( ^ω^)マインドB!のようです

11話

542 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2015/02/15(日) 18:17:27 ID:Se2rtxYo0

放課後、授業を終えた先生達が各々自分の作業に取り組む職員室。

デレの算数のプリントを前に、丸づけする手が止まっているブーンに気がついて
ロマネスクは暗闇の端からそっと声をかけた。

( ФωФ)「まだあの言葉が気になっているのであるか?」

( ^ω^)「……ああ、うん」

声には出さず、心の内での会話。

お互い長い付き合い、2人とも、承諾無く相手の思考に踏み入ることはしない主義だが
その様子を傍から見るだけでも、思い詰めているブーンの心境がロマネスクには分かった。

543 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2015/02/15(日) 18:18:56 ID:Se2rtxYo0

( ФωФ)「消されたマインドBはどうなるのか……、か。
        随分、切りこんだ質問であるな」

( ^ω^)「……」

ブーンを通じ、ロマネスクも先日のモララーとの会話は聞いていた。


一日の授業が終わった今、教育実習生のモララーは職員室にはいない。

この学校には教育実習生用の控え室等は元々用意されていないので
授業時間以外は職員室と同じ階にある空き教室を控え室としてあてがわれている。

544 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2015/02/15(日) 18:19:44 ID:Se2rtxYo0

今は教育実習生を受け入れる時期では無い。

今回はdat大からの強い要望があった為、特別に彼一人を迎え入れることとなったのだが
普通なら何人もの教育実習生が同時に待機する場となる、この使われてない空き教室は
たった1人で使用するとなると途端、どうしようもなく広く、ただただ持て余す空間となった。

だが他に彼の為に用意できるような場所が無かったのだ。

もちろんモララーは申し訳なさそうな、遠慮がちな笑みを浮かべたものの
そのことについて特に文句は言わなかった。


職員室入口に設置されている鍵棚に鍵が返却されていないのを見るに
おそらく彼はまだ学校に残り、今日の授業内容を記録したレポート作成や
ブーンから指示された教材作りの作業に取り組んでいる筈である。

545 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2015/02/15(日) 18:22:13 ID:Se2rtxYo0




            ”それってやっぱり”死ぬ”ことと同じだと思いますか?”




マインドBを基本人格から完全に取り除くことを目的とした、人格消滅の処置。

カウンセラーの資格を取得する前、研修生として各地の病院や治療施設を巡っていた学生時代
研修を受けた施設のうち半数以上は、まだその治療法が主流として患者に施されていた。

実際にそのセッションに加わり、何人もの患者と接し
マインドBが基本人格から取り除かれる過程を間近で見てきた経験もある。


それはブーンにとって、思い出す度微かに胸の痛みを伴う辛い記憶だった。

.

546 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2015/02/15(日) 18:23:03 ID:Se2rtxYo0
あの頃の自分は、彼らと対話し、悲痛の叫びを、恐怖や悲しみを耳にしたとしても
ただ見ていることしかできない無力な学生だった。


あの時、目の前にいるのに救えなかった彼ら。

確かにそこに存在している筈の、自分達と同じように、考え、笑い、泣く人間である彼らに
決してあのような思いは、自分の存在を消される恐怖や悲しみなど味わわせたくない。

ブーンが胸に抱く理想の根幹には、その強い思いがあった。今でもその思いは変わらない。


だが―――


( ^ω^)「……やっぱり考えちゃうんだお」

( ФωФ)「―――消滅させられた彼らがどうなるか、か?」

教師になり、自分の思う方針を実践できる環境を得た今も尚
救えなかった過去の患者達のことが、フと脳裏を掠めては、ブーンを考えさせるのだった。

547 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2015/02/15(日) 18:24:13 ID:Se2rtxYo0

