(‘_L’)は命令が欲しいようです

Part2

29 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2014/06/22(日) 11:42:37 ID:r.1uBdXk0


  _
( ゚∀゚)「ここだ」

古い木造の建物だった。階段をあがってすぐの部屋。何も言わずに立っていると、開けるように促される。手の中の鍵が重く感じた。自分で鍵を開けるのは初めてだ。

何もないワンルームを想像していたが、室内は物が溢れている。テーブル、椅子、生活雑貨、テレビ、ソファ。玄関には山積みになった古新聞。観葉植物が黄色くなって放置されている。思わず隣のジョルジュを伺った。

今まで与えられてきたのはホテルの一室のような空間ばかり。すでに誰かが住んでいる場所へ、どうして連れてこられたのかわからない。カーテンを開けると太陽が部屋全体に差した。

埃が人の移動で所どころに舞っている。
珍しいもののように、フィレンクトは見ていた。

30 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2014/06/22(日) 11:43:59 ID:r.1uBdXk0


外観からは予想できないが、中は広い。扉で区切られた部屋がリビングに面して二つもある。そのうちの一つ、物置のようになっている場所をフィレンクトは貰った。

「そこらにあるものは好きに使え」

指定された部屋。細々とした物に囲まれ不思議な気分になる。雑多な所だが、けして汚いわけじゃない。ただ物が、まるで組み合わせられたように隙間無く置かれているので、それがよかった。フィレンクトも、その一部になりたい。

病院とも呼べないようなあの場所から、土地勘を掴ませないために目隠しで車に乗って運ばれてきた。身一つで何も持たず、着ているものさえ貰ったものだ。手首には手錠はない。チップの入った首輪もない。

31 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2014/06/22(日) 11:46:00 ID:r.1uBdXk0

チップの入った首輪もない。繋がられてい
ないと不安になる。それでもここに連れられてきた。きっと放り出されるわけではないはずだ。
積まれた荷物を前にしてそう考える。
フィレンクトの思考は一つしかない。
使われるか。捨てられるか。

「おい、手伝え。飯の支度だ」

ジョルジュの声が背中にかけられるまで、その場で考え続けた。

32 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2014/06/22(日) 11:47:18 ID:r.1uBdXk0

敵に傷を与えてはいけない場合。戦闘になってはいけない場合。逃げることを先行する。

歩きながら距離と高さを計っていた。あの建物は背が低い。密集した建築で、隣の家との足場もある。走ってはとっさに撃たれる可能性があった。

ゆっくりと、追いつめられる所まで移動する。それから下を眺めて、落ちた。張り巡らされた電線がちょうど真下にあったので、蹴って方向を変える。

向かいのベランダの手すりまで飛んで、身体の勢いを利用し反転。電球の割れた街灯にしがみついた。するすると降りて、屋上の男が下を覗くまえに逃げた。

場所に恵まれていた。高層のビルだと、こうはいかない。捕らえられてから久しぶりに身体を動かした。すこしだけなまっている。

このままあの病室に戻ろうかと思ったのだが、街中には銃を持った自営団があちこちに居た。姿を見られたら、撃ってくるだろう。手配はされたことないが、フィレンクトの顔は知れ渡っている。

苦労して隠れながら、主人に貰った部屋に一度帰った。薄いパネルに手をかざす。認証で簡単に入れる。以外にも部屋は荒らされていなかった。

33 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2014/06/22(日) 11:48:38 ID:r.1uBdXk0


主人が死に、フィレンクトが捕らえられて、誰も訪れていないようだ。

フィレンクトは主人からのメッセージを探した。死後、彼の縁者や後継者に従うような命令がないか期待していた。

だがフィレンクトに向けてのものは何もない。主人の死により、特定の誰かがフィレンクトを引き取るような話もなかった。

困った。これでは命令の順位は、ジョルジュただ一人になってしまう。彼は命令をくれないのに。ジョルジュはフィレンクトを捕虜として扱う。尋問くらいしか、与ええられるものがない。それ以外はずっと病室でぼんやりしている。

放置されるのには慣れていたが定期的に仕事がなければ困る。意識がさび付くのだ。思考は急に切り替えられない
長らく動けないでいる。

34 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2014/06/22(日) 11:51:36 ID:r.1uBdXk0
すると、そのまま根が張り付いたように固まってしまう。与えられる仕事こそが、フィレンクトには飴だ。
たとえ内容がどんなものでも。


(‘_L’)「これは?」
  _
( ゚∀゚) 「空豆だ」

かご一杯のさやのついた大きな豆。一つ一つを慣れた手つきでジョルジュは向いていく。みよう見まねでフィレンクトも同じようにしてみるが、どうしても手つきはたどたどしい。ジョルジュがふっと笑った。

