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780 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2016/11/17(木) 13:06:27 ID:/z5WvXAw0
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“誰だったかしら。兄さま。
究極の愛はカニバリズムだと言ったのは。エドガー・アラン・ポー?”
“違うよ。姉さま。
彼はネクロフィリアだったんだ”
【ブラックラグーン】
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781 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2016/11/17(木) 13:07:08 ID:/z5WvXAw0
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かさついた紙袋を破ると固い生地のビスケットがみっしりと入っている。
つまむと一口かじった。
(#゚;;-゚)「ビスケット…好き」
(#゚;;-゚)「パンも。クッキーも。パスタも。好き」
(#゚;;-゚)「お肉はきらい」
「だいっきらい…」
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782 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2016/11/17(木) 13:09:34 ID:/z5WvXAw0
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783 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2016/11/17(木) 13:10:45 ID:/z5WvXAw0
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( ´_ゝ`)「あ」
(A^ν^)「なんです?」
( ´_ゝ`)「こいつこいつ」
('A`)
( ´_ゝ`)「調べたらさ身元でてきた。すげーぞこいつの履歴書。」
(A^ν^)(誰だこいつ…?)
( ´_ゝ`)「大尉だって大尉。」
(A^ν^)「軍属ですか?」
( ´_ゝ`)「そ。いまはそんなもんなくなっちまったけど」
( ´_ゝ`)「へぇパイロットか。ならいい職にもつけただろうに。なんだってこんなとこにいるんだろうな」
(A^ν^)「職業軍人なんて…もうなかったはずですよね。そもそも軍隊なんて二十年まえに廃止されてるのに」
( ´_ゝ`)「ナンセンスな奴っているんだなあ。何が目的なんだろ」
( ´_ゝ`)「ジャーナリストだったら困る。めんどくさい」
(A^ν^)「…なにしに来たんでしょうね。」
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784 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2016/11/17(木) 13:11:38 ID:/z5WvXAw0
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( ´∀`)「飛びたいんじゃないのか」
( ´_ゝ`)「あ、いたの」
( ´∀`)「いつの間にか、個人での飛行どころか国内でも飛行機の操縦は限られたものになったからなぁ。」
( ´_ゝ`)「嬉しそうだな」
( ´∀`)「おう。パイロットなんて久々に聞いたとも。私が子供のころは空港に行けさえすればたくさんの飛行機や戦闘機の本物が見れたものだ。懐かしい」
( ´_ゝ`)「すっごい非効率かつ非合理で廃止された職業だっけ?」
( ´∀`)「嘆かわしいことだ。彼らは英雄だのに」
( ´_ゝ`)「いまじゃ遠隔で操作できるのに。手動でしか飛ばせなかった頃のはなしだろ」
( ´_ゝ`)「中身入りミサイルにならないだけましじゃん」
( ´∀`)「いつの時代も人は空に憧れるものだ。ああ羨ましい。この男は戦闘機に乗ったのだろうなぁ」
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785 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2016/11/17(木) 13:12:21 ID:/z5WvXAw0
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( ´_ゝ`)「え、無理でしょ。」
( ´_ゝ`)「戦闘機なんて何十年も前からもうただのラジコンだし」
( ´_ゝ`)「人間が運転する機械なんてよく乗れるよね」
( ´_ゝ`)「こわいじゃん」
(A^ν^)(怖いって感覚あるんだ…)
( ´∀`)「そうかな。わたしは逆にすべて機械任せのほうが恐ろしいよ。世代のせいかもしれんな」
( ´_ゝ`)
(A^ν^)
( ´_ゝ`)「んー」
(A^ν^)「そうですかね」
(A^ν^)「機械仕掛けのほうがなにより安全で確実だと思いますけど」
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786 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2016/11/17(木) 13:13:03 ID:/z5WvXAw0
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( ´∀`)「以外とそうでもない。なにより緊急に対応できない、というデメリットがあるだろう。このあいだなんてひどかった」
( ´∀`)「そもそもの始まりは食糧難からだ。それさえなければ施設破壊も逃げられることもなかったのだ…」
( ´_ゝ`)「ふぅん?」
