('A`)人生は選択だ!のようです
第9話



283 名前: ◆tDN4QF.obM[] 投稿日:2014/07/26(土) 18:59:24 ID:.FJLoOHo0
【0】

「捕まえたぞ!早くカードを返すんだ!



僕を追っていた何人かの黒服が、そのたくましい腕で拘束をする。
しかし僕ではなく、同じく追っていたはずのもう一人の黒服にだ。


「待て、俺じゃない!そこにいるモララーだ!」

「モララー様がそんなことをするわけが無いだろう!早くクール様のところに突きだしてくれる!」

「違う!俺は無実だ!」


彼は必死に仲間へ無実を訴えるが、まるで相手にされていない。
引きずられるように連れ去られ、あとには僕と、僕を追っていた黒服の一人が残る。


「モララー様はこの後、いかがいたしますか?」

( ・∀・)「うーん、ひとまず適当なビジネスホテルに泊まるから、君もクールの所に戻っていいよ」

「畏まりました」


連行された無実の仲間の後を追う黒服の後ろ姿を見て、僕は声を殺して笑う。


( ・∀・)「彼は本当に無実なのに、馬鹿な奴らだ」


.

284 名前: ◆tDN4QF.obM[] 投稿日:2014/07/26(土) 19:00:14 ID:.FJLoOHo0

踵を返し、これから泊まるホテルに足を運ぶ。
クールのことだ、僕が動くまでは何もしないだろう。

それに、手元には無地のカードがまだ十数枚とある。
いざとなれば、僕の力で強化したカードを彼女にぶつけてやればいい。


でも、このカードはそんなことに使う為じゃない。


スーツの胸ポケットから、写真を取り出す。
この世界で唯一僕の力が通じなかった、そして、とても綺麗で優しかった、僕の女。


ζ(゚ー゚*ζ


デレ。
僕の愛しい人。
そんな君を、結婚なんかで他の男に取られたくは無いから。


( ・∀・)「このカードで、きっと君を幸せにしてあげるよ」


.

285 名前: ◆tDN4QF.obM[] 投稿日:2014/07/26(土) 19:00:56 ID:.FJLoOHo0
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        ('A`)人生は選択だ!のようです 第9話



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286 名前: ◆tDN4QF.obM[] 投稿日:2014/07/26(土) 19:01:41 ID:.FJLoOHo0
【1】


('A`)「……は?」


何いってんだこいつ

俺は呆気に取られる
どういう事だと口を開こうとしたとき、ブーンがクールの元に歩み寄り頭を何度も下げ始める


(;^ω^)「申し訳ありませんクール様、近くにモララー様がいたのに気付かず……」

川 ゚ -゚)「犯罪者に『様』を付けるな……仕方ないさ、奴はそれだけあの能力で身を隠すのに長けているんだ」


「クール様!カードを盗んだ奴を捕まえました!」


続いて、ゲーセンの入口から黒服の一人が他の黒服たちに拘束されたまま入ってくる

何やってんだこいつら

同じく思っているのか皆呆気に取られる
ゲーセンにいた奴等の何人かは気味悪いといった顔をして店から逃げていく


「こいつ、カードをモララー様に投げ渡して罪を擦り付けようと!」

川 ゚ -゚)「……はぁ、阿呆共が、彼はモララーに良いようにされただけだよ、無実だ」

「し、しかし……」

川 ゚ -゚)「しかしもカカシも無いだろう、お前らは当のモララーを捕まえに来たんだろうが、一度帰って上に聞いてこい」


クールは目も当てられない、といった仕草をしたあと黒服たちを手で払い、帰れと告げる

黒服たちは困り顔のまますごすごとゲーセンを後にする
ていうか拘束を解いてやれよ、彼が一番困り顔してるだろ


川 ゚ -゚)「……今ので分かっただろう、これがモララーの厄介なところだ」

.

