(‘_L’)は命令が欲しいようです

Part1

2 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2014/06/18(水) 03:43:37 ID:5JotI9w60
その日、いつものように仕事を終わらせてフィレンクトは主人に連絡するために事務所へ帰った。事務所といっても二人そろって密談するだけの隠れ家。その日の出来事をつぶさに報告して、新しく仕事を命じられるために向かう。

仕事がら彼は足音を立てない。
長身でありながら静かに移動することができた。癖のようなものだが、入り口のドアが閉まっているのを確認すると隠密行動に切り替える。ここのドアは常に開いている。

主人が居るときに限って、閉められたりなどしない。壁に伝わる排水パイプをよじ登って、天窓からの侵入を試みた。ここは鍵もかかっていない。事務所には縦横斜めすべてに出口を設置している。
いつでも脱出できるように。

  _
( ゚∀゚)「……」

3 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2014/06/18(水) 03:44:50 ID:5JotI9w60

窓枠から室内を伺うと、主人の椅子に腰掛ける男がいた。男は床の血だまりを見つめている。視線の先には死体があった。
フィレンクトは咄嗟に主人の元に駆け寄ろうとして、やめた。息を確認するまでもない。死体は首と胴が離れている。

とんっと何かが降り立つ音がして、ジョルジュは振り向いた。机の文鎮でも落ちたのか、絨毯に吸収されるような音だった。
  _
(; ゚∀゚)「なっ……」

(‘_L’)

フィレンクトは主人を無感動に見下ろした。これまでこの男から下された命令を思い返す。暗殺、敵対勢力の排除、護衛。ギャングへの使い。情報屋の始末。
そのすべてをこなしてきた。今日も終わった仕事を報告すると、次の命令のための待機を申しつけられるはずだった。

4 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2014/06/18(水) 03:46:22 ID:5JotI9w60
  _
(# ゚∀゚)「てめぇ!いつのまに」

ジョルジュは焦った。背後から最も恐るべき男が近づいているのに気がつかなかった。感情が表に出せないので彼にはわからなかったが、この時フィレンクトは混乱していた。ジョルジュは銃をフィレンクトに向ける。引き金を引く前に長い足がそれを蹴り上げた。余裕のある優美な動作だったがずいぶんと重い蹴りで、銃は部屋の隅に飛んでいく。ジョルジュは冷静だった。

突然現れた男の顔を知っていた。続けざまの蹴りを後退して受け流し、携帯していたグルカナイフを顔を狙って投げつける。

先端に重心が集まり、打撃性の大きい山岳兵のナイフ。まともに食らえばそれだけで致命傷になる。だがジョルジュはそれよりも避けようとする動きを狙っていた。
ナイフの後ろで、振りかぶった一撃を浴びせる。大きく殴れば隙ができ、その間に銃を拾うつもりだった。

5 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2014/06/18(水) 03:48:09 ID:5JotI9w60
  _
(; ゚∀゚)「んな!」

それなのにフィレンクトは向かってくるナイフを靴のかかとで受け止めた。先ほどから足技がすばらしい。感嘆するまもなく、ナイフはジョルジュに跳ね返ってくる。

  _
( ゚∀゚)「まじかよ……」

数センチずれて壁に突き刺さった。わざとはずしたようだ。ジョルジュはフィレンクトを睨みつけた。だが冷めた目で見つめ返される。わずかな攻防だったがジョルジュの息はあがっていた。向こうは涼しさを保っている。
  _
( ゚∀゚)「……」

(‘_L’)「……」

6 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2014/06/18(水) 03:49:36 ID:5JotI9w60
(‘_L’)「彼は 何か伝言を残したでしょうか」
しばらく沈黙が降りて、先にフィレンクトが問いかけた。

  _
( ゚∀゚)「伝言……?誰あてにだ」

(‘_L’)「私かもしれませんし、他の誰かに」

さきほどの攻防が嘘のように淡々と話す。ジョルジュは身構えたがフィレンクトが襲ってくる気配はなかった。ボスの情報がほしいのか。しかしジョルジュはここに居た男を会話する間もなく殺している。逆上させるかもしれない。だが口を割らされるのもごめんなので正直に答えた。
  _
( ゚∀゚)「知らねぇな。なにも聞いてないぜ」

言った瞬間、フィレンクトが動揺したのが見てとれる。よほど重要な案件だったのか、呆然と物言わぬ死体に目を向けた。
  _
( ゚∀゚)「……?」

(‘_L’)「……」

7 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2014/06/18(水) 03:50:51 ID:5JotI9w60
立ち尽くす彼は彫刻のようだ。息するときだけわずかに肩が揺れる。フィレンクトは考えていた。主人からはなにも聞かされていない。死んだ後のことを、命じられていないのだ。思考が停止していた。なにをすればいいのかわからない。歩んでいたレールの先が、突然消えてしまった。

