(‘_L’)は命令が欲しいようです

Part8

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258 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2015/02/24(火) 04:02:00 ID:PpHh.7g.0







いまの僕には 理解できない


『アンインストール』



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259 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2015/02/24(火) 04:02:50 ID:PpHh.7g.0






一発目は殺害目的。


二発目は確認。

三発目はほとんどない。


打ち損ねることが滅多にあり得ないから。


標的はマス目のように計算できる。

空気の抵抗、遮蔽物の有無。


垂直から放射物状にえがかれた弾のゆくえ。

一度目は殺意。


二度目は予備。



三度目はーーー


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260 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2015/02/24(火) 04:03:49 ID:PpHh.7g.0




「銃の話をしよう。クラッシクなマスケットからスコープの付いたライフルまで。共通しているのは薬効を押し出して目標物に当てる行為。狭い筒管のなかで爆発物を一カ所に集中して飛ばす。
圧力によって鉄が逃げだし、すさまじい早さで威力に変換される。筒が長ければ長いほど安定するスナイパーライフル。ばらまくようにして発射するもっとも殺傷能力が高いショットガン。

サイレンサーもいい。威力が小さくなるのが玉のキズだけど、最新式のものは他の銃と弾丸が変わらないよう改良されたのもある。オートマッチクが主流とはいえ僕は回転式がやっぱり一番すきだな。シリンダーをスライドさせて薬莢を抜くことがなんだか雰囲気がある。

それに万が一でも弾詰まりがないしね。オートマの怖いところは滅多になくなったとはいえ、いざという時にジャムる危険性。自動で排出や装填してくれるのはいいけど、一対一とか重要な局面の場合数万の確率で整備不良があったらジ・エンドってイメージ。
もちろんイメージだけだよ。なんたって自分で使うことはほとんどないもの」

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261 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2015/02/24(火) 04:04:34 ID:PpHh.7g.0


「娯楽映像での銃はバンバン撃ちまくってるけど実際はそんなことないんだよね。どう見てもその壁のなかで撃ったら跳弾するでしょって場面もあるし。

威嚇にしても自分の位置を教えるような撃ち方はしないのに。やっぱ映像だと派手さを求められるからね。実際身近に銃がない人たちが作るとそうなるみたい。当然だよね。何百発って撃ったらもうだいたいの人たち死んでるし。そうなったら盛り上がらないか。物語の起承転結がうまくいかないからフィクションとして仕方ないかな」


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262 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2015/02/24(火) 04:05:17 ID:PpHh.7g.0


「本当なら規正ラッシュで銃器も対象なんだろうけど銃に変わる経済の流通が新しく見つからないかぎり規正されることはまずないだろうね。でも防衛として持っててもうまく使えるとは限らない。

何も持たずに撃たれるよりはって意識かな。取り扱いを知ってれば防衛にはなるかもしれない。でも不思議だけどね、銃って握ったら撃ちたくなる。水鉄砲を大人に持たせたって同じ結果になると思う。

だから撃たないひとは銃を嫌悪してるかトラウマがある人くらいかな。銃撃戦に巻き込まれないかぎりそうはならないから、やっぱり流通を止めるのは難しいだろうね」


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263 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2015/02/24(火) 04:05:59 ID:PpHh.7g.0


「先進国で開発される兵器のひとつに、倫理感を判別する機能のAIがついた銃ってのがあるんだって。

つまり身を守るために使われるけど、殺すためにはNGって奴。銃がどうやって見分けるのか知らないけど本当ならすごいよね。それさえ世界に蔓延すれば、銃による犯罪はとことん無くなるに決まってる」


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264 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2015/02/24(火) 04:06:40 ID:PpHh.7g.0




「きみも だよ。使われるんじゃない。選ばなければいけない。自分で考えて、使う人間を、選別できるように」

「そのときまで、頑張って自分を作らなきゃ。個性を持てというんじゃないよ。ただ選択する自由を、自分から取りにいかなきゃいけない」

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265 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2015/02/24(火) 04:07:23 ID:PpHh.7g.0
 