「殺す方が上手だな」

返答を求められたのではない。だから何も答えなかった。

結局フィレンクトは戻る場所がここ以外になかった。主人の仲間には会ったことがない。常に直接、指示を下されていた。命令を下す人間が他にいないので、理想といえないジョルジュの元へ帰るしかなかった。

35 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2014/06/22(日) 11:54:59 ID:r.1uBdXk0

ジョルジュは簡単にフィレンクトの帰還を許した。そもそも連れ出したのはフィレンクト憎しで殺そうとした男であり、手錠の鍵の管理も悪かった。

逃亡する能力も資金も十分にある男が、主人欲しさに帰ってくる。フィレンクトという存在に、ジョルジュは吐き気を催した。


沈黙は常にそばにある。だがフィレンクトが残念だったのはそれきり会話が途切れたことよりも作業が終わってしまうことだった。

(‘_L’)「他に、することはないのですか」

豆を向いてしまえば、それをジョルジュがもっていく。

「にんじんを刻んでくれ」

そう言って並べられた。ジョルジュは豆を洗っている。手にとって、戸惑った。包丁はある。皮むきもある。それをどのように使うのか予想してみるが、当たっているのかわからない。

てっきりジョルジュと同じことをするものと思っていた。会食でなんどかシェフが目の前でふるうのを見たことがあるが、それは下拵えでない。

材料も違った。包丁はナイフと同じ扱いでいいのだろうか。だが、形が違うから使い方も異なるはず。頭の中で次にとるべき行動を必死に探していると、ジョルジュがまた笑って人参の皮をむき始めた。

それから小さく切っていく。フィレンクトは安堵した。見せてもらえるなら同じことができる。次に渡されたタマネギを皮むきで向こうとして、とうとうジョルジュは爆笑した。真剣な顔つきで行うフィレンクトが滑稽で。

36 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2014/06/22(日) 13:52:24 ID:r.1uBdXk0

('、`*川「感情って使わないと動かなくなるの。知ってた?」

勝手をした部下に厳しく処分を言いつけてジョルジュは不機嫌だった。彼の心配がフィレンクトによる返り討ちで、飛び降りた後も無事に生きていることを知った男はうなだれ、ジョルジュの言葉を聞き入れる。

('、`*川 「なんで殺さないのよ。まさかアンタ、飼うつもりじゃないでしょうね」

フィレンクトの願いそのものだったが、ジョルジュは首を降った。簡単に主人を鞍替えするものは、簡単に裏切る。今はフィレンクトの属性を理解するものが、ジョルジュ以外にいないだけだ。

('、`*川 「……もしも後悔とか、反省や償いを期待してるんなら無駄もいいとこよ。あれはそんなことできない」
  _
( ゚∀゚)「そういえば……お前見ただけで拷問痕だとよくわかった な。ひどい怪我でもないのに」

「何か知ってるのか……?」

('、`*川「ちゃんと殺す?」

「生かしておくつもりはない」

本音を言った。ペニサスはジョルジュの眼をみて、その決意を確認する。

37 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2014/06/22(日) 13:58:52 ID:r.1uBdXk0

('、`*川「引き出せるものなんてないでしょ。なのに自分のとこで面倒みるなんてどういうつもり?」
  _
( ゚∀゚)「お前、簡単に殺したほうがいいと思うのか」

('、`*川「だって生きてたほうが困るじゃない。使えない大きな道具は処分しないといつ向かってこられるか分かんないわよ。今はまだいいけど、アンタに不満が集中したらどうすんの」

  _
( ゚∀゚) 「信用があるうちは平気だ。でかい失態さえ犯さなけりゃな」

  _
( ゚∀゚)「俺はあいつに絶望してから死んでほしい」

魚を食ったことがない者に、絶滅を告げて
も意味がないだろう。痛みを与えても、耐えることに意義を見つけるかもしれない。

使い捨ての鉄砲弾にしても、恐らく完璧にこなして帰ってくる。殺すだけなら簡単にできた。難しいのは、フィレンクトを心から後悔させること。罪の意識のないものに、道徳をとくつもりはない。必要に思われてから捨てる。そのあとに殺せばいい。

('、`*川 「無理だと思うけど」
  _
( ゚∀゚) 「簡単に言うな。それでも人間だ。なんらかの心ぐらいはあるだろ」
「ないわよ」

「あんな人形に、意志なんてあるわけないじゃない」

そう、吐き捨てた。

38 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2014/06/22(日) 14:06:42 ID:r.1uBdXk0

噂よ。噂。そもそもあんな異常者、訓練だけでそうなるわけじゃないって予想くらいつくでしょ。どう育てたら完全に依存する人間ができあがると思う?

