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221 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2014/12/02(火) 05:32:35 ID:3gBm1G8g0
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隣の男を奇妙に思う。
これほど役にたつのに、心が冷えるような戸惑いを覚えるのはなぜだろうか。
立場が違っていて、命令されたのがフィレンクトでもきっと同じように自死するだろう。
その気持ち悪さかもしれない。
ふと気がついた。
フィレンクトには未来がない。
これからを自分で決められないし望まないのだ。
ジョルジュが蔑んでも哀れみを抱いても、どんな風に扱おうが命令さえもらえれば満足なのに違いない。
やはり機械的思考に矯正は効かない。
すべてを終えたら彼を処分しなければいけない。
警備員たちの死に方はジョルジュに決意をさせた。規則の穴を抜けるようなやり方で彼らを殺した。
いまは味方でも、敵に回ってしまえばどうなるかーー
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222 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2014/12/02(火) 05:33:20 ID:3gBm1G8g0
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フィレンクトがドアのセキュリティロックにいつのまにか手に入れたキーを打ち込む。
ジョルジュが切望し何もかも犠牲にしてまで求めたドアはあっけなく開かれた。
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223 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2014/12/02(火) 05:34:02 ID:3gBm1G8g0
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ミセ*゚ー゚)リ
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224 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2014/12/02(火) 05:34:49 ID:3gBm1G8g0
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( ゚∀゚)「嘘だろ……」
息が止まるかと思った。
部屋の住人は緩慢に振り返る。
武器は持っていない。
ただワンピースだけのシンプルな服だけで椅子に座っていた。
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( ゚∀゚)「なんで……死んだはずだ……」
女は立ち上がり、しずしずと歩み寄る。
それから事務的な口調で対応した。
ミセ*゚ー゚)リ「お客様がいらっしゃるという連絡は受けておりません。お名前と所属番号を口頭ください。身分を証明できない場合は退去してもらいます」
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225 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2014/12/02(火) 05:35:34 ID:3gBm1G8g0
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( ゚∀゚)「ミセリ……」
手を伸ばす、ふるえる指先で彼女の頬に触れた。無表情、しかしその肌は血が通っていて柔らかい。
人造だとしても、かまわなかった。
ミセ*゚ー゚)リ「身分の証明を求めます。所属が証明されない場合は強制退去の措置を取らせていただきます」
「!っやめろ!!
ジョルジュが振り向き、銃を奪おうと走る。だが反応は遅かった。フィレンクトは当然の行動をしただけだ。
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226 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2014/12/02(火) 05:36:16 ID:3gBm1G8g0
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目の前にいるのはDNAレベルで形成された、ただの人形で、主人の留守を預かっている。
存在を通報されないための、最もよい方法。
ぱん
乾いた小さな破裂音。
真っ白な服の胸元が血に染まる。
衝撃で女が崩れる。
ジョルジュのためを思って心臓を狙った。
結果一撃でといえず、続けて撃つことになった。
ぱん ぱん
血だまり、完全なる死体ができあがる。
フィレンクトは部屋の隅、カメラや侵入経路に目を向けた。
入り口は一つだけでないはず。この部屋は当然記録されているから、爆薬を仕掛けたあとすぐに撤退しなければ間に合わない。
時間を計算してジョルジュに目を向ける。
彼が動いてくれれば何も問題はない。
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227 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2014/12/02(火) 05:37:15 ID:3gBm1G8g0
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( ゚∀゚)「…………」
呆然としている。フィレンクトは待機した。
これから激高されるとしても、彼は優秀だからすぐに自分を取り戻すはずだ。
冷静さを失わせないために余計なことを口にしない方がいい。
フィレンクトは観察する。
ジョルジュは同じ事を経験した。
妹の死。妹に似た女の死。
一般的な感覚を持ったものなら深い感情にこれから襲われる。
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( ゚∀゚)「……」
彼の表情は珍しく色がない。
そのまま考え込んだように動かない。
ロスする時間が気になる。
感情的になるのなら今でないと時間の遅れは取り戻せない。
そう思っているとジョルジュが携帯しているハンドガンのシリンダーを引いた。
ゆっくりと持ち上がる腕。
まっすぐな視線はフィレンクトを突き刺した。