先日改めて、モララーに問われた疑問。

赤ペンを握る手を置いて、ブーンはロマネスクとの会話に心を傾けた。

( ^ω^)「ロマネスクはどう思う?」

( ФωФ)「ふむ。幸いそればかりはまだ我輩も経験したことが無いのでな。
        悪いがなんとも言えないのである」

( ^ω^)「……本当に?」

( ФωФ)「おかげさまで」

( ФωФ)「……なんであるその疑いの目は」
  _,
( ^ω^)「だーってあの時」

(;ФωФ)ノシ「やめやめ、その話はもういいであろう。
        全く、ブーンは案外根に持つタイプで困るである」
  _,
( ^ω^)「……まぁ、今、こうして居てくれてるからいいけどお」

( ФωФ)「ふむ。まぁそれで勘弁してくれ」

548 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2015/02/15(日) 18:25:04 ID:Se2rtxYo0

( ФωФ)「話を戻そう。あくまで我輩の意見だが
        深い眠りにつくことを永眠と呼ぶならば
        ”死”という表現も間違いでは無いであろう」

( ФωФ)「言葉にすると、なかなか辛いものがあるが。な」

( ^ω^)「……だおね」

( ФωФ)「例えば、強制的に眠らされている状態だとしても
        そこに本人の意識があるか無いかでまた違ってくるであるな。
        ……言ってみれば植物状態のようなものかもしれない」


植物状態。

ロマネスクのその言葉を聞いて、ブーンは不意に
研修生時代、セッションを通し関わったことのある一人のマインドB患者のことを思い出した。

549 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2015/02/15(日) 18:25:49 ID:Se2rtxYo0

( ^ω^)(……)

その子はマインドBが発覚して数ヶ月、専門の治療施設に入院し”消滅”の治療を受けていた。
担当医からの指示を受け、研修生である自分も彼との1対1でのセッションを許されたのだ。

といっても、ごく簡単な会話をほんの数十分、簡素なセラピールームで2,3回しただけだったが。


とても物静かで口数の少ない
感情をあまり表に出さないタイプの少年であったことを覚えている。

彼のマインドB、別人格の方が自分の前に現れることはついに無く
それだけだったならこうして今、思い出すことも無かったかもしれない。

それ程印象の薄い少年だった。

550 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2015/02/15(日) 18:26:33 ID:Se2rtxYo0


ところがその後、自分の知らないところで事態は急変した。


彼は“消滅”の治療が最終段階に入った途端、ある日突然謎の意識喪失を起こし
そのまま意識が回復することはなく、原因不明の昏睡状態に陥ってしまったのだった。

そのようなケースは世界的に見ても非常に稀で
現在に至るまで他に同じ症例を聞いたことは無い。

551 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2015/02/15(日) 18:28:03 ID:Se2rtxYo0
―――だが、“消滅”治療の問題性が注目され
大半のマインドB医療機関が今の治療法に移ったことも
その子の事件があったことが、多少は影響しているのだという話を
カウンセラー仲間から昔聞いたことがある。あくまで噂程度の話だったが。


既にその病院での研修を終え、他所の診療所で手伝いをしていた自分も
その知らせを聞いて、一度だけ彼の様子を見に病院を訪ねたことがあった。


白いベッドに眠り、栄養補給用の点滴やチューブに繋がれた彼の姿を思い浮かべる。


生気を失った青白い顔に、心無しか安らかな表情を浮かべ、その時の彼はまるで……


( ^ω^)(……あの子はまるで、死んでいるようだった)


.

552 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2015/02/15(日) 18:28:53 ID:Se2rtxYo0

「ブーン先生?ブーン先生!」

(;^ω^)「あっ、はい?」

急に名前を呼ばれた為、心の内側から外へ。瞬時に意識を切り替えそちらへ顔を向ける。


いつの間にかすぐ傍に立ち、少し困ったような顔を浮かべこちらを見下ろしていたのは
学年主任のフィレンクト先生だった。焦るブーンに、ふふと笑みを零す。

('_L')「ロマネスク先生と今後の学習計画についてご相談ですか?お電話ですよ」

どうやらロマネスクとの会話中、僅かに唇を動かしているのを見られたようだ。
そのまま考え事をしていたせいで、電話が鳴っていた事にも気がつかなかった。

(;^ω^)ゞ「おー、すみませんお。誰からですかお?」

(;ФωФ)ゞ「すまないフィレンクト先生。以後気を付けるである」

ロマネスクの謝罪はフィレンクト先生には聞こえない。

553 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2015/02/15(日) 18:30:07 ID:Se2rtxYo0
('_L')「流石さんからですよ。はい」

