■('A`)人生は選択だ!のようです
└第8話
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236 名前: ◆tDN4QF.obM[sage] 投稿日:2013/12/13(金) 00:55:46 ID:RCt79jec0
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【1】
( ^ω^)「……」カチャカチャ
彼――ドクオとスポWを始めてから、どれくらい時間が経ったのだろう。
幾度となくドクオを負かしているだけの試合展開にも関わらず、観客の熱気は冷め止まない。
「「……」」
(;'A`)「……っ」カチャカチャ
ただ、さっきと違うのは。
先ほどまでの火のついたような盛り上がりではなく、静かな、ジリジリと焦がすような熱気ということ。
( ^ω^)(……観客が、ドクオに味方している、って感じの空気だお)カチャカチャ
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237 名前: ◆tDN4QF.obM[sage] 投稿日:2013/12/13(金) 00:56:29 ID:RCt79jec0
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ドクオの動きは、僕を倒す宣言をしてから随分変わった。
最初こそキャラ替えを頻繁に行い、何度か試すような動きをしていたが、
現在は再び自分の使いやすいキャラへと変えていた。
対して僕は、それに有利なキャラを選び戦うようにしたため、特に苦労はしなかった。
はずなのだが。
( ^ω^)(うーん、良い動きしてるお)カチャカチャ
僕は少しずつ押され始めていた。
まだラウンドを取られてはいないが、こちらの動きを読み、攻撃を仕掛ける様になってきた。
最初と比べると、随分HPを削られるようになり、今もラウンドを取られそうになっていた。
( ^ω^)(しかし、こちらも負けちゃおれんお)カチャカチャ
これからのドクオの成長に、期待が持てるな。
僕はにやけながら、彼に渾身のコンボを叩き込んでいき、最終ラウンドを締めくくった。
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238 名前: ◆tDN4QF.obM[sage] 投稿日:2013/12/13(金) 00:57:10 ID:RCt79jec0
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(;'A`)「……疲れた、ちょっと休憩するわ……」
どうやら集中力が切れたようだ。
ドクオは立ち上がると、すぐ近くにある休憩所に向かうと言ってその場を去った。
しばらく辺りは騒然としていたが、スポWプレイヤーと思わしき人たちがポツリポツリと僕に話しかけてくる。
「なぁなぁ『天界の貴公子』さん!俺と一回対戦してくれよ!」
「俺も戦ってみたいんだが、疲れてるなら遠慮したほうが……」
( ^ω^)「問題ないお、ドンドンかかってくると良いお」
「マジか!!」 ワイワイ
「「「やったぜええええええええええええええええええ!」」」 ガヤガヤ
僕の一言で再び場の空気は湧き上がり、われ先にと筐体に座ろうとする観衆たち。
とりあえずドクオが戻ってくるまでは、ここの人間の腕試しをするのも良いだろう。
僕は座り直し、挑戦者を待つことにした。
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239 名前: ◆tDN4QF.obM[sage] 投稿日:2013/12/13(金) 00:57:52 ID:RCt79jec0
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( )「それじゃ、僕が一番乗りでやろうかな……」
「頑張れよーアンタ!アイツ強いからな!」
挑戦者が向かい側の席に座る。
僕はクール様がまだ戻らないように祈りつつ、100円をクレジットに投入した。
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('A`)人生は選択だ!のようです 第8話
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240 名前: ◆tDN4QF.obM[sage] 投稿日:2013/12/13(金) 00:58:37 ID:RCt79jec0
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【2】
(;'A`)「疲れた……」ハァ
近くの休憩所で缶ジュースを買い、俺は椅子へ深く座り込む
結局、勝つことが出来なかった
「ぶっ飛ばす」なんて偉そうなことを言った割にはこのザマなのでお笑い草だ
でも、癖は見抜けてきた
この休憩が終わったら今度こそブーンをぶっ飛ばしてやろうと意気込み、ジュースを一気飲みした
('A`)「……」
スポWの置いてある場所へと目を移す