フィレンクトは動かない。
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228 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2014/12/02(火) 05:38:02 ID:3gBm1G8g0
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ジョルジュの行動であればそれでいい。
銃口は狙いを定める。
ジョルジュの肩よりも少しうえにあがり、フィレンクトの額に照準をさだめた。
(‘_L’)「設置はひとりでも可能ですが、時間を取られているのでお早めに」
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( ゚∀゚)「……ああ」
爆薬のセットを一人で行うのは大変だろう。だがジョルジュが決めたのであればそれに従うだけだ。
フィレンクトは瞬間にこれまでの流れに不備がないかを思い返し、彼への忠告がないかを探した。
特に思いつくものはなく、しいてあげるならこの先のジョルジュの逃亡が気にかかるくらいだった。
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229 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2014/12/02(火) 05:38:56 ID:3gBm1G8g0
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会話、記憶を思い返す。
そして目を閉じた。
視線を合わせたままではジョルジュが撃ちにくいだろうと考慮する。
息を飲む気配がした。
フィレンクトは想像できる。
彼の指先が意志をもって引き金を引く瞬間をーー
じゅうっと焼ける匂い。
違和感を感じて目をあけるとともに、ジョルジュが倒れ込むのが視界に入った。
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230 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2014/12/02(火) 05:39:38 ID:3gBm1G8g0
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231 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2014/12/02(火) 05:40:26 ID:3gBm1G8g0
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その瞬間フィレンクトの呼吸は一度止まった。
ジョルジュが倒れるシーンが連続したコマ送りのように頭のなかで流れる。
予想していなかった危険性に対処できず、すべての機能が停止する。
奇妙なことにフィレンクトは動けなかった。
正しい行動は怪我の重傷さを見、すぐさま応急処置をとらなければいけないのに。
凍り付いたように足が動かない。
数秒間、フィレンクトは自己を消失した。
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232 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2014/12/02(火) 05:41:11 ID:3gBm1G8g0
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ジョルジュの胸を貫いたレーザーは高温で臓器を焼き切っている。
彼を運んで、処置室に移動するに必要な時間はこのビルを降りるまで間に合わない。
間に合ったとしても病院IDを偽造する合間も、移植に必要な臓器をそろえる時間もない。
そんなことを頭のすみで理解しているから、身体は硬直し動くことができない。
ジョルジュがいなければフィレンクトの行動理由がなくなってしまう。
「驚いたよ。どうして一般人なんかにつられていったのか不思議でならなかったが、なるほどよく似ている。シェーカーに入ったのによく覚えているものだ。
やはりお前は優秀だった。どこか欠陥があったのかずいぶん心配した」
厚い絨毯が敷き詰められた床、靴音をさせずに近づいてくる気配。
フィレンクトは動けない。主人と確定した男が倒れている。
出血量は少ないが、内蔵を焼かれて死に至るのは間違いない。
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233 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2014/12/02(火) 05:42:03 ID:3gBm1G8g0
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「兄弟かと思ったがそうではなかった。
本当によく似ている。お前が惹かれたのも頷ける。そっくりじゃないか。ーーアヒャに」
思考は冷静にその言葉を分析する。
現在ジョルジュに役立つ情報であるかないか。
彼が動けない今、彼の意をくむことができるか。
逃避した考えだがそれなら手足が動けそうに思えた。
だが男が語るものはどうやらフィレンクトのことらしい。
なぜジョルジュが撃たれたのか。
視線をさまよわせる。
部屋に備わった侵入者撃退用の砲。
未だ認可されていないはずだがここで法律の有無は意味がない。
なぜジョルジュが撃たれたのか。
それを男が語ってくれそうだった。
視線を向ける。いまフィレンクトがすべきことはジョルジュの命乞い。
情報と引き替えに取引しようと持ちかけるべきだ。
だが男の顔をみた瞬間またフィレンクトは機能を停止させた。
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234 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2014/12/02(火) 05:42:56 ID:3gBm1G8g0
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彼の顔は見覚えがある。
造形とは違う感覚、同じ顔でも違う中身。
フィレンクトは最初の研修にそれを教え込まれた。
( ^ν^)「お前は一度主人を撃った。
それで不安定になった。だが廃棄しないで正解だったよ。ここまで来れたのはお前の考えか?一般人に侵入計画は立てられない。
内部をよく知っている者がいないと。同じシリーズを削除した手間もよかった。
