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647 名前:名無しさん[] 投稿日:2017/07/20(木) 02:22:42 ID:BPLQmJLc0
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――ギシ、ギシ。
カーテンの引かれた、薄暗い部屋。
二つの影が、ベッドの上で重なり合っている。
そのベッドもカーテンで覆われ、更に暗い空間を作っている。
『せんせぇ……はやくぅ……』
女の嬌声が、そのぷっくりとした、紅い唇から零れだす。
皮を剥く前の熟した桜桃の様なソレは、もう一つの影の情念を刺激する。
『目を開けてはいけませんよ……』
男の方から漏れる声も、その女の声と変わらないほど、高く、か細かった。
男は、床に置いた小箱の中から、コルクで栓のされた瓶を取り出す。
『いい子だね……眠ってしまっても、いいんだよ……』
男はピンセットで、小瓶の中で蠢く"ソレ"を摘み上げると、
心底愛おしいという表情で、"ソレ"を一舐めし、女の顔の上に乗せ始めた。
"ソレ"は数日ぶりの"御馳走"に、すぐに反応し、その細長い体をピクピクと痙攣させたかと思うと、
一息に女の肌に噛みついた。
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648 名前:名無しさん[] 投稿日:2017/07/20(木) 02:23:14 ID:BPLQmJLc0
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『ん……』
女は、自身の顔に何か冷たいものが押し当てられている気はするが、言いつけ通り目を瞑っているので、
それが何かは分からない。きっと"施術"に必要な医療道具なのだろうと高をくくっている。
女は痛みを感じない。
"ソレ"にその柔肌を裂かれ、あまつさえ、血を吸いだされているのに。
最初は糸くずのように細々としていた"ソレ"は、女の血液を吸い上げて、親指ほどの太さまで膨れ上がっている。
男はそれを見て、満足そうに目を細めると、まだまだ小瓶の中でうねっている"ソレ"らを、女の顔に、次々と貼り付けた。
『いい子だね……』
その言葉は、既に女に向けられたものではなくなっている。
血を飲み込み、丸々と太っていく、"ソレ"らに与えられた賛辞なのだ。
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649 名前:名無しさん[] 投稿日:2017/07/20(木) 02:23:51 ID:BPLQmJLc0
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――ガンッ!!!
途端、大きな音が部屋に響いた。
丁度、鍵をかけたこの部屋に、誰かが入ってこようと、扉を蹴りつけたように。
『何ッ!?』
女の方は、驚いて、眼を開けてしまった。
『あぁッ!! ダメだよぉぉおッ!!!』
男が悲鳴にも似た声を上げる。
目を開けた女の眼前に迫っていたのは、ピンセットの先で扇動する、茶色い細長い環形生物。
"ヒル"が目の前で、踊り狂っていた。
『きゃ――』
その後の叫びは、出てこなかった。
それよりも早く、男の手が、彼女の喉輪を絞めたからだ。
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650 名前:名無しさん[] 投稿日:2017/07/20(木) 02:24:21 ID:BPLQmJLc0
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『げ、がッ……』
もがき苦しむ彼女を、心底悲しそうな表情で見下ろす。
そして、その状態で、数度強く、彼女の胸を殴った。
『ガッ、ガぁッ! ぎっ!』
殴られるたびに、瞳がまぶたの裏に向かってずれていく。
そうして、すっかりと白目を向いた頃には、彼女は意識を手放していた。
『だから、ダメだっていったのにぃ……』
男は、がっくりと肩を落とすと、未だにガチャガチャと扉をこじ開けようとしている音の方に向かった。
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651 名前:名無しさん[] 投稿日:2017/07/20(木) 02:25:00 ID:BPLQmJLc0
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――ガラリ。
先ほどまで鍵のかかっていた扉が、急に抵抗なく開けられた。
その扉の先には"先生"が、
保険医の"オサム先生"が立っていた。
『おや、この間の。どうしたんですか?』
相変わらず前髪で目線を遮ってはいたが、至極優しい雰囲気と表情で、私は出迎えられた。
「……すいません。どうしても体調が悪くて、保健室のベッドを使わせてほしくて」
