( ´_ゝ`)時間を司るようです(´<_` )
第8話「離」



161 名前: ◆MH/VTCEj3A[] 投稿日:2013/03/15(金) 23:33:25 ID:xp7nYTL60
 
 
 
 
 
再び見えた君は。
 
 
 
第8話「離」

162 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/03/15(金) 23:34:52 ID:xp7nYTL60
タァン、と人間の形を模した的の、眉間の部分に丸い穴が開いた。

「うん、大丈夫だね」

しぃは言うと、兄者に向き直った。

(*゚ー゚)「筋が良いと思う。これならきっとモナーも大丈夫って言ってくれるんじゃないかな」

( ´_ゝ`)「……ああ」

しぃの褒め言葉に、兄者は浮かない顔をしている。
どうしたの、としぃが尋ねると、兄者は「うん」と小さく声を漏らす。

( ´_ゝ`)「……俺はこれで、人を殺す時が来るのかなって」

164 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/03/15(金) 23:36:07 ID:xp7nYTL60
兄者が不安げに漏らしたその言葉に、しぃはぱちくりと黒い瞳を瞬いて――すぐに、柔らかく笑んだ。
銃を持っている兄者の手を、しぃは自分の手で包み込んだ。

(*゚ー゚)「殺さなくてもいいよ。主の正確さなら、腕や足を撃つこともできる。それだけでも十分だから」

しぃの手は、細い見た目とは違い皮膚は硬い。
随分と長いこと銃を扱っている、と聞いた。

(*゚ー゚)「守護者として、私は銃を使う。主を守る為。主に危害を加える人達を殺す為。だからね、主」

165 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/03/15(金) 23:37:17 ID:xp7nYTL60
しぃは笑う。守ることも、守られることも知っている者の笑顔だった。

(*゚ー゚)「自分を守る為に、主は撃てばいいよ。そこに殺す必要はないから」

( ´_ゝ`)「……ありがとう」

兄者の言葉にしぃはうん、と頷いた。
だが、しぃが見つめていると兄者の顔がだんだんと緊張に強張っていった。

(*゚ー゚)「主?」

( ;´_ゝ`)「……うん、しぃ」

「あのさ」そう切り出す声は少し震えている。

166 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/03/15(金) 23:38:29 ID:xp7nYTL60
( ;´_ゝ`)「ギコのやきもちはどうにかならないかな」

(*゚ー゚)「えっ」

その言葉にしぃが振り返る。
兄者の声が聞こえていたのだろう、さらに当人と視線が合ったギコは――真っ赤な顔をして、しぃから逃げるように訓練場から出て行った。
ばたんと大きな音を立てて閉まった扉を、兄者としぃは暫くぽかんとしたまま眺めていた。
だが、次第にくすくすと笑い声を殺せなくなっていった。
 
 
 
 
 
( ´_ゝ`)(……昨日までそんなことで笑い合ってたのになあ)

167 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/03/15(金) 23:39:31 ID:xp7nYTL60
兄者ははあ、と大きく息を吐いた。
なんとなく手が寂しくて、触れた銃はひんやりと冷たかった。

しぃから「私のお古だけど」と渡されたのはベレッタM84。
少し大きめだが、癖が無い為初心者には使いやすいと説明を受けた。

モララーがこくりと頷いた。
守護者の皆が見守る中、兄者は前に進み出ると両手を地面に下ろす。
ざらりとした砂が手に付くのを感じながら、兄者は口を開く。

( ´_ゝ`)「我、過去を司る者。嘗ての姿を我に示せ」

168 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/03/15(金) 23:40:24 ID:xp7nYTL60
青い光が辺りを包み込む。
その光がドクオを含めた守護者全員を包み込んだのを確認した時、兄者はさらに片手を離して緑の石を取り出し触れた。

( ´_ゝ`)「重ねて命ずる。過去を辿り、我をその場所へと導き給え!」

一際青い光が広がり、全員の姿がそこから掻き消えた。
 
 
 
 
 
どたどたと騒がしいな、と思った。

169 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/03/15(金) 23:41:09 ID:xp7nYTL60
空腹と渇きから少しでも逃れようと、眠りを選んだ。
起きる頻度は多いが、起きてずっと苦しむよりはマシだと思った。

もう自力で動くこともままならない。
すぐそこで頭をもたげている死に、自嘲するように笑った。

(  )「……主?」

誰かに触れられた気がした。声も聞こえたような気がした。
触れられたのは左腕だ。怪我をした右腕じゃなくてよかった、と見当違いな安心をする。

170 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/03/15(金) 23:42:14 ID:xp7nYTL60
(  )「主ッ!」