(‘_L’)「それでは私は……、誰に命令を乞えばいいのですか」
  _
( ゚∀゚)「は?」

突然バカな事を言い出した男をジョルジュは見る。表情は変わらないものの、どこか陰っていた。ボスの死に動揺しているのだろうか。それにしてはさっきまでの冷静さがおかしい。ジョルジュは苛立った。

知りうるかぎり最強の男が、雇い主が死んだくらいで不安そうなのが気に入らない。その気になれば自分など瞬殺できるだろう能力を持ちながら、迷子のような言葉はなんだ?

9 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2014/06/18(水) 03:52:05 ID:5JotI9w60
  _
(# ゚∀゚)「じゃあ死ねよ」

そう口から出ていた。そのためにジョルジュはここへ来た。先に殺した男はついで。目標はフィレンクトただ一人。
本来なら挑発の言葉だった。この後どうせ自分を取り戻すであろう男への、憎しみから吐き捨てた。


フィレンクトは混乱していた。29年、生きてきて、彼に指示をくれるものがいなかったのはこれが初めてだ。どの主人も死んだ時のことを教えてくれたものは居ない。たいてい譲られるか、代替わりでなどで仕えていた。ジョルジュは主人の身内でも、雇用の責任者でもない。全くの第三者だった。それでもその言葉は フィレンクトの耳にすっと入る。

フィレンクトはその時従うべき命令を探していた。ジョルジュは彼に悪態をついた。彼の放った言葉を命令と認識し、フィレンクトは胸元からリボルバー式銃を取り出して、身体を硬直させるジョルジュの前で自らの頭を撃った。

10 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2014/06/18(水) 04:09:53 ID:5JotI9w60
薬品の匂いがして、目を覚ました。見慣れた病室の白い壁でなく、薄汚れたつぎはぎ布のカーテンが目に入る。身体を起こそうとして上半身がベットに固定されていた。頭を触ることもできないが、なんらかの処置がされていることはわかる。
覚醒するのに脳波とリンクしているのか、チューブにつながれた先の機器が、機械音を鳴らす。さほど大きい音でもないのに、すぐに足音がこちらへ向かってきた。

('、`*川「起きたんだ」

女はフィレンクトの脈拍をはかり、身体をくまなくチェックする。横腹を撫でられ、古い傷跡に爪を立てられたがされるがままにおとなしくしていた。

('、`*川「なんだ。つまんない。怒らないの?」

そうのぞき込んだ顔には、好奇心と、なに かしらの侮蔑がある。どこかで見たことのある表情だった。

11 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2014/06/18(水) 04:10:38 ID:5JotI9w60
「彼は、どこに」

('、`*川「だれのこと?」

(‘_L’)「私を、ここに連れてきた人」

女はにやっと笑った。形容しがたい笑みだ。

('、`*川「じきに来るわ。……アンタもう少しビビりなさいよ。脈がほとんど一定じゃない」

それきりなにも聞こうとしないフィレンクトの耳に、女は楽しそうに呟いた。


「ここはアンタのボスが潰したくて潰したくてたまらない奴らの住処よ」

12 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2014/06/18(水) 04:11:31 ID:5JotI9w60
数分して、ジョルジュがドアを開けた。
('、`*川「ごゆっくり」

なにが嬉しいのか、機嫌よさそうに女が部屋を出て行く。
  _
( ゚∀゚)「……」

ジョルジュは、フィレンクトに繋がれている拘束を一本づつ外していく。ようやくフィレンクトは身体を起こすことができた。向かい合おうとするとがちゃん、と引っ張られる。ベッドの手すりに、手錠で片腕を括られていた。フィレンクトは座ったまま男の言葉を待つ。ジョルジュはしばらくフィレンクトを前に長考して、重そうに口を開いた。
  _
( ゚∀゚)「陥れようなんざ考えるな。知っていることはすべて話せ。いいな?」

(‘_L’)「はい」

14 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2014/06/18(水) 04:12:48 ID:5JotI9w60


ジョルジュはフィレンクトの主人の過去や、彼の行っていた事業、関わる者たちを聞いた。フィレンクトはすべてに答えた。けれど彼の知っているものなど微々たるもので、ジョルジュの期待していたものではない。フィレンクトは仕事の時に写真を見て覚え、記憶だけを頼りに 人物を探し出して始末する。それは膨大な記憶量になるため主人からよけいなことは忘れるようにと命令されていた。した、ことはうっすら覚えていても、日時や誰かなどとうに忘れている。