( ´_ゝ`)「なんかあったっけ」
( ´∀`)「タワー倒壊のことだよ。それのお陰で交通事情が麻痺し、たいへんな目にあった。首都であり中心部であるここはまだましだったろうが」
( ´∀`)「わたしたちの研究施設なんて地方みたいなものだからね。身体で言えば指先のようなものだ。血液の供給が追い付かなくなれば真っ先に崩れ落ちる」
( ´_ゝ`)「回りくどい」
( ´∀`)「……つまり、食うに困ったのさ。弱小施設とはいえ職員は50人以上いたし、研究対象なんてその倍だ。」
( ´∀`)「災害といえば身ひとつで逃げるよう教えられているし、備蓄などなかった。配給を待たなければいけない」
(A^ν^)「…………」
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787 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2016/11/17(木) 13:13:48 ID:/z5WvXAw0
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( ´∀`)「しかし対処は遅かった。遅すぎるほどだ。すでに近隣の店は何もかも買い占められていた後だったし。水道が使えることだけが救いだったな」
( ´_ゝ`)「まじかー。やっぱ後手後手だったんだなー」
( ´∀`)「危機にすかさず対応できる者がいないのは仕方ない。その地位の人間が不足していたのだろう」
( ´_ゝ`)「おかげ様で。俺がいまんとこトップだしね」
( ´∀`)「しかしこの時代にこの都市で飢餓というのは笑えんぞ。水とクラッカーだけで何日も過ごすのはずいぶん苦しかったしな」
( ´_ゝ`)「防衛システムは稼働してたけど、たしかに流通に関しては遅かっただろうな。あれ判断に時間かかるし」
( ´∀`)「そこらへん改訂したほうが絶対にいい」
( ´∀`)「さて、議題の続きがまだある」
( ´∀`)「できればなにか食べながらしたいものだが」
(A^ν^)「でしたら席を変えましょう。なにか運ばせますので。フレンチはお好みですか?」
( ´∀`)「もちろん」
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788 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2016/11/17(木) 13:17:48 ID:/z5WvXAw0
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789 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2016/11/17(木) 13:19:23 ID:/z5WvXAw0
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食事が足りなかった。
それが第一の悲劇。
職員も実験動物たちも、みな飢餓を経験したことがなかった。
マニュアルの生活したしたことがなかった彼らは避難についてもマニュアルでしかなかった。災害時に身ひとつで逃げることを訓練されている。
災害時の支援はすみやかに行われるため、荷物を持つ必要がない。
だがそこは限られた都市の、限られた範囲だったために、流通がままならなかった。
食品を保存する仕組みはなかった。巨大な冷蔵庫の中身は消費期限の近いものから順に自動的に廃棄される。
職員たちはみな、その日の日付を食べたことがない。要領を圧迫することなく新鮮な食事を取るための仕組みである。
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790 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2016/11/17(木) 13:20:17 ID:/z5WvXAw0
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( ´∀`)「さて」
( ´∀`)「われわれが目指したのは真性半陰陽、つまり完全なる両性具有者だ」
銀色のナイフが、霜ふりの赤い肉を切り落とす。ほとんど力を入れていないに関わらず、指先だけで肉が裂けた。
( ´∀`)「産むこと、孕ませることに特化させた生殖のための生物」
( ´∀`)「ただ膣の育ちが遅れていてね、さすがにデリケートな器官だから、時間を待たなくてはいけなかったのだ」
( ´_ゝ`)「クラインフェルターみたいに、XXY型ってこと?」
( ´∀`)「ちがう。それではただの染色体異常だ。これは根本からして異なる」
( ´∀`)「ほ乳類に、魚の性質を持った性別転換だと考えてくれればいい。卵巣も精巣も、機能している」
( ´∀`)「本来両性具有は繁殖に向かない。どちらかの生殖器に分かれなくては2つとも駄目になるうえ、もともとが歪なため奇形のかたちで生まれてくることが多い」
( ´_ゝ`)「アンタの想像が確かなら、そいつは精子と卵子を両方持っていることになる」
( ´_ゝ`)「そんな存在なんて、可能なのか?」
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791 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2016/11/17(木) 13:20:59 ID:/z5WvXAw0
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( ´∀`)「可能なのだ。そして、生み出した。1000/1の確率的で卵が授精した瞬間に、このプロジェクトは始まった」
( ´∀`)「単純に生殖するだけなら、単体生物のほうが優れているのは当然だ。しかし人は有性生殖によって遺伝子を取り入れることを選んだ。その結果がこの大繁殖。安定した繁栄に繋がるのなら、病気に強い種としての存続」
