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196 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2014/12/02(火) 05:07:30 ID:3gBm1G8g0
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人殺しの人殺しによる人殺しのためのメソッド
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197 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2014/12/02(火) 05:08:36 ID:3gBm1G8g0
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思考の停止ーー回復。
周囲状況の把握。床に伸びる出血確認。
命令待機状態。
命令待機状態。
命令待機状態。
対象主人の消失。伏した身体。
青冷レーダーが心臓を焼いた瞬間を目撃。
内蔵に重大な損傷箇所。
即死の可能性が大。
枝分かれしたもしもの指令は無し。
命令待機状態。
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198 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2014/12/02(火) 05:10:21 ID:3gBm1G8g0
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「撃ちなさい」
命令優先認識。主従確認。
倒れた血だまりの男。
ーーー死。
確認のための狙撃。
「撃ちなさい」
静かな声。
聞き覚えのある声帯。
命令ーー狙撃。
焼かれた男。
胸を貫かれて。
のけぞるように横倒れた。
人相照合。記憶のなかの人物。
デ・ジャブ。記憶のなかの出来事と重なる状況。
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199 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2014/12/02(火) 05:11:16 ID:3gBm1G8g0
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命令優先。
照準を身体に合わせる。
フィレンクトは、ふるえるジョルジュの指先をみた。
それから引き金をひく。
二発の銃弾。
ジョルジュの身体が衝撃に跳ねた。
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200 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2014/12/02(火) 05:12:00 ID:3gBm1G8g0
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(´・_ゝ・`)「本当にうまくいくのか?」
('、`*川「さあ?」
ペニサスは振り返らずに答える。
設置したいくつかのジャミング装置を順番に作動させるのに忙しかった。
混線した状態であれば機動隊の動きもかき回せられる。
事態の収拾をできるだけ引き延ばしたかった。
その分送り出したジョルジュたちに余裕が生まれる。
(´・_ゝ・`)「脳天気な返事だな。……帰ってこなかったらどうする。そっちの方が確率高いだろうに」
行うことを順番に数えながら、優秀な脳は男の言葉にカチンとくる。
リーダーという名の責任者がいなければなにもできない癖に。
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201 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2014/12/02(火) 05:12:57 ID:3gBm1G8g0
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('、`*川「50:50よ。0か100か。
死んでるか、やり遂げたか」
こちらから仕掛けた爆撃しか報告されていない。送り出して、連絡が取れなくなって10分。
そろそろ撤退する連絡をもらっても良さそうなのだが、通信は向こうから切れたままだ。
(´・_ゝ・`)「そもそも、本当に爆破なんて、できるのか?」
見上げる。
双眼レンズが無くても確認できる巨大な柱のようなビルディング。
遠距離からでも階層が分かる。
('、`*川「理論的で言うなら可能よ。
ひとつの建物しか壊せないけど、的確に重箇所に設置できれば吹っ飛ばせるわ」
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202 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2014/12/02(火) 05:14:02 ID:3gBm1G8g0
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高層ビルは側面に強く、内側に弱い。耐震性を重視した結果、そのような作りになった。
地震にだけは防衛でしか対策できなく、揺れる力を逃がすためにゆらぎのある土台。
その芯さえ折れてしまえばいい。
('、`*川「建築だけなら簡単よ。年数を考えて建てられたものじゃないんだから。」
きらびやかなハリボテ。
栄華の象徴。
特攻する数人なら十分可能な行為。
生殺しの状態でそこまでの決意を持った者がいなかった。
('、`*川「100か0か。生きてるか、」
死んでるか
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203 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2014/12/02(火) 05:14:44 ID:3gBm1G8g0