( ゚∀゚)「フィレンクト、きみはーー」












ぱん
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266 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2015/02/24(火) 04:08:14 ID:PpHh.7g.0


















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267 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2015/02/24(火) 04:09:09 ID:PpHh.7g.0



数秒に満たないわずかな時間、様々な記憶と予感が駆けめぐる。


考える。考える。


現在おこなえる適正な行動。


許可される行為。
フィレンクトは横たわる死体を見る。

その指先、わずかに呼吸しようとした口。

生存を確認した瞬間に、一つの指針が欲求に並んだ。

それはフィレンクトの命令主体に位置する。
忠実な命令のひとつで、何よりも守らねばいけないことだ。

理解するとなぜそれに思い至らなかったのか、不思議なほどだった。


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268 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2015/02/24(火) 04:10:19 ID:PpHh.7g.0




照準を合わせ、倒れた身体に撃ち込む。


二発。


衝撃で肉体はわずかに跳ねて、そのまま動かない。
命令遂行行動をとって、振り返る。

男の元に、従順を見せるために。



(‘_L’)

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269 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2015/02/24(火) 04:11:09 ID:PpHh.7g.0



人形として教育されたシリーズの廃棄は基本的に脳の消去を行って、うまくいかない場合のみ肉体ごと処分する。

そのさい彼らは大人しく火葬場に向かう。

生理的反応を抑えるために酸欠で脳の機能を停止させ、死を受け入れる。

本来なら銃を使って死ぬことは弾の消費と掃除で非常に手間だ。
それなのに自死するように言いつけられることは少なくない。

ブレイン・シェイカーで脳の情報を探られたり、廃棄されたつもりがどこかに移動されて使用されたりといったことを防ぐ意味と、確実に処分したという実感のためだ。

ハードディスクを再生不可のため壊すのに似ている。

支配と権力欲を満たすために、主人たちはそれを命令する。

だからフィレンクトに命じたそれも同じような意味合いがあった。

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270 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2015/02/24(火) 04:11:51 ID:PpHh.7g.0



( ^ν^)「……嫌がると思ったが素直だな」

男はフィレンクトの微表情に違和感がないかを観察し、そう言った。


フィレンクトは常のまま、狙撃して再び男の真横に立つ 。そして待機姿勢をとる。


( ^ν^)「これからどこか行きたい場所はあるか?経緯を発表すればお前を欲しがる者は多いだろう。皆融通が効かない人形ばかりでうんざりしている。

この国で少し暴れすぎたし、現地民との接触もありお前の顔は有名になりすぎたな。
顔を変えてもいいが、中身を交換したと思われるのもしゃくだ。」


男はもう死体に目を向けることはない。


フィレンクトは沈黙している。
ひたすら置物のようにあろうとしている。
それから待った。

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271 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2015/02/24(火) 04:12:38 ID:PpHh.7g.0


( ^ν^)「……雑談を楽しめるような性格であればもっと価値があるんだが……主人のために行動制限を広げただけでも成果だな。今度は、」


フィレンクトは待機する。
男の意識が空に浮き、室内のレーザーを忘れる一瞬のあいだ。

それを待っている。


( ^ν^)「トレースした性格でも植え付けようか。見た目そのものが人のように振る舞うことができたら完璧だ。
ただのシリーズだと思わせることができれば情報戦にも先手を取れる。」


フィレンクトは待っている。

男の言葉は表面だけ頭のなかを撫でていき、すぐに霧散した。

意見を求められる内容ではない。


( ^ν^)「それにしても多少のあいだとはいえ主人を殺すのは外聞が悪いな。個人登録の補強をしっかりしなければ。

お前の判断と主張で選ぶことが望ましいが、世の主人たちはそれを好まないだろう。我々だけの所有で居られればいいが、“彼ら”がお前をどう扱うか」

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272 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2015/02/24(火) 04:13:20 ID:PpHh.7g.0