「いままで殺した奴らを覚えているか」

「いいえ」

ジョルジュはフィレンクトを殴りつけた。
渾身の力を込めたのに身体は揺らいだだけだ。
  _
( ゚∀゚)「……」

(‘_L’)「……」
  _
( ゚∀゚)「……なんで死のうとした?都合の悪い真実でも隠すためか?」

15 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2014/06/18(水) 04:13:37 ID:5JotI9w60
それはジョルジュの最も聞きたかった疑問だった。後始末をするなら、彼が死ぬよりもジョルジュが死ぬほうが早い。あの戦闘で人間離れした実力を知っていた。フィレンクトの行動が理解できなかったし、気味が悪かった。冷徹な殺し屋が、目の前で頭を吹っ飛ばしたのだ。奇跡、ほんの 少し銃口がずれていたらこの世には居られなかった。


(‘_L’)「……あぁ」

思い出したように呟いた。表情のなかった顔が少しだけ不思議そうに、ジョルジュを見る。年齢に釣り合わないあどけなさだった。

「あなたが言ったから」

16 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2014/06/18(水) 04:14:45 ID:5JotI9w60
('、`*川「殺さないの?」

フィレンクトの部屋を後にしたジョルジュに、ペニサスはそう声をかけた。
  _
( ゚∀゚)「……」

('、`*川「いま殺さないと、厄介になるよ。あいつ、耐性あるの」
  _
( ゚∀゚)「……耐性?」

ペニサスは小さく笑った。やだ、聞かないでよ。あたしが言うのよ。

('、`*川「拷問の跡。訓練では済まないような耐性。殺すんならあたしにさせてね。うんと苦しめてあげる」

それでもジョルジュは 沈黙している。
彼の態度にじれて、ペニサスが煽った。

('、`*川「アンタだって、いもうと殺されたじゃない」

ジョルジュはペニサスを睨む。彼女を無視して、歩みを続けた。方向はフィレンクトの部屋とは間逆で、ペニサスが怒鳴ったが気にとめないフリをした。その方が彼女を苛立たせられる。

17 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2014/06/18(水) 04:16:29 ID:5JotI9w60
フィレンクトは気持ちの悪い男だった。
その存在は半ば伝説じみていて恐れられている。あの男に挑んだものはすべて消され、ターゲットにされたものは上手に事故死した。喉の奥から笑いがでてくる。

苦かった。あれほどジョルジュが望み追いかけた悪鬼は、見捨てられた子犬ような眼をしている。

なぜあのような行動にでたのか、問いつめると命令がなかったから。そう言った。ジョルジュの乱暴な言葉が命令系だった。
それだけだ。混乱したフィレンクトはすがるようにその指示を全うした。
実に狂っている。ジョルジュは病室でフィレンクトを試した。本当に彼はそのような価値観を持っているのか。ボスを崇拝するあまりの後追い自殺ではないのか。

フィレンクト自身の持っていた銃を渡して、もう一度死ねと言った。彼は恭しくそれを受け取り、しっかりと口にくわえ込んだ。一度失敗しているので、確実な方法でやり直す。迷うことなく引き金をひいた。

通常なら声帯から弾丸が通って頭蓋にまで貫通し間違いなく死んだだろう。銃には弾が入ってなかった。カチ、カチ、と音がして、すまなさそうにフィレンクトが言う。

(‘_L’)「弾丸が入っていないようです。弾をもらえますか?」

18 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2014/06/18(水) 04:18:14 ID:5JotI9w60

慈悲心を持ったわけでも、哀れんだわけでもない。あの男は間違いなく、己の敵だ。
復讐を忘れてなかったはずだが、ジョルジュはフィレンクトの存在をもて余している。

この世の常識を身につけ、傲慢であれば十分だった。仲間たちの多くは痛めつけて生まれてきたことを後悔されるようなやり方で処刑することを望む。

それは憎む相手の、残忍な手口に対しての報復だからだ。フィレンクトは非道だが残忍ではない。冷徹だが汚くない。見本のようにきれいな殺しかたをする。だから彼に見合うのは絶対の死。どれほど魅力的な情報と交換してもそれを変えるつもりはない。なのに彼 自身が、それに恐怖していない。

どちらかといえば、死ぬことよりも放っておく事の方が不安そうに見える。事実、敵(フィレンクト不安から主人に近く認識しているがジョルジュにそのつもりはない)から受け取った銃で死のうとした。怯え、懇願しなければ裁いたことにはならず、溜飲も下がらない。

さきほどのペニサスの言葉で痛めつける案も立ち消えた。殺してくれと頼むほどの拷問は、時間がくれば死んでしまう。フィレンクトには、死は主人が下す命令の一つにすぎないのだった。
  _
( ゚∀゚)「奴は凶器だ……」