白い部屋に閉じこめるの。くわしくは知らない。ただ閉じこめて、自我を完全に奪ってから人格を形成するの。さっき言ったでしょ。感情を持ち主にコントロールされるから、思考ひとつが命令に従うようになってるんだって。

都合のいい人形よ。ロボットのほうがまだかわいげがあるかもね。いくらでも設定を変えられるんだもの。とにかく染み着いた性格みたいなもんよ。

変えられるわけないじゃない。フォックスがどこからあれを手に入れたのか知らないけど、あれひとりでこの辺りをまとめられるほどのもんなんだから。人間の三大欲求も低いの。性欲なんてないんじゃない。

だいたいあんなもの作るなんてろくでもないわ。変な奴らに目をつけられるまえにさっさと処分したほうがいいわよ。

39 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2014/06/22(日) 14:21:22 ID:r.1uBdXk0



('、`*川「何してんの」

芋の皮を向いていた。見てわかることなので説明はしない。ペニサスはゆっくりと手つきの悪いフィレンクトの手元をみて、
「ふうん」と呟くと

('、`*川 「何作るの?」そう聞き直す。

(‘_L’)「ポトフを」

朝食を作るのは難しい。食材を切って火に通して食器に盛りつける。調味料の数も多いうえに組み合わせが限られるので合わないと美味ではない。ジョルジュから教わったものはオーソドックスで簡単なものだ。好きなように作っていいと言われたがそれが難しいので教わったとおりの順番で献立を作っている。

('、`*川 「これから何するの」

(‘_L’)「洗濯と拭き掃除を」

ジョルジュがいない間、与えられたのはこれだけだった。どの部屋も好きに移動を許されている。

40 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2014/06/22(日) 14:27:35 ID:r.1uBdXk0
時間を埋めるように作業するのはフィレンクトには喜びだった。だがペニサスはその答えを聞いて一気に機嫌を損ねる。

('、`*川 「あの部屋にも入っていいって?」

(‘_L’)「はい」

('、`*川 「なにそれ。本気で罪悪感でも煽るつもり……」

ペニサスはぎっときつく睨んで言った。フィレンクトに会話の脈絡も、彼女の怒りの理由も知らない。

('、`*川 「あそこはアンタなんかが入っちゃだめよ。あたしだって駄目なんだから」
その言葉を守るつもりはなかったが、

(‘_L’)「はい」

そう答えた。

ペニサスはジョルジュの家に移ってから、
これまで以上にフィレンクトの元に来る。

明確な理由はないようだ。家事をするフィレンクトのやり方などに口をだしては怒る。彼女が来ると時間を大きくとられる。それでもジョルジュの帰りは遅いので、
終わらせることはできた。

('、`*川 「トルティーヤ食べたい。作って。」

冷蔵庫の食材は限られている。だが彼女はジョルジュに近しいようだし、家に彼女が居ることをとがめられたことはなかった。何度も作ると勝手もわかるようになる。

食材の味しかしない料理だったが、最近は混ざった味というものもわかってきた。

(‘_L’)「どうぞ」

一口たべて、なんとも言えないような顔でペニサスが言う。

('、`*川「ジョルジュそっくり。」

褒められたのか、そうでなかったのか区別がつかないが、模倣はできたということだろう。

41 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2014/06/22(日) 14:45:24 ID:r.1uBdXk0
('、`*川 「なにか話して。なんでもいいから」
食べながら彼女がいう。
フィレンクトが困惑するのはこういう時だ。すべての仕事終えて、することがないので逃げることもできない。

なんでもいいと言いながら、フィレンクトが一日の行動を言葉にすれば怒られる。彼女の求めるものがわからない。

(‘_L’)「何を話せばいいのでしょう」

('、`*川 「最近あったおもしろい話なんてどう?」

(‘_L’)「雑巾を縫いました……」

('、`*川 「なにそれ。ふざけてんの」

針を使って布を紡いでいくことを、好ましいと思った。初めてのことばかりで、慣れないものが多かったが、またやりたいと思のがそういうことだろう。だがフィレンクトの感動はペニサスに伝わらなかった。

('、`*川 「じゃ、フォックスについて聞かせて。覚えているものでいいから」

覚えている。主人のすべてを記憶していた。だが彼の行っていた陰謀は知らない。
フィレンクトが知ることではなかったからだ。

(‘_L’)「あの人に似ています」


('、`*川 「誰のこと?」

(‘_L’)「私を使ってくれない人」

('、`*川「……ジョルジュのこと?」

フィレンクトはうなずいた。

('、`*川 「……とんでもないこと言ってくれるじゃない。一体どこが似てんのよ」

(‘_L’)「話かけるところが」

('、`*川 「……アンタに?」

もういちど、フィレンクトはうなずいた。
ペニサスはあきれたがフィレンクトはそう思っている。

ジョルジュは主人のごとく振る舞うことはないが、家具のように存在しようとするフィレンクトに何度も話かける。

最初は一人言かと思ったが、まれに意見を求められるので会話だと気がついた。
主人にもそんな所があった。

これまでとはほとんど違う様子の新たな主人で、仕える期間も短かった。

42 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2014/06/22(日) 14:58:46 ID:r.1uBdXk0

