(‘_L’)は命令が欲しいようです

Part17

746 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2016/01/08(金) 01:49:34 ID:DincLnGo0



( ´∀`)「ずっと思っていたことだよ。
どうして人類は管理されてはいけないのか」




( ´∀`)「およそこの地上にて、誰のものでもない場所が存在するかね?

国、土地、空、地下、水、空気、はたわ宗教という概念。民族間の価値観。これほどまでに共有しているというのに。
絶滅動物は美しく尊いものでなければ保護されない。
草木を守るために共存する醜い虫たちは見向きもされない。人類が興味がないからだ」
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747 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2016/01/08(金) 01:50:23 ID:DincLnGo0


( ´∀`)「生物には優劣がある。
当然のことだ。しかし最上位に人間が立ち、下位はそれ以外。

なるべく減ることがないようにという、最低限の意識しかない。
まるでリサイクルマークのようではないか。

あればそれなりに分別にだすが、なければ行動にうつすことなどまずやらない。そうした危機感もなく、いまどこでどのような動植物が死に耐えているのか、知ることもない。
知ろうとも思わない。」




( ´∀`)「当然だ。人間には人間の営みがある。他の生物だって自分たちの生存が第一なのだ。

いったいどうして自分たちのことをないがしろにしてまで他を気にしなければならないのだね。」

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748 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2016/01/08(金) 01:51:12 ID:DincLnGo0




( ´∀`)「本能に忠実になれればじつにしあわせだ。人は人らしく生きている。このうえなく正常な世界の理。

ただそこに科学はない。
傲慢な繁殖だけがある。
増えすぎたゆえの、淘汰が必要になるくらいの」



( ´∀`)「人間が発展し、この星の支配者となることが人類観点からみてこのうえない功績だとして、それらを管理、支配することは」


( ´∀`)「さらなる偉大さにつながるのではないか?」



( ´∀`)「管理できないからこそ争うのだ。秩序がないから殺しあうのだ。

互いにゆずりあう精神が培われないから、自己中心な損を嫌い、奪うことでしか幸福を信じられないのだ」


( ´∀`)「人が少なければ、そのぶん敬うことが増える」



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749 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2016/01/08(金) 01:51:54 ID:DincLnGo0


( ´∀`)「実際にクローズド・サークルを行ってみればわかる。
食物の心配さえなければ、人が減るのは恐怖でしかない。
そんな状態で誰が殺し合いなどしたいものか。乱すもの、脅かすものこそ一番最初に排除されるだろう」


( ´∀`)「倫理があり、教育があり、思想を共有し、豊かさを分かち合う。奪い合うからこそ、争うのだ。しかし分かち合うには、いまの人は多すぎる。」



(A^ν^)「だからプロジェクトを?」


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750 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2016/01/08(金) 01:52:35 ID:DincLnGo0

( ´∀`)「ああ。教育ない人間など人ではないよ。ただの獣だ。知性ある獣など、害獣いがいのなにものでもない。環境を破壊し、貴重な生物の循環を止める。絶滅寸前の動植物などめずらしくもない。

そしてその危機に気づきもしない。
不足になってからでは、意味がないのだ。
足下が割れそうなときには身動きなどできないだろう?」



(A^ν^)「なるほど」



( ´∀`)「人類の歴史など、殺戮の繰り返しだ。それは人も動物もかわらん。
生態系に破壊を促すだけ、人類のほうがよほど害悪ではあるがな」


(A^ν^)「あなたは原理主義者ですか?」


( ´∀`)「そうだ。極論を言っていると自分でも判っている。」


( ´∀`)「しかし長年の考えをまとめると、どうしてもこうなるのだ。」


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751 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2016/01/08(金) 01:53:24 ID:DincLnGo0

( ´∀`)「わたしは人類を愛している」







「だから破滅するまえに、どうにかしてやりたいと思ってる」

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752 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2016/01/08(金) 01:54:16 ID:DincLnGo0


(A^ν^)「破滅?せいぜいが殺し合い程度では?」


( ´∀`)「戦争だよ」


( ´∀`)「近いうちに必ず起きる」


( ´∀`)「そしてそれだけはどうしても回避できない」


( ´∀`)「歴史的に、国が大量虐殺を繰り返すのはどうしてだと思う?」


(A^ν^)「粛清ですね」


(A^ν^)「権力を握るための」


( ´∀`)「その通りだ。それは邪魔なものを排除するために。自分たちが、生き残るために。」


( ´∀`)「邪悪であれば、あるほどに生存が増す」



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753 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2016/01/08(金) 01:54:59 ID:DincLnGo0