その言葉に、オサム先生は此方を値踏みする様な表情と、それから部屋の隅のベッドの方を見て、言った。
『ごめんねぇ。今ベッド使用中で。なんだったら、おうちの人に早退の連絡を入れておくから、君はもう帰っても大丈夫ですよ』
実際にベッドに誰か寝ているのかは、カーテンがかかっているので分からない。
確か保健室には、二つのベッドがあったはずだ。
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652 名前:名無しさん[] 投稿日:2017/07/20(木) 02:25:35 ID:BPLQmJLc0
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「……ベッド、二つとも埋まってるんですか?」
『そうですねぇ。ごめんねぇ』
「……なんで、窓のカーテンも閉めているんですか?」
『眠っている子が、眩しがるといけないから――』
オサム先生がそう言った瞬間に、私はブレザーの内側に隠し持っていた"懐中電灯"の光を、
先生の目の前に突き付けた。
『ガぁああああああああああああああああああああッ!!!!!』
耳を劈くような絶叫。獣の咆哮。
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653 名前:名無しさん[] 投稿日:2017/07/20(木) 02:26:07 ID:BPLQmJLc0
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私は肩から、先生の躰に体当たりすると、全てのカーテンを開け放ち、
ついでに、ベッドのカーテンも開けた。
絶句する。
顔面中にヒルを無数にへばり付けた女生徒が、白目を向いて失神している。
どのヒルも血をたっぷりと吸い、狂気のダンスを始めている。
『お前ェエッ!!! なぜ分かったッ!!!』
片目で瞳を覆い隠しながら、よろよろとオサム先生は立ち上がった。
「光過敏性障害」
私は告げた。
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654 名前:名無しさん[] 投稿日:2017/07/20(木) 02:26:43 ID:BPLQmJLc0
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光過敏性障害とは、眼球の虹彩機能の障害によって、
太陽光や、電灯の光などの強すぎる光を絞り込むことが出来ずに、
強烈な"眩しさ"を感じる障害の事を言う。
程度がひどくなると、これをきっかけに"てんかん"等の発作に繋がる。
これは一般人にも起こり得ることで、
例えば、暗い部屋でテレビを見ている時に、暗い場面が続いたとする。
そうすると、人体は光を取り入れ、より繊細に情報を得ようとするために、
虹彩は開いていく。
その直後に、明るい場面へと転換し、更に、ストロボの様に、強い光が点滅すると、
網膜から伝わる強烈な光の信号に脳波が狂い、一時的な発作に陥ったりすることもある。
"ポケモンショック"などが有名な症例だ。
――オサム先生は、その"光過敏性障害"の罹患者だ。
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655 名前:名無しさん[] 投稿日:2017/07/20(木) 02:27:35 ID:BPLQmJLc0
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最初の違和感は、その机の配置だった。
わざわざ、窓に背を向けるように壁の方を向いた事務机。
それから、洗面台の上の壁。
本来なら、"鏡"が備え付けられているはずのそこに、何も無かったこと。
更にその前髪。
教員の採用上で、これら障害を秘匿して就職しようとする人間は多い。
障害を持っていることが知れると、内定率が下がってしまうと考えるからだ。
そのため、障害用のサングラスや、あからさまに色味が暗い、医療用コンタクトを使用できず、
苦肉の策で前髪で光を遮っていたのだろう。
そして、最後に、"珈琲"。
目の涙腺と、嗅覚は、密接に関係している。
わさびを食べると、ツーンとした匂いを"鼻"で感じているのに、涙が出てくるように。
光過敏性の人間は、匂いにより、より瞳孔が開いたりと言った眼球障害が併発するので、
その自身に都合の悪い匂いをかき消すために、"珈琲"をこの部屋で淹れていたのだ。
あの"香水"のくだりがヒントになった。
全て、"光"と"眼球"に集約される違和感が、
私の中の、"吸血鬼"のイメージと繋がったのだ。
だってそうだろ? "吸血鬼"は日の光を嫌うもんだ。
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656 名前:名無しさん[] 投稿日:2017/07/20(木) 02:28:44 ID:BPLQmJLc0