287 名前: ◆tDN4QF.obM[] 投稿日:2014/07/26(土) 19:02:25 ID:.FJLoOHo0

場所を移そう、とクールは告げ、店を出る
ブーンも何かに気付き、苦笑をしつつ慌てて店を出る

ふと横を見るとゲーセンの店員がしかめ面でこちらを見つつ、
受話器を取って何処かへ電話するぞ?とアクションを取ってる
掛けるとすれば、警察にでも掛けるのだろう


(;'A`)「……オサワガセシマシタ」ハァ


何で俺が謝らないといけないんだ面倒くさい

しかし他に謝る奴らはいないので、何度か深々と礼をして逃げるように店を出た
ブーンめ、これに気付いて逃げやがったな


川 ゚ -゚)σ「あそこにカフェがあるじゃないか、そこでモララーの話をしようか」

(#'A`)「おぅ!!」ドスッ!!

( ゚ω゚)「了解しましtばぶぁ!!!!」


クールに返事を送るついでにブーンには横っ腹に拳を送り付け、ゲーセンの近くに見えたカフェに向かう
ブーンは腹を抑えて呻いている、ざまぁみろ

288 名前: ◆tDN4QF.obM[] 投稿日:2014/07/26(土) 19:03:08 ID:.FJLoOHo0

「いらっしゃいませ、何名様でしょうか?」

川 ゚ -゚)「三名で」

「かしこまりました、こちらのお席へどうぞ」


店員に連れられ、窓際のテーブル席へと案内される
辺りを見ると学生やカップルがちらほらと見える
ゲーセンの近くにこんな小洒落た店があったのか、一人じゃ絶対来ないから新鮮な気分だ


川 ゚ -゚)「コーヒーを2つとダージリンを1つ、あとハムベーグルとショートケーキ」

( ^ω^)「ハムカツタマゴサンド」

('A`)


「あ、えっと、かしこまりました」


席に座るなりぼーっと眺めていた俺を気にもせず、
すぐに店員にメニューを伝える天界人たち
その手にはメニュー表すら無い

お前らいつの間にこの店の常連客になったんだよ


川 ゚ -゚)「あっ、ドクオはコーヒーで良かったか?」

('A`)「確認がおせーよ、良いよマンドクセ」ハァ

289 名前: ◆tDN4QF.obM[] 投稿日:2014/07/26(土) 19:03:51 ID:.FJLoOHo0

川*゚ -゚)「さて、本題に移ると、しようか」パクッ


頼んだメニューが手元に来た後、さっそくハムベーグルを頬張るクール
蒸してあるのかモチモチしてそうな生地と、
レタス、ハム、トマトとありきたりな具材が幸せそうな表示を浮かべる彼女の口の中へと消えていくのが憎らしく、

隣からはコーヒーの香りに乗って焼いたパンの芳ばしい香りが漂ってきて、
時折パリパリと音が聞こえるのが憎らしい

ちまちまと苦味の強いコーヒーを飲む俺の前に、見知らぬ女性の写真が差し出される


『 ζ(゚ー゚*ζ 』


('A`)「……この子は?」

川*゚ -゚)「デレという子だ、年齢は20、華の超一流大学院生だ、あー美味しい!」ハムッ

川*゚ -゚)「そして今回の騒動の、発端とでも言うのかな!うまっ」パクッ

川*゚ -゚)「モララーの能力が、人間界で唯一効かない人間ズゾゾー!」

('A`)「紅茶の啜りかた汚すぎだろ」


.

290 名前: ◆tDN4QF.obM[] 投稿日:2014/07/26(土) 19:04:38 ID:.FJLoOHo0

肩をすくめつつ、写真を手に取る
20歳というには実に子どもらしく可愛いげがある
肩までしか写ってないが服のセンスも良さそうでなんだかモテそうな面持ちだ


川 ゚ -゚)「その子が明後日に結婚することになってな」

('A`)「良かったじゃないか、で、どうしてそれがモララーと繋がるんだよ」

川 ゚ -゚)「奴は、その結婚式の日にデレちゃんをカードで自分のモノにするらしいんだ」


('A`)