ブーンと戦いたかった奴らがわんさかと集まっていて、ここからは試合の状況が人の間を縫って見えるだけだったが、
戦っている人間もどうやらブーンにボコボコにされているようだった
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241 名前: ◆tDN4QF.obM[sage] 投稿日:2013/12/13(金) 00:59:20 ID:RCt79jec0
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すぐに2ラウンド取られてしまったのか、座っていた人が筐体から離れてこちらへと歩いてくる
(;・∀・)「いやー、強かったわ、彼……ん?」
( ・∀・)ノシ「おー!久しぶりじゃないかドクオ君!」
('A`)「え?」
急に呼びかけられたので少し動揺する、がその顔をまじまじと見ると見覚えがあった
('A`)「……」
('A`)「あ、モララーさん」
よくこのゲームセンターで会う青年のモララーさんだ
30代半ばと聞いているが、ハンサムな顔立ちとしゃんとした身なりのおかげで全然そうは見えない
今日はゲームセンターに似つかわしくないリクルートスーツで来ている
(;・∀・)「あ、ってなんだよ?2、3か月会ってないからってそれは無いと思うぞドクオ君」
(;'A`)「あー、すいません……なんかジュース奢りますよ」
( ・∀・)「うむ、それではコーラを買うが良いぞ」
(;'A`)「何キャラなんですか……」
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242 名前: ◆tDN4QF.obM[sage] 投稿日:2013/12/13(金) 01:00:44 ID:RCt79jec0
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('A`)「はいどうぞ」
( ・∀・)「ありがとー!」ゴクゴクッ!!
(;・∀・).:゚・:「ブエッホ!!ゲホッ!!」
コーラを一気飲みしたらむせるんじゃないかと思っていたら、案の定むせて噴き出すモララーさん
とりあえずむせてかがんでいる背中をさすっておく
だんだん落ち着いてきたのか、モララーさんは息を落ち着かせつつポケットティッシュを取り出し床を拭き始めた
(;・∀・)「スー、しかし彼、ハー、強かったね」
(;・∀・)「いやー、ずっと君の後ろで見てたから行けるかなって思ったけど、甘かったな!」
ひと通り拭き終わり、ゴミをすぐそばにあるゴミ箱に捨てながらモララーさんは言う
あいつは強いですから、と俺は苦笑いをして、あまり見ない格好について尋ねてみた
( ・∀・)「あー、この格好?これね……うん、つい先日会社辞めて来てさ、就職活動してるからなんだよね」
('A`)「え?なんで辞めちゃったんですか?」
( ・∀・)「それはその、あれだ、人間関係ってやつ?同期といざこざがあってさ……」
( ・∀・)「いつかそいつを見返す会社に就こうと思って辞めたんだ!」
('A`)「……ふーん」
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243 名前: ◆tDN4QF.obM[sage] 投稿日:2013/12/13(金) 01:01:25 ID:RCt79jec0
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人間辞める理由なんて様々ではあるが、
俺のような『変な力で他人を巻き込む可能性があるから辞める』なんてのは、この現代どこを回っても俺しかいないだろう
現につい最近もあの工場に迷惑をかけてしまったのだ、そのことを思い出してしまってため息が出た
('A`)「……モララーさんはもし、他人を巻き込むことになりそうなことがあったら、どうしますか?」
('A`)「しかも、それが何度も何度も続いて、もしかしたら方法が選べない状況だったら……」
( ・∀・)「……それは、会社での出来事でかい?」
('A`)「はい、ていうか、それで会社に何かありそうな場合、ですけど」
( ・∀・)「ふむ」
モララーさんは顎を軽くさすって、少し考えるそぶりを見せる
( ・∀・)「ま、それってさ、仕事してりゃ必ずあることじゃん?」
( ・∀・)「僕みたいにいざこざが起きるのも然り、例えば、会社の方針が変わるような状況然り」
( ・∀・)「逃げるのも良いけど、逃げられないなら、何とかして切り抜けないとね」
('A`)「切り抜けるって、選べないのに?」
( ・∀・)「選べない状況を作り変えれば良いんだよ、自分で」
爽やかな笑みを見せるモララーさん
しかし、何故か俺はその笑みに、寒気を感じてしまう
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244 名前: ◆tDN4QF.obM[sage] 投稿日:2013/12/13(金) 01:02:06 ID:RCt79jec0
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( ・∀・)「そして僕は、それが出来る」
