(‘_L’)は命令が欲しいようです

Part5

95 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2014/10/08(水) 04:44:46 ID:y9lJb8uA0



( ^ν^)「仕掛けるのか?」

  _
( ゚∀゚)「ああ」


( ^ν^)「……勝てると思うのか?」

  _
( ゚∀゚)「そんなわけない」


( ^ν^)「じゃあなんで」

96 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2014/10/08(水) 04:45:34 ID:y9lJb8uA0


  _
( ゚∀゚)「いろいろだ。考えた結果これが一番いいと思う」

( ^ν^ )「……気負いすぎだ。おまえは責任を負いたがる。一度捨ててみたらどうだ」


  _
( ゚∀゚)「……ハハッ……無理な相談だ」


(‘_L’)

( ^ν^)「…………」

( ^ν^)「……おい、どういうことだ」

( ^ν^)「なんでこいつがいる」

97 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2014/10/08(水) 04:46:27 ID:y9lJb8uA0


  _
( ゚∀゚)「言ったろ?」

「戦争だ。歯止めはない」


カチリ。トリガーをセット。

いつでも発射可能。フィレンクトはジョルジュの隣の頭に銃口を当てた。ひやりとした鉄の感触に、男が身を凍らせる。

98 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2014/10/08(水) 04:47:15 ID:y9lJb8uA0



( ^ν^)「……あの女か」

  _
( ゚∀゚)「いいや。ペニサスは何も言ってない。引き際がうまい奴だ。そもそも、」

  _
( ゚∀゚)「おまえ、あいつとは別人だろ?」


( ^ν^)「…………」

  _
( ゚∀゚)「お喋りが上手じゃないな。ここで黙秘は認めたようなもんだぞ」

99 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2014/10/08(水) 04:47:57 ID:y9lJb8uA0



( ^ν^)「…………」

  _
( ゚∀゚)「……わからないのは、交渉が決裂した後もおまえが留まった理由だよ。もうこちらには引き出せるものなんてないはずだ。」

( ^ν^)「…………」

  _
( ゚∀゚)「狙いは何だった?こっちは大幅に人が減って工作は必要ないくらいだ。これだけ近くにいて俺を殺さなかった理由は?」


脅しは必要ない。ジョルジュの合図でいつでも殺せる。銃を構えた腕のまま、フィレンクトは動かない。

100 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2014/10/08(水) 04:48:40 ID:y9lJb8uA0



( ^ν^)「…………守るためだ」

  _
( ゚∀゚)「何を……?」


( ^ν^)「おまえを守るためだジョルジュ」

  _
( ゚∀゚)「笑えないな」


( ^ν^)「真実だ」

  _
( ゚∀゚)「なんのために?」


( ^ν^)「決まってるだろう」


( ^ν^)「おまえが死んだら、誰があのクズどもをまとめるんだ」


  _
( ゚∀゚)「……」

101 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2014/10/08(水) 04:49:22 ID:y9lJb8uA0



( ^ν^)「勝てない戦いなんて自殺と同じだ。おまえがそんな無謀なことをするなんて信じられん」


( ^ν^)「無駄なことは嫌いじゃなかったのか?」

  _
( ゚∀゚)「無駄をそぎ落とした結果、後ろの男みたいな奴を作るのか?」


( ^ν^)「……こいつらの事は知らない」

  _
( ゚∀゚)「おまえと同じ顔の男は知ってたぞ」


( ^ν^)「管轄外だ。俺らとはまったく違う」

  _
( ゚∀゚)「自分の事は認めるのか」


( ^ν^)「……」

102 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2014/10/08(水) 04:50:05 ID:y9lJb8uA0


  _
( ゚∀゚)「……あいつの事、少しでも愛してたか?」


( ^ν^)「…………」

( ^ν^)「……いいや」

( ^ν^)「好きだっただけだ」


  _
( ゚∀゚)「……まあいいさ。おまえが誰で、双子でも三つ子でも、整形だってかまわん」
  _
( ゚∀゚)「これから特攻に行くんだ。土産に何か持たせてくれよ」

103 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2014/10/08(水) 04:50:47 ID:y9lJb8uA0
( ^ν^)「…一つ聞きたいんだが」