('A`)「え?なんで?」

川;゚ -゚)「意外に鈍いな君は……モララーはデレちゃんの事が好きだからだろ」

291 名前: ◆tDN4QF.obM[] 投稿日:2014/07/26(土) 19:05:22 ID:.FJLoOHo0

話を聞くと、モララーはその大学院に度々生徒としてなりすまし、
そのイケメンな顔立ちと能力で女の子をクイモノにして歩いていたそうで、
そんな中で唯一、自身の能力が効かない大学院一可愛いとされるデレに急速に引かれたようだ

能力が効かなくてもそれなりに仲良くなり、初のデートに誘った頃、
デレの口から最悪な形で結婚相手がいると告げられたそうだ


川 ゚ -゚)「それまでも能力でデレちゃんに着く虫を払っていたモララーは、たまたま結婚相手がデート中に居合わせて、馴れ馴れしいからいつものように追っ払った」

川 ゚ -゚)「その時にデレちゃんから熱いビンタをくらって」


(;ー;*川『もう!あれは私の結婚相手だったの!最っ低!モララー君とはもう話をしない!』


川 ゚ -゚)「と別れたきりになったそうだ」


似てた?と同意を求めてくるが、
本人を見たことが無いので苦笑いを浮かべる他無い
ブーンは似てます!と誉めちぎりつつ、またハムカツタマゴサンドを頼んでいる


.

292 名前: ◆tDN4QF.obM[] 投稿日:2014/07/26(土) 19:06:03 ID:.FJLoOHo0

好きな人を諦められない気持ちは分かるが、どうしてそれがカードを盗ることに繋がるのか

俺はいつの間にかズボンのポケットに入っていた5枚のカードを取り出す
そういえば、さっき【選択】をした際に感じた違和感を口にする


('A`)「……さっきの選択で【反抗】を選んだときにやけに簡単に抜けたんだよな、それに世界はなんだかセピア色だったし」

('A`)「自分の意思で抜いた、と思うけど、クールはこの選択で何でなにも言わなかったんだ」


途端にクールは立ち上がり、引ったくるようにして俺が手にしたカードを手に取る
その顔には焦りが張りついてる、ように見えた
俺やブーン、周りのやつらが一斉にクールに注目する


川;゚ -゚)「……異常は」

('A`)「は?」

川;゚ -゚)「どこか身体に、異常はないか」

(;'A`)「何だよ、何も無いよ」

川;゚ -゚)「……そうか」


クールはゆっくりと座り込み、俺の手元にカードを戻す
視線を送っていたやつらも元の会話へと戻っていく

293 名前: ◆tDN4QF.obM[] 投稿日:2014/07/26(土) 19:06:49 ID:.FJLoOHo0

川 ゚ -゚)「……そのセピア色の世界だが」


クールが口を開いたのは、ブーンが頼んだメニューが届いてからだった
初めて暗く、悩んだ顔を見た気がする

俺は残ったコーヒーを飲みほす
すっかりぬるくなり、少しだけ酸味があった


川 ゚ -゚)「それは、奴がドクオにカードを使ったことで発生した世界だろう」

('A`)「『カードを使った』?だって俺は」

川 ゚ -゚)「私に運命を握られているから使えないんだよ、本来は」

川 ゚ -゚)「だが、カードに自身の力を潜らせて強制的に【選択】を出すことで、それを可能にしたんだ」



『運命を握られている』という言葉に、息が詰まる
モララーが去り際に放った一言が胸に突き刺さる


(  ∀ )『ありがとう、可愛そうなクールの僕、ドクオ君』

('A`)「……っ」


頭を振り、その言葉を思い付かなかったように次の疑問を口にする


('A`)「でも、俺は『モララーさん』という人が居たと思える程に記憶、というか、運命を書き換えられたんだよな?
なら、わざわざ選ばせなくても『俺のために暴れろ!』とでも変えれば良いんじゃないか」