( ´∀`)「生き残る確立が高くなる。
人を蹴落とすのは本能なのだ。
しかし当然、それだけではいけない」


( ´∀`)「わたしはね、性善説を信じてもいるんだ」


( ´∀`)「誰かを思いやるのは美しい。暖かい。喜ばしい。」


( ´∀`)「家族や身内を愛するのが種を残すことの本能かもしれない。だが全くの他人を、なにの思惑ないままに愛するのは違うだろう?」



(A^ν^)「そうですね」


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754 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2016/01/08(金) 01:55:42 ID:DincLnGo0



( ´∀`)「今の時代、愛するのにも理由が必要なのだ。男女、結婚相手、愛玩物。自分に有効なものか、そうでないものか」


( ´∀`)「その枠を取り払うためには、やはり現人類は多すぎる」


( ´∀`)「生きる数が限られてしまえば、人は争わざるを得ないのだ」


(A^ν^)「理由はそれだけでしょうか」


( ´∀`)「なに?」


(A^ν^)「この都市は恵まれています。電気も水もない農村よりもはるかに。教育も、最低限行き届いている。」


(A^ν^)「それなのに、まだ抵抗するのはなぜでしょう」


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755 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2016/01/08(金) 01:56:25 ID:DincLnGo0



( ´∀`)「利権ほしさだろう。元は彼らの土地と考えているのさ。もう取り上げられているのに」


(A^ν^)「ええ。でもそれならそれで、おこぼれをもらっていればいい」


(A^ν^)「こちらだって援助はしている。微量ですが。」


(A^ν^)「命をかけてまで、抵抗する意味がわからない」


( ´∀`)「聖戦と考えているなかもしれんな」


( ´∀`)「大義があれば、人はなんだってできるものだ」


(A^ν^)「そんな戦士のようにも思えません。やる事といったら子供を盾にして時間を稼ぐような奴等です」


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756 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2016/01/08(金) 01:57:07 ID:DincLnGo0



( ´∀`)「ふむ。ならば、もっと単純なものかもしれない」


( ´∀`)「争いなど、いつの世も原因はひとつだ」


(A^ν^)


( ´∀`)「足りないから、奪うのだ」


( ´∀`)「彼らの求めるものとは、そもそもなんなのだ?」



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757 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2016/01/08(金) 02:01:31 ID:DincLnGo0












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758 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2016/01/08(金) 02:02:16 ID:DincLnGo0



壁は順調に組み立てられている。


黒色の金属板はしっとりと輝くこともなく、ただ暗い暗い墨のように黒い。


30キロほど間隔をあけ、貧民区域を囲うようにして、高く長い。

まるで巨人がいまにも顔をだすようではないか、と誰かが言った。


それほど異様な高さだった。

遠くの山を見るようにして壁が景色のなかにある。


道路や家々を遮断しながら。
距離を詰め、丸く全体を囲っていく。
人々はその工事の目的を知らない。


邪魔でありながらも、隙間から通行できるからだ。それに文句をつけても、止めさせることなどできない。


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759 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2016/01/08(金) 02:03:20 ID:DincLnGo0




(`∠´)「やばいな」


ビル屋上からその景色を眺める。

20階数ほどある建物だが、壁の高さにはかなわない。

雲に届くのでは、そう錯覚するほどだった。



(`∠´)「まじで…やばい」


企業がこれほど大がかりなことをするなんて、しかし予想はつく。しびれを切らして手っ取り早く片付ける魂胆だろう。

倫理も道徳もなく。



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760 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2016/01/08(金) 02:04:05 ID:DincLnGo0




(`∠´)「あの男、こんなかから探さないと行けないのかよ……」


砂のなかに落ちた一粒を、掻き分けろというようなものだ。その一粒は金色の。
埋もれているから、見つからない。


逃げたい。逃げようか。優秀な脳みそがそう訴えかける。関係ないものに巻き込まれるのなど、クソ食らえ。


渡辺から逃げればいいだけの話。
もしくは殺されなければいい話。



(`∠´)「駄目だ……」


もしも、捕まったら。


渡辺のやり方は、よく知っている。
日頃彼女を怒らせても被害に合わなかったのは、渡辺がそこまで自分のに興味がなかったからだ。しかし今は違う。

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761 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2016/01/08(金) 02:04:49 ID:DincLnGo0