やはり一度、価値観を一遍させるべきだ。頭が柔らかくなる」
起動と再生。
どれを選ぶべきか無意識にフィレンクトは迷う。最初の男だった。
はじめの主人。
フィレンクトの思考のすべてが始まった人間。
人相照合、これまでの主人を思い浮かべる。エラー。エラー。
機械であればバグと認識されるだろう記憶のもや。フィレンクトは思いだそうとする。
この場ですべき最良の方法。
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235 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2014/12/02(火) 05:43:47 ID:3gBm1G8g0
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冷や汗をだす気分だった。
実際流れていないが、男の存在は動こうとするフィレンクトに大きな負荷をかける。
ジョルジュの消失、数分の死。
新たな主人の再認識。
この場における最適な行動はなにか。
フィレンクトは考える。
考えた結果、男の足下にひざまずいた。
それから新たな命令を待とうとした。
( ^ν^)「……だめだ。少しは自分で考えろ。ここまで来たときの気骨を見せろ。お前は知らなければならない」
フィレンクトは動かない。
語りは耳に入っているのに、思考として結びつかない。
そう教育を受けている。
その型を破るにはまだ自己が定まっていない。
( ^ν^)「……質問しろ。お前が知りたいことに答えてやる」
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236 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2014/12/02(火) 05:44:31 ID:3gBm1G8g0
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促されて顔をあげる。
フィレンクトが求めない理由を、自ら教えようとする。
主人の意図がわからない。
いままで知らないままでいられたのに、突然世界の仕組みを突きつけられた気分だった。
フィレンクトは思考する。
いま男がフィレンクトに求める態度。
知らなければならない。
主人はそれを教えたがっている。
だから最初のはじまりから投げかけた。
なぜ、フィレンクトがいまここに居ることになったのか。
男は満足そうに笑んで、語り始める。
フィレンクトの選択は正解だったようだ。
興味がないなりに、拝聴せねばいけない。
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237 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2014/12/02(火) 05:45:18 ID:3gBm1G8g0
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( ^ν^)「リスクマネジメント、最初はこれが原因だった。シリーズの評判は実にいい。機械では判断できないこともスムーズに行えるし、人として忠実で裏切る要素がない。
権力を持ち始めた人間が最初に欲するのは何より裏切りのない身内だ。保身を脅かすことのないような。
人間を所有するのはありふれた支配欲を満たしてくれるが、慣れるとどうしても愛玩物の癖に人権を主張する者が出始めてね。
愛人のワガママは可愛いものだがそれが諸刃になって跳ね返ることがある。だから傭兵としても使える人形を作成したんだが、それにも問題が出てきた。
重要な局面で判断を下せるものがいないのだ。ワンマン社長に育てられた社員がろくな人物に育たないように、意志がないというのは気概もない。
いつのまにか上位に立つ者たちの争いに巻き込まれ、主人を代えれば簡単に言うことを聞く。
せっかく人として育てられた利点がない。
これでは人工知能を搭載したアンドロイドとなにも変わらないではないか。
演技ができないのも、嘘がつけないのも致命的だ。誰もが使えるのであれば、お前たちが居ても意味がない。
実践の戦争では役に立つが生きようとする意志がないから簡単に全滅する。
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238 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2014/12/02(火) 05:46:00 ID:3gBm1G8g0
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損害を出しても生き残ったほうが勝つ場合のこともあるのだ。
そこでひとつの計画をたてた。
万人にひとりの可能性だが、教育された倫理を打ち破り自己のアイデンティティを持った兵士を育成することはできないだろうか。
つまり局面に強く、自己を犠牲にすることなくなおかつ先を見据えた判断力を持てるような、そう我々はスーパーマンを作ろうとしていたのだよ。
フィクションのような完全な者をね」
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239 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2014/12/02(火) 05:46:42 ID:3gBm1G8g0
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(‘_L’)
フィレンクトは動かない。
男はフィレンクトの反応を伺っている。
けれど彼を喜ばせる態度を取ることができない。命令がないからだ。
彼の発言通りに振る舞うべきだろうが、それのイメージが作れなかった。
ふさわしいと思える者が一人浮かんだが、その人物はいま床に倒れている。
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240 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2014/12/02(火) 05:47:27 ID:3gBm1G8g0
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( ^ν^)「……お前は予想をはるかに越えてすばらしい行動をした。多少奔放なところがあってもよかったが……それが性格なら仕方ない。規律を破るところもよかった。
この男のためにルールを犯したのは驚かされた。それにしても偶然というのはすごいな。フォックスが居なくなったのは予定外だったが、そこにアヒャに似た男が現れる確率もすごい。必然と呼んでもいいかもしれないな」