( ´∀`)「そこで考えられたのだ。産むこと、孕ませることのできる第三の性があればいい、人はなにもかも、クローンに代用させてきた。妊娠もまた、同じようにすればいい」
( ´∀`)「ただどうしても試験管のなかで育成する子供では支持を得られなかった。あくまでも自然妊娠に拘られてね。試行錯誤した結果思いついたわけだよ」
( ´∀`)「男、女、両方を相手に、子供を作れるような存在を」
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792 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2016/11/17(木) 13:21:44 ID:/z5WvXAw0
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( ´_ゝ`)「精子と卵子を両方備えるといずれどちらも駄目になるんじゃないか?」
( ´∀`)「本来ならば、そうだ。」
( ´∀`)「しかし両方を同時に備える必要はない。使い分ければいいのだから。魚のように」
( ´_ゝ`)「時期ごとに性別を代えるのか?」
( ´∀`)「少しちがう。男女差はないが、内蔵の中身が変わる」
( ´∀`)「それにより、両性を持つことが可能だ」
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793 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2016/11/17(木) 13:22:25 ID:/z5WvXAw0
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794 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2016/11/17(木) 13:23:05 ID:/z5WvXAw0
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ルーティン化されたはずの日常が少しずつ変わる。
職員たちの分を除けば大型の実験体への供給が最優先だった。
本能のまま生きている彼らが管理可能なのは習性をきちんと把握しているからだ。
そしてその分のしわ寄せはある程度safeと判断された者たちに来る。
二日に一度あった食事がなくなった頃には
水と点滴に使う栄養液だけが配給された。
最低限の糖分は保証される。
しかしだからと言って空腹がなくなるわけではない。
胃袋を満タンにしないかぎり
知性のない獣は餓えに苦しむ
それはsafe(安全)の扱いを受けた者たちも同じだった。
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795 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2016/11/17(木) 13:24:01 ID:/z5WvXAw0
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( ´_ゝ`)「“人が想像しうることは人は実現できる”」
( ´_ゝ`)「ジュール・ヴェルヌの世界だな」
( ´∀`)「だがまだ全て終わっていない」
( ´∀`)「このプロジェクトで人類を抑制するためには、経過中の実験体が必要だ。」
( ´_ゝ`)「死んでなかったの?」
( ´∀`)「檻のなかにはいなかったのか?」
( ´∀`)「あれは頭がいい」
( ´∀`)「そうなるように教育したからな」
( ´_ゝ`)「人類が減少するか否か、その実験体にかかってるわけだ」
( ´∀`)「なんとしても、見つけなければいけない」
( ´∀`)「でなくば、すべてが無駄に終わってしまう」
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796 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2016/11/17(木) 13:24:42 ID:/z5WvXAw0
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ごはんが無いと、うるさかった。
もうなにも食べてない。食べないあいだが長くて長い。最初からそうだったみたいに。
ごはんの時間があったのも忘れちゃったかもしれない。
お腹のすかせたうるさい子は檻の棒を噛む。
そんなことをしたらビリビリするのが飛ぶのにうるさい子たちはやめなかった。
そのうちビリビリが弱くなってただのパチパチになってもまだかじかじしてる。
ビリビリが痛くないんじゃない。
お腹が空いてるだけなの。
わたしは大丈夫
だってなんでも食べれるもの。
堅くても柔らかくてもどろどろしてても
酸っぱくても苦くてもえぐくても辛くても
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797 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2016/11/17(木) 13:25:31 ID:/z5WvXAw0
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わたしはなんでも食べれるの。
でもあの子は違うから。
粉っぽい板きれみたいなのしか食べなかった。
だから小さくて弱くて柔らかすぎる。
歯をたてるとすぐに破れるくらい。
どんなものでも飲み込めるわたしなのに
あのこはあんなものしか口に入れないから心配。弱くて小さいから心配。
ぶつかっても叩かれても引っ張られても
ちっちゃく丸くなるしかできないからかわいそう。
わたしは大丈夫。あのこには平気だけど。
うるさい子や他の子たちは平気じゃないかもしれない。
他の子たちがあのこをごはんにしちゃったらたいへん。
柔らかいからすぐになくなっちゃう。
そのまえにわたしがごはんにしてあげなきゃ。ごはんにされる前にわたしがごはんにしてあげなきゃとっても しんぱい