(;ФωФ)「あー母者さんからか」

(;^ω^)「ありがとうございます」

フィレンクトから受話器を受け取り、保留ボタンを止めて耳にあてる。

( ^ω^)】「もしもし、お電話代わりました。内藤ですお」

『ブーン先生かい、忙しいのにすまないねぇ。いつもうちの子達がお世話になって』

( ^ω^)】「いえいえ」


堅苦しい挨拶はすっとばし、やたら男前な口調で電話に出たのは
流石弟者の、そして兄者の母親である、流石家最強主婦・母者だ。

個性溢れる流石家の面々をその腕っぷし一つでまとめあげる
豪快な性格の剛腕肝っ玉母ちゃんである。

554 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2015/02/15(日) 18:31:47 ID:Se2rtxYo0
『先生には本当に感謝してるよ。クラスの子達にもね。
特に兄者の馬鹿なんか普段から迷惑かけっぱなしだろ?悪いね」

(;^ω^)】「いえいえ……」

そこは若干否定し辛い。

『それで、次の会談のことなんだけどね』

( ^ω^)】「はいお。来週の予定でしたおね」


―――母者の言う会談とは、ブーンと生徒の家族との間で定期的に行われている話し合い
いわば保護者を交えたチーム・ミーティングのことだ。

家族とのこうしたこまめな連携も、本人の手助けに繋がる大事な取り組みの一つであり
学期内に大体3,4回は各生徒達の親御に学校まで出向いてもらって
互いに色々な報告をしあったり、相談事をもちかける場としてこうした機会を設けている。


『一応、内容だけ事前に確認しときたいと思ってね』

( ^ω^)】「わかりましたお。では僕からお話させて頂きますおね」

555 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2015/02/15(日) 18:32:54 ID:Se2rtxYo0
( ^ω^)】「前にもお話しました通り、僕は
      兄者君にとっても妹者ちゃんにとっても、もう良い時期が来たと思って。
      “ルール”の解除を考えていますお。次の会談では、その話が中心になると思います」

『先生がそう言ってくれて嬉しいよ。あたしからもそれとなく伝えて良いんだね?』

( ^ω^)「お願いしますお。来週頭には僕からも言いますし。一応心構えのつもりで」

ブーンとしては、本当はもっと早くにその決断を出したかったのだが。

一番最初に弟者を診断しそのルールを設けた担当ドクターは、かなりの慎重派だった為
彼と話し合い同意をもらうのに、少し時間がかかってしまったのだ。


『うんうん。それを聞きたかっただけなんだよ。
ありがとうね、先生。兄者も妹者も、きっと喜ぶよ』

( ^ω^)「ええ、僕も嬉しいですお」

『ま、あの馬鹿が浮かれすぎてハメ外さないように、しっかり見張ってないとね』


そう、なんだかんだ言いつつも、電話の向こうの声は嬉しそうだ。

556 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2015/02/15(日) 18:34:18 ID:Se2rtxYo0

ブーンは思う。

タカラの母親のように、悲しいことに、自分の子に芽生えたもう1人の人格の存在を
どうしても認めようとせず、息子の身に起きた不幸を悲観するだけの例がある一方で
母者のように、マインドBである兄者のことをも真に自分の子として受け入れ
実の息子同様、心からその幸せを願う親もいる。


母者の持つ、包容力の深さと真っ直ぐな優しさからくる愛情が
マインドBが認められる社会を作りたいという理想を持つブーンには嬉しかった。



( ^ω^)「―――それでは失礼しますお。母者さん。また来週に」

『ああ、よろしく頼むよ先生。それじゃ』

それから数分、来週の会談で行う予定のいくつかの話を確認し合い
流石母者との電話は終了した。電話中、片手で取っていたメモを清書する。

557 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2015/02/15(日) 18:35:49 ID:Se2rtxYo0


(`・ω・´)「失礼します。ブーン先生、いらっしゃいますか?」

電話を終えたブーンが、やりかけになったまま止まっていた採点作業に戻ろうとした時だ。
職員室の入り口にて、室内によく通る凛々しい声が発せられた。

ジャージ姿の男子学生は、ブーンが机に座っているのを確認すると ぺこり、一礼する。

( ^ω^)「お、シャキン?」

戸口に立つ彼を見て、中へ入って来るよう促した。何か用事だろうか?