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241 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2014/12/02(火) 05:48:15 ID:3gBm1G8g0
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急に脳裏になにかが再生した。
記憶の断片。
引きちぎられたわずかな記憶でしかなかった。
アヒャ。ジョルジュとかぶさる。
誰か。同じ主人だと誤認識する。
ーーーーだからフィレンクトは彼に従おうとした。
最初の主人殺し。契約の切れた男。
再登録したさいにフィレンクトを取り戻そうとして、彼に撃たれた。
リバース。戻される印象。
これは何か。
記憶の再生はうまくいかない。無意識だが脳は思い出すことを拒んでいる。
初期設定。なにもかもを破棄。
すべて忘れること。命令されていないが、それが自己を守る防御となる。
フィレンクトは呆けたように聞いていた。それで次は、何をすべきか。
男の命令を待っている。待っている。
何か命令がほしい。
考えることがないように。
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242 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2014/12/02(火) 05:49:05 ID:3gBm1G8g0
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( ^ν^)「ほかに聞きたいことはないのか?」
声に不機嫌さがにじむ。それほど興味はなかったが、室内に居た女のことを訪ねる。
ジョルジュの妹、だが美人すぎるということもなく秀でたところがあるわけでもない。
( ^ν^)「ああ、身内の失態の原因だ。ただ彼はナンバーが二桁の者でな、とりわけ劣るわけではなかった。
そんな彼がミスを誘発する女ならきっと遺伝子に我々が好む因子があるのだろうと思ったのだ。まあ私にはあまり魅力的ではなかったが」
(‘_L’)
謎は解けた。だがフィレンクトは戸惑っている。
男に視線をあわせたが彼は観察するばかりでフィレンクトの望む命令をだしてくれない。
焦りに近い衝動に駆られていた。
それがなぜかわからない。
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243 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2014/12/02(火) 05:49:58 ID:3gBm1G8g0
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わからないなりに、フィレンクトは初めて不安におびえる。
このまま生殺しのように待機させられるのは、不快だ。
( ^ν^)「……最初からすべてを望むのは早急すぎたな。まあいい。状況とこれまでの経験からどのような結果が出せるのかパターンを記録できた。
主人を殺したことが記憶に傷をつけた。
それが原因での成長と思えば欠陥も紙一重。多大なストレスは生き物を疲弊させるが同時に成長もさせる。
……いい機会だ。フィレンクト、あれを撃ちなさい」
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244 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2014/12/02(火) 05:50:43 ID:3gBm1G8g0
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身体のどこかに亀裂が入ったようだった。
それで思い知る。
フィレンクトの予測していた最大の警戒。
こうなることをどこかで感じていたのかもしれない。
なぜなら男はフィレンクトのアキレスを切ることで、新たな内面をさぐろうとしている。
いまここで記憶の奔流と不具合が発生すればいい。
だがフィレンクトの脳に求めた命令が浸透する。
一方通行の指示。これまで従ってきたもの。
フィレンクトは顔をあげた。
それから立ち上がり、携帯していた銃を持ち直す。
男は面倒くさそうに見ている。一応の確認といった定だった。
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245 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2014/12/02(火) 05:51:26 ID:3gBm1G8g0
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フィレンクトは逆らえない。
命令は受信するものだ。
それこそが存在する意義。
だが登録も記憶の消去もされていないので、やはり拒否反応がでる。
さっきまで主人と認識していた。
急に認識を覆すのは、強い負荷がかかる。
( ^ν^)「何かを乗り越えるとき、一皮むけるようになる。おまえは新らしい概念の戦士になるだろう。撃ちなさい」
主人が二度めを口にするのはほとんどない。
フィレンクトは自分の伸ばした腕がふるえているのに気がつき、その感覚を知った。
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246 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2014/12/02(火) 05:52:09 ID:3gBm1G8g0
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(‘_L’)
自己の本能を切り離したフィレンクトの経験する、最初の恐怖だった。
構える。
銃口を倒れているジョルジュに向けて狙いを定めた。
引き金をひこうと指に力を入れた瞬間、彼の口がうごいて何かをかたどるのを見た。
銃声
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247 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2014/12/02(火) 05:52:51 ID:3gBm1G8g0
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フィレンクトは
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