待機状態。身体は動かさず、しかし警戒は最大限。いつでも動けるように。
飛び出せるように。


フィレンクトは待っている。


男は話ながらもフィレンクトをしっかりと観察している。

行動を見極めようとしている。

その視線がとぎれる瞬間を、ただ待っている。



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273 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2015/02/24(火) 04:14:02 ID:PpHh.7g.0









某時刻
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274 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2015/02/24(火) 04:14:44 ID:PpHh.7g.0



( ´_ゝ`)「予想外?想定外?」



( ^ν^)「想定の範囲内だ。」



( ´_ゝ`)「そう?なんかつまんなそうに見えるけど」

( ^ν^)「確かにもう少し動きがあってもよかった。」



( ´_ゝ`)「ワッガママー。いいじゃんいいじゃん。そんな裏切りとか求められても可愛そうじゃん。裏切ったとこでフリーズするだけだし」


( ^ν^)「突発的な事故からここまで来れたのだと考えれば貴重さもある。だからイレギュラーな反応が欲しい」



( ´_ゝ`)「つうても行動のパターンは予測してるでしょ」


( ^ν^)「当然だ」

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275 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2015/02/24(火) 04:15:28 ID:PpHh.7g.0




( ´_ゝ`)「なにその反抗期まえの娘がもう少し態度悪ければいいのにって願望」

( ^ν^)「お前どこからその表現拾ってくるんだ」



( ´_ゝ`)「秘密ーねね、でもよくやってる方じゃん?もうゴールさせてもいいと思うな」


( ^ν^)「…………」



( ´_ゝ`)「なんかさ、見てるとやっぱないものねだりだなあと思うよ」


( ^ν^)「どういう意味だ」



( ´_ゝ`)「だってアンタ作り出す側じゃん。俺ら受ける立場で、アンタ命令する側。」

( ^ν^)「それが何だ」


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276 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2015/02/24(火) 04:16:14 ID:PpHh.7g.0



( ´_ゝ`)「俺は自己を形成しなきゃいけなかったから客観的な目っていうのを養わなきゃいけなかった。
それには第三者ってたち位置が重要なんだって。
人は評価されると不快らしいから先に言っとくけど処分しないでね。
俺らとは違う、つまり普通の人間は自己意識をもってて、自分に足りないものを補おうとする本能がある。
アンタらは普通じゃないけどそれって生まれだけじゃん?
中身はけっこうただの人っぽいとこあるよね。
あいつあんな偉っそうな態度してるくせにロリコンでなおかつ機械フェチとか、好みも超違うし。」

( ^ν^)「続けろ」



( ´_ゝ`)「自己投影だよ。自分に足りないものを求めてる。だからあいつに期待してるんじゃない?
それ以上の、予想外なことを」


( ^ν^)「面白い意見だ。人並みに感情でも湧いたか」


( ´_ゝ`)「どうだろ。下克上でもしたら満足?」

( ^ν^)「できるものならな」



( ´_ゝ`)「報酬欲求がないから無理だなー。俺どっちでもいいもん。
やっぱプライドって大事だわ。
それがあるから争うようになるんだろ」

277 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2015/02/24(火) 04:17:08 ID:PpHh.7g.0


( ^ν^)「酒と女に狂えたら男として一人前だ。やってみるか」



( ´_ゝ`)「抱けるけど面白くないと思うよ。ベッドマナーは教わったけど全部奉仕の一環だったし。
アルコールは少量ならいいけど多すぎると中枢神経麻痺させるから好めない。なんでみんな飲むの?効率悪すぎない?」


( ^ν^)「無駄を消費できるようになればわかる」


( ´_ゝ`)「それが一番難しいのに……」


( ´_ゝ`)「でもやっぱわかんないなあ」


( ´_ゝ`)「なんだってそんなもの欲しがるわけ?」


( ^ν^)「何が」


( ´_ゝ`)「だからさ、」





支配からの逸脱ってやつ



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278 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2015/02/24(火) 04:17:54 ID:PpHh.7g.0