294 名前: ◆tDN4QF.obM[] 投稿日:2014/07/26(土) 19:07:32 ID:.FJLoOHo0

川 ゚ -゚)「奴の能力は時間が掛かるんだ」


ショートケーキが運ばれてくる
クールはどうやら食後に頼んでいたらしい、紅茶のおかわりを頼んだので俺も慌ててコーヒーのおかわりを頼む


川 ゚ -゚)「過去の運命を変えるなんざ神様でも尋常じゃない力が必要なんだ、それでも短時間で何人もの過去を書き換えるなんて奴しか出来ないんだがな」

川 ゚ -゚)「そして、モララーは未来の運命を変える事をしない」

川 ゚ -゚)「出来ないこともないはずだが、無限と存在する些細なものを繋ぎあわせて一つの運命にするんだから、過去を書き換えるよりも面倒なんだ」


例えば、とクールはショートケーキの側にあるフォークを手にすると、
そのまま蝋燭の火のように逆さになった苺にその先端を差し込む
フォークは苺の締まった果肉に支えられ、刺さったままの姿勢になっている


川 ゚ -゚)σ「この動作を私がするという運命を創るなら、二年前にはここに居ないと駄目だな」

(;'A`)「……え、たったこれだけの動作で二年?」

川 ゚ -゚)「まぁこれは私の場合だがな……モララーでも半月は掛かるな」

(;'A`)「しかもやったことあるのかよ」

川 ゚ -゚)「まだモララーが堕天する前に一度教えてもらったが、一人の人間を石につまづかせるまでに十年は掛かった……それだけ膨大な情報を紡ぐのが面倒なんだ」

295 名前: ◆tDN4QF.obM[] 投稿日:2014/07/26(土) 19:08:13 ID:.FJLoOHo0

クールはフォークに刺さったままの苺を頬張り、そして、と続ける


川 ゚ -゚)「そんな情報を極限にまで制限して、数択に留めることが可能な私のカードに、モララーは目をつけた」

川 ゚ -゚)「あれなら余計な労力は必要ない、【暴れろ】という感じの言葉さえ寄せ集めて表示させれば事は済む」

川 ゚ -゚)「ま、込めた力が弱かったのかドクオの場合は只の一択しか出なかったがな」


(;^ω^)∩「あの、ちょっと良いですかお?」


クールとの話に夢中になって、ブーンがいたことを忘れていた
隣で申し訳なさそうに手を挙げているのを見て、さらにその手の脇にある皿の枚数を見てぎょっとした
どんだけ黙々と食べてたんだよ

コーヒーと紅茶のおかわりを持ってきたカフェの店員もドン引きを隠すように眉を吊り上げながら微笑んでいる


(;^ω^)「クール様は先ほどデレという人間には運命を変えられない、能力が効かないと言ったじゃないですか!」

(;^ω^)「なのに、何故モララーはカードが有効だと踏んだのですか!」


ブーンの質問に、俺も不思議に思う
いくら選択に制限が掛かった所で、効かないのでは意味がない
クールは先ほどよりは明るく、しかし言っていいものか、という悩んだような顔を見せる

296 名前: ◆tDN4QF.obM[] 投稿日:2014/07/26(土) 19:08:54 ID:.FJLoOHo0

川 ゚ -゚)「……ま、この際だ、教えてやっても良いか」


クールは一度、紅茶を飲む
俺もそれに合わせるように、コーヒーを一口、口に含む
このカードの秘密をついに明かす気がして、緊張が走った
温かく、苦味とともにコーヒーが身体を駆け回る


川 ゚ -゚)「このカード、荒事が引き寄せられる効果があるのは知ってるな?」

川 ゚ -゚)「その効果はおそらくデレちゃんには効かない、あれも一種の運命が変わる効果だからな」

川 ゚ -゚)「モララーが狙いをつけたのは、カードを引いた後……」






川 ゚ -゚)「あのカードは、ソーサク血戦のカードは、『超強力な催眠術』に掛かるカードなんだ」








.