( ^ω^)「どうかしたかお?シャキン」

(`・ω・´)「すいません先生。少し、相談があるんです。ショボンのことで」

( ^ω^)「お?」

558 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2015/02/15(日) 18:36:53 ID:Se2rtxYo0


実を言うとこのところ、八又ショボンとの関係はあまり上手くはいっていなかった。


以前ならシャキンが協力し、みんなが帰った教室で面談の場を設けさえすれば
ほんの数分、短い時間だけでも、例え一言も言葉を発することが無いにせよ
かろうじてブーンの呼びかけにだけは応じ、意識の奥から沈んだ顔を覗かせてくれていたのだが。


それが、ここ数日の間に2回行った面談で
どちらも彼はシャキンと交代するのを拒否し、一切出てこなくなってしまったのだった。


彼との信頼関係を、綱を渡る思いでやっと築きあげ 3年生に進学してから
こんなことは初めてのことで、ブーンは困惑した。

559 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2015/02/15(日) 18:37:38 ID:Se2rtxYo0
教室に人が増えたことが原因かとも考えたが、それでもショボンが元々在席する通常クラスでは
40人弱の生徒達が机を並べ学習する、大人数のクラス編成なのだ。

今更周囲の生徒や先生が1人2人増えたくらいで、それが彼の恐怖心をことさら掻き立て
意識の奥底にますます閉じ籠もる要因を作ってしまったとは考えにくい。

そもそも通常クラスでの活動に加え、マインドBクラスも然りその他の場所であっても
環境の変化その他諸々の総てに対応するのは
学校での活動をほぼ任されっぱなしのシャキンの方だというのに。


シャキンから話を聞かなければ、ショボンは
タカラやギコ、モララーの存在さえ知らないかもしれなかった。

その事を考えると、急な体験入学生や教育実習生の受け入れが問題であるとは思えない。


では何故?呼びかけに応じなくなってしまったのか?


何も話そうとしないショボンに対し、シャキンもブーンも困っていたところだったのだ。

560 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2015/02/15(日) 18:38:25 ID:Se2rtxYo0
( ^ω^)「どうしたんだお?」

(`・ω・´)「実は……。
      最近、ショボンの奴、家でもあまり僕と話そうとしなくて」

いつでも生気に溢れはきはきと物を喋るシャキンが
言い辛そうに小さく口を動かし、ブーンから目を背けた。

こんな様子の彼を見るのは珍しい。

(`・ω・´)「その」

(`・ω・´)「あまり上手くいっていないんです」

( ^ω^)「……そうなのかお?」

初めて耳にする話だ。
普段のシャキンからは、そんな素振りは全く見られなかった。


……いや。本来なら、彼がこうして己の口でそれを認める前に
教師である自分が気づくべき問題だったのかもしれない。

561 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2015/02/15(日) 18:39:25 ID:Se2rtxYo0
家では空いた時間、学校であった出来事を話し勉強を教え、内気な彼を励まして
誰より基本人格のショボンのことを一番に気にかけているシャキンだ。

そんな、ショボンのことを弟のように想う彼でこそ
肉親を置いて一番近しい存在である筈の自分でさえ、周りの人間と同じように
小さな拒絶を示されているという事実を、認めることが辛かったのかもしれない。

加えて、ショボンの抱える問題に対し常日頃真剣に取り組んでいるブーンやロマネスクに
これ以上の心配や迷惑をかけることは忍びなく、なかなか言い出すことが出来なかったのだろう。