刷り込み認識ーー主人への忠誠と絶対の服従。依存により安心を得られる。

命令に従うことで自己を認識し、生物の欲求だと肯定する。

であるから、対象主人と認識したものを消失すると決定権を選べなくなり行動を停止する。
それは次に主人と認定されるまで続く。

本来シリーズを作成した時点で刷り込みは強烈なものだった。
主人に逆らうことは呼吸の仕方を忘れるような歪さがある。

支配されることを当然とし、また何よりも主人を守りぬくこと。

女王アリを生かすために犠牲を当然とする兵隊アリをモデルケースにされた。
無意識の献身。
どれほど理不尽でも非論理でも、すべて主人のためだけに彼らは尽くす。

保身を考えることはまずない。
現在だけを考える。何が主人にとって最適であるか。

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279 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2015/02/24(火) 04:18:38 ID:PpHh.7g.0


模倣された時間だった。
主人の死という点だけにおけば、似ているかもしれない。

倒れた死体。ジョルジュと、フォックス。

そこに立ち尽くしているフィレンクト。

現れた第三の男。


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280 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2015/02/24(火) 04:19:21 ID:PpHh.7g.0


命令を探す。

フォックスの時はできることが何もなかった。
彼は報復の見せ物として殺されたあと首を切られた。


フィレンクトは男に視線をやった。

彼はつらつらと話していたがフィレンクトの反応がないのに興味を失ったようだった。

部屋の死体を片づけろと指示をだし、そのままくつろぐために部屋を出ようと考えていた。

フィレンクトは待機姿勢を崩さなかった。

部屋のあらゆる隅にカメラがあり、その映像を男は通信されて見ている。

レーザーを使ったことでそれがわかった。

脳の思考で、瞬時にそれを使うことができる。フィレンクトは隙間を探した。

常に見張っているわけではない。プログラムなら穴は見つからないが、男は通常の人間と同じIQと能力の持ち主のはずだ


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281 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2015/02/24(火) 04:20:43 ID:PpHh.7g.0
男は部屋から出ようとする。フィレンクトの沈黙と微動だにしない様子を認めて、そのまま意識から切り離した。

演技といった可能性は思いもよらないだろう。
フィレンクトはこれまで、嘘をついたことがない。

足を動かす。
床を歩き、ドアをくぐろうとする。

死角が生まれるその瞬間を、フィレンクトは待った。

男の身体が横向きになり、完全にフィレンクトを視界から外した。

距離は遠くない。

フィレンクトは流れるような動作で銃を構えた。その動きを室内のカメラは感知し、すぐさま情報を男の脳に送る。

男が振り向くのと、フィレンクトが引き金をひくのは同時だった。
男の脳に埋められた受信と送信の指示機を狙って発砲する。

チャンスは一度だけだった。

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282 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2015/02/24(火) 04:23:13 ID:PpHh.7g.0


フィレンクトの反撃にとっさの反射でレーザーが発射されるが、それより弾が頭蓋と肉を砕く方が早かった。


目標の照準はずれて、青冷レーザーはフィレンクトの右肘を焼いた。


じゅっと肉が焼ける音。
神経系統への痛みの伝達。

感覚を遮断。生存本能が低いから、それは日頃から可能だ。

焦げた関節から先が、重りのように揺れて千切れる。

男の方はぐらついた重心を保てず、そのまま足から崩れた。


骨の堅い部位を撃ったため、出血量は少なく意識もはっきりしている。


( ^ν^)「なぜだ……」


( ^ν^)「判断力が低下したのか……」


目眩と感覚の不良。

揺らされた脳が視界を正常に映さない。

身体を司る場所を損傷したためまともに起きあがることも難しいだろう。

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283 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2015/02/24(火) 04:23:56 ID:PpHh.7g.0