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245 名前: ◆tDN4QF.obM[sage] 投稿日:2013/12/13(金) 01:03:21 ID:RCt79jec0
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('A`)「……え、今……」
「モララー!」
モララーさんがそう言った途端、数人のスーツ姿の男たちが群衆を割ってこちらに近寄ってくる
スポW周りにいた人々は何事かとこちらを見て、
ブーンすらも何か悪いものを見たような、そんな表情を浮かべてこちらを見ている
(;'A`)「……モララーさん、彼らがさっき言ってた『同期』って人ですか?」
( ・∀・)「うん、結構早い段階で見つかっちゃったね」
何を悪いことをしたんですか、モララーさん
俺は目の前のガタイの良い男たちに恐縮しつつ、余裕綽々とした表情のモララーさんを見る
「モララー、君は重大な罪を犯した、よって現行犯逮捕し処罰を受けてもらう」
( ・∀・)「やだね、ていうか捕まえるならドクオをこき使ってるクールを捕まえなよ」
('A`)「……え?」
クール、という人物がモララーさんの口から出てきたとき、俺は何故、と思った
('A`)「モララーさん」
なぜ、クールを知っているんだ?
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246 名前: ◆tDN4QF.obM[sage] 投稿日:2013/12/13(金) 01:04:35 ID:RCt79jec0
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ふと気づくと、世界はいつもの白黒ではなく、どことなくセピア色になっていた。
(;'A`)「なんだ、これ」
いつもと違う景色。
辺りを見回すと、皆の動きが止まっている。天界の人間であるブーンも同様に。
('A`)「この色は天界の人間も止まるように出来てるのかな……」
そんなことを呟きながらも、いつの間にか浮かんでいるカードに目をやる。
【逃走】 【協力】 【謝罪】 【反抗】 【反論】
(;'A`)「……クール、この選択でどうしろっていうんだよ」ハァ
俺は何もない天井に、クールに語り掛ける様に声をかける。
が、いくら待っても答えが無く、そこには沈黙が広がっていた。
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247 名前: ◆tDN4QF.obM[sage] 投稿日:2013/12/13(金) 01:05:50 ID:RCt79jec0
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物騒なカードを手に持ちつつ、俺はゲームセンターに来る前のことを思い出す。
カードが盗まれたこと。
そして犯人は、未だ見つかっていないこと。
('A`)「モララーさん、貴方は……」
これを、選ぶのか。
俺が?
('A`)「なんなんだよ、一体……」
>>249
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249 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2013/12/13(金) 03:08:27 ID:6mEqTVBI0
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反抗
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254 名前: ◆tDN4QF.obM[sage] 投稿日:2014/01/02(木) 04:19:03 ID:4nQjC.Dg0
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【3】>>反抗
(;'A`)「と、とにかくモララーさんを助けないとな……」
【逃走】を選んでも目の前に黒服がいるから逃げられない。
【協力】……は恐らくモララーさんと協力するとは思うが、
前にこいつを選んだら大変なことになったから選びたくはない。
【謝罪】や【反論】といった口で何とかするものもあるが、俺が何か言ったところで
彼らは引いてくれるのだろうか。
(;'A`)「……えーい、ままよ!」
そうなると、些か物騒にはなるが【反抗】するしかないのではないか。
という結論に至り、【反抗】のカードを思いっきり引き抜く。
クールもこれに反応しないようで、やけに簡単にカードを引き抜けたことに驚いた。
が、何かおかしい。
あんなに選択が迫っていると生き生きとしていたクールが、
これほどまでに何も手出しをしなかったことがあっただろうか。
俺はこの世界の色といい、クールのことといい、
変な違和感を覚えながら色が戻る様を見ていた。