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「その障害をコンプレックスに発現した好血嗜好症≪ヘマトフィリア≫か、異常者め」
私は、なおも執拗に奴の顔にライトを当てながら、そう吐き捨てた。
顔の前を二の腕で覆いながら、奴は口の端を吊り上げて笑う。
『惜しいなぁ、惜しいよ君ぃ。逆なんだよ。そうじゃないんだ』
言いながら、自身の前髪をかきあげ、額をさらけ出した。
生え際の、更に上の辺り、髪の毛の中に、何か棒のようなものが刺さっている。
奴は、片手で眼前を覆いながら、もう片方の手で、その棒のようなものを摘み上げた。
『光過敏によるてんかんの治療方法ってどんなものがあるか知っているかい?』
そう言いながら、棒をくるくると回していく。
すると、その棒の先についている頭の肉が、徐々に盛り上がり始めた。
棒を中心に半径1cm程度の円柱が、ごぼごぼと、奴の額から抜けていくのだ。
不思議と血は出ていなかった。
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657 名前:名無しさん[] 投稿日:2017/07/20(木) 02:29:35 ID:BPLQmJLc0
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まるで爪楊枝の先にくっついたミートボールが、そこから引きずり出されるように、
粘着質な音を立てながら、確実に奴の額から離れていく。
『古代インカ帝国からその治療はあったんだ。人間は、自身の脳髄を、狭い頭蓋骨の中に押し込めている。
だから、真の力を発揮することが出来ず、その機能のほとんどを閉ざしているんだ。
だったら、その殻を破壊してやればいい。閉じ込められた脳髄の悲鳴が"てんかん"なんだ。だったら解放してやればいい。
毛が、皮膚が、肉が、骨が、膜が、液が、脳を縛り上げるなら、僕は、それを全て綺麗に取り去って、
綺麗に拭って、そうやって"美しく"生きていくんだよォォォオオオオオオオオオオオオオオ!!!!』
そう絶叫しながら、奴はついに、額からその肉の塊を引っこ抜いた。
――穴だ。
真っ黒の穴が、そこには開いていた。
その穴の中から、ピンクのふわふわが、深い皺を刻み付けたそれが、露出している。
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658 名前:名無しさん[] 投稿日:2017/07/20(木) 02:30:23 ID:BPLQmJLc0
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『――キチガイめ』
――穿頭≪トレパネーション≫
擬似医療の中でも、最も最悪な部類に入る、脳障害の治療法。
自身の頭蓋骨に穴をあけることで、精神状態を安定させて、様々な脳の欠陥を治療できるとされているが、
施術による死亡も多く、またその科学的な効果も実証されていないために、日本どころか、世界中で禁止されているはずだ。
自分でやったのか、どっかの闇医者にでも大枚はたいてやらせたのかは知らないが、奴は、自身の"治療方法"として、それを選択したのだ。
『逆なんだ。僕は≪神のお告げ≫を聞きたくなかったんだ。だから僕は、自分の頭の中にいる神様を追い出そうとしたんだ。
でも、そうして穴をあけたら、世界が、全て、今まで以上に、何もかも、僕の為にぃぃいいいいいいいいいいい!!!!』
"てんかん"による痙攣発作は、時にせん妄を引き起こし、それを神のお告げと捉える人々は、その歴史上多く存在する。
魏志倭人伝の中の、卑弥呼の占いの記述は、正に痙攣した後に未来を予言するというものだったし、
ドンレミ村の田舎娘に過ぎなかったジャンヌダルクを、戦いに駆り立てたのもまた、てんかんによるものだったのではないかとされている。
更に遡れば、あのイエス・キリストですら、そう言った風にとれる記述が新約聖書に書かれている。
だがしかし、お告げを聞くことが出来た全ての人間が、偉業を成し遂げる訳では無い。
自身の頭の中に響く声に恐怖し、その事実を受け入れることが出来ずに気が狂った人間の方が遥かに多いはずだ。
奴もきっとその1人なのだろう。そして、その中でも、いっとう最悪な精神異常者だったというだけだ。
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659 名前:名無しさん[] 投稿日:2017/07/20(木) 02:30:52 ID:BPLQmJLc0
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『僕はね、この"穴"のお蔭で上手くやってこれたんだ。目も、耳も、鼻も、味覚すらも良くなったよ。
でもね、たまに、脳を洗わなくちゃいけないから。使った分だけ汚れるから、綺麗にしなくちゃいけないんだよ。
その洗浄液にはね、"血"が最適なんだ。コンタクトレンズだって、涙に近い成分の洗浄液を使うだろう?