297 名前: ◆tDN4QF.obM[] 投稿日:2014/07/26(土) 19:09:37 ID:.FJLoOHo0
【2】


('A`)「……催眠術」

( ^ω^)「催眠術」


俺とブーンは、口々に何度も呟く。

催眠術。

ふと、昔に催眠術の特番をやっていたのを思い出す。

テレビで胡散臭そうなおっさんが、ひ弱そうなアイドルをパイプ椅子を並べた場所に横たわらせ、

「貴女は板、丈夫で決して折れない板です……」

と何度も何度も耳元で語りかけ、
何個か並んでいるうちの真ん中の椅子を引き抜くと、
落ちる事なくまさに板の様に、ひ弱そうなアイドルだった彼女が微動だにしないという、芸当だ。

その催眠術の強化版が、このカードに備わっている、という。


( ^ω^)「ドクオ、ドクオ」


ブーンに呼ばれ、気がつくと、世界は白黒に反転していた。
が、カードには何も表示されていない。


川 ゚ -゚)「ああ、今回は説明のために作っている……カードも、モララーにやられて疲れたと言ってるしな」


カードと意志疎通が出来るのか、と茶化そうとしたが、止めた。
カードの神様だし、出来て当たり前か。

298 名前: ◆tDN4QF.obM[] 投稿日:2014/07/26(土) 19:10:19 ID:.FJLoOHo0

だが、俺はなんとなく分かっていた。


('A`)「この世界は」


一度思ったことが口に出たが、考えをまとめ、再び声に出す。


('A`)「この世界は、導入とかいう『過程』をすっ飛ばした、いわゆる『深層心理』の状態って奴だな」


あなたは深い、深い、心地の良い空間にいます。
私の声だけが響き、それ以外は何も聞こえない。

ただ、心地が良い。

テレビで暗示を掛ける際に、催眠術師が何度も呟く言葉だ。


('A`)「その深い場所で術師の代わりである天界人と相談して、目覚めた時に『どういう暗示を掛けるか』を【選択】する、このカードはそんな効果があるんだな?」

川 ゚ -゚)「なんだ、知っていたのか?」

('A`)「言われてからピンと来たよ」


何だか照れくさくなり、頭を掻く。
下手な説明ではあったが、途中で面倒にならずに言えたのが、少しだけ誇らしい。

299 名前: ◆tDN4QF.obM[] 投稿日:2014/07/26(土) 19:11:02 ID:.FJLoOHo0

('A`)「ただ、具体性のない【選択】を迫られるのは何でだ?」

川 ゚ -゚)「それはもちろん」

川 ゚ー゚)「その方が二転三転して面白いじゃないか」

('A`)「最もだ」

川*゚ -゚)「ま、誰でも力さえ加えてやればもっと細かな【選択】に変えられるがな!今まで何故誰もやらないのか不思議でたまらない!」

(;'A`)「それは教えないからだろ……」


世界の色が戻っていく
と、急に胸の辺りが苦しくなり、息が出来なくなる


(; A )「っ……何だ……!?」


胸が、何かに握り潰されそうになる
転げまわりたい程の激痛が走るが、必死に声を殺し、呻く
汗が吹き出し、顔が苦痛に歪む


(;^ω^)「ドクオ……?しっかりするお、ドクオ!」


ブーンに背中を支えられ、痛みと格闘していたが、程なく痛みは収まってくる

やっと息を整える事が出来たと思い、顔をあげるとクールの顔が近くにあった
心配と焦燥が顔に浮かび、その瞳は今にも泣きそうで俺は驚く


(; A )「……こ、これは、何だ?何が起こった?」

301 名前: ◆tDN4QF.obM[] 投稿日:2014/07/26(土) 19:11:49 ID:.FJLoOHo0

川;゚ -゚)「それは」

川;゚ -゚)「……それは、モララーの創った世界が、関係している」


おそらく、セピア色の世界のことを言っているのだろう
まだ胸の奥が痛むが、ゆっくりと呼吸をして落ち着かせつつ、クールの話を聞く


川;゚ -゚)「君は私のカードについて説明した時に、過程を飛ばして深層心理に行くと言ったが、
厳密にいうとそうじゃない……トラブルが起きている最中に、無意識に過程は辿っているんだ」