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同時刻、
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204 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2014/12/02(火) 05:17:31 ID:3gBm1G8g0
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( ´_ゝ`)「あったあった。全部死んじゃってるけど、これいいの?」
足下の腕を蹴る。
まだ暖かさを失っていない。
数人の死体を一瞥する。
争ったような形跡もなく、自決した様子の死体は綺麗だった。
無意識に数えて、その必要がないのだと視線をそらす。
( ´_ゝ`)「もったいなくねぇ?一体いくらすんだよこれ。無駄遣い反対!」
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205 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2014/12/02(火) 05:18:28 ID:3gBm1G8g0
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( ^ν^)「必要経費だ。状況に対応できない兵士など要らん」
( ´_ゝ`)「そういう風に教育したんじゃ仕方ないじゃん」
( ^ν^)「それではいつまでもそのままだ。我々が欲しているのは言うことを聞くだけの人形ではない」
( ´_ゝ`)「結果テロリスト引き入れてんじゃ損害でかくない?あれたぶん破壊行為が目的だと思うぜ」
( ^ν^)「かまわん。貿易取引は制限している。どうせ手に入れたものも微々たるものだろう。そちらのビルひとつ狙われたくらいで、何も変わらんさ」
( ´_ゝ`)「お客さま避難させなくていいの?大事な社員とか」
( ^ν^)「倫理と道徳でも勉強したのか。必要ないから消せ。いま連絡を入れても誘導にも時間がかかりずぎる。重要人物だけ選りすぐっているから損失はない」
( ´_ゝ`)「広報は?夜会に起きた惨劇!テロによる爆破事件ーなんて」
( ^ν^)「起こってしまえば一斉射撃の法案も通るだろう。」
( ´_ゝ`)「なんだ。見通してんのか、つまんな」
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206 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2014/12/02(火) 05:19:10 ID:3gBm1G8g0
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エレベーターの点灯ランプをみる。
50階まで上昇していた。
( ´_ゝ`)「俺は?」
( ^ν^)「待機。どのような結果になるかわからんうちは動くな」
( ´_ゝ`)「ふーん」
( ´_ゝ`)「あのさ、なんでこんなややこしいことしてんの」
純粋な疑問であり、自分が存在する理由を尋ねる。
本来ならレンタル式の傭兵として貸し出されるはずの自分。
兄弟シリーズの試作品としてプラグラムが作られた。
それが現在教育された認識をどれほど自由に解釈し、行動にうつれるかというテストの経過途中。
軽口はデモンストレーション。
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207 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2014/12/02(火) 05:19:53 ID:3gBm1G8g0
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最も万人に好評のタイプの性格をトレースし、実行する。
メンタルと身体は密接に繋がっているという診断通り、この性格にしてから質問という会話を引き出すことが増えた。
それは交流関係の作用にも関係しているようで、叱責はあるものの咎められたことはまだない。
だからモデルにした性格なら抱くであろう疑問を想定し、投げかける。
現在行われている傍観テストはあまりにも実用性がなさすぎる。
矛先が少しずれれば累計シリーズの信頼性に影を落とすだろう。
グラフのように目で見えるものでもない。
それなのに不確かなシリーズへの問題行動の結果を知るためだけにしては、事が大きすぎる。
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208 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2014/12/02(火) 05:20:43 ID:3gBm1G8g0
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( ´_ゝ`)「せっかく刷り込みして優秀に作ったのに、なんで壊すみたいなことしてんの?これから起こることってそんなに重要なこと?」
理解でいえば矛盾している。さっさと回収すれば費用も損害もかからなかったはずだ。
( ^ν^)「……銃の存在はこれまで人の戦争を激変させた。力の強い者、足が早いもの、徒党を組んでの戦い、すべてが過去のものになった。」
( ^ν^)「人が皆銃を持てるということは、戦い方が変わったということだ。
核兵器は威力がありすぎて、抑止力にしかならない。手軽で防衛も攻撃にもなるのは銃だ。だが皆がそれを持てる社会では、先手など取れない。」
( ^ν^)「銃の存在で誰もに、登録しただけで使用できる主体性のない武器など、何の役にもたたん」
( ^ν^)「欲しいのは合理的考えと冷静な判断力、能力を併せ持った兵士だ。普段は一兵卒のように擬態でき、主人を変えない、自分の意志でのみ利己的かつ従う者を認識できる」