だから、僕はこうして、血を集めて、脳を洗うんだよ』
奴は、いつの間にか持っていた、一匹の丸々太った"ヒル"を、その"穴"に近づける。
そして、やや上を向くと、ぎゅうぅ……と、その"ヒル"を指の先で押しつぶした。
絞り出された血液が、穴の中に吸い込まれていく。ぼたぼたと、おそらくは血液だけではない、あのヒルの体液すらも
ひたすら飲み込んでいく。吐き気のする光景だった。
やがてヒルがしわしわになると、その残骸を床に叩きつけた後、先ほどの肉団子を、再度自身の穴に埋めた。
そして、猛烈に頭を振り出した。
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660 名前:名無しさん[] 投稿日:2017/07/20(木) 02:31:19 ID:BPLQmJLc0
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『こうしてねッ!! こうしてねッ!! 洗うんだよッ!! シェイクッ!! シェイクッ!!! シェイクゥゥうううううッ!!!』
右に、左に、上に、下に、前に、後ろに、振って、回して、乱して、混ぜていく。
その男性にしては長い髪を、まるで歌舞伎の"連獅子"のように振り乱して。
ゥオン、ゥオンと唸りを上げて頭が振り回される、首が折れてしまうのでないかと、もげてしまうのではないかと、そう思うくらいに。
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661 名前:名無しさん[] 投稿日:2017/07/20(木) 02:31:50 ID:BPLQmJLc0
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やがて、その動きがピタッ!と止まると、下を向いたまま、また、あの摘みを捻って、肉の蓋を外した。
中から、ぽたぽたと、先ほどの"ヒル"から染みだしたであろう血液が床に落ちて、紅い小さな水たまりを作る。
そして、もうすでに、人間のものではなくなった表情をこちらに向けて、
『んん〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜ッ!!!!!! すっきりぃ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜ッ!!!!!!!!!!!!!!』
嗤った。
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662 名前:名無しさん[] 投稿日:2017/07/20(木) 02:32:49 ID:BPLQmJLc0
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『鋭敏になった"光"は確かに嫌いだ。痛いんだよ。凄く。それから、鼻に付く香水の匂いも嫌いだ。あれは不愉快。
だけどね、それ以外の女の子の匂いは大好きなんだ』
それから、二、三度鼻を鳴らすと、これ以上愉快なことなどありはしないと言った風に、酷く卑劣に、卑猥に顔を歪めた。
『君ぃ〜、今日、 " 生 理 " かなぁ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜?』
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663 名前:名無しさん[] 投稿日:2017/07/20(木) 02:33:23 ID:BPLQmJLc0
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瞬間、私は椅子を掴んで、奴に駆け寄ると、それを脳天に振り下ろした。
しかし、奴はそれを軽々と掴んで見せると、椅子ごと私を弾き飛ばした。
私はそのまま、気絶する女生徒が眠るベッドの横に倒れ込む。
語感だけでなく、もうすでに、その筋力も人間のそれとは比肩できないものに変わっているらしい。
『もうこの学校にもいられないし、最後にたっぷり、僕の"脳髄"に血を飲ませてあげないといけないかもねぇ……』
「くそっ……!」
私は慌てて、懐中電灯を奴に向けたが、先ほど倒れ込んだ時に、どこか破損したのか、灯りが付かなかった。
奴は机の引き出しから、緊急時に、生徒の衣類を裁断して止血したりするときに使う、鋭く大判のハサミを取り出した。
あれで私の頸動脈での引きずり出すつもりだろうか。
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664 名前:名無しさん[] 投稿日:2017/07/20(木) 02:35:25 ID:BPLQmJLc0