  _
( ゚∀゚)「なんだ」


( ^ν^)「フィレンクト」



「おまえ、チップは入ってないのか?」




(‘_L’)「…………」


  _
( ゚∀゚)「答えてやれ」


(‘_L’)「はい」



( ^ν^)「そうか」


( ^ν^)「俺は入ってる」

104 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2014/10/08(水) 04:51:43 ID:y9lJb8uA0
口径の大きな銃の引き金を、男が言い終わるまえにフィレンクトは引いた。



轟音がして頭から男が吹っ飛ぶ。弾は頭蓋を貫通して、脳漿を飛び散らし、壁にめり込んだ。

血をまともに浴びて、一瞬のできごとにジョルジュがたじろぐ。


  _
(; ゚∀゚)「おい」

 
(‘_L’)「逃げます」

その一言だけを言ってジョルジュの腕をつかむと、想定していたルート、裏口の窓から飛び降りる。


ジョルジュは怪訝そうだったがフィレンクトの勢いに多くは尋ねなかった。

日頃からちくいちジョルジュを伺う彼の行動だ。緊急性が感じられた。



入り組んだ背の低い建物は逃げやすかった。崩れやすい建物を住民が直していくたびに等号のない壁が作られ、足場が多くなる。


迷路のような入り組んだ通路は常に道を変えている。

105 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2014/10/08(水) 04:52:32 ID:y9lJb8uA0


  _
( ゚∀゚)「チップってなんだ」


建物をいくつも通り抜け、階段を上下してようやく一息つく。一定時間の休憩を入れてフィレンクトは常に移動する。


ジョルジュには影も形も感じられなかったが、フィレンクトは追ってを確信していた。

逃亡するなら同じ場所に止まってはならない。意識して周回するのが望ましい。

追跡者たちの気配を振り切って、ようやくフィレンクトが足を止める。

それでも壁に耳をはりつけて、振動を感じようとしていた。


「生体認証コード、ナンバーとGPSのついた米粒台のマイクロチップです」

  _
( ゚∀゚)「ってことは」

106 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2014/10/08(水) 04:53:15 ID:y9lJb8uA0


(‘_L’)「盗聴の恐れもあります。あの男があなたの側にいて、一度も本社に帰っていないのならその機能は停止しているかもしれません。しかしGPSは生体が死ぬまで機動し続けます」


  _
( ゚∀゚)「もうあの隠れ家使えないな……」
  _
( ゚∀゚)「……おまえには入ってないのか?」


(‘_L’)「はい」

  _
( ゚∀゚)「なんでだ?、おまえ回収されないって事だろ」


(‘_L’)「分かりません」

  _
( ゚∀゚)「……フォックスは何か言ってたか?」

107 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2014/10/08(水) 04:53:57 ID:y9lJb8uA0
(‘_L’)「注文通りだと」

  _
( ゚∀゚)「注文……?」

(‘_L’)「はい」

  _
( ゚∀゚)「……」

  _
( ゚∀゚)「つまり奴も、奴と組んでいた奴も、何かしらの理由でおまえを必要としてたのか。管理されない、人形を」


(‘_L’)「…………」

  _
( ゚∀゚)「企業も一枚岩とはいかない、おまえがここに居るのは偶然なのか……?」



(‘_L’)「…………」

ジョルジュが睨みつける。だが無機質の目で見つめ返された。相変わらず、何も映すことのない目。

ジョルジュは考えようとしてやめた。


推論は無意味だ。偶然なら幸運。陰謀だとしてもフィレンクトを使うことでしか、一矢報いることはできない。

108 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2014/10/08(水) 04:54:46 ID:y9lJb8uA0

  _
( ゚∀゚)「奴とのやりとりは覚えてるのか」


(‘_L’)「はい」

  _
( ゚∀゚)「どのくらいだ?」


(‘_L’)「すべて」



まだ、削除命令は出されていない。

109 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2014/10/08(水) 04:56:18 ID:y9lJb8uA0
ー.ー.ー.ー.ー.ー.ー.ー.ー.ー.ー.ー.