問題はどのようにしてそれを裁くべきか

19 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2014/06/18(水) 04:30:56 ID:5JotI9w60
数日がすぎた。相変わらずフィレンクトの様子を見に来るのはあの女だけで、ジョルジュは姿を見せなかった。ペニサスはことあるごとにこれから先の捕虜への暗い未来を語ったがフィレンクトは動じない。それを決定するのはジョルジュで、すでに彼は死を命じられている。だが道具がなかった。

弾の入った銃を引いた時点で、もういいとも言われている。もっと何か言うべきことはなかっただろうか。主人の命は終わった仕事はすみやかに忘れること。今まで気にしたことがなかったので覚えていることが少ない。ジョルジュは自分を使ってくれるだろうか。時々他人と組むこともあって賛辞されることは多々ある。彼は自分の主人ではない。

主人を殺した。けれどフィレンクトは何の命令も持たされなかった。その後どうすればいいのか自分で判断できない。誰に従うべきなのか。ジョルジュの訪れが待ち遠しかった。もう一度命じてほしい。
今度こそ、上手に死んでみせるから。

20 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2014/06/18(水) 04:32:13 ID:5JotI9w60


突然ノックされることもなく、ドアが開かれた。見知らぬ男。男はフィレンクトの側にくると、手錠を外した。


(‘_L’)「……」
(´・_ゝ・`)「……」

男はフィレンクトの腕を強く掴むと、強引に部屋の外へ連れ出す。少し迷ったが、鍵は本来ジョルジュが持つものだろう。彼の許可のうえだと思い、ついて行く。
ねじれた階段を上って、ついた先は屋上だった。建物はいくつも後から継ぎ足される形で増築されている。フィレンクトのいた部屋はおもしろい外観の建物だった。
それでここが市街地だとわかる。スラム化の一歩手前。フィレンクトでさえ入るには案内人が必要だった。

「おまえ死に損なったんだって?」

男は下をのぞき込みなが言う。フィレンクトも下を見た。工事現場だと思ったが、
手入れされた地面、墓石。墓地だった。

(´・_ゝ・`)「ジョルジュが助けたなんて思ってないよな?あいつはとことんおまえを恨んでるんだから。……俺もな」

(‘_L’)「……」

21 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2014/06/18(水) 04:33:15 ID:5JotI9w60
フィレンクトは何も言うことはない。雑談するような能力は持ってない。ジョークのひとつも知らなかった。それでもなぜ男がここに連れてきたかを察する。

(´・_ゝ・`)「俺の手で殺せるなんて……神に感謝するぜ……なぁ悪魔、いつもなにを考え て殺すんだ?俺は早く天国にいくよう祈ってる」

男はお世辞にも体格がいいとは思えなかった。歩き方から、体術にも通じているようには思えない。軸のぶれた歩幅。だからフィレンクトは殺意は感じ取っていても、警戒はしていなかった。余裕たっぷりに、男が笑う。銃を取り出した。まるでこの世のすべてがそれにひざまずくように、優越の眼でフィレンクトを見る。

焦点をあてるふりをして、腕、肩、足、頭にふらふらと銃口をむける。男はフィレンクトの、絶望する姿が見たいのだ。殺してしまってはいけないのだろうな。まだジョルジュは命令していない。ならフィレンクトは独断を許されない。長年の染み着いた考えだった。この男は恐らくジョルジュの部下。本来ならば自分に向けられる銃は殲滅しなければならない。だが今の状況で、男を殺すのはためらわれた。保身のためではない。主人の気に障ることをしてはいけない。考えるフィレンクトは反応がなく、男が怒鳴った。

22 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2014/06/18(水) 04:34:25 ID:5JotI9w60


「さっさと命乞いしろよ。いまなら頭にぶち込んでやってもいいんだぞ。それとも先にそっちに突っ込むか?」

銃口が、フィレンクトの股間に向けられる。男として、背筋が凍るほど恐ろしい瞬間のはずだった。

(‘_L’)「困ります。あの人の、命令がないので」

フィレンクトが動いた。だが階段にも、男の側に近寄るわけでもない。男は背を向けるフィレンクトの足下に威嚇射撃をした。弾が数センチ横のコンクリートにめり込む。

「おい……ふざけるなよ。ほんとに撃つぞ」

それでもフィレンクトは止まらなかった。
囲むような壁はない。銃口をようやくフィレンクトの背中にむける。男は、歩みは一度止まると思った。数歩先は落下しかない。振り向いて、戸惑う姿に連射してやろうと。だがフィレンクトは屋根を踏むように空に足を落とした。支えを失って、彼の身体は簡単に地面に落ちていく。

(´・_ゝ・`)「ハハハ……地獄に落ちろ」

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