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私は死ぬのか。
あんな異常者に、惨めに殺されるのか。
怖いのではない。悲しいのでもない。
悔しい。
"医療"を使い、人の身体を、"心"を壊し、それでものうのうと生きていくコイツに勝てないのが悔しい。
コイツに報いを与えられないのが悔しい。能年さんのコンプレックスを弄んで、あんなにしてしまったコイツを殺せないのが悔しい。
ただの光過敏性障害だと高をくくって、勇み足で飛び込んだ自分が悔しい。
もっと冷静に対処できなかった自分が悔しい。
見開いた私の眼の端から、一筋の涙が流れる。
でも、決して目は逸らさない。
スカートのポケットに、手を入れて、私はカッターナイフの刃を、ゆっくりと押し出した。
カチ、カチ、カチ。
ただでは、死なない。
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665 名前:名無しさん[] 投稿日:2017/07/20(木) 02:36:01 ID:BPLQmJLc0
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――シャキン。――シャキン。
ハサミを鳴らしながら、オサム先生が近づいてくる。
額の穴から漏れ出した血液とヒルの体液が混ざり合った汁が、とろりと奴の鼻の頭まで流れた。
むせかえるような、それでいて、昆虫の体液の様に生臭い匂いが近くなる。
『さぁ、君の"洗浄液"を、僕におくれよ』
そうやって私の喉元に手が伸ばされ――。
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666 名前:名無しさん[] 投稿日:2017/07/20(木) 02:37:22 ID:BPLQmJLc0
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"ガツンッ!!"
――るよりも前に、奴の体は、私を通り過ぎて、床に倒れた。
一体、何が……。
私が事態を把握するよりも先に、"四人"が一斉に話始める。
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667 名前:名無しさん[] 投稿日:2017/07/20(木) 02:38:07 ID:BPLQmJLc0
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『ちょっとっ! 殺してないでしょうねッ!』
『自信ないお……』
『あーぁ、ブーンもついに前科者かぁ〜』
『少年院には面会に行ってやっからなっ!』
『ひ、酷いおっ! ツ、ツンッ! 二人がいじめるんだおッ!』
『ちょっと、うっさいッ! ねぇ、アンタ大丈夫?』
「あ、あぁ……」
『でも、予想外だったね。僕らよりも先に"犯人"見つけちゃうだなんて』
『俺らなんて、四人がかりでやっと今さっき気付いたのにな』
『天才だお』
『……なぜ、私が"被害者"じゃないと分かるんだ?』
『ほら、"懐中電灯"。この"解"に辿りつくのは、被害者じゃないでしょ?』
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668 名前:名無しさん[] 投稿日:2017/07/20(木) 02:38:35 ID:BPLQmJLc0
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『ほら、立ってッ!』
「すまない……」
『あんたたちもッ! 警察に連絡するなり、そこの女の子起こすなり……ってうぇあっ!?』
『うっわぁ〜、顔中ヒル塗れだねぇ〜』
『ちょ、ちょっとブーンッ! あんたアレ全部食べちゃってよッ!』
『現場は安易にいじくるなと父から教わりましたお』
『出たッ! 刑事の息子が前科者ッ!』
『いよぉ〜! 熱いよぉ〜! 謝罪会見あっつあつだよぉ〜!』
『これ以上トーチャンの頭をハゲ散らかすような事は避けたいお……』
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669 名前:名無しさん[] 投稿日:2017/07/20(木) 02:38:58 ID:BPLQmJLc0
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「ちょ、ちょっと待ってくれ、君たちは一体……」
『ん? あぁ、ただの"怪談好き"だよ』
『怖い話ばっかり追っかけてたら、こんなことになっちゃったのさ』
『……アンタ、1年でしょ? それも、相当怖い話も好きでしょ?』
「何でそう思うんだ?」
『イカれたヤツ相手に、独りで大立ち回り決めようとする女の子が、怖い話が嫌いな訳ないもの』