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798 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2016/11/17(木) 13:26:15 ID:/z5WvXAw0
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( ´_ゝ`)「フィッシングはどう?」
( ´∀`)「釣りはしたことないな」
( ´_ゝ`)「じゃなくて、フィッシング(囮)適当な情報ばらまいて食いつくの待てばいい。地味だけど効果あるよ」
( ´_ゝ`)「ただそれなりに食いつくエサが必要だけど。」
( ´∀`)「ふむ」
( ´_ゝ`)「だってさ、こんだけ探しても見つからないってことはめんどくさいことになってるか、完璧に隠れてるかのどっちかだぜ」
( ´_ゝ`)「スラムに潜まれたら向こうからやってこない限り辿るのは無理だし」
( ´∀`)「意外だな。てっきりこの都市のすべては管理されているものと思っていたが。やはり手の届かないところもあるのかね」
( ´_ゝ`)「映画の見すぎ。ごみ貯めをなんのために調べるのさ。」
( ´_ゝ`)「あそこらへんは無法地帯。中身を知る意味もない」
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799 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2016/11/17(木) 13:27:10 ID:/z5WvXAw0
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( ´∀`)「なるほど」
( ´_ゝ`)「アンタ動き出すような情報持ってないの?アンタが詳しいんだろ?早くしないと回収できなくなるぜ」
( ´∀`)「そう言われてもなぁ……臆病なアレが何を考えているのかさっぱりわからん」
( ´∀`)「そもそもなぜ逃げたのかもよくわからんのだ。充分すぎるくらい、待遇はよかったのに」
( ´_ゝ`)「そういやそうだな」
( ´_ゝ`)「逃げることについて、教えたのか?教えないと逃げないはずだろう」
( ´_ゝ`)「逃亡する発想なんて普通思い付かないだろ」
( ´∀`)「アレは頭がよかった」
( ´_ゝ`)「それでもだ。外に出したことなかったんだろ?」
( ´_ゝ`)「だったら逃げるなんてこと、思い付かないはずだ。自分では」
( ´∀`)「たしかに。君の言う通りだ。恐らく職員から何らかの影響を受けていたのだろう。多少の触れあいは認めていたからな」
( ´∀`)「しかしこんなことになるのなら、隔離すべきだった。教育が仇になった」
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800 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2016/11/17(木) 13:28:02 ID:/z5WvXAw0
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( ´_ゝ`)「必要あるのか?ただの研究体だろうに」
( ´∀`)「当然だ。教育とはすべての知的生命体に平等に与えられるものだ。人は生まれながらに人なのではない。教育によって人になるのだ」
( ´∀`)「支配が楽だからといって、無知のままにしておくのは許しがたい。放っておけば無知ゆえの取り返しがつかないことをしでかすこともあるのだ。最低限の思考は持ってないと」
( ´_ゝ`)「でもやらかしたんだろ?」
( ´∀`)「ああ。残念なことだ。あれは倫理を知らなければいけない。命というものがどれほど尊く尊重されるものかを学ばなければならんのだ」
( ´∀`)「でなくば母にはなれない」
( ´_ゝ`)「ふーん」
( ´_ゝ`)「倫理ねぇ……ただの実験動物にしてはずいぶんたいそうな」
( ´∀`)「人に愛された分、人になつくのが理想ではないか」
( ´∀`)「そのために教育したし躾もした。心を鬼にして」
( ´∀`)「大切なことを教えたのだ。命を殺すことがどれほど罪深いか」
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801 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2016/11/17(木) 13:28:57 ID:/z5WvXAw0
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生きるために食べる
食べるために殺す
殺すために 生きる
生きるために
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802 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2016/11/17(木) 13:29:44 ID:/z5WvXAw0
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大丈夫だよエヴァ
守ってあげる
きみは絶対に守ってあげる
「おいどうなっている。乾燥肉じゃどうやっても足りなかったぞ。せめて骨のついた奴じゃないと」
「無茶を言うな。穀物だってもう残り少ないんだぞ。そんなもの奴等に出せるもんか」
「我慢させておくしかないだろう」
「自然では何日も飲まず食わずって場合もあるんだ一週間くらいどうってことない」
「それもそうだな。多少暴れるのも仕方ないだろう」
「まだ記録の取れてない奴だけ隔離してお
け」
「はは、見ろよあいつら。まるで獣だな」
「……共食いしてやがる」