ー.ー.ー.ー.ー.ー.ー.ー.ー




ー.ーー.ー.ー.ー.ー.ー

110 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2014/10/08(水) 04:57:17 ID:y9lJb8uA0



伸びてくる腕がある。
追いかけられている。死に直結するものではない。むしろ必死に、こちらへ追いつこうとするものがあった。


だが自分は歩みを止めない。変わらない速度でそれをふりほどいて進んでいく。

首のうしろ。所有者のあかし。

わめき声は耳に入らない。次の命令は受けた。主人の登録もすんでいる。


こめかみにチップが埋め込まれる。これでなにもかも把握される事になっている。

「フィレンクト!」

その名前は記号だ。自分はコードで整理されている数字のひとつにすぎない。

伸びてくる腕がある。強い、確かな力で腕を掴まれた。ふりほどけない。


「撃て」

正面からの声。名を呼ぶ声のうえからかぶさり、その命令は頭に浸透した。
まっすぐに腕を伸ばす。

頭に照準を定めて、引き金をひいた。


慣れた感触なのにずいぶんと重く感じる。

「フィレンクト」


声が遠くなり、視界から姿が消えた。

首のうしろ。




「やっかいな痕をつけられたな。焼くぞ」
「はい」

111 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2014/10/08(水) 04:57:58 ID:y9lJb8uA0
.ー.ー.ー.ー.ー.ー.ー.ー.ー.



ー.ー.ー.ー.ー.ー.ー.ー.ー.ー.ー.ー.



ー.ー.ー.ー.ー.ー.ー.ー.ー.ー.ー.ー.ー.

112 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2014/10/08(水) 04:59:04 ID:y9lJb8uA0


  _
( ゚∀゚)「妹の結婚相手だったんだ」



拠点に帰らず、近くのバーガーショップで食事をとる。冷めたバンズを食べながら、無感動にジョルジュが言った。

  _
( ゚∀゚)「なにもかも終わったら所帯を持たせるつもりだった」

  _
( ゚∀゚)「妊娠してたからな」


フィレンクトは思い返す。死んだ者は数えない。数えられないほど手にかけてきた。

  _
( ゚∀゚)「なんであいつが狙いをつけられたんだ?」



(‘_L’)「わかりません」

  _
( ゚∀゚)「奴は何と言っていた?」


(‘_L’)「命じられました。写真の人間を処分するようにと」

113 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2014/10/08(水) 04:59:47 ID:y9lJb8uA0


(‘_L’)「それだけです」

  _
( ゚∀゚)「そうか」



死者は数えてはいけない。依然それで痛い目にあった。

それでも記憶を半数しようと試みる。
ジョルジュがそれを望んでいるからだ。


みどりの黒髪。幼い顔立ち。
スパイの男が妊娠の失態を犯してしまった女。

ジョルジュの、妹。




(‘_L’)「あなたのせいではありません」

114 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2014/10/08(水) 05:00:47 ID:y9lJb8uA0
  _
( ゚∀゚)「……俺以外に理由があるかよ」



めずらしくフィレンクトの意見に眉を寄せる。
だがフィレンクトは根拠なく言ったわけではない。少し考えれば分かることだ。

そしてそれは初めてのことだった。



(‘_L’)「妊娠です」

  _
( ゚∀゚)「……どういう意味だ」


あの男が整形ならば妹は対象にならなかった。ひとつの家族で戸籍のある場合でも同じだ。

だが彼らは遺伝子から製造されたオリジナルに仕える兄弟。


その遺伝子をむやみに振りまくことが許されるはずがない。


あの男はミスを犯した。それゆえジョルジュの妹が処分されることになった。


遺伝子情報に鍵をかけられていない彼は、どの道使い捨てられる。

フィレンクトの説明を聞いて、ジョルジュが穏やかに笑った。



表情とは裏腹に心内では激高しているのがフィレンクトにはわかった。

115 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2014/10/08(水) 05:01:31 ID:y9lJb8uA0


  _
( ゚∀゚)「……あいつを信じてそばに置いていたのは俺だ。結局、原因は俺だったってわけか」


(‘_L’)「……」


  _
( ゚∀゚)「……何人いる?」


  _
( ゚∀゚)「あいつは後、何人いる?」


(‘_L’)「把握していません。少なくとも本社には数人、世界では1000人ほどだと思われます」

  _
( ゚∀゚)「何のために、あんなのを作ったんだ」


(‘_L’)「……分かりません」



影武者、裏切るリスクの少ない身内。
役割は多々ある。彼らもコードで管理されている。立場はフィレンクトと変わらない。

違うのはフィレンクトが主人を代えること。彼らが生涯オリジナルに仕えること。


ジョルジュの怒りが高まる。思考すればするほど苛立ちを増していった。

116 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2014/10/08(水) 05:02:30 ID:y9lJb8uA0