「あぁ……、そうかもしれない……」
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670 名前:名無しさん[] 投稿日:2017/07/20(木) 02:39:43 ID:BPLQmJLc0
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『やっべっ! サイレン鳴ってんぞッ! 誰かポリスメン呼んだのか?』
『おっおっ、アレ、救急車のだお』
「私が、呼んだんだ。叔父が病院の医院長だからな」
『お、いいねぇ、病院であった怖い話とかいっぱい持ってそうで』
『そうねっ! とりあえず、この状況は、"超やばい変態に襲われた、強姦未遂被害者二人"って事で、ブーンは正当防衛ッ!』
『ラジャーッ!』
『まかせてよ』
『黙秘権を行使するおッ!』
『いや、アンタは普通に、女の子を助けるために頑張ったっていっときゃいいでしょ』
『あ、そっかお。せっかくのヒーロー役だったお』
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671 名前:名無しさん[] 投稿日:2017/07/20(木) 02:40:11 ID:BPLQmJLc0
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「ふ、ふっはは……あははははははッ!」
『え、ちょ、なんで急に後ろ向きで笑い出したのこの子』
「気にしないでくれ、癖だ」
『そんな奇怪な癖、聞いた事ねぇよ』
「いや、まさしく、君たちは、私の"ヒーロー"だ」
『……じゃあ、お礼してよね』
『オイ、ツン、お前まさかそんな、金の為に俺たちは』
『お金じゃないわよッ! アホッ!』
『この子にはね、入ってもらうのよ。私達"――――倶楽部"に』
『……いい考えだねぇ。美人さんがいると、聞き込みとかも捗りそうだよ』
『おっおっおっ、こんな学校の鼻つまみ者の仲間になんてなりたがるかお?』
『分かんねぇぞ? こんなとこで、異常者相手に啖呵切る女だ、もうとっくに学校の爪弾き者なんじゃねぇの?』
「間違ってないよ。この学校に、私の友人は一人もいないのさ」
『だったら、いいじゃないッ! 私達が、"友達"よッ!!』
『だおッ!』
『だね』
『だな』
「ああ、よろしく頼むよ」
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672 名前:名無しさん[] 投稿日:2017/07/20(木) 02:41:07 ID:BPLQmJLc0
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『『『『ようこそ、"――――倶楽部"へッ!』』』』
これが私の、初めて求めた"解"になった。
【後天性吸血脳髄≪ダンピール・ヘッズ≫ 了】
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673 名前:名無しさん[] 投稿日:2017/07/20(木) 02:42:15 ID:BPLQmJLc0
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【幕間】
( ^ω^)「なぁ〜つかしぃお〜」
(´・ω・`)「こんな感じだったね」
('A`) 「あんま覚えてねぇや」
ξ゚听)ξ「嘘つき、あの後ずっとクーの事、"可愛い、可愛い"って」
('A`) 「言ってないもんッ! むきゅーっ!」
(´・ω・`)「なにそのキモい照れ隠し」
川 ゚ -゚)「どうだった? 三週目のトリとしては」
ξ゚听)ξ「いいんじゃなかしら」
( ^ω^)「こう、ちょっとずつ、僕らの事が明かされていく感じ、嫌いじゃないお」
(´・ω・`)「でも長いね」
('A`) 「長いな」
ξ゚听)ξ「次回から、また少し短めのを刻みたいわね」
(´・ω・`)「そうだねぇ」
('A`)「二話連続エンタメ要素も強かったから、流れも変えるか」
( ^ω^)「じゃあ次、誰行くんだお?」
ξ゚听)ξ「私行ってもいい?」
(´・ω・`)「いいと思う」
('A`) 「じゃあ、"題"は>>680にしようぜ」
川 ゚ -゚)「了解」
ξ゚听)ξ「それじゃ、次の"解"を求めましょう」
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680 名前:名無しさん[sage] 投稿日:2017/07/20(木) 12:43:15 ID:kXTTC7bk0
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乙
純粋なサイコパス物は初めてか
ストーリーも少しずつ明らかにしていくのね
安価ならヤモリ