川;゚ -゚)「だが、奴のやり方では駄目なんだ……文字通り、『過程をすっ飛ばす』から」

川;゚ -゚)「身体が追い付かずに支障をきたす、とは思っていたが……ドクオが何ともなくて、私の杞憂かと安心していた……」


すまない、と姿勢を正し、クールは頭を下げる
ブーンはそんな彼女を見て狼狽える
俺も今日はクールが初めて見せる顔や姿勢ばかりで調子がどんどん狂っていく


だが、体験した今だから、俺は言える

胸の痛みがいくらか楽になり、息を整え、静かに闘志を燃やして、告げる


( A )「…………対決だ」


(;^ω^)「……対決?」


.

302 名前: ◆tDN4QF.obM[] 投稿日:2014/07/26(土) 19:12:32 ID:.FJLoOHo0






(#'A`)「奴と……モララーと、対決だ」





.

303 名前: ◆tDN4QF.obM[] 投稿日:2014/07/26(土) 19:13:32 ID:.FJLoOHo0
【3】


「ロマネスク様と、連絡が取れました」


黒服の一人が、私に携帯電話を手渡す。
白い小さなガラケーに、同じく白い猫のストラップが2つほどぶら下がっているの。


川 ゚ -゚)「これは、お前の携帯か?」

「はっ、私の物です……古くさいですよね」

川 ゚ー゚)「……いや、良い趣味をしている」


私はそれだけを言うと、携帯を耳に当てる。
暫くがさがさと物を漁る音が聞こえたかと思うと、しゃがれた声が耳に届く。


『あ、クールであるか?我輩寝て良い?』

川 ゚ -゚)「駄目に決まってんだろ猫ジジイぶっ殺すぞ」

『んあぁあん!だって我輩たった今、たった今シーズン2を見終わったばかりであるよ!?
しかも人間界で!ネカフェで!クールがお勧めした最高の場所が肩、腰、膝全部に響く最悪の見ごこち場所よ!?あ、食べ物は美味しかったである』


電話越しにギャーギャー文句を垂れる猫ジジイ。
まだネカフェにいたのか、すいませんと謝る声が聞こえると途端に声を小さくして話し始める。

304 名前: ◆tDN4QF.obM[] 投稿日:2014/07/26(土) 19:14:17 ID:.FJLoOHo0

『第一、いま何時であると思っているか?0時であるよ?夜中の0時!
そんな子洒落たカフェの前でつっ立って、一体何してるであるか!』

川 ゚ -゚)「電話越しでも私の場所が分かるのか、流石は『探索の神様』だ」

『〈流石〉は〈流石家神様家族〉であろうに……で?クールは何を待っているであるか?』



川 ゚ -゚)「ああ、緊急バイト二人を待ってる」


.