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803 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2016/11/17(木) 13:31:47 ID:/z5WvXAw0
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('A`)「壁が完成する前だ」
( ФωФ)「早急すぎやしないか?」
恐らく最後になるであろう密談。
ふたりの意見は真っ向から割れた。
('A`)「嫌なタイプなんだよあれは。ああいう大がかりな工事をするってことは大がかりな目的があるってことだ」
( ФωФ)「……ただの壁だろう。俺たちを押しきるだけの。かのベルリンと同じものさ
('A`)「博識だな。しかしこの国が、この都市がそんな穏やかだと思えるのか」
( ФωФ)「この国は停滞している」
( ФωФ)「民主制の顔をした企業による独裁制だ。益のないことに金はかけんよ」
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804 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2016/11/17(木) 13:32:43 ID:/z5WvXAw0
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( ФωФ)「我々がようく知っている」
('A`)「…………それならいい。」
('A`)「しかし、お前アレを見て何も思わないのか?」
( ФωФ)「ダムみたいだなとは思うが……正直お前がそこまでなにを警戒してるのかわからんよ」
('A`)「そうかい。他のやつらもお前と同意見か?」
( ФωФ)「ああ」
('A`)「……あれが処刑を連想させられるのは俺だけか」
('A`)「お前たちが慣れきっちまってるのか」
どちらもだろうな。
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805 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2016/11/17(木) 13:34:01 ID:/z5WvXAw0
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806 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2016/11/17(木) 13:34:51 ID:/z5WvXAw0
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(A^ν^)「どうした?」
( )「これは……!申し訳ありません。騒ぎになってしまいましたか」
(A^ν^)「なにがあった?」
( )「お手を煩わせるほどのことでは」
(A^ν^)「いいから、なにがあった?」
( )「…………不審な男がどうしても責任者に会わせろと、」
(A^ν^)「……なぜそれで騒ぎになった?」
本来ならばゲート前の不審者などすぐに排除される。騒ぎになるほどの時間もなく。
( )「…………申し訳ありません。相手は情報屋でして」
(A^ν^)「……」
末端の職員と情報を生業にしている者は切っても切れない縁にある。どこぞの職員が小飼の情報屋と揉めたのだろう。
(A^ν^)「それで、その情報屋がなんと?責任者をだせと?」
( )「はい……」
呆れた。愚かな職員はどうしようもない者を相手にしたようだった。
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807 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2016/11/17(木) 13:35:54 ID:/z5WvXAw0
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(A^ν^)「ちなみに責任者とは、誰を指しているんだ?」
( )「さぁ……ただ責任者としか。ただえらく必死らしくて、いまもまだ暴れているようなんです。」
(A^ν^)(……)
(A^ν^)「どんな奴だ?上級市民ではまずないだろう?」
( )「はい。中間市民でもありません。しかし下層市民でもありません。」
(A^ν^)「どこにも属してない、情報屋らしいな」
(A^ν^)「なにか情報でも売りに来たのかな」
( )「どうでしょうか。ただ、取引をしたいと申し出でてますね。私たちは相手にしなかったので、暴れました」
(A^ν^)「……会ってみるか」
( )「え、」
(A^ν^)「彼らの価値観が知りたいな」
(A^ν^)「たとえばどんな時に命を懸けるのか、とか」
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808 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2016/11/17(木) 13:36:52 ID:/z5WvXAw0
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(`∠´)「……」
貧相な小男だった。
目だけが油断なくあたりを見回している。
彼の姿を目にすると、男は飛び付くようそわそわとし始めた。
(`∠´)「……ええと。あんたが今回の責任者?」
(A^ν^)「責任者という言葉をどういう意味で使ってるのかわからないが、ここを預っている一人で間違いないとも」
(A^ν^)「もっとも私の上にはもっと多くの者がいるがね」
下位の者と話すには自然と口調が改まる。
そのように教育を受けている。彼には意識もなかった。
(`∠´)「………」
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809 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2016/11/17(木) 13:37:35 ID:/z5WvXAw0
