者君かぁ……。弟者君……ねぇ」

(゚、゚#トソン「なんですか」ムッ

ミセ;゚ー゚)リ「いや……こんな事言いたくないけどさ。
      ……でも正直、ちょっと……」

(゚、゚#トソン「弟者君の何が悪いんです!」

ミセ;゚ー゚)リ「いやいや、いや。怒らないでよトソっち。
      そりゃ、弟者君はかっこいいよ?優しいし。好きになる気持ちも分かるよ、うん」

ミセ;゚ー゚)リ「でも……ね。わかるでしょ。一緒の教室にいて」

ちらり。今は空席になっている例の席に、意味ありげな視線を送る。

526 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2015/02/08(日) 17:40:28 ID:/3Wqmaig0
ミセ;゚ー゚)リ「しょっちゅう“別の人”になっちゃうんだよ?いきなりさ。
       トソっちだって最初はびっくりしてたじゃない。変な人だって」

(゚、゚#トソン「それは……!弟者君がマインドB発症者だって知らなかったからですよ。
       今では、弟者君がああなってしまうのは、病気のせいだってちゃんと分かってます」

(゚、゚#トソン「弟者君本人には何も悪いところなんてありません。そんな風に言うのはやめてください」

ミセ;゚ー゚)リ「いや……まー、そうなんだけどさぁ」

(゚、゚#トソン「なんですか。ミセリに弟者君のなにがわかるって言うんですか」プリプリ

ミセ;゚ー゚)リ「ごめんごめんってトソっちー。わかったもう言わないからさ。機嫌直してよ」

むっとして不機嫌になるトソン。
それを慌てて宥めつつも、やはりミセリの懸念は拭い去れない。


ミセ;゚ー゚)リ(うーん)

ミセ;゚ー゚)リ(……正直、友達として応援すべきかは……迷っちゃうよね〜)

やっぱり友人としては、複雑。

.

527 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2015/02/08(日) 17:42:50 ID:/3Wqmaig0
+ + + + + + + + + + + +

( ´_ゝ`)ノシ「ツンちゃーん」

ξ゚听)ξ「ん?」

6時間目の授業が終り、帰り支度を済ませて教室を出ると
片手に箒を持ったジャージ姿の兄者が、2年A組の教室から駆け寄って来た。


ξ゚听)ξ「どうしたの?兄者」

弟者のジャージを着てはいるが、目の前にいるのは兄者だとすぐに分かる。
同じ見た目でも、弟者の方は自分のことを下の名前で
馴れ馴れしくちゃんづけで呼んだりすることなど無いからだ。

528 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2015/02/08(日) 17:43:52 ID:/3Wqmaig0
( ´_ゝ`)「デレちゃん大丈夫かな?朝、あんなに取り乱してたから」

ξ゚听)ξ「あら、大丈夫よ。元々あの子、気分にムラがあるんだから。
      今日はたまたま悪い日だっただけよ。私も気をつけるし」

ξ゚听)ξ「それに、明日は妹者ちゃんと遊ぶ日だしね。
      いつも通り、元気なデレに戻るわよ」

( ´_ゝ`)「そっか。ならいいけど」

ξ゚ー゚)ξ「……なに、あんた。それ言う為にわざわざ出て来たの?」

ツンの記憶によれば、兄者は特別教室を出る時にいつも通り弟者と人格交代していた筈だ。

面倒臭いことは大嫌いで、掃除の当番などいつも弟者に任せっぱなしの兄者が
わざわざこの時間にジャージ姿で表に出てくることは珍しい。

ツンの顔に、フと柔らな笑みが浮かんだ。

ξ゚ー゚)ξ「ありがと兄者。デレのこと心配してくれて」

(;´_ゝ`)「あ、あれ?もしかしてツンちゃんもどっか具合悪い?大丈夫?保健室行く?」

ξ#゚ー゚)ξ「殴るわよ」

(;´_ゝ`)「冗談だってー」

529 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2015/02/08(日) 17:44:49 ID:/3Wqmaig0
ξ゚听)ξ「ったく……。まぁいいわ。
      じゃ、妹者ちゃんによろしく言っといてよね」

( ´_ゝ`)「おう!じゃ、明日の放課後、公園でなー」

ξ゚听)ξ「はいはい」

ξ;゚听)ξ「ってバカ!大きな声でそういう事言わないでって言ってるでしょ
       公園で遊んでること誰かに知られたらどうすんの!?」ヒソヒソ

(;´_ゝ`)「そんなに見られるの嫌かぁ?
      公園で無邪気に遊ぶ女子高校生、可愛いと思うけどなぁ。俺は全然有り」

ξ#゚听)ξ「それは中身デレだから許されるの。見た目は私なんだからね。忘れないでよ!」

(;´_ゝ`)「乙女心って難しいぜ……兄者よくわかんない」


「………」

530 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2015/02/08(日) 17:46:35 ID:/3Wqmaig0
ξ゚听)ξ「ああ、そうだ。
      あんた、出てきたからにはちゃんと最後まで掃除終わらしてから帰んなさいよ」

(;´_ゝ`)「え、え〜。でもでも、当番当たってんのは弟者の班でー。俺じゃないし……」

ξ゚听)ξ「つまんない言い訳しないの。普段迷惑かけてる分それくらい働きなさいよ」

(;´_ゝ`)「俺別に3班じゃないのになぁー。ちぇー」

ξ゚ー゚)ξ「そーいうの屁理屈って言うのよ。ほら行った行った!」

(;´_ゝ`)「うぁい」

箒を片手に小さく不満を零しながら、ぶらぶらと割り振られた場所に戻る兄者。


ロッカーの影、ひっそりと身を隠しその場を立ち去った、クラスメイトの姿には気がつかなかった。

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