( ^ν^)「……それが支配者の望む最高の武器だ」
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209 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2014/12/02(火) 05:22:01 ID:3gBm1G8g0
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( ´_ゝ`)「ふうん」
( ´_ゝ`)「ああ、だから」
人間性にこだわったのか。
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210 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2014/12/02(火) 05:22:43 ID:3gBm1G8g0
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(‘_L’)
フィレンクトは口元に指をたて、喋るなと合図する。
離れたところでジョルジュはライフルを抱えて、廊下の隅からそれを確認した。
つまりこの階からは、会話が盗聴される。
建築材をどのように活用したのか分からないが、上階はある一定の高さを越えれば壁がアクリル製のプラスチック材になっている。
これは水圧と透明度の利点で使われる水族館と同じで耐久と防弾に効果があり、なおかつ透けるので目視が可能だ。
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211 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2014/12/02(火) 05:23:44 ID:3gBm1G8g0
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( ゚∀゚)
反射が人並みなジョルジュは待機、フィレンクトはそのまま廊下を進んでいく。
100階から上はエレベーターがない。ゆるやかに作られた階段を上っていく仕様になっている。
その入り口を固めるのがフィレンクトと同じ兵器として教育された者たちだった。
ジョルジュは遠目からだがその姿を確認する。男性5人となぜか、幼い少女が三人。デリバリーの娼婦だろうか。
警備隊にしては存在が謎だ。
品がよい服を着ているのが遠くからでもわかる。
フィレンクトが彼らに近づいていく。
ここまで、何の障害もなく進んできたがさすがに心臓がいたい。
ジョルジュは同じ部族、出身の者たちは感覚でわかる。その地域独特のスラングや訛りなどで検討をつけるのだ。
だから彼らがフィレンクトに違和感を持たれると感づかれる。
外からの回線を切った状態はもう終わっていて、修復作業が行われている頃合い。
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212 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2014/12/02(火) 05:24:40 ID:3gBm1G8g0
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彼らに話し合いは無意味だ。
下での連絡がいけば即座に殺しにくる。
あのフィレンクトと同じ能力を持ったものが五人も居るというのは、絶望に近い恐怖だった。
それに、フィレンクトはここを突破する方法を言わなかった。
じんわりとまさかの考えが忍び寄る。
フィレンクトはすでに反旗を翻している。ここに至るまえに招待客、警備員を殺している。
だがもしそれが罠で、おびき出すための布石だったら。
ばかばかしい考えだ。
けれどペニサスの懇願するような言葉はジョルジュを不安にさせた。
フィレンクトが考えを改めるとどうなるだろうか。もともと彼はここに雇われていた。
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213 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2014/12/02(火) 05:25:24 ID:3gBm1G8g0
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そもそも彼がジョルジュに従うのに何の契約も同意も、報酬すらない。
命令がないからという理由で自分の頭を打ち抜いた純粋さはもしかしたら鞍変える理由になりうる。
どっどっと心臓が早鐘をうつ。
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( ゚∀゚)
ジョルジュにはやるべきことがある。
死んでいった者たちへの弔い。
まぶたを閉じれば今でも顔が思い浮かぶ。男、女、子供、家族、
ジョルジュがここに居ることはフィレンクトへの細い信頼で成り立っていた。
はやく、はやく終われ。
フィレンクトが何をするのか知らないが。
早く俺を連れて行け。
顔をあげると靴音が聞こえて、銃を構える。それが見慣れた男のものだということに気がついた。
(‘_L’)「行きましょう」
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214 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2014/12/02(火) 05:26:24 ID:3gBm1G8g0
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トランプでいえばキングの立場だった。
数字の一番うえ、独立した命令系統を持たされ、脳に移植された装置からの受信するシグナルで動く。
彼らを動かすのは上位命令、彼らの主人だけだった。
それゆえ混線した連絡網は届かない。
下の階でどのような騒ぎがあっても。
彼らが従うのは部屋の主だけで、彼らが守るのは主人だけだ。