  _
( ゚∀゚)「妊娠したから、やつの子供を受精したから、あいつはお前に殺されたのか?」



答えればさらに怒りを煽るだろうと思ったが、フィレンクトは素直に答えた。

「はい」



興奮したジョルジュが殴りつける。それでも理性は残っていたようで、顔でなく肩を思い切り殴打した。

フィレンクトは立ち続けるか、流れに身をまかせるか一瞬迷う。

だがジョルジュの拳が望んだようにしようとそのまま力に押され、壁に身体をぶつけた。

続けて拳が降ってくると思ったが、ジョルジュは忍耐強く耐えている。


  _
( ゚∀゚)「……抵抗しろとは言わないから、身を守れ、でないと俺が困る」


(‘_L’)「了解しました」

ジョルジュをなだめるに必要な行為なのだ
う。受け流すようにして彼の拳を受けた。


ときどきまともに身体に入れてやる。
フィレンクトは息を乱すこともなかったが、ジョルジュは大きく深呼吸した。




それからひとつ、ふたつの涙を流した。

117 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2014/10/08(水) 05:03:34 ID:y9lJb8uA0
















('、`*川「やだ、アンタこれなあに?」



そう言われたが自分で背中は見れない。
ペニサスはフィレンクトのうなじを軽くさすった。


('、`*川「火傷のうえから、移植されてる。何か埋め込まれたの?でも反応はなかったけど」


最初の日にフィレンクトの身体はセンサーでチェック済みだ。不審なものは何もない。だがペニサスはフィレンクトの肌の一部を気にした。



('、`*川「……歴史のある人形なんてめずらしい。普通は傷なんて消されるのに」


('、`*川「あんたの主人がやったの?」

(‘_L’)「覚えていません」

事実だ。

118 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2014/10/08(水) 05:04:19 ID:y9lJb8uA0


  _
( ゚∀゚)「必要なもの、ほかにあるか?」

マシンガン、ハンドガン、いくつかの手榴弾、それから補充の弾薬。トラップ用の地
雷。グレネードといったものも少ないがあった。

ジョルジュがどこからかかき集めてきたものだ。フィレンクトは一瞥する。


どれも役にたちそうもない。火力による襲撃にはシェルターとマニュアルで対応される。陽動でしか使えないだろう。

唯一の救いはペニサスの補助。彼女が用意したPCがあれば数分のハッキングが可能になる。

 
(‘_L’) 「目標は何でしょう」

119 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2014/10/08(水) 05:05:03 ID:y9lJb8uA0



これだけの銃器を使用すれば少なからず打撃を与えることができる。


だが相手の心臓には届かないうえに末端で相手されることは間違いない。


命をかけるには小さな抵抗だ。対象の確認さえあればそれも違ってくる。鉛筆ひとつでも、人は殺せた。

  _
( ゚∀゚)「多くは狙わん。爆弾巻いてつっこんでもどうせまた補充されるだけだ。お前みたいのが」


  _
( ゚∀゚)「だから代わりのないものを狙う」


ジョルジュの命をかけた、最大の嫌がらせ。

  _
( ゚∀゚)「…メインコンピュータ吹き飛ばしてやる」


都市付近になるほど機械は進出している。
人体に埋め込んだICカードで買い物から契約まで事足りた。


町を管理しているのは大企業でありジョルジュたちの敵の七つの企業。


密集したビルの上層部に機械は納められており、そこからすべてを管理していた。住民情報も、都市の信号カメラも、さまざまに。

120 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2014/10/08(水) 05:05:50 ID:y9lJb8uA0
七つのビルは国のなにより高くそびえている。侵入するのは困難だった。認証がなければまず入れない。