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255 名前: ◆tDN4QF.obM[sage] 投稿日:2014/01/02(木) 04:19:44 ID:4nQjC.Dg0
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(#'A`)「うおおおおおおおおおおおおおお!!」
世界に色が戻ると同時に、俺は目の前にいる黒服にタックルをお見舞いする
黒服もまさか隣にいるノーマークの奴に何かされるとは思っていなかったのだろう、
取り囲んでいるうちの一人を突き飛ばすことに成功した
「なっ……!ドクオ君、何を……うわぁ!」
何故か黒服の一人が俺の名を呼んだ気もするが気にしない、
俺は彼らの立つ場所でとにかく暴れまくり、叫んだ
(#'A`)「モララーさぁぁん!今のうちに逃げるんだぁぁぁぁ!!」
( ・∀・)「あぁ!ありがとうドクオ君!」
暴れまくる俺と慌てる黒服を縫うようにモララーさんは走り抜ける
丁度俺の横に立った際に、モララーさんは俺にだけ聞こえるように、言った
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256 名前: ◆tDN4QF.obM[sage] 投稿日:2014/01/02(木) 04:20:24 ID:4nQjC.Dg0
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( ∀ )「ありがとう、可愛そうなクールの僕、ドクオ君」
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257 名前: ◆tDN4QF.obM[sage] 投稿日:2014/01/02(木) 04:21:47 ID:4nQjC.Dg0
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(;'A゚)「っ!?モララーさ……」
その言葉にうろたえた俺を好機とばかりに拘束する黒服たち
うち何名かが逃げたモララーさんの後を追っていくのが見えたので、
俺は何とかしてこいつらの拘束を解こうともがいてみる
(#'A`)「くそっ、離せよ!モララーさんが……モララーさんが危ないんだよ!」
「その『モララーさん』とやらは、お前にとってそれほど大事な人間なのか?」
凛とした聞きなれた声に気付き顔を上げると、
そこには冷たい目で俺を見るクールの姿があった
川 ゚ -゚)「思い出せ、ドクオ」
川 ゚ -゚)「お前はそこまでモララーと親しみがあったのか?」
(#'A`)「当たり前だろ!モララーさんとはよくスポWで対戦していたんだから!」
( ^ω^)「なら、『よく対戦していた』ドクオなら、当然分かるはずだおね?」
気付けばブーンもクールの隣に立ち、俺に質問をしてくる
なんなんだよお前ら、俺は一刻も早くモララーさんの助けに行きたいのに
(#'A`)「……何が分かるってんだよ」
( ^ω^)「そりゃあ勿論」
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258 名前: ◆tDN4QF.obM[sage] 投稿日:2014/01/02(木) 04:22:41 ID:4nQjC.Dg0
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( ^ω^)「『モララーさん』がよく使っていた、得意なキャラに決まってるじゃないかお?」
(#'A`)「当たり前だろ!モララーさんの得意なキャラは……」
('A`)「キャラは……」
あれ、なんだっけ
(;'A`)「……なんだろう、なんだっけ」
何故か俺の頭の中には、『モララーさんとよく対戦していた』という記憶があったが、
『モララーさんが何の、どのキャラを使っていた』という記憶が全くなかった
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259 名前: ◆tDN4QF.obM[sage] 投稿日:2014/01/02(木) 04:23:40 ID:4nQjC.Dg0
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川 ゚ -゚)「それが奴の神様としての能力だよ、ドクオ」
クールは黒服に指示を出したようで、俺の拘束は間もなく解かれた
が、俺は自分の記憶があいまいで、しかし体験はあるような状態に翻弄されていた
(;'A`)「クール、これは何なんだ?モララーさんはこのゲーセンに来ていたんだよな?」
川 ゚ -゚)「いや、奴は『一度たりともこのゲーセンには来ていない』」
(;'A`)「じゃあ、この記憶は何なんだ?」
川 ゚ -゚)「あのなぁドクオ、お前は……いや、今この場にいる奴らも含めてか」
川 ゚ -゚)「記憶を改ざんされたんだよ、『運命を変える神様』、天界の犯罪者、モララーにな」
第8話 「格ゲーラプソディー 後編」 続く
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