ある意味で、とても頼りにされている。それを裏切るのは、自殺と同じ。それも酷い死にかたをするだけだ。


性器を切り落とされ、数時間ほど生かされていた男の末路を思い返す。

渡辺はそういう女だ。
どうすれば死なずにできるだけ苦しむのか、やり方を知っている。
自己流で。




(`∠´)「ちくしょー……」



せいぜい壁が、できあがるまえに。

あの男を見つけなくてはいけない。



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762 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2016/01/08(金) 02:05:44 ID:DincLnGo0









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763 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2016/01/08(金) 02:06:34 ID:DincLnGo0


男の体が、ベッドから半分ずり落ちている。


奇妙にねじれた頭が床について、顔は真後ろを向いている。

目が合わないことだけが救いだった。


エヴァは上手に首を締めたのだろう。

器用に、窒息させてから首をちぎった。


点々と、果実をつぶした時のように。


圧迫された瞬間、水が吹き出たようにして、血が跳ねたのだった


横たわった体。物体になりさがる、元人間。

となりにはエヴァが笑っている。
いやなことから解放されて、嬉しそうに。


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764 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2016/01/08(金) 02:07:29 ID:DincLnGo0




「どうして?」



川*゚ー゚)「だって、痛いことするんだもん」



実験だったら、検査だったら。
エヴァはこんなことをしなかった。

男を殺さなかったはずだ。


聞き分けの悪い子は、いつもお仕置きされる。反抗するも、それに怯え、渋りながらも言うことを聞いていた。

職員たちの威圧感にも負けて。
けれどここは密室で、男とふたりきりだった。


男以外の目がない。


大勢の職員から、たったひとりの男と対立するだけになる。

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765 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2016/01/08(金) 02:08:17 ID:DincLnGo0



だからエヴァは反抗した。

聞き分けなかった。男に怒った。


ひとりよりも、大勢のほうが怖いに決まっている。

エヴァには保身がない。


それからを思考することができない。空間把握能力も低く、概念がどういう意味なのか、考えることができない。

知識が高ければ高いほど、実験動物は危険なものになるからだ。


単純でおとなしく、聞き分けることができる。
飼育が簡単で、手間もかからない。
でも、だからこそ。


そのあとを想像することができない。


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766 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2016/01/08(金) 02:09:06 ID:DincLnGo0



「痛いことをされたの?」


川*゚ー゚)「うん」

「足をひらけって……言われたの?」


川*゚ー゚)「掴まれたの」


息が、つまる思いで聞いた。


「……痛いのを、××られたの?」


川*゚ー゚)「うん」


でぃはベッドに乗り上げると、男のずり落ち掛けている体を蹴った。

死体はだらん、とはずみに床に転がる。
表情ない顔で、それを見下ろした。

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767 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2016/01/08(金) 02:09:57 ID:DincLnGo0



「じゃあ、ぼくのせいだね」


川*゚ー゚)「なんで?」


「こいつはぼくとしたがってた」


だから代わりが必要になった。
求めるからこそ、嫌悪となってより執着された。

手をだしてはいけないジレンマと、職員の権限にストレスを感じていたはずだ。代替え品にてすませようとする。

危機を感じていた。
だからでぃは逃げていたのに。


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768 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2016/01/08(金) 02:10:40 ID:DincLnGo0




川*゚ー゚)「だめ、あれ痛いの。でぃ柔らかいから、だめ」


「……エヴァも痛かったでしょ」


川*゚ー゚)「うん」


「だからね、ぼくも痛い」


川*゚ー゚)「されたの?」


「ううん。そうじゃないんだ……」


「でも、痛い」



まっすぐな、澄んだ目が見つめてくる。

ひどい、気持ちが悪くなることをされたのに、彼女はどこまでも清らかだった。


こうなってもまだ、でぃのことを心配してくれる。
身代わりにされたというのに。
男に刺されたのに。

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769 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2016/01/08(金) 02:11:22 ID:DincLnGo0