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通常ならば自分のような存在、瓦解したとはいえ一族‘’ナンバーズ‘’がこの男と会話することなどない。処理を適当に任せ、本来の政務に励んでいる。
しかし焦っていた。
反抵抗勢力の読めない攻撃、短いリミット。
部隊の集める情報量だけでは解決の糸口にもならない。
だから何らかの、少しのヒントでもいいから欲しかった。ほとんどきまぐれと興味本意である。
(A^ν^)「それで?何の用でここに来たのだ?」
(`∠´)「……」
(`∠´)「……売りに来たんだ。」
(`∠´)「リスト……買ってくれよ。たぶんあんたたちの知りたいやつらのこと、たくさん載ってると思うぜ」
男はそういって手帳を取り出した。
それはこの情報屋が人探しのためにとある娼婦から譲り受けたものだった。
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810 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2016/11/17(木) 13:38:20 ID:/z5WvXAw0
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811 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2016/11/17(木) 13:39:08 ID:/z5WvXAw0
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( ´_ゝ`)「褒めろ」
(A^ν^)「ええ……」
( ´_ゝ`)「ドクオ・ハーレイのことがわかったのは収穫だろ。表に出てないだけで裏に要るのはそいつだろうし」
(A^ν^)「でしたら私の手柄なのでは……?」
( ´_ゝ`)「おまえ一人でこの膨大な名前のなかから('A`)だけを特定して( ФωФ)との関連性を見つけられたか?」
(A^ν^)「………………いいえ」
( ´_ゝ`)「( ФωФ)の使用してる施設と('A`)の彷徨いてる場所はお な じ
また娼婦たちを連絡係に使ってるのは明白だ」
( ´_ゝ`)「ただの顧客リストのなかの名前の欄からこいつらの繋がりをおまえは見つけられたか?」
(A^ν^)「いいえ。逆にどうやったんですか……素晴らしいですね」
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812 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2016/11/17(木) 13:39:55 ID:/z5WvXAw0
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( ´_ゝ`)「偽名の使い方を確認しただけだ。毎回名前のを変えるやつ、第二の名を常に持ってるやつ。こいつは後者だったからな」
( ´_ゝ`)「なにを考えてるのか知らんが、恐らくこいつが参謀だろう。これで狙いをつけることができる」
( ´_ゝ`)「リードできるな」
(A^ν^)「…………リード」
( ´_ゝ`)「不満か」
(A^ν^)「いいえ。ただ、」
(A^ν^)「まだ考えてるんです。彼らの目的を」
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813 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2016/11/17(木) 13:40:55 ID:/z5WvXAw0
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814 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2016/11/17(木) 13:42:49 ID:/z5WvXAw0
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甲高い音が鳴り響く。
それは人生のかなり最初のほうで聞いたことのある音だ。もっぱら最近はアラーム起こされるばかりなので、彼はこの音の主を認識するのに時間がかかった。
りりりりりり。りりりりりりり。
奇襲ではない。緊急でもない。
しかしこの割れんばかりの頭のいたくなる音はなんだ?寝起きにこの音で起こされるのはちょっとした拷問である。
彼は手探りで音の元を探した。
歩き回るほどに意識ははっきりしてくる。
やがて彼は気がついた。
この部屋に電話線と呼べるものがあっただろうか。
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815 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2016/11/17(木) 13:43:29 ID:/z5WvXAw0
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りりりりりり。りりりりりりり。
部屋の前に固形物が落ちている。それは懐かしい形をしていた。黒電話の受話器部分。
それだけが落ちていて、わめいている。
デリバリーサービスのメッセージ。
すぐに目が覚めた。携帯の電波すら限られるこの国の、この場所で。遠慮なく張り巡らされた電波を受信できるなど。
手に取る。見た目に反し、受話器は軽かった。これひとつで、ケーブルなしでどこまでも繋がる電話になる。無線機のようなものだ。
警戒しながらボタンを押した。爆発物だと思えなかったのは、あまりの軽さゆえだ。
('A`)「…………だれだ」
繋がった瞬間的、数秒の間があいて、声が聞こえた。
かすかに笑っているような気配がした。
「パンケーキの焼き方を知ってるか?」
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