シャキンはそういう性格だ。
簡単に弱音は吐かず、自分で解決しようとする。

だからこそ彼は大丈夫だと、周囲は安易にそう思ってしまう。

562 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2015/02/15(日) 18:40:29 ID:Se2rtxYo0

彼の精神年齢は既に大人だ。

しっかり者で、リーダーシップもあり、クラスのまとめ役でもある。


だけど、自分は先生で、シャキンは僕の生徒なのだ。もっと頼ってくれてもいいのだと
小さく項垂れるシャキンを前に、ブーンは教師としての自分の力不足を痛切に感じた。


( ^ω^)「わかったお、シャキン。
      家でのショボンの様子、もっと聞かせてほしいお」

(`・ω・´)「はい」

彼の力になる為、ブーンは机の上を手早く整理して腰をあげた。


2人で静かに話をするには何処がいいか少し考えて
相談室の部屋を貸してもらえるよう、担当の先生に許可を貰いに行く。

563 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2015/02/15(日) 18:41:42 ID:Se2rtxYo0
+ + + + + + + + + + + +


(*゚ー゚)「ナベちゃん」

HRの時間が終わって、一日分の授業が終了した1年A組の教室。
眠そうに目をこすり、帰り支度をしている渡辺に、しぃが声をかけた。

从'ー'从「あ、しぃちゃん〜。帰ろ〜」

(*゚ー゚)「……ごめんね、今日ちょっと、用事があって。一緒に帰れないの」

从'ー'从「そうなの?どんな用事?」

(*゚ー゚)、「う、うん。……ちょっとした用事だよ」

从'ー'从「そうなんだ〜」

(*゚ー゚)「うん。だから……悪いけど先に帰って」

从'ー'从「待っててもい〜?」

(;゚ー゚)「え?」

564 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2015/02/15(日) 18:43:01 ID:Se2rtxYo0
予想外の渡辺の提案に、たじろぐしぃ。

(;゚ー゚)「で、でも、悪いよ。そんな……。
    いつ終わるか分からないの。すぐかもしれないけど……」

从'ー'从「じゃあ、5時まで待ってる」

(;゚ー゚)「え、え?いいの?ナベちゃん」

从^ー^从「帰り、一緒に寄りたいお店あるんだ〜。
       5時まで待ってしぃちゃん来なかったら、諦めるから」

(;゚ー゚)「ナベちゃん……」

从^ー^从「ここで寝てるから、終わったら起こしてね」

从- -从「じゃあ、おやすみぃ……」

565 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2015/02/15(日) 18:44:00 ID:Se2rtxYo0
最後にそれだけ呟くと、本当に渡辺は机に突っ伏して寝てしまった。
しばらく横で突っ立っていると、小さいが、気持ちよさそうな寝息まで聞こえてくる。

どうやら本当に寝てしまったようだ。

周囲はまだ、掃除当番に勤しむ班や、帰りに寄るゲーセンの話で盛り上がる男子生徒達等
一日の勉強から解放された生徒達の賑わいで騒がしい。

自分には絶対に無理だ。
しぃは、安らかに寝息を立てる渡辺を見てそう思った。

从- -从 スー スー

(;゚ー゚)(ナベちゃんたら、本当に寝るのが好きなんだなぁ……)

566 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2015/02/15(日) 18:45:19 ID:Se2rtxYo0
渡辺はよく眠る。

休み時間はもちろん、授業時間であってもしょっちゅうだ。
よほど夜遅くまで起きているのかと思ったが、そういうわけでも無いらしい。

単純に、眠るのが好きなのだそうだ。
一度その理由を聞いた時、「夢で遊ぶのが楽しいから」と
にこにこしながら話していたのを思い出す。

なんとも、のんびりした性格の渡辺らしい。


(*゚ー゚)「……。じゃあ、行ってくるね。ナベちゃん」

先日から同じクラスで学ぶことになったタカラの姿は、既に教室には無かった。
既に何人かの男子生徒と親しくなっている様子だったので、彼らと一緒に帰ったのだろう。



すぅすぅと眠る渡辺の背中に小さく声をかけ、しぃは教室を後にした。

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