むやみに突破し、住民登録されていない者はレーザーで首をはねられる。

非人道的だと非難されたシステムだったが、その後起こったテロリストの襲撃でその声もやんだ。

  _
( ゚∀゚)「お前と俺くらいしかこんな事するバカがいない。できるか?」


警戒線をくぐり抜け、フィレンクトと同じように警備に付く者たちに見つからず、


重要レッドの最上階へとたどり着かなくてはジョルジュの目的は達成できない。

  _
( ゚∀゚)「……できるか?」


フィレンクトは常に命令を享受してきた。
だが彼にも限界はある。

強力な後ろ盾がない。最新の武器がない。先手をとれる情報も、バックアップの仲間もいない。

121 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2014/10/08(水) 05:07:14 ID:y9lJb8uA0




(‘_L’)「命じてください」


能力を越えた働きはできない。

主人に虚偽はつけない。たやすくYESと言えるような内容ではなかった。

だがフィレンクトは焦れる。

ジョルジュからの初めての、具体的な仕事の案。命令を、命令を!それさえ貰えばなんでもできる。身体ひとつで死に行けと、できるだけを殺してこい。

だが主人を目的の場所まで運ばないとならない。

内容はハード。しかしジョルジュは今までの主人たちとは違う。規約に縛られない。

ルールを破ることには当たらない。
何でもできる。ジョルジュが命じればなんでも!



(‘_L’)「どうか、命じてください」


ほとんど懇願だった。高揚する気分と、計算する冷静が混同している。

ジョルジュは可能かと聞いている。

フィレンクトは「はい」と答えるべきだったのに、ねだるような口調になってしまった。

122 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2014/10/08(水) 05:08:03 ID:y9lJb8uA0


  _
( ゚∀゚)「……俺を、タワー最上階のメインビル、motherの元へ連れていけ。お前が死んでもだ」


ジョルジュには何の表情も伺えなかった。反対にフィレンクトは目を輝かせる。

微表情がめずらしく仕事をした。


(‘_L’)「はい」

感情がこもった声。

自分がこの声を出したのだと少し驚いた。

123 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2014/10/08(水) 05:09:47 ID:y9lJb8uA0





('、`*川「作戦って呼べるほどのものじゃないのね」

実行役は二人。補助が一人。

陽動で動けるものがジョルジュの傘下数十人
。彼らには状況が混乱したさいの、強奪という飴がある。

幾人かが銃火器で押し寄せ、マニュアル通りならそれに対応する企業の用兵が出てくるので、その隙に開かれたゲートから侵入する


('、`*川「パスはどうするの?アタシじゃ無理よ」


(‘_L’)「わたしの登録を使います」


('、`*川「……使えるの、それ」


(‘_L’)「私たちのコードは変更されません」


まだ廃棄されたことはないが、番号は受け継ぐものだった。中身だけ入れ替えられる。

('、`*川「セキュリティが甘いんだか強いんだか……まあ裏切る心配がないからこそなのかも」


('、`*川「第二のゲートはそれで入れるとして、警備はどうすんの?犬に爆弾でも巻く?」


階が高くなるほど警備は厳重になる。
最上階はこのビルの頭脳が置かれている場所だ。

フィレンクトと同じ者たちが、守りを固めている。

(‘_L’)「それには及びません。」


('、`*川「……なによ?どんな考えなわけ」

(‘_L’)「最重要機密です」


('、`*川「…アタシには話せないの?ならジョルジュに聞くわ」

124 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2014/10/08(水) 05:10:30 ID:y9lJb8uA0




  _
( ゚∀゚)「で、どういう事だ」


フィレンクトのたてた計画に目を向く。

時間がかかりすぎない事が成功率が高いというのは常識だが、それにしても。

  _
( ゚∀゚)「おまえみたいな奴らの居る階を、五分で通るってのは無茶じゃないのか?」


フィレンクトはバランス型だ。もっとも優秀なタイプで特技に偏りがない。

それだけに万能として重宝された。

だが警備に置かれている者たちはパワーとスピードに特化している。

侵入者に対しての制圧と迎撃に対応させ、機械のように冷静で効率のいい判断ができる教育を受けている。

そんな者たちが数十人固まっているというのは、ジョルジュに鉄壁を連想させた。

125 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2014/10/08(水) 05:11:12 ID:y9lJb8uA0