( ^ν^)「なぜだ。理由を云え。これは明らかに、」

フィレンクトは残っている腕で落ちた手から銃をとる。

それから男の首の動脈を圧迫し、呼吸を困難にした。

もう弾が残っていなく、補充するよりかその方が簡単だった。

男は口を開いて何かを言い掛けたが、軌道をふさがれて顔を蒸気させたあと強く締めたので男はすぐに絶命した。

流れ作業のような行程で死んだ。


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284 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2015/02/24(火) 04:24:39 ID:PpHh.7g.0


呼吸の停止を確かめる。

それからはた、とこれは反逆になるのだろうかと考えた。

だが考えただけで終わった。

この男は主人ではなかった。
あの時とただ違うひとつの事柄。


(‘_L’)「彼が、まだ生きている」



冷たくなった男の質問に答え、ようやくフィレンクトはジョルジュの元に駆け寄ることができた。


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285 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2015/02/24(火) 04:25:30 ID:PpHh.7g.0



フィレンクトは撃ったときに、防弾ベストを身につけたジョルジュの防御性の高い場所を狙った。


すでに致命的な怪我を負っているため頭といった危険性の高い部位でなくとも疑われることはなかった。


だが布面積で止まったとはいえ衝撃は大きい。

ジョルジュは呼吸をしていた。
小さくけれど必死に。


焼けた肉は傷口が焦げ付いていて血は止まっている。フィレンクトは心臓部位に手をあてる。わずかに心音がした。

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286 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2015/02/24(火) 04:26:20 ID:PpHh.7g.0



急に地面への感触が強くなった。

踏みしめる感覚が戻ったのだと知る。
さきほどの男を撃ったときは感覚がなかった。ただ考えをなぞるような行動だった。


それもジョルジュが生存しているから、躊躇することはなかったのだ。



彼が死んでいたらいつまでも置物でいただろう。


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287 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2015/02/24(火) 04:27:01 ID:PpHh.7g.0



身体を横たえるとジョルジュは苦しそうに呻いた。傷の具合を見る。

ゆっくりと血は流れていた。焦げた傷口だが、中身の臓器からとめどめなく溢れている。
ネクタイを外し、ジョルジュの胸に巻いて止血を試みた。

抗生物質の紙パックをジョルジュの背負っていた袋からとりだし、注射する。

ここまでひどい怪我は想定していなかった。なかに人が待ち受けているのを知らなかったように。

少しだけ苦しそうな表情が和らぐ。

脳内からドーパミンが出ている。
それで傷の痛みを押さえているのだ。
フィレンクトは考えた。

このまま彼を背負って逃げることはたやすい。

爆薬をこの部屋で爆破させ、大騒ぎになれば負傷者に紛れることができる。
そう考え、実行しようとする。

だが立ち上がりかけて、残った腕を掴まれた。

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288 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2015/02/24(火) 04:27:47 ID:PpHh.7g.0



(‘_L’)「……なにか」

ジョルジュは息をはいて、言葉を発しようとしている。
だが肺と心臓は失う血液と損傷した臓器を補おうと活発しているため、なかなか声帯にまで機能が働かない。

見かねたフィレンクトが彼の背中に手をあて、発生の手助けをした。

  _
( ゚∀゚)「……どうなった」


記憶が多少混濁している。貫かれたうえに弾丸の衝撃を受けたので無理もない。


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289 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2015/02/24(火) 04:28:29 ID:PpHh.7g.0



(‘_L’)「襲ってきたので、撃ち返しました」

事実だけを述べる。
詳しく説明するにはジョルジュの状態は悪すぎた。

いまこうしているだけでも身体は血を流している。

フィレンクトは医者でない。

銃創を受けたときの応急処置と、監禁された場合の栄養補助に関する知識しか持ち得ていない。

だからジョルジュの口を止めるにふさわしい助言を出すことができなかった。


彼は語りだす。

フィレンクトのこれから想定する脱出劇に、加われないことを理解しているようだった。

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290 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2015/02/24(火) 04:29:41 ID:PpHh.7g.0