聞いたことのある声だ、と思った。
ゆっくりと記憶を辿る。その先に行きついたのは――あの時、自分を守った内の一人だということ。

(   )「ドクオ、落ち着け」

冷静な声と共に、久しい光が目を焼いた。
思わずきつく目を閉じる。瞼の裏から明かりに慣れ、おそるおそる目を開けた。

( ´_ゝ`)「弟者!」

(´<_` )「……あに、じゃ?」

171 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/03/15(金) 23:43:32 ID:xp7nYTL60
とうとう幻聴まで聞こえ始めたのか、と不明瞭な視界が明確になるまで分からなかった。
見慣れた顔だ。それも、鏡で見る自分の顔と少ししか変わらない顔。

( ;_ゝ;)「ッ弟者ぁ!」

泣いている。兄者が泣いている。
ここまで泣くのは珍しい、と弟者は何故かおかしくて笑えた。

( ・∀・)「ご主人、感動の再会はまた後で仕切り直しだ。とにかく今はここを出る」

( う_ゝ;)「う、ああ」

「僕が抱えるお!」内藤が弟者の体を抱える。

172 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/03/15(金) 23:44:52 ID:xp7nYTL60
ぼろぼろと泣いていた兄者はぐいと乱暴に目を擦ると、守護者達に「俺に触れてくれ」と呼びかけた。

( ´_ゝ`)「我、過去を司る者、」

そこまで言ったところだった。
ギコが持っているランタンとは別の光が、後方から差し込んでくる。
差し込んだ光の方へ、ギコが両手剣を、しぃが銃を向けた。

開いた扉から覗いた姿に、二人が瞠目する。

ξ;゚听)ξ「……嘘、でしょう」

ツンが思わず漏らした声に、視線を向けていなかったドクオが振り返った。

173 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/03/15(金) 23:46:25 ID:xp7nYTL60
('A`)「……え」

(  ∀ )「……」

('A`)「モ、ナー……?」

ドクオの震える声に、モナーは虚ろな瞳を向けた。

次の瞬間、モナーがぐっと片腕を後ろに引いた。
その腕を、紅い光が覆った。

( ´∀`)「……排除」

ぼそりと呟かれた言葉と共に、紅い光を纏ったチャクラムが投げ付けられる。

174 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/03/15(金) 23:48:11 ID:xp7nYTL60
轟と音を立てたチャクラムに、しぃが引き金を引いた。
耳障りな金属音を立てて、チャクラムが本来の軌道を外れて大きく高さを失った。
そこへ駆けたギコが両手剣を振り下ろすと、床に叩き付けられたチャクラムが掠れた音を響かせて弟者達の横を滑って行った。

( ´∀`)「排除……排除排除排除排除排除排除排除排除排除排除排除排除排除排除排除排除排除排除排除排除排除排除排除排除」

('A`;)「モナー……モナーッ!!」

( ;・∀・)「ご主人、退却だ!!」

175 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/03/15(金) 23:49:33 ID:xp7nYTL60
( ;´_ゝ`)「ッ過去在った地へと戻れ!」

叫ぶように詠唱した兄者の近くへ、しぃとギコが駆けて戻る。
兄者と直接手を繋いだモララーと、モララーの手を取ったツンと――全員が経由しながら兄者に触れた守護者達の元へ、しぃとギコは駆け込んで手を繋いだ。

('A`;)「モナあああああああッ!!!」

ドクオの叫びを最後に、全員の姿は元から無かったようにすべて消えた。

176 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/03/15(金) 23:50:51 ID:xp7nYTL60
 
 
 
 
 
( ・∀・)「大丈夫かい、ご主人」

( ;´_ゝ`)「俺は、大丈夫だ……ッ弟者!」

兄者は弾けるように顔を上げると、内藤に抱えられた弟者の元へと走った。
弟者は気を失っている。弟者の姿を認めるなり、兄者は再びぼろぼろと泣き始めた。

( ;_ゝ;)「弟者、弟者あぁ……」

177 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/03/15(金) 23:52:42 ID:xp7nYTL60
兄者は嗚咽で喉を引き攣らせながら、途切れ途切れで詠唱する。
ろくに処置も受けておらず、傷口が化膿して骨の折れていた右腕は青い光に包まれた後怪我をしていない普通の腕へと戻った。

( ・∀・)「ご主人、今日は休もう。大分体力を消耗してる」

( ;_ゝ;)「……ふ、う、うあああ」

ξ ゚听)ξ「……暫く泣き止みそうにないわね」

(*゚ー゚)「それでいいよ、やっと会えたんだもの」

178 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/03/15(金) 23:54:03 ID:xp7nYTL60
しぃは微笑む。
だが、その隣でツンは笑っていた表情を引き締め――後ろを振り返った。

('A`)「モナー……なんで、」

ドクオが、力無い声でぽつりと呟いた。
 
 
 
 
 
第8話「離」・終



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