('、`*川 「主人を変えたのは何回目?」

(‘_L’)「5回です」

('、`*川 「ジョルジュは入ってる?」

(‘_L’)「……はい」

('、`*川 「すべての主人を覚えてる?」

その質問には首を降った。交代する時に、過去を忘れるように申しつけられる。次の主人へと渡ったときに、命令系統が混乱しないように。

フィレンクトを取り戻そうとした男を撃ったことがある。だがあれは主人だったろうか。記憶はぼやけている。顔も思い出せない。

('、`*川 「アンタ、どうしたい?」

すっかり食べ終わって、つまらなそうにペニサスが聞いた。その質問の意図が汲めないでいると、もう一度彼女が問いかける。

('、`*川 「アンタ、これからどうしたい?」

フィレンクトは答えられない。
希望することは選択できない。
与えられるものを、ただ受け取ることしかできない。

44 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2014/06/22(日) 16:15:38 ID:r.1uBdXk0


ジョルジュが帰宅すると、フィレンクトを連れて外に出た。
車に乗り込み、道路を走り出す。

舗装されていない道を抜けて、高速へと乗り継いだ。フィレンクトは警戒した。

襲われるには絶好の場所だ。自分は今、武器を何も持っていない。防弾ベストも着ていない。

盾になることもうまくできないだろう。
だが警戒とはよそに、襲撃はなかった。車はビルの隙間を抜けて、建設途中の丘へとついた。夜景が広がっていて、夜空がかすむほど輝いている。

  _
( ゚∀゚)「……向こうがフォックスと手を組んでいた企業の縄張りだ。金だけは腐るほどある。今じゃ行政だって口をだせない」

ジョルジュが示した先は覚えがある。
何度も足を運んだことがある地理だ。
それから対照的に暗い方向をまた指さす。
  _
( ゚∀゚)「俺らがいるのがあっち。みろ。わかりやすいだろ。電気だって不足してる」

ぽつぽつと暗闇にわずかな明かりが見える。大部分が闇に消えていた。

中央に集まるように華やかなビルたち、
その周辺地域は暗く沈んでいる。
  _
( ゚∀゚)「フォックスが企業にどう取り入ったのかしらんが、奴は俺らの壊滅を約束したらしい。邪魔者がいなくなれば開発が進められる。あいつもていよく使われたもんだ」

  _
( ゚∀゚)「企業は俺らに居なくなってほしい。だがもともとこの土地は俺らのもんだ。後から違法に土地を譲れって無理いったのは向こうで、それに抵抗して抗争になった。」

  _
( ゚∀゚)「……フォックスは頭を潰せばちりぢりになると思ったんだろう。主要な俺らの仲間を、次々に襲わせた。お前を使って」

ジョルジュは銃を取り出す。オートマチックをスライドさせて薬莢を装填した。

フィレンクトはじっと見ていた。安全装置を外す。引き金を引けば発射する状態で、口径も大きい。

それをフィレンクトの眉間に突きつけた。
暴発すれば頭の半分は吹き飛ぶ。
殺傷能力の十分期待できる。

45 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2014/06/22(日) 16:17:25 ID:r.1uBdXk0
  _
( ゚∀゚)「…最近、はまってることってなんだ?」

突如話題を変えられた。
ジョルジュはペニサスのようなことを言う。

少し、考えて


(‘_L’)「植物に、水をやることです」
  _
( ゚∀゚)「それはなんでだ?」

(‘_L’)「たぶん、変化することです」
  _
( ゚∀゚) 「何がだ」

「色が」

枯れかけた植物に水やりを、ペニサスから 教わった。そのままの状態しか知らなかったので、水の有無で日に日にみずみずしく変わっていく様には驚かされた。

  _
( ゚∀゚)「いままで、したことはなかったのか?」

(‘_L’)「ありません」

ジョルジュの指先が、銃の重さでふるえる。フィレンクトはじっと、それを見つめる。

銃口が、額にくっついた。ジョルジュが引き金をひくその時まで、フィレンクトは目を閉じなかった。
  _
( ゚∀゚)「楽しいかいまを」

  _
( ゚∀゚)「楽しかったか?」


(‘_L’)「わかりません」

カチっと撃鉄の鳴る音がした。ジョルジュは疲れたように腕を引き上げる。再び銃弾は込められていないようだった。

わずかにフィレンクトは失望する。
役割を果たせないことが悔しい。
申しつけられば自分で、出来るのに。
  _
( ゚∀゚)「…楽しくなったら、言ってくれ」

(‘_L’)「はい」

車はそのまま、夜を走り抜けた。

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