フィレンクトが現れたとき彼らは警戒を持たず、また解いてもいない。
命令の種類によって殺し合うこともあった。だが普段であるなら同じシリーズ、主人の面目のため協力体制をとることがおおい。
別のシリーズ、見慣れない顔であるということは連絡がなされていない。
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215 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2014/12/02(火) 05:27:50 ID:3gBm1G8g0
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近い男がフィレンクトに階への用件か、主人への用事かを問おうと口を開く。
だがそれより早くフィレンクトが言った。
(‘_L’)「Dコードが発令されました。すみやかに従ってください」
( ゚∋゚)「受けておりませんが」
(‘_L’)「まもなく連絡が入ります」
フィレンクトの言葉から数秒遅れて受信する。鼓膜近くに入った無線式のチップ。
これは一方からの通信しかできない。
主人からの命令を受けるためだけに使用される。
クリアな通信、低い声で命令される。
その内容を認識し、その場に居た者たちは一斉に銃器を取り出す。
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216 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2014/12/02(火) 05:28:45 ID:3gBm1G8g0
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「あなたは」
(‘_L’)「わたしは片づけを任されています」
その答えに安心したように、警備主任五人が組み合うようにしてお互いに銃を向けた。
少女タイプのアンドロイド機は初期設定を行う。目にともす電源が落ちて、まもなく機能を停止させた。
タイミングを図るようにして彼らは引き金を引いた。
目標に当てる訓練は充分だったようで、即死する場所を狙って穴をあける。
五人のシリーズは命令を認識し、Deleteコードを全うした。
従って彼らは五人ともが互いの頭を撃ち、自決をやり遂げた。
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217 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2014/12/02(火) 05:29:41 ID:3gBm1G8g0
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( ゚∀゚)「…………」
ジョルジュは呆然とする。彼らの価値観をわかっているつもりだった。
最大級の利便性、追求すればなるほど、チェスの駒のように切り捨てられることを前提とした存在のはずだ。
わかってるつもりだった。
だからフィレンクトに抱いたのは怒りだけでなく、同情だけでもない。人の形をしているからなおさら悪い。
どこかに機械的な部位があれば、青い血が流れてさえいれば、同じ人間であると思えなかったのに。
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218 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2014/12/02(火) 05:30:25 ID:3gBm1G8g0
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( ゚∀゚)「どうやった?」
(‘_L’)「あの男の声紋を複製し、作成した言語を無線に流しました。私たちでしか使用されないコードがあるので」
マスターはナンバーごとに区別されているだろうが、肉体情報はほぼ同じだろう。
まったく同じではなかったはずだが、特別な無線番号、主人からしかかかってこないはずという先入観を彼らは信じた。
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219 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2014/12/02(火) 05:31:07 ID:3gBm1G8g0
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( ゚∀゚)「……自殺する用意もあったのか」
納得する。
だからあんなに躊躇もなく行動できた。ジョルジュはフィレンクトを見る。
生存本能さえ失ったものを、人間と呼べるのか。
フィレンクトはジョルジュの視線を受け止め、変わらぬ表情でそこに居る。無感動な目だった。周囲状況をレンズのように見張っていながら、何も映していない。
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220 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2014/12/02(火) 05:31:49 ID:3gBm1G8g0
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異常なほどに命令されることを享受する態度さえなければ有能な秘書にしか見えない。
使い勝手のよい人形。ペニサスの言葉が蘇る。
こんな奴らが幾人も居るなか、ここまで来られたのは奇跡かもしれない。
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( ゚∀゚)「もう喋ってもいいのか?」
(‘_L’)「かまいません、すぐ着きます」
長い廊下、透明アクリルはトンネルを連想させる。外の夜景が反射してまるで星空を歩いているようだった。
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