「痛いんだ」


呟くと、彼女が腕を延ばし、でぃをつかむと引き寄せた。

握力の強い手は、金属の手すりを簡単に折り曲げる。骨ごと肉を引きちぎる。
けれど警戒も、危険も感じられない。


ひやりと変温動物のように冷たい肌をしていた。優しい力で抱きしめられる。

この手がでぃを傷つけるはずがない。


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770 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2016/01/08(金) 02:12:04 ID:DincLnGo0


川*゚ー゚)「まだ痛い?」


ゆらゆら、抱かれながら揺れる。

子供をあやすようにして。

座りながら、一定のリズムで穏やかに横に揺れる。寝付きの悪い子に眠りを誘うような仕草。
慰める動作というものを、エヴァはこれ以外に知らない。

数えもしないほどまえに、泣く彼女はこうやって誰かに慰められた。

それを教えたのは誰だっただろう。
でぃかもしれない。
もういない優しかった個体かもしれない。


川*゚ー゚)「ねえ痛い?」


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771 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2016/01/08(金) 02:13:02 ID:DincLnGo0

心臓の音が、耳に入る。


ゆったりと、穏やかで等間隔の音が。
すぐそばに死体があるのに。

殺してしまったのに。
エヴァがかわいそうなのに。
弾力のある肌の下、鼓動を聞くのは気持ちよかった。



「うん。痛い」


そっと目を閉じた。彼女の背中に腕を回し、離れがたく抱きしめる。

肩にあごを乗せて、呟く。


「だから、もう少し。こうしていて」

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772 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2016/01/08(金) 02:13:45 ID:DincLnGo0





考えなければいけない。
人を傷つけた実験対が生きられる理由を。見つけなければいけない。

エヴァが処分されない道を。

人間に危害を加えた個体は処分される。それは規則だった。

いちど支配から逃れそうになると、彼らは学習するからだ。

大きな体、獣の力。鉄の柵を食い破るほどの剛力や、顎の力。

一トンを越える体重を持つものも居た。

人型が人に害したのは、でぃが知るかぎり初めてだ。

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773 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2016/01/08(金) 02:14:39 ID:DincLnGo0

理由をこじつけなければ、そう考えるも、都合のよい言い訳が思い浮かばない。
エヴァは被害にあっただけ。


そんなことが通るほど、施設は優しくない。

それよりも彼女の反抗心が問題になるのは間違いない。


どうにかして、切り離さなければ。

この死体、この男とエヴァとの関係を。

考えろ考えろ。どうすればいい。


どうすればエヴァを守ることがきる?
どうすれば、男を殺したことを知られないようにできる?


死体の隠蔽はできない。エヴァを隠すこともできない。なにか、なにか工作はできないだろうか。

しかし考えは堂々巡りにしかならない。

管理されている身として、できることが限られすぎている。

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774 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2016/01/08(金) 02:15:21 ID:DincLnGo0



犯人探しは必ず行われる。

そのときに嘘がうまくないエヴァは、言わないことしかできない。


誰か。誰かが必要だった。エヴァのために、でぃに強力してくれるだれかが。


しばらくうずくまって考える。

思い立つと、でぃは立ち上がり、眠っているエヴァにシーツをかけて部屋を出た。

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775 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2016/01/08(金) 02:16:03 ID:DincLnGo0



うまくいかないかもしれない。
すべてバレてしまうかもしれない。
それでも、考えられる一番いい方法がほかにない。


でぃの知るかぎり、もっとも確実な方法。

廊下をなんども曲がり、生活形態の違うブースにたどり着く。


夜行性の生き物たちが住まう場所。


檻に囲まれた、職員たちが手を焼くも、使い勝手の良さと耐久性の高さから重宝されている生き物。


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776 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2016/01/08(金) 02:16:48 ID:DincLnGo0



目の前に。ぱっくり開いた大きな口が。生ぬるい空気が頬に触れる。

吐息がかかったのだ。

でぃは顔をあげた。願いを込めて。

その黒い目を見つめる。

言葉が通じるのはわかっていた。
その目に知性が宿っていることも。



だから懇願した。




「お願いだ」



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777 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2016/01/08(金) 02:17:38 ID:DincLnGo0






(*゚ー゚)「たすけて」



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