  _
( ゚∀゚)「ここ、爆破できるのか?」


(‘_L’)「問題ありません」

  _
( ゚∀゚)「そうか……ひとりでも可能、だった、け」


(‘_L’)「ひとりでは」

  _
( ゚∀゚)「ひとりだ。こればっか、はしょうがない」


フィレンクトは押し黙る。


これ以上なにを言えばいいのかわからない。選択できない場面には彼はいつも沈黙していた。

それがなぜか今は不快なものに思える。

フィレンクト以外の誰かだったら、現在のジョルジュにかけるのにふさわしい言葉を選ぶことができたはずだ。


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291 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2015/02/24(火) 04:30:32 ID:PpHh.7g.0


  _
( ゚∀゚)「おまえ、腕どうした、」

(‘_L’)「焼けました」
 

  _
( ゚∀゚)「ぶっ、」
 

ははは、乾いた、空気をふるわせるだけの小さな笑いだった。

  _
( ゚∀゚)「……こんな時も、その顔で、その口調っていうのは、笑えるな」


エンドルフィン過多。意識の異常。

彼はこんな時に楽観になる人物でない。

フィレンクトは肩と腰に手をいれて、ジョルジュを持ち上げようとした。

そのとき初めて失った腕の存在を思い出して愕然とする。

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292 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2015/02/24(火) 04:31:23 ID:PpHh.7g.0


  _
( ゚∀゚)「どっちかひとつだ。」


ジョルジュが眼を細めてそう吐いた。

彼の短縮した言葉の表現にいつも面食らったフィレンクトだが、その時はすぐさま理解する。
片腕でも設置は可能。

しかし時間はだいぶかかるだろう。

ジョルジュをかついで逃げる時間はない。
  _
( ゚∀゚)「俺は置いてけ。弛緩してるし、もう感覚がないんだ。」


嘘だ。

だが指先は冷えている。血はいまだ少量ずつだが、止まっていない。
フィレンクトは立ち尽くした。

いままさに、ジョルジュが死にかけている。それを救う手だてが自分にはない。

何でもできるはずだった。

ジョルジュが居ればなんでも。

だから引き金を弾けたのに。

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293 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2015/02/24(火) 04:32:06 ID:PpHh.7g.0


  _
( ゚∀゚)「おい、」

呆然と彼を見下ろす。
本来ならこの後のことを聞かなければならない。
その計画を完遂させるために。


  _
( ゚∀゚)「お前、死ぬなよ」

ジョルジュがそう命令する。
それで思考が現実に引き戻された。

命令形。

フィレンクトが従うべきもの。




フィレンクトは動かない。

ジョルジュが具体的な命令を出していないからだ。
連れていけないと遠回しに言われたが、何かをしろ、早くいけなどと言われたわけじゃない。


それを口にされることを恐れた。

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294 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2015/02/24(火) 04:32:48 ID:PpHh.7g.0




緊張の面差しで、ジョルジュの顔を眺める。
もう血の気もない。

  _
( ゚∀゚)「俺が殺すまで、絶対に死ぬなよ」




はい、と答えることができただろうか。

なにもかもが遠くに思える。

たとえばジョルジュの長引く間隔の呼吸とか。

絨毯に確かに量を増やして染みていく血とか。


  _
( ゚∀゚)「ああ、くそ」




「ぜんぶ、壊してくれ」


壊してくれ。

.

295 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2015/02/24(火) 04:33:30 ID:PpHh.7g.0



悔しそうに彼が顔をゆがめる。
その一瞬は生に溢れるように見えた。

ペニサスに悪態をつく普段の顔とまったく同じに見えた。

ちくしょうと口のなかで呟くとフィレンクトに眼だけで頷かれる。

この後を頼むと伝えたようだった。


彼は最後に小さく発音すると眠りに落ちる間際のように眼をつぶる。
最後の言葉は小さすぎて聞き取れなかった。

女の名のようだったが誰なのかを特定するのは難しかったし、フィレンクトにその気はなかった。

生きている方とも限らない。


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296 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2015/02/24(火) 04:34:16 ID:PpHh.7g.0























(‘_L’)「はい」



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