(‘_L’)「……あの階がもっとも早く通り抜けられます。五分は最低で、もう少し早まるかもしれません」
  _
( ゚∀゚)「どうやって」


(‘_L’)「……」

どのように説明したものか、フィレンクトは迷う。

ジョルジュひとりにだけ話しても、彼はこの情報をペニサスに流す恐れがあった。

計画は絶対に成功させないといけない。ジョルジュの命がかけられている。


そう思うと失敗させるわけにはいかなかった。フィレンクトはもう、足下が崩れる不安定なあの瞬間を経験したくない。


  _
( ゚∀゚)「……なんで言えない?」


沈黙するフィレンクトをいぶかしむ。

126 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2014/10/08(水) 05:12:03 ID:y9lJb8uA0


ペニサスは彼にとって仲間だ。だが得体のしれなさをフィレンクトは警戒している。

彼女がジョルジュに抱く感情と、この情報の扱いは別物だ。

どのように使われてもいいが、実行するそのときまで内密にしておきたい。

  _
( ゚∀゚)「もういちど聞く。……できるのか?」

(‘_L’)「はい」


説明ができない。

フィレンクトの警戒はペニサスへの嫌疑だ。ジョルジュにここまで尽くす彼女をないがしろにすることは、彼の怒りを誘発する。

計画にリスクを招けない。本来ならすらすらと喋れたのに、彼の命と天秤にかけた結果フィレンクトの口は重くなった。

フィレンクトはジョルジュから信用を貰わなければならなかったのに、不審を抱かれている。

成り行きの主人への錯覚、彼はフィレンクトを信用したわけではない。

127 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2014/10/08(水) 05:13:18 ID:y9lJb8uA0



遂行する計画と、従うべき主人への忠誠。
矛盾した行動にフィレンクトは気持ちが悪くなった。

  _
( ゚∀゚)「……お前が困ってるのは分かる」


(‘_L’)

  _
( ゚∀゚)「初めて会ったときもそんな顔してたな。どうしたらいいかわからないって」



(‘_L’)

  _
( ゚∀゚)「俺は成功できればそれでいい。おまえは陰謀に向かない奴だし。
言えない理由がよくわからんが、おまえなりに何か考えがあるんならそれでいい」



(‘_L’)

  _
( ゚∀゚)「銃よりも叱られるほうが怖いのか?」



そう言ってジョルジュが笑った。

128 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2014/10/08(水) 05:14:12 ID:y9lJb8uA0
フィレンクトには脅しも痛みも効かない。



恐怖も。

それを最初にジョルジュは知った。あとから彼の献身そのものが生きる糧だと気が付いた。

盲目のフィレンクトは主人を裏切れない。
失うことこそが最大の不安なのだとジョルジュはよく理解している。

129 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2014/10/08(水) 05:15:10 ID:y9lJb8uA0



('、`*川「……いっちょまえに内緒にするなんて生意気よ」


結局、ジョルジュにも打ち明けなかった。
それを意外そうにペニサスは眺める。もっと怒られるかと思ったが、ペニサスは問いつめたりしなかった。


('、`*川「……あんた何になるのかしら」

('、`*川「生きたい?」


(‘_L’)「わかりません」

('、`*川「死にたい?」

(‘_L’)「わかりません」


('、`*川「どっちでもいい?」

(‘_L’)「…………」

('、`*川「アタシあんた嫌いよ」


(‘_L’)「それもわかりません」

('、`*川「あら、嘘も覚えたの?」


(‘_L’)「…………」

130 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2014/10/08(水) 05:15:58 ID:y9lJb8uA0




('、`*川「ジョルジュの奴、情操教育のつもりかしら?」

('、`*川「……なんでもいいや。あんた、ジョルジュ死なせたら許さないからね。絶対生きて返しなさいよ」



それは難しい。主人の意志を違えることはできない。フィレンクトがどれほど動けても、自分はジョルジュの意志に忠実でなければならない。



彼を生かしたいのはフィレンクトも同じだ。だがジョルジュはーーー

……行動するのが一緒ならフィレンクトはひとりにならない。目的を達成すればジョルジュも満足するだろう。


計画の予想はできても想像は許されていなかった。もし、彼が死んだら。想像は困難だった。


思考するのに負荷がかかる。


重くて苦しいその何かは、フィレンクトの胸に混乱と戸惑いを落としていった。

inserted by FC2 system