305 名前: ◆tDN4QF.obM[] 投稿日:2014/07/26(土) 19:15:13 ID:.FJLoOHo0

(#'A`)『奴と……モララーと、対決だ』


ドクオはまだ痛むのか胸を抑えつつ立ち上がり、店員に精算を頼んだ。

あてはあるのかと聞くと、ある、と断言されて、ブーンから聞いたようで、ロマネスクのことを言っていた。


('A`)『俺が知る限りで24シリーズの他に海外ドラマ全巻揃ったネカフェがある、そこを教えていつでも連絡取れるようにしてくれ』

('A`)『奴は明後日の結婚式にぶつかるだろうと、自身の能力のお陰で満身している、そこを叩く』


と自信満々に答えて、作戦の概要簡単に伝える。
ひとしきり説明が終わったあと、会計の紙を取り、こう言った。


('A`)『……』


('A`)『二人とも、お金ある?』



川 ゚ -゚)「……とな」

『……え?食い逃げしたのであるか?』

川 ゚ -゚)「まさか、私はちょっと財布を取りに行きますねと去っただけだ」

『食い逃げじゃねぇか』

川 ゚ -゚)「知略を尽くしたものだけが生き残る世の中だからな」

『食い逃げじゃねぇか』

306 名前: ◆tDN4QF.obM[] 投稿日:2014/07/26(土) 19:15:56 ID:.FJLoOHo0

『それで、彼らを待ってるのであるな……かわいそうに』

川 ゚ -゚)「女を夜中に待たせるのは最低だとは思うがな」

『食い逃げをあたかもしなかったように語るお主も最低ではあるがな』


共に小さく笑う。
間もなく彼らは戻って来るはずだ。
その前にまず確かめる事がある。


川 ゚ -゚)「モララーの事なんだが」

『うむ、人間界という近い場所にいるからかモララーの場所がハッキリした、シタラバホテルの503号室である』

『ただ……ホテルマンに何か細工を仕掛けておるな、
皆一様に血眼になっているから迂闊に近づけそうもないぞ』

川 ゚ -゚)「そうか、どうすればいい?」

『ホテルのカウンター裏に社員用通路がある、そこをうろつくホテルマン三人をどうにか交わせば、
503号室の通路まで誰も居ないな』

『503号室前は5分置きにホテルマンが辺りを徘徊している、
間を見て抜ければ何とかなりそうであるな』


よくもまぁドラマを見ながらそこまで詳細を語れるものだ、と毎度の事ながら感心する。
まるで一度ホテルを訪れて来たかのようだ。

また必要になったら連絡する。
そう言って携帯を切ろうとすると、呼び止める声が聞こえたので再び耳に当てる。

307 名前: ◆tDN4QF.obM[] 投稿日:2014/07/26(土) 19:16:53 ID:.FJLoOHo0

『本当にモララーの部屋にはお主らだけで行くのか?』


「モララーの部屋には俺たちだけで行く」
ドクオが緊急バイトに勤しむ前、作戦の中にあった言葉だ。

黒服に協力してもらうのは道中まで。
三人で部屋に入ったら、すぐにモララーを拘束する、と。


川 ゚ -゚)「……本来なら私と黒服で事足りるんだがな、それじゃどうにも腹の虫が収まらないらしい」

川 ゚ -゚)「『こんな事に巻き込まれた俺だから、奴には直接言ってやらなきゃいけない事がある』」

川 ゚ -゚)「ドクオはそう言って、ブーンと共に厨房の中へ消えていったよ」


『最後のフレーズさえ無ければカッコいいんであるがなぁ』

308 名前: ◆tDN4QF.obM[] 投稿日:2014/07/26(土) 19:18:08 ID:.FJLoOHo0

その後は何気無い話をいくつか話し、それじゃあまた、と電話を切る。
近くにいた携帯を貸してくれた黒服にお礼を言ったあと、また借りる旨を伝える。


川 ゚ー゚)「あのストラップだが、私も好きで集めてたんだ、良い趣味をしているな」


黒服は呆気に取られていたが、表情を緩めると、今度ストラップを見せて下さい、と言って闇に消えた。

間もなくカフェの入り口から、やつれた顔の二人が顔を出す。

ドクオと、ブーンだ。
ようやく支払い分のバイトが終わったのだろう。


川 ゚ -゚)「遅いぞお前ら、何してたんだ」

(ヽ'A`)ヽ^ω^)「「食い逃げをした奴が何いってんだ」」


と、ドクオが短く一息をつく。
私はまた具合が悪くなったかと思い心配したが、彼の顔は笑っているように見えた。


('∀`)「何だようやく調子が戻って来たじゃないか、安心したよ」

川 ゚ -゚)

川 ゚ー゚)「ふ、それはお互い様と言うものだ、休む暇は無いぞお前ら、行くんだろ?」

309 名前: ◆tDN4QF.obM[] 投稿日:2014/07/26(土) 19:18:48 ID:.FJLoOHo0


('A`)「あぁ、行こう」


('A`)「やってやろうぜ」





対決だ。





第9話 「秘密」 続く



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